今週はインタビュー特集です。“ジョー・バイデン大統領”の就任後、アメリカはどう変わるのか。各分野の専門家インタビューの抜粋を1週間にわたってご紹介します。今回は超党派政策センターのマシュー・ワイル氏へのインタビューです。

While Abraham Lincoln's cabinet has been characterized as a "team of rivals," John F. Kennedy's advisors have been called the "best and the brightest."
和文
エイブラハム・リンカーンの大統領顧問団は「政敵のチーム」と特徴づけられているのに対し、ジョン・F・ケネディの閣僚や大統領補佐官たちは「最良にして最も聡明な人々」と呼ばれています。
解説
スタジオにいるアンカーがインタビューにつなぐ導入を述べています。
cabinetは、日本なら「内閣、閣僚」で、アメリカでは副大統領と15人の省の長官で構成される「大統領顧問団」を指します。このセンテンスでは、過去のアメリカ大統領2人の政権の特徴が紹介されています。Abraham Lincoln(エイブラハム・リンカーン)は、奴隷解放の父として知られる第16代アメリカ合衆国大統領です。John F. Kennedy(ジョン・F・ケネディ)は、第35代アメリカ合衆国大統領で、1963年に暗殺されました。
"Team of Rivals"は、ピューリッツァー賞作家である歴史家Doris Kearns Goodwinが出版した書籍の名前で、副題は"The Political Genius of Abraham Lincoln"です。政敵を要職につけて取り込むことで南北戦争後のアメリカをまとめたリンカーンの政治手腕と閣僚の人物像を描いた評伝です。
characterizeは「特徴づける」で、ここでは受動態で用いられています。
advisorは、adviserとも綴ります。「助言者、顧問」などの意味があり、ここでは大統領補佐官などの顧問団を指しています。
"The Best and the Brightest"は、ニューヨーク・タイムズの記者だったDavid Halberstamによって1972年に出版されました。1960年代のケネディ政権と後継のジョンソン政権で安全保障政策を担当したマクナマラ国防長官をはじめとする大統領補佐官たちが、「最良の、最も聡明な(はずの)人々」でありながら、いかにして政策を誤り、アメリカをベトナム戦争に導いたかを描いています。
Political scientists are already trying to gauge how these appointees might shape Biden's presidency. One of them is Matthew Weil who leads the Elections Project at the Bipartisan Policy Center. NHK World's Catherine Kobayashi spoke with him earlier.
和文
政治学者たちはすでに、これら(発表された)被任命者が、バイデン氏の大統領職をどのように方向づけることになるか読み取ろうとしています。その中の1人が、超党派政策センターで選挙プロジェクトを率いるマシュー・ワイルさんです。NHK WORLDのキャサリン小林が先ほど、ワイルさんに話を聞きました。
解説
appointeeは「被任命者、任命された人」で、ここでは複数形のappointeesになっています。このインタビューの前に、ジョー・バイデン次期大統領が外交・安全保障を担う閣僚人事を発表したというニュースを取り上げていたので、それを受けてthese appointeesと言っています。
ここでのgaugeは「読み取る、判断する」という意味です。
ここでのshapeは「(状態・将来などを)方向づける、決定づける、形作る、まとめる」という動詞です。
2文目のthemは、直前に出てきたpolitical scientists「政治学者」を指しています。
ここでのleadは「率いる、指揮をとる」です。
the Bipartisan Policy Centerは、アメリカのシンクタンクです。ここでのbipartisanは、民主党と共和党の2大政党による「超党派」です。


(Catherine Kobayashi)
"Mr. Weil, what beliefs do you think the people standing behind the president-elect share about America's role in the world?"
和文
「ワイルさん、次期大統領を支える人たちは、世界でのアメリカの役割について、どのような信念を共有しているとお考えですか」
解説
インタビュアーを務めたNHK WORLDのキャサリン小林氏の質問です。
ここでのstand behindは「支援する、後押しする」という意味で、the people standing behindは、新政権発足に向けて任命された人たちを指しています。
the president-electは、バイデン氏を指しています。ここでのelectは「(まだ就任していないが)当選した」で、president-electは「次期大統領」です。
ここでのshareは、信念や意見を「共有する、分かち合う」です。


(Matthew Weil / Bipartisan Policy Center Elections Project Director)
"I think what we're seeing from the president-elect is that he is picking people to represent him in government who have a feeling that America is part of a global community. This is not a 'go at it alone' administration. This is not 'America first.'"
和文
「私たちが次期大統領を見ていて分かるのは、バイデン氏が政府で大統領を代弁する人物に、アメリカが国際社会の一員だという感覚を持っている人たちを選んでいるということだと思います。『(アメリカだけ)単独で取り組む』政権ではありません。『アメリカ第一』ではないのです」
解説
ここからは、マシュー・ワイル氏の言葉です。
pick A to ...は「~するためにAを選ぶ、選択する」です。
representには「象徴する、表す、代理をする」などの意味があり、ここではバイデン氏の「考えを代弁する」といった意味です。
global communityは「国際社会、地球規模の共同体」です。
ここでのgo at ...は「~に取り組む、取りかかる」で、go at it aloneは「単独で取り組む」です。
"I think the president-elect really wants to show the world – to show all Americans – that we can do good things in this world. And there are a lot of challenges, but we need to remain part of the big global community, not just doing it all on our own."
和文
「次期大統領が世界に、全てのアメリカ人に、本当に示したいのは、私たち(アメリカ)はこの世界で良いことができる、そして多くの課題はあるけれど、私たちは大きな国際社会の一員であり続ける必要があり、全てを私たちだけでするのではないということだと思います」
解説
weは、アメリカ人を指しています。
名詞challengeは「課題、難問」です。
remain ...は「~のままである、相変わらず~である」で、remain part of ...は「~の一部、一員であり続ける」です。
on one's ownは「自分で、単独で、独力で」という表現です。


(Catherine Kobayashi)
"And was there an appointment and nominee that stood out to you?"
和文
「では、ワイルさんから見て、際立った役職と被任命者はいましたか」
解説
キャサリン小林氏の質問です。
文頭のandは、別の質問の導入として使われています。
ここでのnomineeは「任命された人、被任命者」です。動詞形はnominateで、大統領が「任命する」というほかにも、「指名する、(賞に)推薦する」などの意味でも使えます。
stand outは「目立つ、際立つ」です。


(Matthew Weil / Bipartisan Policy Center Elections Project Director)
"I think one kind of key indication that we saw from the president-elect is that he's going to elevate our UN ambassador to the rank of cabinet."
和文
「次期大統領から分かった一種の重要な兆候は、バイデン氏が国連大使を大統領顧問団レベルに引き上げるだろうことだと思います」
解説
マシュー・ワイル氏の言葉です。
ここでのindicationは「(あることの)しるし、表れ、兆候」です。
UNは、United Nations「国連」の略称で、our UN ambassador「私たちの国連大使」は、ここではアメリカの国連大使のことです。
rank of cabinetは「大統領顧問団レベル」です。elevateには「高める、引き上げる」という意味があり、elevate A to the rank of ...は「Aを~レベルに引き上げる」です。
"And what that means functionally is that the UN ambassador will be in the room for all of the major decisions. America wants to regain that status as one of the leaders of the democratic world."
和文
「そして、それが機能的に意味するのは、国連大使が全ての重要な決定の場にいるようになることです。アメリカは、民主的な世界の指導者の1人としての地位を取り戻したいのです」
解説
what that means functionallyのthatは、前のセンテンスに出てきた「国連大使を大統領顧問団レベルに引き上げること」を指しています。そのことが、functionally「機能上、機能的に」意味していることとは何かが、ここで説明されています。
the room for all of the major decisionsは「全ての重要な決定がなされる場」のことで、ここでは大統領顧問団でないと参加できない会議を指しています。政府関連(あるいはビジネス)の話題の場合、the roomはdecision-making room「意思決定の場、政策決定の場」、重要な会議が行われ物事が決定される「会議室」を指しており、通常の「部屋」とは異なる意味を持ちます。
ここでのregainは「取り戻す、復帰する」という意味です。
status as ...は「~としての地位」です。


(Catherine Kobayashi)
"Thank you for being with us."
和文
「ご出演いただき、ありがとうございました」
解説
キャサリン小林氏の言葉です。
be with usは「私たちと一緒にいる」ですが、ここでは番組に出演してくれたことに対し感謝を述べています。


(Matthew Weil / Bipartisan Policy Center Elections Project Director)
"Thank you for having me."
和文
「お招きいただき、ありがとうございました」
解説
マシュー・ワイル氏の言葉です。
ここでのhaveは「迎える、招く」という意味です。招かれた側が言う、お礼の常とう句です。
エイブラハム・リンカーン政権の行政府の特徴は「政敵同士のチーム」と言われ、ジョン・F・ケネディ政権の閣僚や大統領補佐官たちは「最良にして最も聡明な」人たちと呼ばれました。そして政治学者たちはすでに、(バイデン次期大統領によって政権メンバーに)指名されたこれらの人々がバイデン政権をどのような形のものにするのかを推し量ろうとしています。その1人が、超党派政策センターで選挙プロジェクトを率いるマシュー・ワイル氏です。NHK WORLDのキャサリン小林がワイル氏に話を聞きました。

キャサリン小林:
ワイルさん、(ジョー・バイデン)次期大統領を支える人々は、世界の中でのアメリカの役割について、どのように考えていると思われますか。

マシュー・ワイル:
私たちが次期大統領を見て感じているのは、彼が(政権メンバーとして)選んでいるのは、自分の考えを政府の中で実行してくれる人物、アメリカが国際社会の一員だという感覚を持っている人だということです。この政権は「(アメリカ)単独で取り組む」政権ではありません。「アメリカ第一」ではないのです。私は、次期大統領は世界に対して、そして全てのアメリカ国民に対して、アメリカがこの世界にとって有益なことができるのだということを何としても示したいと考えているのだと思います。たくさんの課題はありますが、私たちに必要なのは大きな国際社会の一員であり続けることで、自分たちだけで何もかもやることではないということです。

キャサリン小林:
それではワイルさんにとって、これと思う役職に任命された人はいましたか。

マシュー・ワイル:
次期大統領(の人事)を見て、重要な鍵になると思うのは、国連大使の地位を閣僚級に引き上げようとしていることです。それが政府の中でどういう意味を持つかというと、政権として重要な決定をする場には必ず国連大使が参加している。つまりアメリカは、民主的な世界のリーダーの一員という地位を取り戻そうとしているということです。

キャサリン小林:
ご出演いただき、ありがとうございました。

マシュー・ワイル:
お招きいただき、ありがとうございました。