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あなたの積立金が危ない!? マンション修繕工事に潜む闇

あなたの積立金が危ない!? マンション修繕工事に潜む闇

2017年10月31日

分譲マンションの大規模修繕工事。そのウラ側で悪質な設計コンサルタントが工事業者に巨額のバックマージンを要求し、住民に損害を与えているケースがあるという。あなたの修繕積立金も狙われている可能性が…。「大量マンション老朽化時代」の自己防衛策を考える。

狙われる修繕積立金 その手口とは

分譲マンションで十数年に一度行われる「大規模修繕工事」。その修繕積立金を狙う悪質な手口とは、どのようなものなのか。トラブルに巻き込まれた住民が、匿名で取材に応じた。

マンションは築13年、およそ180世帯。初めての大規模修繕を控えた2年前のことだった。住民でつくる管理組合は、設計コンサルタントA社と契約。しかし、A社が示した工事費用の概算を見て、住民はぎょっとしたという。3億6,000万円。余裕を持ってためていたはずの積立金、目いっぱいの額だった。

「ここまで金額が膨らんでしまうんだというのは驚いて、積立金がちょうどそのぐらいたまっていたんですね、組合の修繕積立金が。そこも何となくおかしいなとは感じてたんですけど。ちょうどぴったり使い切るぐらいで予算を組んでる感じはしましたね。」(マンション住民)

住民らは、別の建築士に見積もりを依頼。すると、A社より1億円以上安い2億5,000万円という結果が出た。住民らはA社を介さず直接工事業者と話を進めることに。するとA社から内容証明郵便が届き「施工業者の選定に関与できないのであれば、業務を辞退する」と、一方的に告げられたという。

「彼ら(コンサル)は、いかに修繕積立金から吸い上げるか考えている。」(マンション住民)

この不可解な事態の背景には何があるのか。かつて、あるコンサルタント会社で働いていた元社員は、業界に広がる不適切な金の流れを指摘する。

元社員によると、悪質なコンサルタントは、まず格安のコンサル料を餌に住民と契約。工事費を見積もったあと入札を行い、安い工事業者を選んだように見せかける。住民は工事業者に代金を支払うが、実はそこにコンサルへのバックマージンが含まれているというのだ。コンサルは、取り分を増やすために見積もり額を目いっぱいつり上げているという。

「管理組合がいくら積立金を持っているか、当然握っております。その金額を使い切るほど、リベート(バックマージン)は増えますから、なるべく工事種目は増やします。お客さんは素人ばっかり。『これをやらなかったら大変ですよ』と言われたら、従うしか、一般の住民はないわけですね。」(元設計コンサルタント)

一方、工事業者には、バックマージンを支払わざるを得ない理由があるという。

「(バックマージンを)払わなかった場合は、業界の中の各会社に『あそこの会社は、リベート(バックマージン)を出さない会社だから』と、他の設計事務所にも言うわけですよ。当然その会社も、他のコンサルさん、設計事務所さんからも出入りできなくなりますし、取り引きも出来なくなりますし、入札すら参加させていただけないし。」(元工事業者)

元工事業者によると、入札に参加する業者はコンサルの裁量で集められる。入札額は、業者間で相談の上高値のまま維持。受注する業者は工事ごとに持ち回りで決まるというのだ。バックマージンの額は工事総額の平均で10%、多ければ20%に及ぶという。

法的責任の追及は困難

修繕工事で広がるバックマージン。しかし、「法的責任を問うのは難しい」と専門家は指摘する。マンション問題に詳しい弁護士によると、住民の側に立つべきコンサルが義務を果たさずに損害を与えた場合は損害賠償を請求できる。また、コンサルが『故意』に損害を与えたことが証明されれば、背任罪に問われる可能性があるという。ただし、手抜きを見逃したことや、裏でバックマージンを受け取ったことを立証しなければならず、実際に不正を告発するのは簡単ではない。

なぜ、こうした状況が広がったのか。長年、マンション問題を取材してきたジャーナリストの山岡淳一郎さんが指摘するのは、建築市場の変化だ。バブル崩壊以降、新築の物件が減少。新築専門だった一級建築士の仕事が減り、マンションの改修業界に参入するようになった。しかし、この分野での報酬の基準がなかったため、曖昧な状態でマーケットが広がり、安く請けてバックマージンで稼ぐという状況に至っているのだという。

この問題は、昨年11月にリフォーム関係の業界が、内部告発的に実態をオープンにしたことで発覚。国土交通省は、今年1月に異例の早さで是正のための通達を出した。

悪質コンサルをどう見抜く? カギは「透明性」

「バックマージンを一切とらない」と宣言する設計コンサルタントがある。会社を設立して18年になる須藤桂一さん。バックマージンを受け取った場合、報酬の3倍の罰則金を住民に払うことを契約書に盛り込んでいる。

須藤さんが挙げる悪質コンサルを見抜くポイントの1つが「入札の透明性」。悪質なコンサルは、裏で協力する会社だけを集めるため、工事の入札に不自然な参加条件をつけることがあるという。

「例えば、この(規模の)マンションの大規模修繕工事で、資本金1億円以上。どう見ても、おかしいです。2千万とか3千万の(小さな)工事でも、資本金1億円以上とか。ほとんどの工事会社が見積もり参加できない、そんな仕組みになってます。」

そしてもう1つ、悪質なコンサルから身を守るカギは住民自身にあると須藤さんは強調する。

「一番の問題点は無関心ですよ。もう無関心じゃだめ。管理会社、設計事務所、工事会社がどこか。住民一人ひとりが、1世帯100万円ぐらい出すわけですからね。自分ちだと思って見てもらう。おかしいと思ったら声を出すというころをやらないと、そのまんま行っちゃいますよ。」

須藤さんの指摘する住民の無関心。この問題を解決し、大規模修繕を成功させた例がある。京都市内にある築34年、185世帯のマンションだ。これまでに2回の大規模修繕を行った。管理組合理事の能登恒彦さんは、最初の大規模修繕で有志の住民を募り修繕委員会を立ち上げたが、当初、住民の多くは無関心だったという。

そんな中、多くの住民を巻き込むことに成功した秘けつは、古くなったものを直す「修繕」から、より住みよいものにする「改修」への意識改革。能登さんたちは、建築士を招いて勉強会を開き、住民から「住みたいマンション」のアイデアを募った。

雨で滑りやすかった入り口のタイルは全て張り替え。玄関は、車椅子でも通れるスロープに。自動扉も設置した。更に、災害に備えた井戸水の給水所を全フロアに設置。住民の希望が形に変わっていく中で、積極的に参加する人が次々と現れてきたという。

安すぎるコンサル料には要注意 身を守るためのポイント

トラブルから身を守るためにはどうすればいいのだろうか。複数の現役コンサルタントや弁護士などへの取材から対策をまとめると…。

まず、安いコンサル料には要注意。コンサルを選ぶ際、複数の見積もりを取り、契約料金が極端に安いところは怪しい業者の可能性があるため避けた方がいい。次に金額の目安を知っておく。工事内容にもよるが、修繕工事の見積もり金額が1戸当たり150万円を超える場合は高すぎる可能性があるためセカンドオピニオンを求めた方がいいそうだ。また、国土交通省が紹介する相談窓口を利用する方法もある。

つい他人に任せてしまいがちなマンション改修の問題。修繕積立金を狙う悪質な業者は、そんな私たちの姿勢につけ込んでいる面もある。自分たちの住まいをどう良くしていくか、自ら考え主体的に関わることが、身を守ることにつながりそうだ。

<国土交通省が紹介する相談窓口>
(公財)住宅リフォーム・紛争処理センター
https://www.chord.or.jp/reform/consult.html
0570-016-100

(公財)マンション管理センター
http://www.mankan.or.jp/06_consult/tel.html
03-3222-1519

この記事は2017年10月19日に放送した「追跡!マンション修繕工事の闇 狙われるあなたの積立金」を元に制作しています。

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