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“灯を絶やさない” バーチャルイベント「エアコミケ」

“灯を絶やさない” バーチャルイベント「エアコミケ」

2020年5月8日

新型コロナウイルスの影響で開催中止となった「コミックマーケット(コミケ)」。先日、インターネット上でイベントを楽しめる「エアコミケ」が開催され、大きな話題となりました。
コミケは、漫画・アニメ・ゲーム文化のファンが集まる日本最大級のイベントです。「同人誌」と呼ばれる個人の製作する漫画やコスプレなどの表現の場として、これまで年に2回の頻度で開催されてきました。

しかし、今年は新型コロナウイルスの影響で中止が決定。表現の場が失われただけでなく、イベントを支える関連企業にも影響は派生し、同人誌を印刷する会社などが厳しい経営状況に陥りました。

そうした中、同人文化の灯を絶やさないようにと企画されたのが、「エアコミケ」です。


参加方法は、ツイッターなどのSNSに「#エアコミケ」をつけて投稿するだけ。もともと開催を予定していた5月2日~5日に、ネット上で同人誌の新刊情報や現在の活動状況などを共有し合い、バーチャルなイベントとして一緒に楽しみます。

以前より、コミケに参加できないファンによる自然発生的な呼びかけで行われてきた「エアコミケ」を、コミケの運営団体も公式なイベントの名称として使用することになりました。

(同人誌の新刊情報を告知する参加者の投稿。「#エアコミケ」関連のツイートやリツイートをした人は、延べ40万人以上におよんだ)

(コミケ名物のコスプレも各自が写真を披露。注目が集まった)

さらに、予定通りに同人誌を制作し、ネット通販などで販売。多くの参加者が作品を発表しただけでなく、窮地に陥っていた印刷会社などにも仕事を回していきました。

30年近く前から同人誌の印刷をしてきた岡田一さんに話を聞きました。「エアコミケ」のおかげで、経営的に助けられたといいます。

印刷会社栄光(広島県福山市)社長 岡田一さん
「印刷物自体がもうかなり減っております。それに追っかけるように同人誌イベントも中止が相次ぎまして、最後のとどめはコミケも中止ということで、絶望的な気持ちになっておりました。今後もイベントが開催される予定がない中でしたので、印刷物がもう動かないという状況が生まれていました。そういう中で、イベントはなくても本を発行しようという動きが出たのが大変ありがたい。もちろん実際のリアルイベントに比べると動きは少ないですけども、途絶えることなく注文は日々入ってきております。仕事が途絶えることなく、何とか生き延びていけるような実感があります。」

コミケは、有志のボランティアによる「コミックマーケット準備会」が運営しています。あくまで非営利団体のため、それまでにかかった準備費用などが大きな負担となっていました。
そこで、コミックマーケット準備会は、すでに製本を進めていた入場券代わりのカタログを、記念グッズとして発売することに。「エアコミケ」の参加者に買ってもらえれば、コミケ継続のための費用にあてることができます。

(入場券代わりのカタログ。書店やネットショップなどで販売され、多くの人が購入。出展予定だった作品情報などが載っており、「エアコミケ」を楽しむためにも使用された)

もともとは漫画の評論サークルの呼びかけからはじまり、同じ趣味をもつ人たちの交流の場、文化発信の拠点として発展してきたコミケ。初回から45年目となる今年、新型コロナウイルスの影響で予定通り実施することはできませんでしたが、今までにない形のイベントが実現し、大きな反響を呼びました。

コミックマーケット準備会の共同代表の二人に話を聞きました。

コミックマーケット準備会 共同代表 筆谷芳行さん
「場としてのコミケを中止する決断をしたのは、今でも、あのときの時間はつらかったなというのを思い起こします。ただ、参加する予定だった人たちからは、『次をお願いいたします』『絶対なくさないでください』『続けてください』という好意的な言葉がたくさんあったので、それは我々にも元気を与えてくれる、背中を押してくれるメッセージでした。コミケはみんなでつくっていく場なので、次に向けて頑張っていくしかないなと。なくしてしまった大きさというのを改めて受けとめて、そして、もう1度またちゃんと紡いでいこうという思いを大きく心の中で感じています。」

コミックマーケット準備会 共同代表 市川孝一さん
「我々としては、どんな状態であっても表現を止めてほしくない、同人誌をどんどんつくっていってほしいというのがあります。一緒に盛り上がっていくことの中で、ペンを握ってもらえる、新しい絵が生まれて、ストーリーが生まれて、同人誌が生まれる。それがやはり一番大きいのかな。ですので、今回、何かしらやらないかとなったときに、同人誌の灯を消さないということが一番大事だと思っていて。今回このエアコミケを立ち上げることによって、あきらめて下を向かないように、上を向いてもらうために、まず、やりましょうと。エアコミケをやって、この場が開催される日が“ハレの日”になるということが一番大事だと思います。“ハレの日”という言葉は“ケの日”の逆で、みんなの心が晴れる日です。今回のコロナで落ち込んでいるこの状態を、5月2日から5日の間で晴れてくれるといいなというのが我々の願いでもあります。」

(取材「クローズアップ現代+」ディレクター 大嶋智博 菊地啓)

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