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宮城県“推し活と就活” 企業と就活生をつなげる取り組みに迫る

コロナ禍で学生時代を過ごし、この春就活に挑む学生のみなさん!「ガクチカ(※)なんか書けないよ…」とお悩みかも知れませんが、あなたの推し・推し活が立派なアピールになるって聞いたら驚きではないですか?
実はいま、宮城では県をあげて、「推し活×就職・採用」に取り組んでいます。
実際に推し活や推し愛をひたすらアピールして内定ゲットしたセンパイの就活秘話、企業が推し活に注目するワケとは…?当事者のみなさんに語ってもらいました。

※ガクチカ=就職エントリーシートの定番質問「学生時代に力を入れたこと」

(クローズアップ現代「推しパワー」取材チーム)

クローズアップ現代「まだまだ拡大中!推し活パワーが社会を変える」

2023年3月13日(月)放送
※見逃し配信は、3月20日(月)までご覧いただけます。

推し歴10年 アニメからリアル伊達政宗推しに!

都内の大学で歴史学を学んでいる千葉珠貴さん(22)です。
珠貴さんの推しは「伊達政宗」
好きになったきっかけは、小学6年生のとき、弟が借りてきた
戦国時代の武将たちが活躍するアニメ「戦国BASARA」でした。

珠貴さん、はじめて見たそのアニメキャラクターのビジュアルに一瞬で“落ちた”と言います。

珠貴さん

「食事をしながら弟と一緒に見てたときに、画面いっぱいにバンって顔が出てきた瞬間に完全に一目ぼれして、推させていただくことになりました。画面いっぱいに顔が出てきたときに、「あ、やばい、めっちゃかっこいい」とかって思って。今思えば初恋に近い何かだったと思うんですけど…」

伊達政宗推し 千葉珠貴さん
伊達政宗推し 千葉珠貴さん

アニメをきっかけに伊達政宗推しになった珠貴さん。
その後、戦国武将のビジュアル図鑑などを購入。
専門書を読みすすめると、実際に歴史上に存在した、いわゆる「リアル政宗」にも次第にひかれるようになったといいます。

珠貴さん

「伊達政宗は文化人としても活躍したことが分かって「めっちゃかっこいい」ってまた引き込まれました。例えば、政宗は“筆まめ武将”とも呼ばれていて、直筆の書がいっぱい残されているんですよね。それが、とても知的で素敵なんですよ。あとは華道、茶道、能楽にも力を入れていて、京都から専門家を招いたり、家臣たちと一緒に催したり。戦国の世が終わり平和な時代になったときに、そういう文化的な交流をもって、仙台の藩とかを治めていったんだなぁっていうのが、すごいなと思いました」

難航する就職活動中に出会った「推し活応援企業」

それから伊達政宗ゆかりの地めぐりやイベントへの参加などの推し活を十分楽しんだ大学生活。大学4年生の春、就職活動の時期がやってきました。

地元である宮城県にUターンを希望していた珠貴さん。
大学の専攻である「歴史学」を生かせる観光系の仕事を中心に就職活動を開始しました。

しかし、なかなか思うようにいかず、差し迫った9月。
実家に帰省した際に伊達政宗推しを知っている叔父からある就職イベントを紹介されます。
それが…宮城県が主催する、「推し活応援企業の合同企業説明会」

「推し活応援企業の合同企業説明会」
企業と就活生を、推し活でつなごうという事業「みやぎZ世代・推し事はかどるプロジェクト」のひとつ。
「仕事」 と 「推し活」 を両立できるような環境整備や準備に理解がある宮城の企業が集まった説明会。宮城県雇用対策課が主催している。

推し活に焦点をあてた合同企業説明会があることに驚き、すぐに参加を決めた珠貴さん。

説明会に参加すると、職場の雰囲気や休暇制度の説明など、「積極的に推し活を応援する」という説明が中心で、これまでとは全く違う雰囲気だったといいます。

珠貴さん

「こんな推し活をしている社員がいて人気者だとか、雑談しやすい家族的な雰囲気の職場であるとか、推し活しやすいように有給休暇は比較的フレキシブルに取得できる、とか推し活を否定的じゃなくて“応援”というフレーズで、むしろ積極的・肯定的に見てくれる企業さんなんてこの世にあるのか!ってびっくりしました」

各企業のブースを見て回っていると、とある企業の採用担当者から「ちょっとでいいから話を聞いて!」と激しく呼び止められたといいます。
それが、のちに内定をもらうことになる「タクシー会社」。

話をはじめると、その会話のほとんどが珠貴さんの推し活のことばかりでした。
推し活の会話だったおかげか、自分自身もリラックスして、話が弾んだといいます。

珠貴さん

「「政宗推しなんです」と話したら、すごく興味を持っていただいて、うれしくてしゃべり倒しました。まさか企業様のほうがこんなに食いついてくださるとは思ってなかったので。あとは観光系の志望で、自分の興味を持ってるその歴史とかについて、案内をできたらいいなと考えてるんですっていう話もしましたね」

ひと通り話を聞いた採用担当が「弊社は観光タクシー事業もある。そこなら政宗推しを活かせるかも知れない」と回答してくれたといいます。

珠貴さん、この言葉を聞き、入社を決意。
その後、正式に面接を受けて内定をゲットしました。

伊達政宗グッズを広げる珠貴さん
伊達政宗グッズを広げる珠貴さん

「推し活が就活に役立つと思ってましたか?」と問いかけると…

珠貴さん

「いや、全く、1ミリも思ってなかったです。推し活と就活は別物だと思っていたので。自分が就職した企業が推し活がしやすいところだったらいいなあ、くらいは思ってましたけど。この説明会に行って、自分の推しと仕事を両立できそうな企業から内定をもらえたのは、すごく良かったし、ご縁があって、ものすごく良かったっていうか、うまくことが進んだなって思います」

企業の狙いは?推し活は企業に活性化を…

宮城県仙台市にあるタクシー会社
宮城県仙台市にあるタクシー会社

珠貴さんを採用した、仙台にあるタクシー会社です。
一般配車のほか介護タクシーや観光貸切タクシー事業も行い、今年創業100年となる地元の老舗企業です。
「推し活応援企業の合同企業説明会」に参加したのは、ある悩みがあったからだといいます。

タクシー会社 採用担当 熊谷あやさん
タクシー会社 採用担当 熊谷あやさん

採用担当の熊谷あやさんです。
社員は295名いますが、平均年齢は57歳。
若い人材を採用したいと思っていてもなかなかこれまでマッチングしてこなかったといいます。

熊谷さん

「タクシー業界って若い人に人気ないんですよ(笑)。高齢者の職場っていうイメージがどうしても定着しているようで。説明会を開いてもブースに来てくれるのは60・70代のシニア層ばかりです。それは有り難いんですが、会社の未来を考えると、世代交代を進めないと事業の継続すら危なくなると」

インターネットを通じて、「推し活応援企業合同企業説明会」の存在は知っていた熊谷さん。しかし、最初は縁遠い世界だなと思っていたそうです。
ですが、よくよく考えると、自分たちの会社は、「完全フレックス」で「月の残業は10時間以下」、そして「給料も同業他社に比べれば遜色ない」ということに気づいたといいます。これは推し活がしやすい会社ではないかと…

熊谷さん

「推し活との両立ということを考えれば、条件的にはそこそこイケてるんじゃないかと思って上司に直談判し参加を決めました」

「推し活応援企業の合同企業説明会」に参加するとそこで出会ったのが、さきほどの伊達政宗推しの珠貴さんでした。

最初は、「おとなしい」という印象でしたが、推しである「伊達政宗」について、聞いてみると生き生きと話しはじめたといいます。

熊谷さん

「マニアックな情報も多かったんですが、こちらがドンドン引き込まれて、すごく楽しい気分になりました。「ぜひ弊社に!」と思ったんですけど…」

実は採用を迷ってしまったという熊谷さん。
そのワケは…珠貴さんが「運転免許証」を持っていないことが発覚したのです。
熊谷さんのタクシー会社では事務職であったとしても「運転免許証」が採用の必須条件だったため、採用はできないかも…と頭をよぎったといいます。
しかし、その時、思い出したのが珠貴さんが話していた「観光系の仕事」に興味があるという言葉。

熊谷さん

「弊社には観光貸切室っていうのがあります。お客様のニーズに答えた旅のプランを考えたりする部署なので、例えば伊達政宗の好きな方に向けて彼女の考えたプランで楽しんでいただけるんではないかと。そこで上司に「免許はないけれど面接してくれないか」と相談し、採用にいたりました」

今年創業100年を迎える熊谷さんのタクシー会社、大卒の新卒採用をしたことも初めてでしたが、免許を持っていない方の採用も初めてとのこと!快挙です。

この企業では、推し活応援企業の合同企業説明会に参加したことで、珠貴さんを含め、4人の新卒社員が入社する予定です。

「ミステリー推し」「方言推し」など、全員「推し」があります。
熊谷さんは、新入社員たちが推し活に励むだけでなく、職場でも推し活の話をして明るい雰囲気を作っていってほしいと期待を寄せています。

熊谷さん

「弊社の例で言えば、推し活とかプライベートを大切にしている人って仕事が出来るんですよ。妻推しの社員が何人かいますが、みんなダラダラ残業せずスパっと仕事をすませ、しかもクオリティが高い。働き方改革の面でも見本になってほしいです。一方で“推し活応援企業”って言ってたのに実際は違うじゃないですか!とならないよう、迎え入れる私たちの方こそが意識改革、働き方改革をしなきゃいけないと切に感じてもいます」

推し活×就活 その“仕掛け人”を直撃

仕掛け人 宮城県経済商工観光部雇用対策課の髙山祐樹さん
仕掛け人 宮城県経済商工観光部雇用対策課の髙山祐樹さん

仕掛け人は、宮城県経済商工観光部雇用対策課の髙山祐樹さんです。
宮城県内の大学を卒業後、その半数以上が県外で就職してしまい、その結果、人口減少は進むばかり…。
なんとか、若者たちが県内で就職して欲しいー
若い人に宮城の魅力を再発見してもらい、県内就職を考える契機にしてほしいという思いで始まったのが「みやぎZ世代推し事(お仕事)はかどるプロジェクト」だといいます。

それにしてもなぜ“推し活”に注目を?

髙山さん

「実はある若手職員から「いまは推しが熱い!」という話をとうとうとされまして(笑)。その職員はジャニーズ推しだったんですが、推しのためなら、他県にも行く、めいっぱいお金を落とすとか、そういう話でした。だったらそれを雇用対策とリンクさせたらどうか?宮城だったら東京でライブやイベントがあったときにもすぐ行ける、これってアピールポイントだよね!とか、課の20代の若手職員たちと私で意見を出し合いながら事業案を練りました」

これまで、プロジェクト全体としては132の県内企業と136人の就活生が参加。
就活生の参加数が少ないのがまだ課題だといいますが、合同企業説明会を通じて、県内企業5社に6名の入社が決まったといいます。

しかし、入社した人に今後も県内企業に定着してもらうには、今後も企業側の努力が必要だと感じています。

髙山さん

「プロジェクトや合同企業説明会に参加していただく企業には「月残業20時間以下」「離職率10%以下」「社員の推し活と仕事の両立支援」等をめざすことを条件にしています。このプロジェクトを通じて、県内企業のみなさまには、生産性の向上、職場の働き方改革にもつなげていってほしいと考えています。プロジェクトではZ世代社員の職場定着に向けた企業向けセミナーや、人事や採用、職場の意識改革の専門家などを派遣する「個別支援」も行っていますので、ドンドン利用してもらいたいですし、利用してもらうよう働きかけていきたいと思います」

みやぎZ世代推し事(お仕事)はかどるプロジェクト
みやぎZ世代推し事(お仕事)はかどるプロジェクト

ちなみに…髙山さんも「推し」いるんですか?と聞くと…
じつは、漫画の『島耕作シリーズ』が大好きなんだそうです。

髙山さん

「島耕作は、上司に対しても自分の信念に従って波風をおそれず正論をぶつけるんです。「正論だけじゃ組織は回らないよー」と推しの私ですら読んでいて思うときがあるのですが、なかなかどうして、その正論が通り、さらに結果的に会社のためになっていく…そこが毎回痛快なんです。自分も仕事をしていてモヤっとするときは、俺は「島耕作だ。自分は正論を言ってるのだから自信を持て」と言い聞かせて、前を向いて仕事に取り組めるんです」

【取材後記】就活×推し活の広がりを期待して…

「就活生」「企業」「地方自治体」の、まさに「三方よし」の結果となっていた「推し活×就職・採用」。タクシー会社の採用担当者の熊谷さんの「“推し活応援企業”って言っていたのに実際は違うじゃないですか!とならないよう、意識改革、働き方改革をしなきゃいけないと切に感じてもいます」という言葉がとても印象的でした。「推し活」をはじめとする社員のプライベートも大切にしてくれる会社がどんどん広がって欲しいと思いました。

クローズアップ現代「まだまだ拡大中!推し活パワーが社会を変える」

2023年3月13日(月)放送
※見逃し配信は、3月20日(月)までご覧いただけます。

クローズアップ現代「まだまだ拡大中!推し活パワーが社会を変える」
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担当 #教えて推しライフの
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