クローズアップ現代

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日本のトイレ、世界のトイレ、すごいことになってます

日本のトイレ、世界のトイレ、すごいことになってます

2018年4月27日

2020年を前に、日本のトイレに“革命”が起きている。海外からやってくる人たちの多様なニーズに合わせ、ハイテクの「おもてなしトイレ」が続々と登場しているのだ。センサーで健康チェックをしてくれるトイレや、駅のトイレの空き状況をリアルタイムで教えてくれるアプリまで現れた。世界に目を転じれば、お隣の中国では、国家主席の大号令の下、大規模なトイレ改造計画が進行中。インドでも空前のトイレ建設ラッシュが起きている。日本各地で、そして世界へと広がるトイレ革命の最前線。

“Oh my God!” 外国人観光客も驚嘆 日本で進むトイレ大革命

東京オリンピック・パラリンピックで外国人利用客の急増が予想される成田空港。ターミナルのあちこちでトイレの改修工事が進められている。その数147か所。総工費は50億円に達する。「お年寄りなどのおむつを替えるスペースが欲しい」という声に応えた大型ベッド付きのトイレや、耳の不自由な人に光で緊急事態を知らせるトイレなど、多様化するニーズに合わせたきめ細かな機能を持つ新型トイレが次々に生まれ、外国人観光客を驚かせている。

「すごいハイテクですね。私の国にこんなトイレないわ。」(オランダからの観光客)

外国人の増加を見越したトイレ改修プロジェクトは、全国の観光地でも進められている。世界文化遺産として屈指の人気を誇る宮島・厳島神社。観光客数は年々増加し、去年は過去最高の450万人を記録した。一方で「トイレの数が足りない」「外国語の表示が不十分」という声も。実際、観光客で混み合うフェリー乗り場と厳島神社を結ぶ道にはトイレが1か所だけ、便器も男女合わせて4つしかない。そこで、地元市役所がトイレメーカーと手を組んで始動させたのが「宮島おもてなしトイレプロジェクト」。3億円の予算を投じ、トイレを大改修する計画だ。


新たなトイレの広さは現在の10倍以上。便器は合計22台にまで増やし、すべて洋式に。従来の男女別トイレに加え、障害のある人や親子連れ、心と体の性が一致していないトランスジェンダーなど、あらゆる多様性に配慮して設計している。2014年からオリンピック憲章に加えられた「性差別の禁止」という規定にもばっちり対応、というわけだ。

「行政が作る一般的な公衆トイレでは発想がなかった。そんなにすごいトイレなら行ってみようか、そう言われるくらいの目的施設として来てもらいたい。」(廿日市市 観光課(取材時)原田淳次係長)

トイレの進化はとどまるところを知らない。便器の縁に仕込まれたセンサーが、大便中のヘモグロビンを検知して病気の兆しを知らせてくれるトイレ。さらに、駅のトイレの使用状況が分かるスマホのアプリも登場している。NPO法人日本トイレ研究所代表理事の加藤篤さんは、今のトイレ革命のポイントは「機能分散」だという。

「(これまでは)機能を詰め込んで、オールインワンのトイレを作ってきた。快適なので、車いすの方、トランスジェンダーの方、子連れの方、オストメイト(人工肛門)の方、いろんな方が集中して、混雑を招いている。それを一つずつ解きほぐしていく、そんな挑戦が必要だと思います。」(NPO法人日本トイレ研究所 代表理事加藤篤さん)

タダで〇〇がもらえる!? 中国の公衆トイレ 国家事業で大変身  

お隣の中国でもトイレ革命が進んでいる。きっかけは3年前、習近平国家主席の大号令だ。
「今こそトイレ革命が必要です。トイレは衛生的なものにしなければなりません。」
(中国 習近平国家主席)

かつて中国の公衆トイレは、溝の上にまたがるだけの簡素なもので、衛生的とはいえなかった。仕切りがなく、他人と隣り合わせで用を足すことから、観光客に“ニーハオトイレ”と呼ばれていたほどだ。

それが今、劇的に様変わりしている。上海のある公衆トイレは、個室で水洗の清潔なトイレに大変身。地域の住民や観光客がひっきりなしにやって来て、いつも満員だ。替えの下着や薬、衛生用品などを無料で提供するサービスまである。公衆トイレの改善を推奨している上海市から表彰を受け、予算も追加されたという。

さらに、電光掲示板で使用状況が一目で分かるハイテクトイレも登場した。全ての個室が男女共用、女性用が混雑しがちな公衆トイレを効率的に使えるようにしたという。


国家をあげたこのトイレ革命で、地方も含め、3年間で全国7万か所以上が改修された。目的の一つは、貧しい農村部の生活の質を高め都市部との格差をなくすことにあるという。

「トイレは都市と農村の格差の象徴でした。トイレ革命は人々を満足させ、発展を実感させる、最も効率的な施策なのです。」(南開大学 石培華教授)

日本の技術者が考案 世界に広がる格安便器も

さらに速いスピードでトイレの建設が進んでいる国がある。4年後には中国を抜き、人口世界一になるといわれるインドだ。現在、1日5万台のペースでトイレが新設されている。この空前のトイレ建設ラッシュに貢献しているのが、トイレメーカー技術者の石山大吾さんだ。

石山さんは、みずから考案した「清潔」「安全」が売りの格安便器を、インド各地で実演販売している。「Safe Toilet」通称「SATO」だ。用を足したあと、わずかな水を流すだけでふたが開閉する仕組みで、臭いや、病原菌を媒介する虫をシャットアウトできる。価格は1台数ドルに抑え、現金収入が少ない農村地域を中心に、売り上げを伸ばしている。


「外で用を足すのは恥ずかしいし、嫌でした。でも今は安心してできます。」(トイレを購入した女性)

インドでは、今も3億人が屋外で排せつしているといわれており、年間12万人の子どもが感染症で命を落としている。さらに、夜間に用を足しに出かけた少女2人が、レイプされ殺害された事件をきっかけに、トイレ建設を求める世論が高まった。学生時代、アフリカやアジア各地を旅して、トイレがないことで生じるさまざまな困難を目の当たりにしてきたという石山さん。みずから手がけた格安便器は今、インドをはじめとした15か国で、合計120万台使われている。

「みんな、トイレを持つ権利があると思う。地域のニーズに対応できるものを作る、しかもそれを受け入れられやすい価格で提供するというチャレンジが非常に魅力的で。(トイレを)世界中のみなさんに届けられればいい。」(トイレメーカー技術者 石山大吾さん)

世界の国々が抱える課題を解決する可能性を秘めた、日本のトイレ技術はほかにもある。例えば、水道設備がいらない水洗トイレ。あらかじめトイレ内部に蓄えられた水で排せつ物を流すと、汚れた水と排せつ物を微生物が分解し、きれいな水に戻す。もともとは、震災などの災害現場で使うために開発されたもので、去年7月の九州北部豪雨でも活躍した。上下水道がなくても清潔に使えるため、水道設備の整っていないアジア、アフリカなどの国々での活用も期待されている。

不衛生で安全でないトイレを使っている人は、世界で23億人といわれている。進化を続ける日本のトイレ技術には、その状況を大きく変える力がある。一方で、技術や機能面にとどまらず、トイレは個人の尊厳、公共意識、文化の質などが凝縮された存在とも言えるだろう。トイレのハード面だけでなくソフト面でも、世界をリードできる日本でありたい。

この記事は2018年4月11日に放送した「“トイレ大革命”! 日本の技術に世界が仰天」を元に制作しています。

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