クローズアップ現代

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田中キャスターの“スウェーデン取材記”(後編)

子宮移植により子どもを授かった女性に会いに

ドアを開け出迎えてくれたのは、朗らかな笑顔の女性と小さな男の子。
ロリータさんと、3歳になる息子のキャッシュくんでした。

ロリータさん

ロリータさんは子宮移植をした人の多くが取材には慎重な中、少しでも自分の経験が役に立ち他の女性を勇気づけることにつながるならとお話することを快く引き受けてくれました。
物心ついたときから、いつか結婚して「自分のお腹で赤ちゃんを産む」のが夢だったというロリータさん。14歳のとき、自分に子宮がないことを知り、その夢は絶望へと変わりました。しかも、当時は自分がロキタンスキー症候群だということは診断で分からず、世界中で自分だけが子宮がないと感じ、子宮移植のことを知るまでずっと一人でその事実と向き合い孤独と無力感にさいなまれていたそうです。

ロリータさん

私はロリータさんに会うまで子どもがほしいのならば、例えば養子をもらう、という選択もあるのではないか、と考えていました。
でも小さな頃から子どもが大好きで妊婦が世の中で一番美しいものと感じてきたロリータさんから、直接「自分のお腹で子どもを産むのが夢だった」というお話をうかがい、当時書いていた日記を涙ながらに目の前で読んで頂いたとき、もちろん子どもを持つ方法の一つには違いがないけれどもこの考えを押しつけることはとても無神経なことになってしまうのだと感じました。

ロリータさん

実際に息子のキャッシュくんと接するロリータさんの嬉しそうなこと。それは、家の中で遊んで笑ったり泣いたり怒ったりと普通の親子の光景です。でもこれが、ロリータさんの“特別な”時間だということがしみじみと伝わってきました。
子どもを持ちたいと願うこと。これは誰もが持てる権利なのだと感じました。

不妊治療と前向きに向かい合うために

今回の取材では子宮移植手術を間近に控える女性にもお話をうかがいました。(この文章が公開される頃には手術はもう終わっています。)

ロキタンスキー症候群

この女性も取材を受けてくれた理由は先のロリータさんと同じ。4000~5000人に一人が発症するといわれるロキタンスキー症候群の女性や、他の理由で子宮がないが妊娠を望むという女性に勇気を与えられればというものでした。
この女性は、不妊治療が原則無料のスウェーデンですら、不妊治療に対してオープンな人たちばかりではないため自分がロキタンスキー症候群だと知ったときも、家族や本当に近しい友人にしか話をすることはできなかったといいます。その口調からはあきらめ・悲しみ・ふつふつとした怒りを感じました。

このお話を聞いて、不妊治療を望む人が生きやすい世界を作るには、不妊治療のプロセスや費用を工夫するなど制度を整えることはもちろん、不妊治療に対する世の中の人々の理解や意識を変えていくことの両輪を回していかなければならないのだということを強く感じました。
しかし彼女自身は、直近に行う予定の手術に対しては前向きそのもの!少しは手術や手術後の体調への不安などがあるのではないか、と思いうかがっても、全く不安はなく楽しみそのものだと話してくれました。子宮移植の臨床研究をしているスウェーデン政府や執刀する医師をはじめ、手術に関わっているチームに全幅の信頼を寄せていて、何というか、子どもがもうすぐできることへの喜びで本当にいっぱいで手術が待ちきれない、という感じなのです。
この方のようにポジティブな気持ちで不妊治療を続けられるようになるには、何が必要なのか。そんなことも考えさせられました。 (前編はこちら