クローズアップ現代

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増え続ける“息子介護”

増え続ける“息子介護”

2018年6月14日

いま、「息子」が親を介護する“息子介護”が増え続けている。厚生労働省の調査では、「息子」に介護される高齢者は17%に達し、初めて「嫁」を上回った。しかし、同時に、介護中の虐待は、「配偶者」や「娘」に比べて、「息子」が圧倒的に多いというデータもある。昨年から母親の介護を始めたクロ現+のディレクター大野(50代)。慣れない家事や介助に戸惑いながら、悪戦苦闘の日々を送っている。大野は、介護の悩みをネット動画で公開。同じ境遇の「息子」たちや専門家とつながり、乗り切るための“希望”を探った。

“息子介護” 50代ディレクターも…

クロ現+のディレクター大野。“息子介護”の真っ最中。介護の悩みは誰にとっても切実だが、息子の場合、配偶者や娘に比べて虐待が圧倒的に多い、という気になるデータも。大野も『ついイラッと…』を経験。自分の気持ちに戸惑ったことが…。

担当ディレクターより

「これまでケアの現場を取材させて頂き情報を提供する番組を作ってきました。しかし、いざ自分が当事者になるといともたやすくパニック状態に…。人は自分がその立場に立たないと自分の問題としてなかなか考えられないものだと、反省を込めて思います。他の人はどうしているのか知りたい、見たいときに見られる番組や情報交換のメディアがあれば心強いのではないか…そうした思いで恥をさらしながら制作を進めています」。
(ディレクター 大野兼司)

要介護者の料理は大変!簡単レシピも紹介

要介護者の料理は意外に大変…。“息子介護”を始めたディレクター大野も戸惑いの連続。

要介護者の料理は大変! 簡単レシピも紹介

“老いのサイン”を見過ごさないために…

親の「老い」のサインを見過ごしてしまった…という声も少なくありません。

「老いのサイン」を見過ごさないために…

各地に広がる “分かち合い”の場

介護の大きな負担と戦う家族にとって、「分かち合う」場が救いとなることも。

各地に広がる「分かち合い」の場

お寄せいただいたご意見の一部をご紹介します

●40代男性
僕も30代の頃から、高齢者の父親と母親の介護が始まりました。僕のおばあち ゃんを介護していた母方の叔父からよく言われました。介護は立派な仕事やから 正々堂々と毎日生活しろ、介護を恥と思うなと。確かに、イラっと来る事も何度もあ りました。認知症の両親の介護は、本当に大変でした。アドバイスがあるとすれば、 親の介護を恥と思わない事。立派な仕事、親孝行と思う事で、心が軽くなると思います。それと親の介護に必要なのは、自分へのご褒美です。

●50代男性
姉が2人いますが海外暮らしでどうしようもなく、こうなることを予想して結婚しませんでした。血のつながりのない姑の下の世話まで嫁にさせられませんからね。身内が背負うべき避けて通れない道だと思います。

悩みを和らげるヒントは?

「実の親」だからこそ語りづらかった苦しい胸のうちを吐露する投稿が、次々に寄せられています。

語り始めた“息子介護者” 悩みを和らげるヒントは?

親子関係の悩み

介護が必要となった親との関係は、悩み多いものですが、どう向き合っているか、それぞれの悩みや模索の一部をご紹介します。

●50代男性
下の世話が、どうしても異性なので気まずいです。上から目線で説教されながら介護するって、気が狂いそうになります。感謝の一言もない。

●40代男性
レビー小体型認知症で要介護4の母の介護をしています。同居も考えましたが 、かえって自由を奪ってしまうと思い、独居で通いながら介護をしています。最近は 私のことも認識できなくなったので、あえてヘルパーさんのように他人の感覚で接しています。親子の関係は厳しい対応をするときがあるので。

●40代男性
私も「息子介護」を行っています。自身が介護職員の経験があるので何とかな ると思っていましたが、とんでもない事でした。家族同士では職員と利用者という関係性は築けず、むしろ、お互いが反発しあうことも珍しくありません。上手く いかなくなった時は、家族であってもしっかり距離をとって、一旦冷静になること。 そして、社会資源を積極的に利用して、自身の負担を減らす事です。

●30代男性
自分の母親の介護をする時に一番困ったことが、「自分の母親とどう接するのか」という事でした。最初の頃は「お母さん」と今までの呼び方で接して介護をしていましたが、時がたつにつれて「お母さん」と呼んで介護をすることに抵抗感が出てきました。自分の母親なのだから「お母さん」と呼ぶのが当たり前なのに自分の母親として見たくない。そんな葛藤がありました。ある日、近所の方から「他人として接しなさい。母親として見るな」と言われました。最初は抵抗感がありましたが、「お母さん」と呼ぶことを止めて名前で呼ぶようにしたことで、精神的にだいぶ楽になりました。

“息子介護者”必見!要介護状態の入り口のサイン 「オーラルフレイル」

歯・舌・のどなど、口腔機能の低下を意味する「オーラルフレイル」が今、注目されています。これが、要介護状態に至る”負の連鎖”の入り口だという研究者も…。”息子介護”は親の要介護状態に気づくのが遅れがちといわれますが、だからこそ知っておきたい、その理論とは?

在宅を支える”管理栄養士”を知っていますか? 料理に悩む”息子介護者”に的確なアドバイス!

ディレクターの大野です。
「オーラルフレイル」を動画でご紹介しましたが、私の母親の場合、その段階で適切な対策ができず、要介護5にまで悪化してしまい、後悔しています。

現在、母親は、嚥下障害があり、水分や食べ物が誤って気道に入り、むせ込んでしまうことが時々あります。こうした状態が続くと、誤嚥性肺炎になる恐れもあるそうで、軽視できません。そこで医師のすすめもあり、今年3月から”管理栄養士”に栄養指導を受けることにしました。これは、介護保険のサービスの一つ「居宅療養管理指導」で、要介護者の食事について月に1~2回、訪問を受け、「病状」や「咀嚼嚥下機能」に応じ、食材や調理法についてアドバイスをくれるというもの。(うちの場合、自己負担1割で1回のサービスで537円)噛む力、飲み込む力の弱った親に作る自分の料理に不安を抱える私にとって大変心強い支援でした。

たとえば、3月12日の朝食(ごはん、豆腐、目玉焼き)の写真をスマホで送ると、次の訪問時に、メニューの改善法や簡単に卵をフワフワに調理できるレシピを記した、下記のような形のメモを頂きました。料理の各項目に○や△がふられており、母親の状態に合わせ、改善した方がいいポイントが一目でわかり助かります。

【注意】紹介したレシピは、ディレクターの母親の病状や咀嚼嚥下機能に応じたもので、すべての要介護者にあてはまるものではありません。咀嚼レベルや嚥下レベルに応じて、ふさわしい食材や調理法は変わってきます。実際に試す場合は、医師や管理栄養士とよくご相談ください。

続・在宅を支える“管理栄養士”を知っていますか? 料理に悩む“息子介護者”に的確なアドバイス!

ディレクターの大野です。管理栄養士のアドバイスのおかげで、だいぶ不安が少なくなってきましたが、魚料理はいつもパサパサに焦がしてしまい、母が食べづらそうなのが悩みの種でした。5月16日の朝食(焼き魚、コーン・トマト、みそ汁)をスマホで撮影し送ったところ、次の訪問時、下記の1枚目の写真のような丁寧なアドバイスを綴ったメモを下さいました。さらに、2枚目のような電子レンジで簡単に作ることができる魚料理のレシピも頂きました。さっそく白身魚を買ってきて試したところ、母親からは「ほくほくでやわらかくて食べやすい」と好評でした。思わず、ホッ。

”息子介護”を始めた男性がまずつまずくのが「料理」だとよくいわれますが、”管理栄養士”は、そんな”息子”にとっては救いの手をさしのべてくれる大変心強い存在だと思いました。

【注意】ご紹介したレシピは、ディレクターの母親の病状や咀嚼嚥下機能に応じたもので、すべての要介護者にあてはまるものではありません。咀嚼レベルや嚥下レベルに応じて、ふさわしい食材や調理法は変わってきます。実際に試す場合は、医師や管理栄養士とよくご相談ください。

ご意見・体験談をご紹介します

7月3日の番組では紹介しきれなかったご意見の一部(96通)を抜粋してご紹介します。
下記リンク
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiji/103/images/goiken_taiken.pdf

担当ディレクターより御礼

今回の番組を通じて、多くの”息子介護”の現場を訪ね、当事者の方々の貴重な体験談を伺うことができました。大変な状況の中、投稿をお送り下さった方々、さらに取材まで受けて下さった方々に改めて感謝申し上げます。私自身のてんてこまいの介護風景を事前に動画で公開したこともあり、取材者と取材相手というよりは、同じ悩みをもつ者同士のような、ふだんの取材時とは違う、不思議な感覚を覚えました。取材をしながら、自分自身もケアされる、とでもいうのでしょうか。会うごとに、話を聞くごとに、気持ちが軽くなっていくような・・・他の方の悩みに比べて、自分の悩みなどまだまだ小さい、と気づかされたからかもしれません。得がたい経験でした。

欧米では、当事者同士の「分かち合い」の効能を公的に認め、自らの体験を明かす当事者のことを「Expert with Experience(経験を持つ専門家)」と評価しています。今回は紹介できませんでしたが、体験者の”語り部”を組織する「スピーカーズバンク」を作る試みが、日本でも始まろうとしています。これまで、自ら語ることの少なかった”息子介護者”が、ごく普通に互いの体験を語りあえるようになれたら、日本の社会も大きく変わっていくのではないか、そんな予感を抱いた取材でした。

また、思いがけずありがたかったのは、私が介護中に足の悪い母に対し「なぜできないんだ!」と声を荒げ、自分で自分の声に驚いた、という気恥ずかしい経験を明かしたことに対し、育児中のある女性の方から、自分も子どもに対し、全く同じ経験がある、というコメントを頂いたことでした。育児でも、介護でも、ケアする側の思い通りにいかない状況にいらだちを覚え、なぜ自分だけが・・・という「悪い感情」にさいなまれることがあり、それは一旦芽生えると、なかなか消えない厄介なものですが、「密室」「孤立」「自責」という状態を意識的に変えていくことで、何とか飼い慣らしていくしかないものかもしれません。

私とは比べものにならないくらい大変な状況に直面されている当事者や、数々の修羅場と向き合われてこられた専門職の方たちが口にされた様々な言葉は、私自身の大切な「道しるべ」になりました。それはもちろん、「息子介護」だけでなく、「嫁介護」「娘介護」「配偶者介護」、様々な介護者の方にも届けば、という思いで番組制作に臨みました。ケアは一方的に与えるだけでなく、共同作業であるとも思います。ケアを必要とする人と、ケアする人が、どうすれば「心地よいケア」を実現できるか、を考えたとき、「息子」に限らず、あらゆる介護者への支援の視点(これまでの日本ではここが「家族任せ=女性任せ」で非常に弱かった)が必要であるのは言うまでもありません。

かつて、公的介護保険導入のときに論陣を張られた樋口恵子さんは、「介護をしない男は人間と呼ばない」と語られました。また、「今は小さな介護休業制度を、男性管理職モードに作り替えれば、働く女性もどんなに助かるかわかりません。」とも述べられています。”息子介護”を正面から考えることは、仕事を口実に、男性が目を背けてきた、人生の大事な現実に向き合うことなのかもしれません。そして、いつか”息子介護”という変な造語が、ただの当たり前の”介護”という言葉に収斂し「死語」になる日を思い浮かべながら・・・。今回のテレビ番組だけの枠を越えたFacebook等へのSNS展開の試みが、介護の悩みを抱えるあらゆる方々にとって「苦しいのは自分だけじゃない」と気づくきっかけになり、少しでも心が楽になる助けになれば、と願ってやみません。本当にありがとうございました。

(ディレクター 大野兼司)

7月3日の放送内容はこちらに全文掲載しています。
※「息子介護」については、下記のリンクから、いつでもご意見・情報を受け付けています。https://www.nhk.or.jp/gendai/request/musukokaigo.html

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