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【性暴力を考えるvol.21】北原みのりさんに聞く! フラワーデモのいま

【性暴力を考えるvol.21】北原みのりさんに聞く! フラワーデモのいま

2019年10月11日
  • 性暴力

“もう変えられない過去を話すことで 未来を変えたい”

福岡会場のようす(5月)

ことし3月、性暴力加害者に対する無罪判決が相次ぐ中、娘への性的暴行の罪に問われた父親に無罪判決が出されました。私は父親が娘をレイプしても無罪判決が出たことに動揺しました。気持ちがすり減るような感覚の中、「どうしたらいいんだろう?とりあえず集まろう!」という気持ちだったんです。当時は『フラワーデモ』って名前もつけていませんでした。だけど4月11日、開催場所の東京駅に行くと30分前から何人か並んでいらっしゃって。ある方に、どこから来たのか尋ねたら、「今日このために岡山から新幹線に乗ってきました」と。『“こんな社会は嫌だ”という思いを集めて伝えたい』という人たちの本気が、あの晩、集まったのだと思っています。

予定していた方のスピーチを終えたとき、「私も話したい」と次々に手をあげる方がでてきて、ひとりひとりマイクを持って、ご自身の被害の体験を語りはじめました。「誰にも話したことがないことを話すのはやっぱり怖い。だけど、“なかったこと”になる社会のほうが嫌だ」と話してくれました。その場にいた みんなも、私も、気持ちを解放して、「“もう変えられない過去”を話すことによって、未来を変えたい」という思いを共有できる時間になりました。とてもあたたかい、優しい空気になったことが、印象に残っています。

大阪会場でスピーチする北原さん(5月)

みんなの声から浮かび上がる“社会”

これまで性暴力被害は、人前で語っちゃいけない、語れないことと思われていたように感じるし、語るとトラウマがよみがえることもあるから つらいことなんだと、多くの人が考えていたと思う。私自身も「無理して語らなくていいから!」と思っていたんです。

だけど、デモで皆さんの声を聞いているうちに、社会が“語らせない圧力”を作っていたのではないか?性暴力被害を語るということを大それたことのように捉えていたのではないか?と思うようになりました。今、皆さんが語らずにいられない気持ちになっているのは、これまでの性暴力被害に対する社会の側の捉え方や視点そのものが、もしかしたら間違っているのかもしれないと。

それから、女性の中には、「私はそこまでの性暴力に遭ったことがないんですけど…」とおっしゃる方が多いんです。でも、なにもボコボコに殴られて、レイプされてしまうものだけが“性暴力”ではなくて、通りすがりに男の人に胸を触られるとか、そういうことも同じく“性暴力”なんです。フラワーデモでは、「圧倒的に不利な状況で自分の意思とは違うことをされている時点で、“性暴力”だって言っていいんだと気づいた」と話をされた方もいます。完全に無傷な状態で生きてきた女性なんていないんじゃないか…そういう現実にも気づかせてくれるのが、フラワーデモであげられる声だと思うんですよね。

被害者の皆さんが声をあげ始める中、必要なのは、「あなたの話を聞かせてください」という、社会の側の聞く姿勢なのではないでしょうか。“みんなが体験していることを、安全に語れる場を作る”ということが社会の役割だと考えています。フラワーデモは、「安全に語れる場」であると同時に、「デモ」。私たち被害者の存在を知ってほしいという気持ちをアピールする場でもあるんです。参加される方々には、「ここは、私たちの声を聞いてくださいという場、自分たちの存在を明らかにする場。ただし、被害経験を話す・話さないはあなたの自由です」ということをお伝えするようにしています。


迷子になっている人を“つなげたい”

毎月、各地域でフラワーデモが開かれていますが、それぞれの主催者には、性暴力問題に関心の高い弁護士やカウンセラーなどの専門職の方を積極的に呼んでほしいとお伝えしています。相談窓口などが充実していない地方では、ひとりで抱え込んで迷子になっている被害者が少なくないので、適切な支援につながる可能性を広げたいんです。名古屋では、弁護士の方が法律家として性暴力問題に対する怒りをスピーチしてくださいました。そういう弁護士の先生が近くにいるということを知ることは、被害者にとっては本当に希望になると感じています。自分が信頼できる弁護士や、信頼できるカウンセラーや、プロフェッショナル集団に守られていると実感できることが とても大事なんです。

SNSの存在も非常に大切です。デモを繰り返しているうちに、#フラワーデモ自宅組というハッシュタグが生まれました。地方の、閉鎖的な土地に住んでいたり、いまはまだ外に出るのが つらくて参加できなかったりしても、みんなとつながっていることを感じられるし、自分の地域でフラワーデモが開催されることを、たとえそれが10人規模や20人規模であっても、知ることができますよね。

最近、「北陸ではデモが1回も開かれていない」と言われていたのですが、「富山でやりたい」という方がSNSで連絡をくださって、とてもうれしかったです。(11月からの開催を目指して準備中。)フラワーデモが生まれた場所でもないところでゼロからつくるって本当に大変なことだと思うんですけど、「それでも、富山でやることで勇気づけられる人がいることを分かっているから やりたいんです」っておっしゃって。すぐには現実を変えられないけど、少しずつじわじわとみんながつながって、社会を変えていける感じがする。それはSNSの本当に強い効果だと思いますね。

東京会場のようす(5月)

被害者だけでなく 誰もが “当事者”

なぜか日本では、「わたしは当事者性が薄いからよく分からない」という言い方をする人が多いと思うんですが、性暴力問題に“当事者”という言葉を持ち込むことは危険だと考えています。被害者と加害者の間だけの問題ということではなくて、性暴力は社会全員が“当事者”なんです。

被害者が被害を打ち明けるのは、かわいそうな人だと思われたいからではないんです。性暴力が現実にあったということを信じてくださいと願っている。そして、自分が苦しんでいるのに、加害者が普通に笑って暮らし続けていることの不条理さを知ってほしいと訴えている。さらに、同じような被害が二度と起きないために、社会にできることはなんですか?と問いかけるために話していると思うんです。同情されたいわけではない。

だから性暴力を受けた人の語りを聞く側の人たちも、同じ社会を構成している一員という意味で“当事者”です。 “自分ごと”としてちゃんと聞いてほしいと思っています。


“痛みの声”から社会を変えたい

当初、フラワーデモが毎月続くものになるとは思っていなかったんです。でも今は「1年間はやめられない」という気持ちで続けています。来年3月11日をひとつの区切りと考えています。そこからどうするかまでは、実は考えていなくて・・・。でも、各地で生まれ始めたネットワークを生かして、そこで刑法改正(注・刑法の要件が厳しすぎるため 性暴力の加害者が罪を免れているとして、被害者などで作る団体が中心になって刑法改正を呼びかけている)を目指してどんな動きを作っていけるのか、勉強会を開くとか、それよりも以前に、職場の性暴力やセクハラなど、自分の隣にいる人たちが直面している問題にどう向き合うのかとか、いろんな議論を積み重ね、深めていく時間を作りたいと思っています。

もともと、フラワーデモは大きな戦略とか展望があって始めた運動ではありません。これは、“痛みの声”が、“痛みの声”を呼んで、どんどん人々の心のふたが開いていく…そんな運動だと思うんです。それがどういう結果につながるか、こればかりは分かりません。でも、「社会を変えたい」という思いが集まって、ここまで広がっていると思うので、みんなが安心できる社会に変えることができたら、と考えています。

(聞き手:クロ現+ディレクター 飛田陽子・村山かおる)

北原 みのり さん
フェミニスト・作家。著書に
「メロスのようには走らない」「奥様は愛国」など。フラワーデモ呼びかけ人の一人。


NHK「クローズアップ現代+」では、性暴力の問題を継続的に取り上げ、ホームページ「みんなでプラス」で 取材経緯やさまざまな情報を発信しながら、皆さんと一緒に考えています。あなたの気持ち、意見などをお寄せください。

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