クローズアップ現代

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田中キャスターの“スウェーデン取材記”(前編)

田中キャスターの“スウェーデン取材記”(前編)

3月のストックホルム。公園にはスケートやアイスホッケーをするためのリンクがあり、小高い丘にはまだ雪が残っていて小さな子ども達を連れた親子の姿がたくさんありました。
まず日本と違って驚くのはベビーカーを押す男性の姿の多さです。男女関係なく子どもと遊ぶ姿はとても素敵な光景でした。

ストックホルムの公園

何のアポイントもなく、街角でインタビューを開始。すると「自分や自分の親戚が不妊治療をした」と話してくれる人や、「結局不妊治療は成功しなかったけれど、今は養子をもらって本当に幸せです」とその子どもの目の前で話してくれる人まで現れました。 同じ質問を日本でしたらどういう結果になっただろうか、と思うほど、率直に答えてくれる人が多かったというのが私の印象です。

ストックホルムの公園

スウェーデンの不妊治療の歴史に詳しい助教授によると、昔はスウェーデンでもこういった開かれた意識ではなかったようです。20世紀半ばまでは不妊は恥ずかしいことという意識があったけれども、不妊の人の多さ、そしてスウェーデン内で不妊が病気だと認められたことが人々の意識改革につながったのではないか、と話していました。 はじめは病気の中でも緊急度が低いものだと考えられていたそうですが、今は保険が適用され、予算も増えているそうで、全国で法律婚のひとだけでなく、レズビアンや独身の女性にも対応しています。

不妊治療のクリニックも“普通”“自然体”

(スウェーデンで)不妊治療を行うクリニックや病院を訪れてみると、その充実ぶりとある意味”普通”な感じに驚きました。待合室は女性や男性一人でなく夫婦やパートナーとともに来ている人もとても多く、話を聞くと、診察に来ることで仕事を休んだりすることも抵抗がなく、上司にも気軽に話せるそうです。壁はピンクだったり、絵が掛かっていたりしておしゃれですし、パンフレットにはLGBTのカップル用の不妊治療についてのものもありました。

パンフレット

世界で初めて子宮移植手術を成功させ、これまでスウェーデンでの執刀は全て行ってきたマッツ医師も、どんな大先生が来るのかとドキドキしていたらとても自然体。患者さんとも談笑しながら診察をし、私がインタビューした後は、子どもの迎えがあるから、と足早に帰って行きました。

パンフレット

不妊治療だからといって必ずしも張り詰めたような深刻な空気感がない。変な言い方ですが、患者も病院側も”自然体“の不妊治療の現場とでもいえるでしょうか。

病院で、不妊治療をこの日始めるという私と同い年の30歳の事実婚カップルに、どうして不妊治療に踏み切ったのかを聞くことができました。「子どもがほしいと思って1年経ってもできなかったが、不妊治療をすればもしかしたら早ければ1ヶ月後には妊娠が確認されるかもしれない。それって本当に素晴らしいことだよね!」と明るく笑って話してくれた男性。確かに子どもがほしいけれどできない場合、身近な選択肢として不妊治療があれば、こういう雰囲気になるのかもしれないな…。私自身の意識の中でも産婦人科や不妊治療に対する意識が少し変わったような気がします。子どもがほしくてすぐにできなかったら、できなくてどうしようと悩むのではなく、どうすればできるかを考え、社会にあるそういう方法を使っていこうよ、という前向きな発想。
スウェーデンは高税率ゆえの高福祉だということは分かりながらも、日本が参考にできることもあるはずだ、と感じました。 (後編に続く