
「親のお金が使えない!?」取材を終えて
- 認知症
- 相続
リポーターの合原明子です。この春から担当となりました。よろしくお願いいたします!今回担当したテーマは、「親のお金が使えない!?」。親が亡くなったり認知症で判断能力が低下した時に、親の口座から必要なお金が引き出せなくなり、困る人が続出。万が一の時に備えてどんな対策をとればよいのか…?多くの人が直面するテーマですが、親が元気なうちは真剣に考えることを先送りにしてしまう話題でもあります。今回、取材を進めて知れば知るほど、これからの暮らしに大きく関わってくる大切な話だということを感じました。
「まさか、自分が当事者になるなんて…」取材した佐野さんの言葉

親のお金をめぐって、兄弟の間でトラブルになったご家族を取材しました。母親が認知症になったあと、母親のお金は、同居していた兄が管理していたという佐野さん(仮名)。信頼する兄だからと安心して任せていたら、不正な引出しが発覚。これ以上兄に任せられないと、「成年後見制度」を利用します。後見人には弁護士が選ばれ、それ以降、兄が母親の口座から勝手にお金を引き出すこともなくなり、ひとまず安心した、という心情を伺いました。ただ、意外だったのが、兄は元々お金が好きな人ではなかったということ。母親の財産管理の話になって突然態度が変わり、佐野さんも非常に驚いたそうです。自分が兄弟とトラブルになるなんて想像するだけでも嫌ですが、自分事として考える大切さを感じました。
「家族みんなで、今後も笑って暮らしていくために」―今、考える大切さ
佐野さんは本当に元気で明るい方だったので、にわかには信じられなかったのですが、母親の財産管理について兄とトラブルになった最中は、鬱っぽい症状が出て毎日が辛かったとのこと。トラブルが落ち着いた現在も、近所に住む兄とは、毎日顔は合わせるけれど言葉を交わすことはほとんどないそうです。「家族なのに寂しいよね」とつぶやく佐野さんの表情に、親の財産をめぐる問題というものが持つ影響の大きさを感じました。
そうした中、順調に相続に備えた手続きが進んだご家族も取材しました。父親は「子供がその選択をしてくれて良かった」と話し、娘さんも「親のために本当に良かった」と言い、幸せそうに笑いあう姿が心に残りました。お互いがお互いを思いやって、最善の選択を一緒に探す。それが、家族の幸せにつながるということを実感しました。
専門家に聞く…「財産の棚卸し」注意点は?

さて、スタジオでは、司法書士の杉谷範子さんをお招きし、様々な対策をお聞きしました。私が関心を持ったのは、「親の財産の棚卸し、ペーパーレス化に注意」、というお話。今後、ますます増えていくネット上でのお金の取引。親に“もしも”が起きた時に、ネット上での取引は、書類が残らないため、残された家族は本人がどういった資産を保有していたのか把握するのが難しいそうなんです。杉谷さんからはネットバンク・ネット証券の例が挙がりましたが、その他にも注意すべき点があるということで、さらに取材をしました。

お話を伺ったのは、弁護士の伊勢田篤史さんです。パソコン・スマホ等の電子機器やネット上のデータについて、家族が亡くなったりした後にどう取り扱えばいいのか、その対策の専門家です。伊勢田さんが指摘するのは、近年所有する人が増えている「仮想通貨」。ネットバンクやネット証券と同様に、仮想通貨の取引もまた書面は残りません。形のないデータやアカウントを家族が把握していないと、“もしも”の時にそこにアクセスする手がかりがなくなってしまいます。それでは、どのように対策をすればいいのか?伊勢田さんは、“家族で電子機器のパスワードなどを共有するのが一番の方法だが、セキュリティやプライバシーの問題もある。少なくとも、家族間で利用している金融機関名やサービス名などを日頃から共有しておくことが大切”だと言います。なかなか家族で話しづらいお金の話。しかし、“もしも”が起こるその前に、勇気をもって、できるだけ早く家族で話しあうことが大切だと感じました。