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“原発の危機は日々高まり、悪化しています”【ザポリージャ州・ドミトロ・オルロフ市長】

「ロシア軍が5分後に何をしでかすか、私たちにはわかりません」
ヨーロッパ最大の原発を抱える街の市長、ドミトロ・オルロフさんは不安な心持ちを私たちに訴えました。ザポリージャ原発では3月4日にロシア軍の攻撃を受けて火災が発生したと報じられ、その後もロシア軍の占領下に置かれています。福島第一原発の事故のこともよく知るドミトロさんは「日本の人たちは原発の敷地内で軍事行動が行われることの危険性をわかってくれると思う」と語り、協力を呼びかけました。

危険な原発 “高い意識の作業員が安全を支えている”

ウクライナ南東部、ヨーロッパ最大のザポリージャ原発があるのがエネルホダル市です。
“原子力の街”として発展し、ドミトロさん自身も原子力の技術者として長年ザポリージャ原発の仕事に関わってきたのち2020年に市長に就任しました。
軍事侵攻が始まってまもなくザポリージャ原発はロシア軍によって攻撃を受け、その後一方的に接収されました。
ロシア軍は今も敷地内に爆発物や兵器を置いているとされ、ドミトロさんは危機感を強めています。

<ザポリージャ原発の施設で発生した火災(3月)>
ドミトロ・オルロフ市長

「今もかなりの数のロシア兵が滞在し、軍用車両が原発の敷地内に残されています。ロシア兵がいることで作業員は常に緊張を強いられています。カメラやスマートフォンの持ち込みも禁止され、家族と連絡を取り合う手段もありません。占領者が次にどのような行動にでるか全く分かりません。5分後に何が起こるのか分からないのです。状況はこれまでと変わらず緊張した不透明な状況です。原発の危機は日々高まり、悪化しているのです」

IAEA=国際原子力機関によると、ザポリージャ原発では監視するシステムからのデータ送信が途切れたり、ロシア軍が敷地内で弾薬を爆発させたという情報が入ったりしています。
ドミトロさんは、今かろうじて原発の安全を支えているのは「作業員の使命感」だと語りました。

<国際報道2022 5月27日放送>
ドミトロ・オルロフ市長

「原発には意識の高い従業員が残って働いています。いくつも学校を卒業して高い教育を受けた人たちです。彼らはどんな危険な状況の中でも、自分の責務をしっかり果たそうと原発に残り続けているのです。日本も福島第一原発の事故を経験していますから、日本の皆さん1人ひとりが原発の敷地内で軍事行動が行われることの危険性を理解していると思います。私はこの問題について、日本の皆さんと共同歩調が取れることを願っています」

“住民を拉致して拷問、拷問、拷問…”

原発を占拠したロシア軍はエネルホダルの街にも攻撃を加え、街は3月初めに占領されたといいます。
ドミトロさんは市長としてその後もしばらく留まっていましたが、5月中旬に街を離れざるを得なくなりました。
ロシアに占領された他の街と同じように、当初ロシア側はドミトロさんを利用しようと協力を求めてきましたが、拒否すると脅迫してきたのです。

ドミトロ・オルロフ市長

「ロシア側は私を屈服させられると考え、常に懐柔しようとしてきました。しかしそれが難しいと分かると『別の指導部ができる』と通告してきたのです。それ以降ロシア側は私を付け回し、私だけでなく支持者やその家族までも脅してきました。日に日に圧力はひどくなり、もう街に残ることはできないと判断したのです」

<南部の街を占領したロシア兵>

今や市長のドミトロさんだけでなく、ウクライナ政府を支持する一般の住民に対しての締め付けも厳しくなっていると語りました。

ドミトロ・オルロフ市長

「ロシア側は住民を拉致しています。企業の経営者らを拉致して地下室へと押し込み、様々な手段で拷問、拷問、拷問です。私が住んでいたマンションにも昨日ロシア兵が立ち入り、扉を壊していったと聞いています。1時間ほど物色して何らかの証拠がないか探していたということです。街では常に銃声が鳴り響き、ウクライナ側を支持する人への調査が行われているのです」

一方で、ロシア側が計画しているとされる「併合の賛否を問う住民投票」については、『ロシアの思い通りには進んでいない』と証言しました。

ドミトロ・オルロフ市長

「住民投票の話については占領が始まった頃から出ていました。占領軍は積極的に住民の情報を収集しようしていました。協力費として1万ルーブルを提供するなどして住民を誘っていたのです。けれども、応じる住民はほとんどいませんでした。応えた人の多くは年金生活者です。ロシア側はこのような手段で住民投票を準備しようとしていましたが、私たちは市民の情報にブロックをかけて提供しなかったのです」

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