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アラフォー・クライシス “不遇の世代”を襲う危機

アラフォー・クライシス “不遇の世代”を襲う危機

2017年12月28日

「アラフォー世代」の給与だけがダウンしている。そんな衝撃的な事実が、最新調査で明らかになった。空前の“売り手市場”の中、どの世代でも月収が軒並み増加。ところが、30代後半の給与は5年前に比べ4300円の減少、さらに40代前半では2万3000円も減っていたのだ。この世代間格差、「就職したタイミング」が大きく影響していることもわかってきた。収入が低く、結婚もままならない。生計を頼ってきた親世代も高齢化を迎え、共倒れという声も…。アラフォー世代が直面する危機の深層に迫る。

なぜアラフォーの給与だけが下がるのか?

「最初はこれ、計算間違いじゃないかって。ここまで世代によって、毎月の給与に差が出るとは思っていませんでしたから。衝撃的な数字でした」

調査を行った東京大学の玄田有史教授は驚きを隠さない。なぜアラフォー世代の給与だけが下がるのか。玄田さんは彼らが就職した時期に注目する。

バブルの頃、大卒者の求人倍率は2倍を超えた。しかし90年代に就職氷河期が到来、2000年代半ばまで企業の採用意欲は低迷した。今のアラフォーは、その厳しかった時期に就職活動をした世代。当時の影響が、いまも尾を引いているというのだ。日本には「新卒一括採用」という仕組みがあるため、新卒での入社チャンスを逃すと、あとから取り返すのはなかなか難しい。たとえ新卒で正社員になっても、希望した会社に就職できず、転職を繰り返した人もアラフォー世代には少なくない。

「『これは違うな』と思って転職した場合、中小企業に入ることが多かった。勤続年数は評価されますから、転職して勤続年数が短くなれば、賃金がなかなか伸びない」(東京大学 玄田有史教授)

昇進や昇格にも大きな壁が立ちはだかる。アラファー世代の1つ上の「バブル世代」の存在だ。40代前半で課長になった人の割合を比べると、アラフォー世代は上の世代と比べて、課長になれる割合が少ない。大量採用されたバブル就職世代が上につかえているため、昇進や昇格のスピードが遅れているというのだ。

働き盛りなのに雇用は不安定 アラフォー・クライシスの実態

アラフォーの中でも、より深刻な状況にあるのが「非正規雇用」で働く人たちだ。川崎市在住の鈴木浩介さん(45)もそのひとり。有名私立大学の理工学部を卒業したが、正社員としての就職が叶わず、派遣会社に登録した。IT関連の7社を転々とした後、現在は市の臨時職員を務めている。月収は手取りで15万円と、20代の頃とほとんど変わらない。転職サイトにも登録してみたが、40代にもなると求められる人材はマネージャークラスの経験者ばかりだという。

こうした悩みを持つアラフォーは鈴木さんだけではない。日本の世代別の労働人口を見ると、最も多くを占めるのが35歳から44歳までのアラフォー世代で、およそ1,500万人。労働の中核を担う世代にも関わらず、そのうちの383万人は非正規雇用者なのだ。生活困窮者の支援にあたる社会福祉士の藤田孝典さんは、「個人が努力をしなかったからとか、怠けているからということではまったくなくて、社会構造の問題、雇用構造の激変という問題が背景にある」と指摘する。

「特に男性の場合、一度就職すれば、そのうち経験を積んで、キャリアを積んで、結婚、出産、そしてマイホームを構えてという、いわゆる社会人モデルというものがあったと思うんです。いわゆる日本型雇用といわれるものですが、今のアラフォー世代は、これがもう根本から壊れてしまった最初の世代という印象を持ちます」(社会福祉士 藤田孝典さん)

アラフォー世代の新たな危機「7040問題」とは?

アラフォー世代の新たな危機として浮上しているのが「7040問題」だ。7040とは、70代の親と40代の子どもが同居生活を送ること。かつて、就職後も親と同居する独身者は「パラサイト・シングル」と呼ばれ、20代のうちは現役で働く親元で自由な独身生活を送れるとされてきた。しかし今、非正規で働いてきたアラフォー世代の親子は、深刻な状況に陥っている。最新調査によれば、親などと同居する40代から50代の未婚女性の7割近くは、親に生計を支えてもらっている。経済的に自立できず、親の年金が頼り、さらには親の介護に追われ、共倒れしそうなケースもある。

「非正規雇用の40代周辺の方たちは、一生涯貧困、生活困窮を宿命づけられています。例えば、今も親を頼っている状況なので、親が少し介護や医療が必要になると、介護離職せざるを得ない。ご自身は低所得なので、離職をしてしまえば、自分自身がもらう年金も少なくなる。一生涯、いわゆる「下流老人」というような、高齢期の貧困まで想定せざるを得ないような状況が生まれています」(社会福祉士 藤田孝典さん)

非正規雇用で独身というアラフォー女性の数は、ここ10年余りで16万人から52万人に急増した。背景には、多くの女性の受け皿になっていた事務職での正規採用が激減し、派遣に置き換わったことがある。若者や女性の貧困について取材しているノンフィクションライターの飯島裕子さんは、「子育てをする女性が働きやすい環境や社会が実現されていく一方、非正規のアラフォー女性が抱える苦しい状況は改善されていない」と指摘。彼女たちの多くが社会からの疎外感や孤立感を感じており、「アラフォー・クライシス」は、男性よりも女性のほうが深刻だと訴える。

「男性と同じく女性も困難な状況にあったが、これまで問題が無視されていた。それは、女性はいずれ結婚して、男性に養ってもらうから問題ないという、男性稼ぎ主モデルという社会の中で、あまり認識されてこなかった。当事者たちも“家事手伝い”というところに体裁が整ってしまい、本人も家族も問題の深刻さに気付かないまま、社会的に孤立してしまった状況がある」(ノンフィクションライター 飯島裕子さん)

負の連鎖から抜け出すために

アラフォー世代を支援するため、国や自治体も動き始めている。今年(2017年)、国は就職氷河期世代の雇用を改善するための助成金を新設。5回以上の離職や転職を繰り返す35歳以上の人を正社員として採用した企業に、最大60万円を支給する。東京都は30代から40代に特化した就労支援の無料プログラムを新設実施。横浜市も非正規雇用で働く35歳以上の独身女性のための講座を始めた。藤田さんも、社会保障を手厚くすることの重要性を訴える。

「生活費を支給したり、職業訓練を行ったり、あるいは資格取得をお手伝いしたりとか、あとは住宅の家賃が高いっていう方もたくさんいらっしゃいますので、住宅手当を企業に代わって保障していくとか、そういったものを政府や自治体がやっていくべきだと思う」(社会福祉士 藤田孝典さん)

時代の谷間に落ち込み、その後も不遇に苦しんできたアラフォー世代。危機の中で自信を喪失しかけている彼らだが、そのアラフォー世代が、今や社会を担う中心世代になっているのも事実だ。彼らの危機は、社会全体の危機につながりかねないという問題意識を、世代を超えて共有する必要がありそうだ。

この記事は2017年12月14日に放送した「アラフォー・クライシス」を元に制作しています。

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