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残業は減ったのに業績アップ その企業はいったい何をやったのか

残業は減ったのに業績アップ その企業はいったい何をやったのか

2018年6月7日

「労働時間を短縮しながら、どうやって業績を上げるのか?」 働き方改革を進める企業の多くが直面するこの難題。そこに突破口を見出した企業がある。 いったいどんな手を打ったのか。“先行企業”の取り組みから「真の働き方改革」へのヒントを探る。

大胆な業務スクラップはこうして実現した UQコミュニケーションズ

通信事業を手がけるUQコミュニケーションズ。2年前、格安スマホ事業に参入し、半年で契約数が70%増加した。そのさなかに直面することになった働き方改革の波。残業を原則夜8時までとしたり、立ったままの会議で時間を短縮したり、誰にも邪魔されずに仕事に専念できる集中ブースを作ったり、数々の取り組みを進めてきた。ところが、効果が表れない部署があった。急成長する格安スマホの営業部だ。8人のメンバーでネットを通じた販売を担当。働き方改革のモデル部署ながら、残業は多い人で月70時間に及ぶこともあった。ある時、マネージャーの北川大輔さんは部下の言葉にショックを受けた。

「ある案件を私がやりたいと(部下に)お願いしたとき、無理だ、と言われた。どちらかというと、そのメンバーはいつも前向きなんです。これは本当にダメだなと、本当に変えなきゃいけないと腹をくくった瞬間でした。」(北川さん)

北川さんは上司に、業務のスクラップが必要だと訴えた。ところが成長部門だけに上司は難色を示す。そこで北川さんは、業務内容を徹底検証して基準を作った。他社がやっていても顧客獲得の効果が少ない事業を洗い出し、スクラップ対象にしたのだ。これで上司は納得、スクラップの権限が北川さんに一任された。すると現場からも次々と意見が出てきた。例えば「キャンペーン特典の郵送を廃止しメールだけにしたらどうか」。手間がかかるわりには効果が薄いという。北川さんはスクラップを即決。さらにテレビショッピングでのセット販売や通販サイトでの販売など5つの事業を廃止し、1人当たり月10時間の業務をスクラップできた。

新たに生まれた時間で、攻めの仕事にも取り組めるようになった。最も力を入れているのは顧客獲得の要となるサイトの魅力アップだ。それでも残業時間は改革前のおよそ半分に。一方、顧客獲得件数は1.5倍になったという。現場に権限を持たせ、仕事の効果を絶えず検証したことが、業務量を減らすことにつながったのだ。

ファミレスが24時間営業をやめてみた すると… ロイヤルホールディングス

一歩踏み込んで、ビジネスモデルの変革にまで取り組んだ企業がある。
大手ファミリーレストラン・ロイヤルホストは、去年までにすべての店舗で24時間営業を廃止した。そのひとつ東京世田谷区の店では、営業時間を平日は朝9時~夜12時までに変更。9時間短縮した。

そもそものきっかけは、深夜や早朝の時間帯に人手を確保することが難しくなったこと。店長がアルバイトの穴を埋めるため、みずから深夜勤務にあたることも少なくなかった。24時間営業を維持するために、店長がかき入れ時に不在になるという悪循環。スタッフへの目配りもできなくなり、売り上げに影響が出るようになったという。

ファミリーレストランが普及したのは40年前。しかしバブル崩壊後、低価格競争が激しくなり、深夜の客は年々減少。ロイヤルホストでも2000年代後半には売り上げの減少が続いていた。難局を打開するため、2010年に社長に就任したのが、現在の菊地唯夫会長だ。お忍びで視察した店舗で、疲弊したスタッフたちの姿に危機感を強めた。

「疲弊しているなと、訪店しながら感じていた。お客様に対してきちんと向き合えていない。なんとか回している状態でした。」(ロイヤルホールディングス 菊地唯夫会長)
菊地会長は、急きょ全店舗を対象にアンケートを実施した。その中には「今の働き方をいつまでも続けられない」という悲痛な声がつづられていた。
「現状のサービスは、果たして時代にマッチしていくのでしょうか」
「どこに向かっているのか、5年、6年先に何があるか見えてきません」
こうした声を受けて、菊地さんは、大手としては初めて24時間営業の看板を下ろす決断に踏み切った。業界の常識を見直し、「量より質」に転換することにしたのだ。深夜と早朝の営業をやめ、昼と夜の時間にパワーをシフト。客が多く、最も利益が見込める時間帯に店長などを配置し、サービスを手厚くするようにした。

「これを続けていたら、会社は行き詰まってしまう。危機感はすごく強くありました。今の経営の置かれている状況から考えたら、この選択(24時間営業の廃止)が最適値だと判断した。」(菊地会長)


世田谷区の店舗では、ピークタイムでも客を待たせることが少なくなったという。メニューも一新。食材にこだわり、付加価値の高い商品を用意した。丁寧な接客が功を奏し、客単価も上がった。スタッフの働き方も改善し、定着率がアップしたという。全店舗平均でも、営業時間は3時間短縮したが、逆に売り上げは7%余りアップした。

働き方改革は“生き方改革” 社員の生活が充実すると起きる化学変化 伊藤忠商事

働き方改革を進め、効率的に働けるようになったとき、会社や個人はどう変わっていくのか。
いち早く改革に取り組んできた伊藤忠商事は、5年前から大胆な朝型勤務を導入している。朝8時までに多くの社員が出勤。深夜と同等の早朝手当が支給され、無料の朝食も用意されている。

入社8年目の飯田万里江さんの1日はこうだ。出勤は毎朝7時。まず1時間で、メールのチェックや書類の作成を完了。取引先からの電話もなく、集中して進めることができる。8時からは担当する食品の販売戦略について先輩と打ち合わせ。取引先が動き始める9時には営業に向かう。午前中に1件、午後に2件、取引先を回ることができる。この日は午後6時に勤務終了。外回り先から直接向かったのは音楽スタジオ。効率よく仕事をすることで、プライベートの時間を持てるようになった。

さらに、多くの若手社員がキャリアアップのために時間を活用している。中国ビジネスに強みを持つこの商社。会社が負担して、中国語教室を設けている。飯田さんも、7年前から会社で中国語を学んできた。中国語を生かして人脈も広がり、将来は中国での駐在員を目指している。

伊藤忠商事では中国語ができる社員が1,000人以上。全社員の3分の1に上る。この5年間で残業時間は15%減ったが、会社の業績は2年連続で過去最高益を更新。個人の充実が、会社の成長にもつながっているのである。

「“生き方改革”と言っているわけです。働いている時間をいかに効率的に行って、空いた時間を別のことに費やす。したがって仕事の働き方だけではなくて、日頃の生活を変えていくということにつながるわけです。」(伊藤忠商事 人事・総務部 垣見俊之部長)

カギは「縮む勇気」 働き方改革は待ったなし

今からおよそ30年後、日本の働き手は5,500万人にまで減少すると予想されている。深刻な労働力不足に陥るのは明らかだ。一人一人が限られた時間の中でどれだけの成果を出せるかがカギとなる。

ロイヤルホールディングスの菊地会長が強調するのは、事業規模の拡大と縮小のバランスだ。

「これまでどちらかというと、産業化は規模を増やし、規模の利益を生み出して、生産性を上げていく。これが1つの王道だったと思うんですけど、人口減少というのは、逆に規模が大きくなればなるほど不利益が出てしまう時代にもなっていると思うんです。ですから、規模を大きく伸ばす事業と、逆に規模はある程度縮むことを意識して1人当たりの付加価値を上げていく。やはり規模が小さくなったほうが付加価値は生みやすいので、そのバランスを「縮む勇気」を持って、もう一度考えてみる時代に来たのではないか。」

さらに菊池会長は、現在の働き方改革の流れを継続していくことが重要だと指摘する。

「改革しなければいけない働き方というのは、10年、20年、歴史の中でできているので、急にはなかなか変わらないというのが現実だと思うんですね。ですから、しっかりとこの働き方改革を経営戦略の中に落とし込んで、時間をかけながら、しっかりとした日本らしい働き方改革っていうものを、ブームに終わらせない形で続けていくということが大事なんだと思います。」

働き方改革の答えを導く「公式」はない。企業ごと、現場ごとに異なる課題に向き合い、模索する中で見えてくるものだろう。その中で成果を上げている企業に共通するのは、従来の常識にとらわれない発想と、それを実行に移す決断力だ。あなたの職場ではどうだろうか。

この記事は2018年5月23日放送「シリーズ働き方改革 残業減らして業績もアップ!?」を元に制作しています。

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