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【性暴力を考えるvol.4】もっと話したかったこと 宮田桂子さん

【性暴力を考えるvol.4】もっと話したかったこと 宮田桂子さん

2019年6月21日
  • 性暴力

連休明けに番組スタッフ女性4人の取材を受けた。後日、番組出演の打診があり、お断りしたかったが、「女性であるあなたの説明だから納得できた」という言葉に心が動いた。男性が改正反対意見を言えば「男性だから・・・」と言われかねない。


暴行脅迫や抗拒不能要件を無くし、「同意なき性交」を処罰要件とする運動が起きている。そう変えても、被害者が「同意がなかった」と言うだけでは済まない。検察官は「誰が見ても同意のない状況」を主張・立証する必要があり、加害者が争えば被害者への尋問がされるし、裏付証拠が必ずいる。その点の被害者の負担は減らないし、検察官の力量で有罪・無罪が左右されかねない。また、海外の同意なき性交罪の刑は軽い。例えば、ドイツは自由刑6月以上5年以下。刑法改正で、我が国の強制性交罪・準強制性交罪は懲役5年以上20年以下。「刑は重く、要件は広く」は不合理だ。

私は刑法改正に反対した。「性犯罪は魂の殺人」だが、命が失われた殺人罪が懲役5年以上、傷害致死罪は懲役3年以上だ。裁判官は、無罪を出すのは勇気がいるので、本当は無罪だと思っても執行猶予※1 や勾留期間を全算入した短期刑※2 という妥協的有罪判決を出すことがあるが、今、強制性交罪・準強制性交罪ではそれができない※3。

刑事裁判では救われない被害者は多い。被害者の治療費、働けないときの生活費等の補償、安全で快適な避難場所の確保など、被害者全員に係わる支援を充実させるべきだ。刑事裁判の関係では、被害者への対応にスキルがある捜査官を増やす必要があるし、裁判官は、一般的な男性の認識がどの程度か考えて同意の有無を判断するのだから、国民全体の意識を変えなければ同意のハードルは下がらない。それを変えるための教育や報道こそが大切だ。

さらに、性犯罪加害者は、家族に見離され、被害者の反対で仮釈放されず※4、出所後に入れる施設もなく※5、再就職も極めて困難だ。支援や行き場のない彼らは、たとえ性犯罪を繰り返さなくても、貧困や孤立で追い詰められる。加害者の更生を考えることは、加害者のためであるだけでなく、犯罪防止にも重要ということが国民の共通理解になって欲しい。

なお、番組後、山本さんからメールを頂戴し、その後、メール交換した。
勇気をもって発言し、異なる考えを尊重する彼女に心からエールを送りたい。
山本さん、私も私の意見を臆さず言いますから!

※1 執行猶予付判決は、懲役3年以下を言い渡すときにできる
※2 判決まで勾留されている場合、その期間を刑務所に行かさないことができる
※3 犯行の動機等に情状酌量の余地があれば懲役5年を半分にできる。殺人ならそういう事件があり得るが、強制性交・準強制性交は酌量の余地がない
※4 仮釈放を決めるときには必ず被害者の意見聴取をする。仮釈放期間には、保護観察官や保護司の指導を受けるが、満期出所だと誰の指導も受けない
※5 刑務所出所後に行き場のない人のための更生保護施設の多くが、近隣住民と性犯罪者を受け入れない約束をしている

(このコメントは番組放送後、2019年5月30日に頂きました)


宮田 桂子さん
弁護士。1961年生まれ。駒沢大学法科大学院特任教授。2015~2016年、法制審刑事法部会(性犯罪関係)委員をつとめた。


番組では、性暴力に関する情報をまとめ、皆さんと一緒に考えていく場を設けました。
取材班もコメントし、継続的に取材経過を発信していきます。
あなたの気持ち、意見など、コメントをお寄せください。

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