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大学生のあなた。サークルで仲良くなったサトウさんが、ある日、「実はあんまりご飯食べられてないんだ」と打ち明けてくれた。それって、いわゆる摂食障害…? 話してくれてうれしかったけど、何て言えばいいか分からなくて、どぎまぎしちゃった。

考えてみたら、摂食障害って、すごく食べないとか、すごく食べるっていうくらいのことしか知らない。私にできることってあるのかな?

摂食障害ってどんな病気なんだろう?

監修 NABA:日本アノレキシア(拒食症)・ブリミア(過食症)協会
代表 鶴田桃エさん

クイズを解いて「アライさん」を目指そう! 6つの問題に答えると、あなたの「アライさん度」がわかります! アライさんとは >

第1問

サトウさんは、自分のことを「拒食症」だって教えてくれた。高校に入った頃にダイエットを始めたら、だんだんと食べる事が怖くなってしまったんだって。今はちょっとやせ気味くらいに見えるけど、高校の時はすごくやせてしまって、入院したこともあったらしい。…拒食症ってどんな病気なんだろう?

拒食症は、

あと6問
  • A体の不調が原因で食べられなくなる
  • B心理的な要因で食べられなくなる

摂食障害の代表的な症状のひとつが、心理的な要因で食べ物や食べる行為を拒む「拒食症」。低栄養の状態が続くと、月経が止まるほか、命にかかわることもあります。しかし、本人は食べることや体重が増えることがどうしようもなく怖く、その恐怖は、高所恐怖症などと同じように、意志や理性では抗えないものです。さらに、いくら痩せても、本人には痩せていると感じられないことも多くあります。

「外見を気にしてダイエットをするから拒食症になってしまう」と誤解されがちですが、実はダイエットは表面的なきっかけに過ぎず、その背景には様々な心理的葛藤があります。性格・傾向としては、勉強やスポーツ、仕事をとても頑張る人や、「人の期待に応えないといけない」「女らしく」「男らしく」などを強く自分に課している人が多いと言われています。

アライさんポイント

不健康な体型や食生活に見えても、本人は食べようと精一杯努力している場合があります。打ち明けた時に、励ましやアドバイスをせず、「話してくれてありがとう」「何か気にかけた方がいいことがあったら教えてね」などと言ってくれたことに安心したという声もあります。

第2問

サトウさんは、高校の頃よりは食べられるようになったけど、今でも「痩せていないと自分には価値がない」と思って、カロリーをいつも気にしたり、無理な運動がやめられなかったりするんだって。「早く普通に戻りたくて、治そうとがんばっているけどうまくいかない…」って話してくれた。「がんばる」っていうこと、応援してもいいんだろうか。拒食症って意志の力でどうにかなるのかな?

拒食症は、

あと5問
  • A意志を強く持てば抜け出せる
  • B自分の意志では抜け出せない

拒食の症状(食べ方や体型へのとらわれ)は、自分の意志や理性の力で変えることはできません。それが「好きでダイエットしている」状態との違いです。

食べないことや痩せることには、その人がもともと抱えている心の苦しみを一時的に和らげてくれるような、ある種の「安心感」があるといわれています。たとえば、自分では解決できないような苦しいことに囲まれて、無力感のなかで生きてきた人にとっては、体重や体型を「自分でコントロールできた」という「達成感」があると、それが心の支えになって、自分の存在価値を感じられるという場合があります。「やめたいのにやめられない」「症状が本人にとってある種の支えになっている」ということから、摂食障害をアディクション(依存症)の一種と捉える考え方もあります。

アライさんポイント

病状になかなか変化がないと、周囲の人はつい「甘えている」「意志が弱い」と思ってしまいがちですが、摂食障害は年単位の経過をたどることもあります。焦らずに、人や時間を味方にしていくことが、回復・成長のためには大切だと言われています。

第3問

1か月後。サトウさんが、友だちを紹介してくれた。摂食障害の当事者の集まりで仲良くなったスズキさん。36歳の女性で、職業はコンサルタント。最初は拒食で、そのあと「過食嘔吐」になったらしい。仕事の後、3時間かけて5人前くらいの量を食べて、トイレで吐く…の繰り返しなんだって。スズキさんは明るくてしっかりした仕事のできる人っていう雰囲気。体型も普通だし、摂食障害で悩んでいるようには見えないけど…。

摂食障害の人は、

あと4問
  • A体型や雰囲気で分かる
  • B体型や雰囲気だけでは分からない

「過食」は、空腹と関係なく、食べずにいられない強い衝動が起きる状態です。太ることへの恐怖で嘔吐をする「過食嘔吐」に移行したり、下剤の乱用や無理な運動をしたりすることもあります。体へのダメージや過食の費用での困窮などがありますが、これらの症状も意志の力ではやめられません。

過食(嘔吐)の人は、一見元気そうで、体型や雰囲気だけでは分からないこともあります。しかし、拒食の人と同様、症状の背後には、様々な生きづらさや葛藤があります。自分の悩みを過小評価して、「こんなことぐらい…」と言う人もいます。一方で、いじめ・虐待・性被害などの経験がある人もいます。過食にも心の苦しみを和らげる安心感があり、「過食や拒食は、傷ついた心への支えであり、それがあったから生きてこられた」と振り返る経験者もいます。

アライさんポイント

外見のイメージだけで「元気そう」「大丈夫」と決めつけないことが大事です。また、症状はその人の一部にすぎないので、病気という側面ばかりに注目しないで付き合うことも大切です。

第4問

サトウさんたち2人が、当事者グループの雰囲気を話してくれた。10代から60代まで、いろんな年代の人がいるらしい。男性もいて、若い人だけじゃなく、なかには40~50代の男性もいるんだって。摂食障害って若い女性の病気じゃないの?

あと3問
  • A男性や中高年の人は摂食障害にならない
  • B男性や中高年の人も摂食障害になる

摂食障害は、男女・年代を問わず、誰でもかかりうるものです。最近は、女性でも40代以上の人や、「男だから」と誰にも言えなかった男性が治療や相談の場に訪れることが増えています。

そうした人の中には、拒食も嘔吐もなく、「過食だけ」というタイプの人もめずらしくはありません。単純に食べるのが好きな人との違いは、お腹がすくから食べているのではなく、不安や苦しさや虚しい気持ちを紛らわすために食べているという点です。過食だけの人の中には、体型をからかわれることに内心とても傷ついているけれど、そのことを言えずに気にしてないふうに振る舞ってきたという人もいます。医療にかかっても、メタボリックシンドロームとの診断のもとで治療が進んでしまい、摂食障害と気づいてもらえないケースもあります。

※メタボリックシンドロームは「肥満」と同義ではなく、血圧・血糖・血中脂質の状態も含んだ言葉です。

アライさんポイント

摂食障害の人に限ったことではありませんが、体型や容姿をからかうと人を深く傷つけてしまうことがあります。「自分に対して言われているのでなくても、そういう話を聞くとつらくなる」という経験者の声もあります。

第5問

夏休み明け。しばらく会っていなかったサトウさん(拒食症の友だち)とお茶をした。以前よりもなんだかふっくらして、いわゆる標準的な体型に見えた。もしかして拒食症が治ったのかな?摂食障害の回復ってどういうことなんだろう?

回復は、

あと2問
  • A食べ方や体型が元通りになること
  • B食べ方や体型が元通りになることだけではない

食べ方や体型が落ち着くことは回復のひとつの目安といえます。しかし一方で、症状が落ち着いてくると、背景にあった心の苦しみや問題に直面する場合も多くあります。そうした時に、症状がぶり返したり、他の依存症や強迫行動が出てきたりすることもあります。

もしも摂食障害になる以前の生き方が苦しいものだったなら、「新しい生き方を見つけること」が回復や成長といえるかもしれません。経験者のなかには、「症状はSOSだった、それに気付けたことで前より生きやすくなった」「症状はまだ少しあるけど、自分を責めなくなった」と言う人もいます。摂食障害は、「こうならなければ回復ではない」というものではなく、一人ひとりが試行錯誤の中で「自分にとって」の回復や成長を見つけていくことが大切だと言われています。

アライさんポイント

拒食症の回復期には、体重が増えたことで以前よりつらい気持ちになったり、過食に移行したりすることもめずらしくありません。周囲の人は、体重が増えるとよかったと思いがちですが、「表面的な症状の変化だけに注目せず、いつも変わらない接し方をしてくれると嬉しい」という経験者の声もあります。

第6問

久しぶりに地元に帰ったら、近所のコンビニで幼馴染のタナカさんを見かけた。何年ぶりだろう! でもなんだか様子がおかしい。ものすごく痩せていて、ふらふらして今にも倒れそう。サトウさんのことが頭に浮かんだ。もし拒食症だったら、体型のことを指摘すると傷つけるかな、でもどうしよう…。

あと1問
  • A痩せていることに触れて、「私は心配だよ」と伝える
  • B体型に触れずに「久しぶり、どうしてた?」と声をかける
  • CA・Bのどちらとも言い切れない

拒食や重度の過食嘔吐では、低栄養による命の危機があり、入院治療が必要な場合もあります。しかしなかには、病気の自覚がなかったり、体重増加や病院への抵抗感から治療を拒否したりしてしまう人もいます。そうした場合、本人の命を守るために、家族など身近な人と援助職が連携しながら対応を考えていくことがあります。

友人として出来ることは少ないかもしれませんが、Aのように心配な気持ちを率直に伝えることも、Bのように病気に関係なく話せる友人でいることも、どちらも間違いではありません。関係やタイミングで言葉の受け取り方も変わります。時には踏み込んだことを伝えたり、逆に距離をとったりすることもあるかもしれません。対応方法の正解を探すのではなく、「自分が何をしたいか・できるのか」を軸にして考えてみることがおすすめです。

アライさんポイント

深刻な状況に一人で対応しようと無理をすると、心配のあまり気持ちや考えを押しつけてしまったり、自分の心身の調子を崩してしまったりすることもあります。関わる人自身が一人で抱えずに助けを求め、相談できる場を持つことが大切です。