
現場から見えてきた“AI時代の仕事術”とは?
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リポーターの栗原です。2030年には、労働人口の49パーセントが、AIなどに代替できる。シンクタンクが公表した衝撃のデータ、世界中で「人間の仕事がAIに奪われてしまう」という危機感が広がっています。今回私たちは、AIが導入された仕事の現場を取材し、AI時代の仕事術を探りました。メディア業界でも、AIの導入が進み、AIアナウンサーなるものまで出現した今、他人事ではないという危機感をもって取材に当たりました。

AIの実力と人間の仕事との違い
取材した現場は、大阪市中心部で30年間不動産業を営む難波啓祐さん。加盟する宅建協会の方針で、今年1月、AI価格査定のシステムを導入しました。不動産の価格査定は、不動産業者にとって、「本丸」の仕事。AIシステムを使えばたったの1分で価格がはじき出されます。難波さんたちの危機感は強まりました。難波さんが考える人間しかできない仕事とは「顧客のニーズに合わせた提案力」だといいます。今回中古マンションの売買事例を教えてもらうと、人間にしかできない仕事のヒントが詰まっていました。長年売り手のつかなかった中古マンション。そのまま売却するのではなく、壁や家具などをすべて解体した上で、買い手が自由にデザインできる「DIYリフォーム用住宅」として、売るように提案しました。取材の中で、難波さんは「不動産の周辺にある情報を知り尽くし、自分ならではの提案をする“ならでは仕事”を増やすことがAIに勝つための仕事の仕方だと思う」と話していました。難波さんの価格査定の中身をみていくと、その価格の中に、「値切られるかもしれない”値切られシロ”」を設定したり、買い手にプレゼンするために、現地の写真をくまなく撮影した資料など、こまかい作業一つ一つに人を意識した仕事をしていました。「人を意識して仕事をする」。この点は、AIにできない部分なのではと感じました。

AIなどの導入で進む“ワークシフト”
AIの導入で、より本質的な仕事をし始めた人もいます。大手ホテル運営会社星野リゾートの久下晴花さん。東京都内に新たに作られたホテルで勤務しています。もともと人によるおもてなしのサービスを売りにしてきたグループですが、ここでは、自動化などが進んでいます。久下さんはもともとは、別のホテルでフロントなど、業務は基本ホテル内、接客を中心に行ってきました。しかし、自動化が進んだ今のホテルでは始まったのは、ホテルマンによる「観光ガイド」です。久下さんたちは、今、ホテル周辺の地域にあるガイドブックに載っていない魅力を収集したり、地元の地ビール店とコラボしたイベントの企画など、一見するとホテルマンというより企画スタッフのような仕事に変わっていました。取材を進めると、久下さんたちは、ある意味で、ホテル業ではなく、観光業というより範疇の大きなサービス業の仕事へとシフトしているのだと感じます。久下さんたちは「AIや自動化が進んでいることで、自分の仕事がなんなのか悩みました。観光ガイドは、進化版ホテルマン。地域の魅力を掘り起こして、お客さんの笑顔を直接みられることは大きなやりがいにつながっている」と話していました。仕事がAIやロボットに変わったとき、より人の満足度を高めるサービスが何かを問われるようになりました。その結果、観光ガイドを始める。AIやロボット化により、ワークシフトが進んでいたのです。
AIと触れることで逆に人間しかできない仕事がわかる
私たちの社会の中に、すでにAIやロボットは浸透してきています。
そのスピードや効率性、精度に触れた人々は、まず強烈な危機感を感じたといいますが、逆に人間しかできない仕事を見いだしていました。49パーセントがAIなどに置き換わるという時代はもう目前かもしれません。AIに触れて、私たちの仕事の仕方を見直し、今よりもっと人間らしい仕事をしていきたいと感じました。