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推し活の心理的効果は?心理カウンセラーが語る【あさイチ】

「なぜ私たちは推しにハマってしまうの…?」
「推しがいることで満たされまくっていますが、ぶっちゃけ心理学的にもいいんでしょうか?」
など、ふだん推し活をしているディレクターの疑問をここで解決!

推しに詳しい心理カウンセラーとして、幼稚園児から高齢者の方まで幅広い方々の「好き」(推し)に向き合ってきた、浮世満理子さん(一般社団法人 全国心理業連合会代表理事)に紐解(ひもと)いてもらいました。

(#教えて推しライフ 取材班 ディレクター イノウエ/筆者も推し活中)

なぜ私たちは推しにハマるのか?

イノウエ

早速ですが、なぜ私たちは「推し」にハマってしまうのでしょうか…?
意識したことはないのですが…

浮世先生

基本的に「慈しむ対象」を常に探しているっていうのが「人間の本質」だと思うんですね。ひと言でいうと、人は誰でも「愛したい、愛されたい」と思っている…ということ。それが、人間としていちばん潤う状態なわけです。
つまり、裏を返すと私たちはすでに、「愛し、愛される存在」を常に求めているっていうのがベースにあるんだと思うんですよね。
それであるとき、自分が求めているものを持つ“推し”という存在が現れるわけです。
そうすると、ポンッとそこに向かってハマっていくっていうのが、いわゆる推しにハマるっていう心理なんです。

イノウエ

それはどういう心理状態にあるときなのでしょうか?

浮世先生

ちょっとこういう言い方をすると語弊もあるんですけど、基本的にはストレスがたまっているときとか、自分が満たされていないと感じている時や疲れている時ですかね。
そのままだと回復できないので、まるで回復するためのツールとして、無意識のうちにそういうものを求めているっていう状態なんですよね。
たとえば、ある人は病気をした、あるひとは職場が変わって急にストレスがたまった、ある人は子どもが独り立ちして寂しい状況だった、というように、もっともっと満たされなきゃいけないっていう状態があるときに“推し”に出会うと…すごくハマる方が多いんです。

イノウエ

そういう意味でいうと、推しにハマることは誰しも起こりうると…?

浮世先生

はい、年齢も関係ないですよね。
そして「これまで推しなんて…」と思っていた方も、これからどうなるかはわからないんですよね。
これまでハマらなかった方は、例えば部活が忙しかったとか、勉強が忙しかった、彼氏がいた、家庭が充実していた…とか、そのときは別にハマる理由はなかったんです。
ハマる理由に、ストレスとか、弱っているとか、寂しいとか、ネガティブに聞こえますけど、全国の推しを応援する私としては、推しは必要があってハマっているんだから、「今のあなたのメンタルに必要だったのがその“推し”だった」と言いたいです。堂々とハマっていただきたいと思いますね。

どんな推しを好きになる?

イノウエ

世の中にはたくさんの人や物があふれている中、なぜ自分だけの推しにハマるんでしょうか…!?

浮世先生

いろんな推しがいて、いろんなファンの方がいらっしゃると思うんですけれども、そのたくさんの中からでも、「やっぱり この人が好き!」とか、「この人にハマってる!」という理由のまず一つは、『自分と似たタイプの人に惹かれる』ということがあります。それともう一つは、『憧れ』ですね。
この2つをあわせ持つ人に惹かれる傾向にあります。
これを心理学において「投影」といいます。

イノウエ

「投影」…?

浮世先生

歌が上手で、ダンスがうまくて、ルックスが良くって…という人は、いっぱいいるわけじゃないですか。
その中で「なぜその人?」となったときに、いいところだけじゃなくて、自分がちょっとコンプレックスに思っていることも投影するんですね。
たとえば、ちょっとトークが下手とか、人見知りとか…
自分も人見知りだったり、うまくこなせていないと感じている部分があったとします。
そうすると、グループの中で一番おしゃべりが下手な子を見ると、「なんかこういうときに緊張する気持ちわかるなー」って投影が起こるんですよ。
「この子はうまくおしゃべりできない、私もそういうことあったな」って思ったりすると投影が起こっています。
一方、歌という部分に注目すると「すごい!こんな上手に響く歌が歌えるんだ!」という、憧れの部分も出てくる。
つまり「自分自身の姿」と「自分のこうなりたいという姿」が、推しの中にはちゃんと要素として入っているということなんですね。
ですから“推し”をより深く理解していくことは、実は自分自身への理解を深めることにつながっている…ということになります。


ちなみに、ずっと推しが変わらない人もいますが、時代とともに変わっていったり、複数いる人もいますよね。
それは、その時その時で自分と似ているもの、憧れているものが変化していっているから…とも言えるんです。

キーワードは“自己理解”

推しを深く理解していくこと、つまり推し活をすることは、
「自分自身への理解」が深まるという浮世先生。

浮世先生がぜひやってもらいたいことが…
「推しのどこが好き?」「何で好きなの?」「どういうところに魅かれるの?」ということを自問自答することだといいます。

浮世先生自身、カウンセリングをする際に、「どんなところが好きなの?」と問いかけることが多いんだそう。そうすることでその人自身が求めていることが見えてくるんだとか…

浮世先生

自分の推しのどこが好きか…ということがやっぱりよくわかっていない人が多いと思うんですね。「ただ好き」とか、「かっこいい」とか「かわいい」というので終わってしまう人が多いんですけど、これはすごくもったいないんですよね。
こういう立ち姿が美しいと思ったとか、こういう言葉がすごく優しくて心に響いたという、「自分が感動したポイント」を探してほしい。
自分が心揺さぶられたポイントをちゃんと文字にしてみる。

本当にシンプルに言うと、自分でブログとか日記に書き留めるだけでもいいんですよ。
ここがすごくいいとか、この台詞がよかったとかいうのを書き留めるだけでもOK。
推しの観察日記をつけてみると、3カ月後には、「あ、私ってこういうところに惹かれるんだな」というのが何となく見えてくるんです。
そして、SNSやファンの人の集まりで語ることで、また他の人の言葉を聞いて、「あ、そうそう!そういうこと、私も感じたわ」というので刺激を受け合うのもいいと思うんですね。
でもとにかくポイントは言葉にして書き留めて、それを残しておく。
好きな気持ち、感動の気持ちを残しておくというのが大切ですね。

推しの好きポイントは、みんな違って当たり前

浮世先生

たとえば、「推しの優しいところが好きだ」という場合一つをとっても、
自分も優しくなりたいのになかなか表現ができない人にとっては「憧れ」ですよね。
または、「すごい気配りをしているところが自分と似ている」という人もいる。
どちらにしてもファンの人にとっては「優しさ」がキーワードなんです。
だから、「自分はどうしてこの優しい人に惹かれるんだろう?自分が優しくしてほしいのかな?それとも自分が誰かに優しくしたいのかな?」と探究していくと、自己理解が深まっていくんです。
同じ“推し”を好きでも、どこが好きかはファンの人によって全然違ってくると思いますから、そういった“自分の中の好き”を大切にしていただいたらいいんじゃないかと思うんですね。
正解とか、こうでなきゃいけないという答えはないんですよ。
推しを通じて、たくさんたくさん自分を深めていってほしいなと思いますね。

推しがいる生活を極めたら、「転職」につながった!?

“推しのどこが好きか”を探究していくことで、新たな世界を切り開いた人もいるといいます。

浮世先生

以前、私がカウンセリングした方で、医療関係のお仕事をされていた女性がいました。
彼女は強く望んでその職業に就いたというよりは、親などのすすめもあって何となくその職業に就いたということもあって、「自分は向いてないんじゃないかな」と思って結構悩んでいたんですね。
でも自分に何が向いているのかがまったくわからなかった。
その時に、好きなタレントのライブを見たりする中で、いつもすごく華やかな衣装にすごく目がいく自分に気が付いたんです。
つまり、自分の推しが着ている衣装とか、衣装を生かした演出とか、そういうものを見た時に、「あ、私はもしかしたらこういう方に興味があるのかも」と考えて、実際に今までまったく縁のなかったアパレル関係のいろんなお仕事を探してみたら、ものすごく自分に合っている感じがした…と。
キャリアチェンジをする時には勇気も必要だったんですけれども、結局、彼女は本当にアパレル関係のお仕事をして、ものすごく生き生きと大成功したというケースがありました。

「どうして好きなの?」とか、「どういうところに惹かれるの?」と考えた時に、彼女の場合はその衣装も含めた表現とか、演出がとっても格好いいなと思ったことが実はヒントになっていて、彼女が持っていた隠れた才能を引き出していくということにつながったんじゃないかなと思います。

推しは「人生を変える幸せな存在」 

イノウエ

最後に、推しの存在というのはどういうものでしょうか?

浮世先生

推しは人生を変える幸せな存在だと思います。
推しがいることで、いろんな人に優しくできたり、仕事やいろんなことを頑張れたり、生活にハリができたり、毎日生きていて楽しかったり、推しに会うために一人で行動できるようになったり…お伝えしきれないほどの効果を私もカウンセリングを通して聞いてきました。

必要な要素は人によってそれぞれ違いますが、推し活をすることで、「心の免疫力」が上がるわけですよね。
そして推しを応援しながら、実は「自分の生き方を推しに応援してもらっている」とも言えるんじゃないかなって思うんですよね。

推しをしっかり見ることによって自分自身の理解もより深まってきますし、あと応援するということは、裏を返せば自分自身への自己肯定感を上げていく作業にもつながるということですね。

納得の連続!私が推し活をする理由

推し活歴25年、その間、コロコロと推しは変わり、現在も複数推しをしている浮気者のワタシですが、浮世先生のお話を聞いて納得するところが多々ありました。

おそらく、25年間、年を重ねるたびに自分が求めているものや憧れが変化していき、推しも変わっていったのではないかと思います。
一途に応援できない自分やある日推しに冷めてしまう自分を「飽き性な人間だな、なんでだろう…」と思い続けてきたのですが、それはそれでいいんだと思うこともできました。
(いいように解釈しているだけかもしれませんが…)

とはいえ、推し活はやっぱり「楽しい!」のひと言につきます。
気分は上がるし、落ち込むことがあってもはい上がれるし、最高の栄養剤だと思っています。
「自己理解」につながるとはつゆ知らず、そんなメリットまであったのか、推し活には!と驚く一方、それが義務にならないようマイペースにこれからも推し活をしていきたいなと思いました。

(番外編)推しが欲しいあなたへ

周囲からよく「どうやったら推しを作れますか?」と言われることもあります。
浮世先生によると、「自分は今までこんなの関心がなかったな…」と思っていたジャンルのライブに行ったり、お芝居をみたり、映画を観たりすると、新たな出会いがあるようです。
一定の年齢を超えると自分の好みがわかってきて、勝手に自分の中でセーブしてしまう傾向にあるのだとか。
その壁を取り払ったとき、あなたの“推し”との出会いがあるかもしれません!

この記事のコメント投稿フォームからみなさんの声をお待ちしています。

担当 イノウエの
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みんなのコメント(2件)

体験談
えむこ
20代 女性
2023年3月13日
私は、現在アラサーの推し活女子です。双極性障害と群発頭痛を患っています。
この病気のせいで、私はなかなか外出ができません。働いてもいません。つまり、物理的に社会と繋がることがなかなかできません。
でも、推し活のおかげで、私にはweb上にたくさん友人がいます。推しの話から日常生活の話まで、様々な話ができる素敵な友人たちです。
私にとって、まさに推し活は生きていくうえでの心の支えになっていると思います。
感想
ぽぽ
40代 女性
2023年1月8日
染み渡りました。
心が弱くなった時に出会った現在の推し。その頃より、より深く相手を知ることで、かえってしんどい思いをする事もでてきました。
でも最初の気持ちを思い出すことができました。
改めて推しのいる生活について見直せる素晴らしい特集と感じました。