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小学1年生の子どもがいるあなた。PTAの集まりの後、同じクラスの子のお母さん、サトウさんから「うちの子、“てんかん”があってときどき気を失うことがあるの」と打ち明けられた。“てんかん”って突然「“けいれん”がおきる病気」ってことしか知らないけど、子どもたちがびっくりしちゃわないかな?
まずは自分がどんな病気か知らないと…。

クイズ監修 日本てんかん協会 理事 田所裕二さん

クイズを解いて「アライさん」を目指そう! 6つの問題に答えると、あなたの「アライさん度」がわかります! アライさんとは >

第1問

同級生のママ友たちとオンラインお茶会をした。サトウさんの息子さんは、3歳のときに強い“けいれん”発作があって“てんかん”と診断されたんだって。一時期は発作が月に3~4回あったけど、合うお薬があって今は年に数回にまで減ったそう。
“てんかん”って生まれついての病気なのかな?

あと6問
  • A後天的に発症する病気ではない
  • B後天的に発症するケースの多い病気である

“てんかん”は大脳に関わりのある疾患です。私たちの身体は、大脳内の神経細胞に電気信号が流れることで活動します。そして、その電気信号の流れが強く乱れることで、失神・けいれんなど様々な“てんかん”の発作がおきるのです。

出生時の仮死状態や低酸素、さらに成長過程で生じた脳の損傷などが原因になることもあり、あらゆる年代で見られる疾患です。また脳の損傷があるわけではなく、原因が明らかにできない症例も多くあります。
“てんかん”の患者数は100万人と推定され、この数は三大疾患(※)の患者数と変わりません。3歳以下の発病が最も多く、80%は18歳以前に発病すると言われています。

※日本の三大疾患 「がん」「心疾患」「脳血管疾患」

アライさんポイント

国民の100人に1人がかかるという身近な疾患ですが、周囲に伝えることができていない当事者や家族が多くいます。それは“てんかん”が他人に知られると「恥ずかしい」疾患だととらえる風潮が長く続いてきたことも一因です。しかし今では“てんかん”のある人の70~80%が薬や外科治療などにより発作をコントロールできています。

第2問

サトウさんの息子さんが、家に遊びに来た。子ども同士でゲームをしていると突然、気を失って全身にけいれん…。どうしよう…。サトウさんから「発作がおきたらこうして」と言われていたんだ。
発作がおきたときには…。

あと5問
  • Aしばらく様子を見る
  • Bすぐに救急車を呼ぶ

“てんかん”の発作の1つがサトウさんの息子さんのように、全身のけいれんが見られる「強直間代発作(きょうちょくかんたいほっさ)」です。発作中には口の中を噛むこと、失禁、呼吸が停止することもありますが、“けいれん”は数分で治まることが多く呼吸も再開します。命に別状はなく、救急車を呼ぶ必要はありません。
しかし10分以上発作が長引く場合や、発作が終わっても意識が戻らない場合など、当事者やその家族から聞いている発作と様子が異なる場合には、てんかん以外の疾患の可能性がありますので救急車を呼びましょう。

アライさんポイント

発作の最中に気を付けることは「大声で呼ばない」「強くゆすらない」ということ。当事者に意識がある場合では、過剰な心配を負担に感じることがあります。さらに目覚めたときには「心配な顔」よりも「ホッとした顔を見せてほしい」という当事者の声がありました。
またけいれんの最中にぶつかってケガをしないように当事者の周囲にある固いもの、とがったものなどを遠ざけましょう。

第3問

PTAの集まりでサトウさんと話していると、隣にいたスズキさんが「自分も“てんかん”がある」と話してくれた。その会話の途中で、突然スズキさんが黙り込んでしまった。そういえば前にもこんなことがあったような…。スズキさんが“けいれん”をおこしているのは見たことないけど、これも“てんかん”と関係あるのかな?
“てんかん”は…。

あと4問
  • Aけいれんの発作が必ずおこる
  • Bけいれん以外の発作もある

“てんかん”の発作というと一般には「けいれんがおきる」「意識を失い倒れる」というイメージが持たれています。しかしその種類は様々です。スズキさんは意識が短時間とぎれてしまう「欠神発作」を起こし黙り込んでしまいました。

「欠神発作」は突然、意識を失い、その場で動作が止まります。そして数秒から十数秒で突然、意識が回復するのです。発作が軽い場合には、それまでの動作をゆっくり続けたり、簡単な質問には返事をしたりすることもあります。この発作はごく短いので、患者さん自身も周囲の人々も気がつかないこともあります。またストレスのあるときや緊張しているときより、平静時やくつろいでいるときにおきやすい発作です。

アライさんポイント

「欠神発作」以外にも、顔や手足のごく軽いけいれんや、しびれ、吐き気、不安感などを引きおこす発作もあります。これらの発作中は、意識を失うことはないので特別な処置は必要ありません。しかし当事者には常に不安が付きまといます。周囲は、当事者が発作のあることを伝えられる空気作りを心がけましょう。

第4問

サトウさんの息子さんは新型コロナによる自粛で楽しみにしていた水泳の授業を受けられなかった。そのせいかサトウさんに「スイミングスクールに通いたい」とねだっているんだって。
でも「水泳の最中に発作がおきたら」とサトウさんは心配顔…。
“てんかん”のある人は、プールには入ってもいいのかな?

あと3問
  • Aてんかんのある人はプールに入ってはいけない
  • Bてんかんがあってもプールに入ってよい場合もある

ほとんどの当事者が薬の服用で発作をコントロールしているので水泳を楽しむことができます。しかしながら万が一水泳中に発作がおきてしまったときのため、発作を充分に理解している人が「常に見守ることのできる環境か」を確認しましょう。
また発作は緊張しているときより、リラックスしているときにおこることが多いとされています。当事者を見守る人は、プールから上がったときにも注意を傾けてください。

アライさんポイント

“てんかん”発作のため、運動や行事への参加を制限されている当事者は少なくありません。しかし幼い当事者に行き過ぎた制限があると、自己肯定感や社会性の発達に対して悪影響を与える可能性があります。可能な限り当事者の意思を尊重しましょう。
また入浴中の発作でも溺れる可能性があるため、当事者へ5分ごとに声をかけるという工夫をしている家族もいます。

第5問

意識が途切れる“てんかん”の発作のあるスズキさんは事務の仕事をしている。慣れた仕事は問題ないけど、段取りが複雑な仕事を任されると混乱してしまうそう。
それも“てんかん”に関係しているの…?

あと2問
  • Aてんかんには関係ない
  • Bてんかんに関係した障害の可能性がある

“てんかん”は“頭部の外傷”や“脳の疾患”が原因となることもある疾患です。そのため“高次脳機能障害”(※)が合併する可能性があります。
“高次脳機能障害”は気が散りやすかったり(注意障害)、日付や場所がわからなくなったり(記憶障害)、自分で計画を立てられなくなる(遂行機能障害)などの障害を引きおこします。スズキさんは“高次脳機能障害”を合併しているのかもしれません。

また他にも精神障害・知的障害・発達障害などの合併症が現れることがあります。“てんかん”と並行し、これらの合併症の治療を行うことが勧められます。

※高次脳機能障害 言語・思考・記憶・行為などの認知機能に障害を生じさせる

アライさんポイント

合併している障害によって仕事に支障が出てしまったとき、周囲が人格の問題として責めたり、カバーしたとしても恩着せがましい態度をとると、ストレスが生まれ“てんかん”発作がおきやすくなると感じている当事者もいます。本人は何に“しんどさ”を感じているかを伝え、周囲はそれを受けとめることが大切です。

第6問

サトウさんが当事者会の友人・タカハシさんと開くバーベキューパーティーに誘ってくれた。
タカハシさんは隣の県から、自動車を運転して来るんだって。
でも“てんかん”のある人って運転してもよかったのかな?

あと1問
  • A“てんかん”のある人は運転をしてはいけない
  • B“てんかん”があっても運転をしてよい場合もある

かつては“てんかん”という診断がついていると、全ての人が一律に免許を取得することができませんでした。しかし2002年の道路交通法改正によって、自動車などの安全な運転に支障があるかどうかは個別に判断されることになりました。したがって適切な治療を受け条件を満たせば運転免許の取得は可能です。
その条件とは「安全な運転に支障するおそれのある症状が2年間ない」と医師が診断を行うことです。薬の服用の有無は関係ありません。運転免許をとりたいと考えたら、まず主治医と相談することになります。発作がコントロールされていることが前提なので、当事者の側には「薬を飲み忘れたときは運転しない」などの配慮が必要です。また、運転が業務の中心となる仕事は勧められていません。

アライさんポイント

自動車がなければ社会参加が妨げられる地域に住む当事者もいます。
しかし運転への批判に苦しむ当事者は少なくありません。
医師の診断と当事者本人の慎重な危機管理のもとで運転していることに配慮しましょう。