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もう限界!? 行き場を失う大量のペットボトルごみ “中国ショック“の波紋

もう限界!? 行き場を失う大量のペットボトルごみ “中国ショック“の波紋

2018年5月21日

年々増え続けるペットボトルなどのプラスチックごみ。それが今年(2018年)に入って、突然行き場を失う事態になった。世界中から資源ごみや廃プラスチックを受け入れていた中国が輸入を禁止したためだ。中国の廃棄物研究者はこう言い放つ。

「ゴミを中国に輸出して自分の国を綺麗にしても中国が汚れます。この先も輸入禁止の解除はありえません」

世界に衝撃が走る中、年間100万トンもの廃プラスチックを中国に輸出していた日本でも、慌てて代わりの輸出先を探したり、国内での処理に奔走したりと、待ったなしの対策に追われている。日本のプラスチックごみはパンクしてしまうのか?私たちには何ができるのか?暮らしに迫る危機を追跡する。

ごみが町にあふれだした 世界に広がる“中国ショック”

“中国ショック”が広がっている。ヨーロッパ各地では行き場を失ったプラスチックごみがたまり続け、韓国ではついに大都市の街中にプラスチックごみがあふれ出した。「回収しきれない」という業者と住民の間でトラブルにまで発展している。EUは「2030年までに、プラスチック容器などをすべて再利用、またはリサイクル可能なものにする」との緊急対策を打ち出した。

きっかけは中国政府の突然の発表。30年以上続けてきた国策の大転換だった。

「海外ごみの輸入を厳しく禁じる。水がきれいで空が青い中国を築いていかなければならない」(中国 李克強首相)

これまで中国は、海外から資源ごみを輸入しリサイクルすることで、資源不足を補ってきた。特に先進国が消費した膨大な廃プラスチックは、石油原料よりはるかに安い貴重な資源とされ、その輸入量は年々増加、2000年代には世界の廃プラスチックの6割を輸入するまでになった。急速な経済発展の一端を、資源ごみが支えてきたのだ。

しかし、汚れた廃プラスチックのリサイクルには、手作業での分別や洗浄が必要だった。その時に出る汚泥や、洗浄に使う薬品の多くが、川などへそのまま流され続けたため、中国国内に環境汚染という深刻なひずみが生まれてしまった。


こうした事態に輪を掛けたのが、経済環境の変化。世界有数のプラスチック消費国となり、中国国内でも大量の廃プラスチックが生じるようになったのだ。自国分だけでも持て余す状況になった今、環境汚染を引き起こす海外の資源ごみはもはや受け入れられないと、輸入禁止に踏み切ったのである。

ごみは中国から東南アジアへ でもパンクは時間の問題

日本でも、中国へ輸出できない廃プラスチックが各地でたまり続けている。今のところは、中国の輸入禁止直前に駆け込み輸出をしたため、問題は表面化していないが、パンクは時間の問題だといわれている。日本の廃プラスチックの中国への輸出量は、世界最大の年間100万トン、東京ドーム3杯分にあたる。

中国に代わる新たな受け入れ先として浮かび上がっているのが東南アジア諸国だ。タイでは今年に入って、海外から持ち込まれる廃プラスチックの量が急増、日本企業も関心を寄せている。大阪で廃プラスチックを輸出する会社を経営する平良尚子さん。これまで中国に輸出してきたものを今後はタイのリサイクル会社に買い取ってもらいたいと考え、現地に足を運んだ。受け入れてくれそうな所があると、必ず確認するのが施設の環境対策だ。“中国ショック”の引き金となった環境汚染と同じ轍を踏まないためにも、慎重な進め方が大事だと考えている。

「ちゃんと責任をもって汚染処理、残渣(ざんさ)まで処理できるかどうか、それをやっていかなかったら、海外でも迷惑をかけると思います。かけるんだったら、いつかストップされると思います」(廃プラ輸出業者 平良尚子さん)

しかし、東南アジア諸国での受け入れもいずれ限界に達すると専門家は指摘する。

「中国への輸出が止まれば、当然、その資源の需要のある所、東南アジアの諸国に流れることになりますけれども、東南アジアのリサイクルのマーケットの規模とか、業界の状況を考えると、いずれ、流れも止まってしまうということが予想されます。すでにベトナム政府が規制をするという動きがありますし、さらにタイも、この夏に新たな方針を出すといわれています。」(東北大学大学院国際文化研究科 劉庭秀教授)

日本国内でリサイクルできないのか

ならば国内でのリサイクルを進めることはできないのか。まず日本の現状を見てみよう。

私たちが出すごみには、家庭から出るものと、飲食店やコンビニ、オフィスなどを通じて出るものがある。このうち家庭から出るものは、近年分別回収が定着し、多くがリサイクルに回され新たな製品に生まれ変わっている。問題は飲食店やオフィスなどから出るものだ。こちらは分別が徹底されていなくても業者が回収し海外に輸出されてきた。そのため多くが汚れていたり、ほかのごみと混じり合ったりしていて、リサイクルを難しくしている。


こうしたプラスチックのリサイクルには、膨大な手間とコストがかかる。質の高いプラスチック製品にリサイクルするためには、まず空き缶や鉄くずなど他のごみと分別、さらにプラスチックの種類ごとにきめ細かく分別しなければならない。

一方、他のごみが混在したままのプラスチックは、多くが古紙や木くずと混ぜ合わせて固形燃料にリサイクルされる。固形燃料の生産工場では、中国ショックを受け「廃プラスチックを引き取ってほしい」という依頼が急増中だ。しかし固形燃料の生産をそれほど増やせない事情がある。現在、固形燃料の6割は製紙工場で消費されているが、ペーパーレス化や出版不況のあおりを受け需要は頭打ち。他の業界での利用はそれほど広がっていない。

「中国に流れていた分を受けてほしいという声は、非常に多く声をかけていただけるようになりました。ただ、受け皿がないために応えることができないというのが、非常に、心が痛いところではあります。」(固形燃料工場 下別府正樹さん)

こうした状況をどうすれば根本から変えられるのか。専門家が指摘するカギが「技術開発」だ。

神戸大学大学院経済学研究科 石川雅紀教授
「リサイクル市場にもっと多くの企業が参入してきて、いろんな新しいアイディアで技術開発をすれば、可能性はあるんだと思います。」

こうした中、中国ショックをチャンスと捉えて動きだした自治体がある。宮城県だ。県の担当者がリサイクル業者などを訪問。リサイクル技術の開発に乗り出したり、より多くの廃プラスチックを受け入れて事業を拡大したりする意思がある企業には、補助金を交付する。

いち早く県の補助金を利用し、新たなリサイクル技術の開発に乗り出した企業もある。この企業では種類の違うプラスチックを混ぜて、質の高い素材に再生する技術を研究。これまで、種類が混在する廃プラスチックは、リサイクルする際、品質や強度が安定しなかったが、混ぜ合わせる配合やつなぎとなる添加剤などの実験を繰り返したところ、品質が安定するようになった。処理に困っていた大量の廃プラスチックも、住宅建材やガーデニング用品など、幅広い商品に使えると意気込む。

「今回を機に今まで県外、あるいは国外に流出していた廃プラスチック資源を県内で循環利用して、それが宮城県の経済の活性化につながる。そういう方向に県としては進めていければと考えています。」(宮城県環境政策課 菅原正義さん)

私たちは“リサイクルを信じすぎていた”

では私たち消費者には何ができるのか。ごみ問題に詳しい東北大学大学院の劉庭秀教授は「リサイクルへの過信」を見直す意識改革が必要だと訴える。

「われわれは今まで、リサイクルをすればなんとかなる、リサイクルを信じ過ぎていたところがあります。われわれができることは、ごみを減量する、リデュースですね、それからリユース、あるいは修理をして長く使う、リペアとか、リサイクル以外にも、われわれができる選択肢はたくさんあるかと思います。今までは、リサイクルに頼りすぎる社会を作ってしまったので、今度はもっと循環型社会のあるべき姿を考える必要があると思います。」

プラスチックごみの問題を研究している、大阪商業大学公共学部の原田禎夫准教授が強調するのは、消費者が声をあげることの大切さだ。

「ある大手のスーパーで、有料化していたレジ袋を無料にキャンペーンしたところ、消費者の皆さんが『私たちが努力しているのに、なんてことをしてくれるんだ』と声を上げて、そのキャンペーンは取りやめになったということを聞きました。消費者は今、簡単にインターネットなどで声を上げられますし、声を上げたり、清掃活動に参加したりして、まず現場を見ていただく、そういったことを広めていただければと思います」

リサイクルはうまくいっている、家庭ごみの分別に努めさえすればいい、私たちは根拠もなくそう思い込んでいなかっただろうか。「中国ショック」によって厳しい現実を突きつけられた今、これまでの生活スタイルや意識、そして行動を見直すべき時かもしれない。

この記事は2018年5月8日放送「ペットボトルごみがついに限界!? ~世界に広がる“中国ショック”~」を元に制作しています。

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