クローズアップ現代

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つながり孤独

つながり孤独

2018年7月13日

「SNSを使って友達もいるのに、どうしようもなく“孤独”…」 いま、若い世代を中心に、こうした“孤独感”に襲われ、学校や職場を辞めたり、引きこもりがちになったりする人たちがいる、ということがわかってきました。 「孤立無縁というわけではないけれど、なんだか“ひとりぼっち”」。 私たちは、この気持ちを“つながり孤独”と名付け、その実態を調べることにしました。

担当ディレクターのひとこと

「つながっているけれど、孤独を感じる」
そんな気持ちになったことがある人、いませんか?

筆者は番組ディレクターの28歳。北海道出身の女性です。
このごろ、仕事帰りの満員電車で、必ずスマホを開いて、友人たちの近況を探ります。
よく見るのは、地元の友人達とつながっているFacebook。
いつも大草原を走り回る飼い犬の写真をアップするAちゃん、のどかでいいなあ…。
あ、Mちゃんの子ども、無事に産まれたんだ…。Yは海外留学か。

狭い電車のなか、座っている人も立っている人も、
スマホに向き合って、どこかの誰かと、メッセージや「いいね」を送り合っているよう。
SNSを手にした私たちは、いとも簡単に誰かとつながることができるようになり、多くの人がその恩恵を受けながら暮らしています。私もそのひとりです。

…でも。この電車の中に私の知り合いは誰も乗っていないし、SNSでつながっている友達も、私のことをすべて知っている訳じゃない…。
そんなことに気付くと、どういうわけか、突然 現実からもSNSからも取り残されたような気持ちになり、誰かに非難された訳でもないのに、「孤独だ」と感じてしまいます。
なぜ、こんな気分になるのでしょうか。

今回、私はこうした疑問から取材を始めました。
すると、若い世代を中心に「SNSを活用し、友達もいるのに、どうしようもない孤独感」を感じたことで、学校や職場を辞めたり、引きこもりがちになったりする人たちもいる、
ということがわかってきました。
実は、イギリスではこの孤独感を「国が対応すべき大きな問題」と捉え、専任の「孤独担当大臣」まで設置して、さまざまな取り組みを行っているんです。

「孤立無縁というわけではないけれど、なんだか孤独」なこの気持ち。
私は“つながり孤独”と名付けてみました。
皆さんはどんなときに“孤独感”を感じますか?
どうして一度“孤独”だと感じると、抜け出せなくなるのでしょうか?
胸の内にある複雑な気持ちや悩み、“つながり孤独”について、聞かせていただけないでしょうか?
(番組ディレクター 飛田陽子)

ご意見続々と届いています

“つながり孤独”について、たくさんの方々からご意見をいただきました。「つながっているけれど、孤独を感じる」…胸の中にある複雑な思い。お寄せいただいた声の一部をご紹介します。

●20代女性
いつの日からかInstagramの投稿につく「いいね!」の数ばかりを気にするようになり、自分の中で決めた最低ラインを超えないと不安になるようになりました。そんな「いいね!」も画面をただタップしているだけで、特に深い意味はないと知っています。しかし、だからこそ孤独というか…。こんなものにとりつかれている自分が情けなくなります。

●20代女性
「寂しい」という感情をごまかすためには、スマホは手放せません。しかし、Twitterなどで関わっている友だちは、現実世界と同じように、どこか一線をひかれているような気になります。SNSでも現実でも、本当の意味では分かり合えないと諦めています。

●20代女性
仕事でつまずき、退職しました。孤独感や無関心、無気力に襲われています。友人に相談しようかと思いますが、孤独感を埋めるためだけに友人を利用して良いものか…と考えてしまい、結局連絡できず。毎日Twitterを眺め、世の中の人はこんなに楽しみがあるのに、自分はなぜこうなってしまったのかと考えてしまいます。

●20代男性
仕事終わり、Twitterをのぞくとふと孤独を感じます。人それぞれの生活、中でも華やかさと言いますか、そういったものを見ると、劣等感に近い感情を抱いてしまいます。こうした感情を自分で拭い去ることはなかなか難しいです。

“つながり孤独”日本だけじゃない

ディレクターの飛田です。
このテーマを取材しながら、気になっていたニュースがありました。それは、イギリス政府が「孤独担当大臣(Minister for Loneliness)」という閣僚を新たに任命し、“孤独対策”に国を挙げて取り組みはじめた、というもの。正直に言うと、孤独対策って国になにができるの?そもそもイギリスでも孤独感は広がっているの?…と疑問が次々と浮かびました。。

そこで、日本と平行してイギリスの状況も取材してみると、SNSでつながっていることで「孤独」を感じているひとが多いことがわかってきました。

「SNSで他の人たちが『楽しい』人生を生きていることを見ると、孤独感を覚えてむなしくなることもある」(イギリス人女性、30代)

「2歳の子どもを子育て中。SNSで他人がしていることに目を奪われ、自分だけ世界から取り残されたような深い孤独感を覚える」(イギリス人女性アレックスさん、30代)

「Facebookで4500人ぐらいの人とつながり、便利さを手放せずにいるけど、生身の声を聞いているわけではないから孤独も感じる。SNSは難しいものだなと思う」(イギリス人男性、20代)

「11歳からインスタグラムを使っている。セレブリティーの華やかな日常を覗くのが大好き。でもふとした時に、どうして私の生活とこんなにもかけ離れているのだろうと思ってしまう」(イギリス人女性、20代)

日本と同様、SNSを使いこなすイギリスの若い人たち。どこまで「孤独感」は広がっているのか?国はどのような対策をとろうとしているのか?皆さんからいただいた「声」を持って、現地を取材していきます。

イギリスで“つながり孤独”取材中!

イギリスで取材中のディレクター飛田です。

若者の孤独対策について、アレックスさんに尋ねると、このテーマを専門的に調べている大学の研究者を紹介してもらうことができました。

出会ったのはマンチェスターメトロポリタン大学のリサーチフェロー、ジェームズさん、38歳。ジェームズさんは2年前からNPOと連携して、イギリスの若者たちにどのように孤独感が広がっているのか、調査を続けてきたそうです。

ジェームズさんによると、イギリスでも若者の孤独感に目が向けられるようになったのはごく最近のことだそうです。

ジェームズさん「孤独はこれまで、高齢者に特有の問題と思われてきました。若い人は人生の中で“もっとも他者とつながっている時期”とみられているので、彼らがどう孤独感を抱くかなんて、議論の対象にも上がってこなかったんです。」

去年出来上がったばかりの調査報告書を見せてもらうと、やはりSNSが影響を及ぼしている、という記述がありました。

ジェームズさん「SNSは人と人との関わり方を変えてしまったと思います。僕が若い頃はパーティに誘われなくてもその事実を知ることはなかったけれど、今の若者たちはSNSでそれが見えてしまい、知らなくても済むはずだったことまで知ってしまう。研究を通じて、SNSで『何でも見えすぎてしまう』ときに、取り残されたような深い痛みを覚えていることが分かってきました」

ジェームズさんに、番組に寄せられたメールを読んでほしいとお願いしたところ、「すごく興味がある」と真剣な表情でひとつひとつに目を通してくれました。

そして、ご自身が研究されてきたイギリスの若者たちの声とあまりにも似ていることに大変驚いていました。

ジェームズさん「強い言葉でつらさを訴える声が多いのが痛ましい。遠く離れた日本とイギリスの若い世代で全く同じことが起きているのは奇妙なことです。大切なのは、若い人に現代なりの“孤独感“があるということを、語りつづけていくことだと思います。個人の性格なのではないかとか、心の弱さの問題なのではないかと思わずに、まずは気持ちを語り合い、その上で孤独との付き合い方を考えるべきです」。

イギリス取材もあと数日。日本の皆さんから寄せられた声を持って、この国で“つながり孤独”と向き合う人々の話を聞いてきます。

孤独=ネガティブ?

ディレクターの飛田です。
ピクニックをしながら孤独について語り合うイベントがあると聞きつけ、イギリス西部の港町、ブリストルに行ってきました。

イベントに集まっていたのは老若男女、約30人。太陽の光が降り注ぐなか、紅茶を飲みながら楽しげに語らっているのは、それぞれの孤独体験。「孤独だということを誰にも言えなかったから、googleで“lonliness(孤独)”と検索していた」など、胸の内を打ち明けていました。

イベントを主催したのは、孤独解消を目指すNPOの代表・エイミーさん(38歳)。彼女もつながり孤独を感じたことがあるという女性でした。SNSや現実で人付き合いがあったにも関わらず、心の中では深い孤独に苛まれていたといいます。

「一番つらかったのは金曜日の夜。仕事が終わると、週明けまで誰にも会わずにFacebookを流し読みして過ごすんだろうなと思っていた。陶芸教室に通ってみたり色々気を紛らわそうとしたけれど、心が満たされていなかった」(エイミーさん)

エイミーさんは当時の経験から、今回のイベントを企画したといいます。イベントの合言葉は「Let’s talk lonliness(孤独を語ろう)」。孤独感をとりまくネガティブなイメージを払拭しようというのです。

「現代的な生活をしていれば、孤独は誰もが普通に体感すること。後ろめたいことではない。もっと気軽に胸のうちを打ち明けられる社会にしたい」(エイミーさん)

イベントに参加して、日本とイギリス、遠く離れた国でも人々は同じように孤独を感じ、自らの気分の処理に戸惑い、複雑な気持ちを携えて生きているのだと実感しました。日本で“つながり孤独”と向き合うためには何が必要なのでしょうか。

“つながり孤独”を分け合う

ディレクターの飛田です。
NPOの女性エイミーさんに、「ブリストルからロンドンに帰る前に、駅前のカフェに寄ってみて!」と言われました。

電車やバスを待つ人たちが大勢集っていたこのカフェ。パンやパウンドケーキが並ぶなか目に付いたのは、箱に入った二切れのマーマレードケーキです。

実はこのマーマレードケーキ、一切れ分の値段で二切れを買うことができます。
エイミーさんが孤独解消のために作ったNPO団体に共鳴した地元の人たちのアイディアで、「見知らぬ人とちょっとした会話を楽しむきっかけとして使って欲しい」と生まれたものなんです。

お店の方に話を聞くと、このカフェでは駅前という立地から、一人でスマホを見ながら過
ごす人が多いのだとか。孤独を感じているかもしれない人同士の出会い が生まれるのはよいことだと考え、このケーキを販売しているということでした。

ふと大きなテーブル席の隣を見ると、私の横にも確かに一人でスマホを見ている30代くらいの男性が。ケーキをお裾分けしてみようと思いましたが、「迷惑かも…」「SNSで誰かとやりとりしている最中だったら邪魔だろうな…」「拒絶されたらどうしよう?」一人で散々ためらい、なかなか声をかけることができませんでした。

勇気を出してケーキを薦めると、男性は少し驚きながらも快く受け取ってくれました。
お名前はニックさん、36歳。私が東京から孤独にまつわる取材でブリストルを訪ねたことを話すと、「あの3本のストライプの漢字はなんだっけ…」と語り始めるニックさん。なんと、日本に住むお友達を訪ねたことがあり、「川崎」という地名をご存知でした。もし私が躊躇したままだったら、お互いを知らずに通り過ぎていたことでしょう。ニックさんに孤独解消を志すNPOがこのケーキを販売していることを伝えると、「とてもいいアイディアだよね。スマホを見ているだけじゃなくて、たまにはこういう会話もいい」と笑顔を見せてくれました。

このようにイギリスでは、孤独を感じる人々のために、ほんの少しのきっかけ作りが静かに広がっています。多くの若者が“つながり孤独”にさいなまれている日本。
あなたはどんな取り組みが必要だと思いますか?

どうして感じる?“つながり孤独”

日本やイギリス、世界に拡がる“つながり孤独”。
私たちはなぜ、人とのつながりがあっても孤独感に苛まれるのでしょうか?早稲田大学文化構想学部で現代の人間関係や“孤立”について研究している石田光規教授にお話を聞いてきました。

この折れ線グラフは、石田さんが読売新聞と朝日新聞のデータベースをもとに、両紙に「孤立」または「孤独」という言葉を含む記事が掲載された件数をまとめたものです。

孤立や孤独について報じた記事は、若干の変動があるものの、ほぼ一貫して増え続けています。 石田さんは「このグラフから、近年、社会全体が孤立や孤独という話題に敏感になっていることが読み取れる」 といいます。

番組に寄せられた“つながり孤独”の声について石田さんにお伝えすると、「本当に孤独であるというより、多くの人が孤独やつながりのあり方を不安視しているということなのではないか」とのご指摘をいただきました。

石田さんは、SNSで誰とでも簡単につながることができる現代では、人間関係の自由度が高まった一方で、“他者から選んでもらえないかもしれない不安”が広がっていると分析します。つまり、SNSを駆使する私たちのつながりには、“好みの相手を簡単に探すことができる自由”と同時に、“自分が選ばれないかもしれない不安”や、“自分を否定されてしまう不安”が含まれているということです。

石田さん「最近は、孤独・孤立を肯定的に捉え、推奨するような書籍も増えている。こうしたものと、人間関係やつながりから排除された結果としてあらわれる孤独感や孤立は、分けて考える必要があると思う」

石田さんのお話を聞き、はっとさせられました。私も、自分の都合で“誰と、どれぐらいのつながりを維持するか”を選んでおきながら、一方で相手が“同じ温度のつながり方”を自分と同じように維持してくれるだろうか、という不安を覚え、臆病な状態で人間関係を築いています。皆さんはどう思いますか?

アンケート結果・SNSで“孤独”を感じるのはどんなとき?

「SNSで孤独を感じてしまうのはなぜだと思いますか?」というアンケートを投稿しました。41人の方にご回答いただきましたので、その結果を報告します。
※アンケートは複数回答可で行いました。

1位:友人たちの生活が自分よりも充実しているように思えるから(20人)
2位:自分の孤独感を埋めるために、仲間に迷惑を掛けたくないから(13人)
3位:いいね!やフォロワー数を気にしてしまうから(12人)
4位:本当の意味では分かり合えないと思っているから(10人)
4位:いいね!をつけたり、つながり続けることに苦痛を感じるから(10人)
4位:タイムラインが流れてくると、つい見てしまうから(10人)

その他、様々なご意見もいただきましたので紹介します。

・友人が何か投稿したり発言してても「わたしに向けた言葉じゃないし、わたしじゃなくてもいいんだ」って思ってしまう(女性・10代)

・参加するつもりはないイベントや行事の情報を得てしまう。SNS内の時間の流れと自分の時間の流れにギャップを感じてしまう。(男性・40代)

・依存していると気づき、情けなく思う(女性・40代)

イギリスで若者の孤独について研究しているジェームズさんも、「『何でも見えすぎてしまう』ときに、取り残されたような深い痛みを感じる」とおっしゃってました(※)。日本でも同じような現象が起きているかもしれません。SNSで自分と他人を比べてしまう…。みなさんはこのアンケート結果を受けてどう思われますか?

武田・田中キャスターも共感

ディレクターの飛田です。 放送に向けて、武田、田中両キャスターをはじめクロ現+のスタッフと打ち合わせをしました。みなさんのご意見や、これまでの取材過程を伝えたところ、自分もSNSを見て孤独を感じたことがあると共感したスタッフが多くいました。

“つながり孤独” ゆうこすも辛かった

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