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【生理・更年期を語ろう】NHK×日テレ×VOGUE JAPAN座談会<後編>#自分のカラダだから

周りに話しにくい、聞きにくい生理や更年期の悩み。

3月8日の「国際女性デー」にあわせて、テレビ、ラジオ、インターネットなどでそれぞれ発信を続けるNHKの武内陶子アナウンサー、日本テレビの岩本乃蒼アナウンサー、『VOGUE JAPAN』編集者の名古摩耶さん、産婦人科医の高尾美穂さんがメディアの垣根をこえて集まり、それぞれの体験やアンケートに寄せられたみなさんの声を交えて語り合いました。

座談会の後半は、ネガティブなイメージを変えていくにはどうすればいいかについて話しました。<前編はこちら>

(編成局展開戦略推進部 #BeyondGenderプロジェクト班)

<出席者>
武内 陶子(NHK アナウンサー)
岩本 乃蒼(日本テレビ アナウンサー)
名古 摩耶(VOGUE JAPAN 編集者)
高尾 美穂(産婦人科医)

周りに「不調の目次」を知ってもらう

国際女性デー スペシャル・コラボ座談会「#自分のカラダだから」より
高尾(産婦人科医)

「更年期のことを、更年期の不調を経験していない女性にどうしたら分かってもらえるでしょうか」という相談もよくもらうんです。私の答えは「分かってもらえることはないと思ったほうがいい」なんです。分かってもらいたいと思う相手はその不調を経験していないから。

それでは何が必要か。「知ってもらうこと」ですよね。こういうことが起こり得るということを知ってもらうことで、初めて想像力が生まれます。「この人、いま調子が悪いのかも」という想像力が生まれると、かける言葉が変わるんですよ。

メンズの皆さんも同じです。「女性の人生に起こり得る不調の目次ぐらいは知ってほしい」とよく言っています。

武内(NHKアナウンサー)

いいですね、「目次、知っておいて」。(笑)

高尾(産婦人科医)

詳しいところまでは正直知らなくてもいいんです。逆に、例えば調子が悪そうなときに「生理前だから調子が悪いんでしょ?」と言われると、よけいカチンとくるんですよ。私たち、面倒くさい生き物でね、本当に。(笑)

だから全体像として、調子が悪い可能性があるということを想像する。そうすると「何かできることない?」などという声かけにきっと変わると思うんです。

武内(NHKアナウンサー)

言い方で全然違いますよね。「更年期なんでしょ?」と「更年期なんだよね?」って。何か言葉に宿る温度とか優しさとか。声かけが変わるといろいろなことが変わるかなと思います。お互い分かり合えていないところがありますもんね。「このことに触れちゃいけない」というように。

岩本(日テレ アナウンサー)

言ってはいけないし聞いてもいけない、というのもありますよね。

武内(NHKアナウンサー)

男性も子どもも「更年期」を知っておくってことはすごくポイントだと思います。子どもの頃から、「お母さん、女の人、女性として生きる人、子宮を持っている人はそういうふうになる時期がある」ということを知っておく。そうしたら、その時にどう家族として、またはお友達として支えてあげたらいいかなって考えられるのではないかと思います。

メディアにできること

名古(VOGUE編集者)

社会全体の知識量を上げていく、課題を共有していくということがすごく大事なのかなと思うんですが、視聴者のみなさんから「メディアにもっと頑張ってほしい、情報発信して」という声も寄せられています。

名古(VOGUE編集者)

「更年期」という言葉に“老化の始まり”というイメージを持っている人が多いという声もありました。

高尾(産婦人科医)

それはある意味、大正解です。(笑) 大正解なので、それは前向きに肯定しましょう。

名古(VOGUE編集者)

メディア業界で働く身として、取り組んでみたいこと、こういう発信が有効なのではないかなと思われることはありますか。

国際女性デー スペシャル・コラボ座談会「#自分のカラダだから」より
岩本(日テレ アナウンサー)

私が担当している配信番組『Update the world』では、性教育や性の話でタブー視されている価値感をアップデートしていこうと取り組んでいます。学校で性教育を受けてから、自分が当事者になるまではタイムラグがあります。働く世代になって知識をアップデートしていくことが不可欠だと思うので、そういう発信ができたらいいなと考えています。

国際女性デー スペシャル・コラボ座談会「#自分のカラダだから」より
武内(NHKアナウンサー)

いま「#みんなの更年期」というプロジェクトでいろいろな方々を取材しているんですが、私の症状と違う方がたくさんいらっしゃいます。「ジェットコースターに乗っているみたいに毎日ぐるぐる頭の中が回って会社に行けない」とか「体重が増加してなかなか落ちなくなる」という人もいれば、「体重が減って体力がなくなって」という人も。それぞれ不安もその深さも違うと思うんですね。

これは女性だけの問題、男性だけの問題と思われないように、「みんなの問題」として話をすることが大切と感じています。男の人のサポートも必要ですし、子どもも知っておかなければならない問題です。「話す場があるんですよ」という雰囲気をみんなが醸成していくことができれば、少しずつ変わっていけるかなって思います。

更年期を乗り切るカギは睡眠と運動

名古(VOGUE編集者)

「更年期」という言葉を言いかえることで、より親しみを持ってその問題に取り組めたりすることもあるかなと思いますが、いかがですか。

岩本(日テレ アナウンサー)

以前だと「できちゃった婚」と言っていたことを最近では「授かり婚」というのがスタンダードになったり。「不妊治療」も私は友人たちの間で「カムカムベイビー」「ベビ活」などと話したりしています。

言葉のニュアンスが違うことで、よりタブーではなくて話しやすい話題にはなるのかなと思うので、言い換えができるといいですよね。

名古(VOGUE編集者)

発明したいですよね。

武内(NHKアナウンサー)

本当に。これ、きっと発明だよね。笑

国際女性デー スペシャル・コラボ座談会「#自分のカラダだから」より)
名古(VOGUE編集者)

「更年期」の言い換えや言葉の話でいうと、『VOGUE』の読者から おもしろいアイデアが寄せられています。

「解放期」「変革期」「成熟期」「円熟期」「転換期」。

みなさんもっとすごいアイデアもあったんです。

武内(NHKアナウンサー)

ちょっと気になる。(笑) 「新しい自分に出会えますよ」というメッセージがあると、頑張れる気がします。「いつか終わる」というメッセージがないから しんどいのかもしれない。トンネルの中にいる感じじゃないですか。

高尾(産婦人科医)

女性の人生って、ずっとホルモンに揺さぶられるんです。

細かな生理周期で揺さぶられる「小さな嵐」、妊娠出産は一番大きな変化をする「大嵐」、更年期はアップダウンアップダウンしながら変化する「台風」、その後は低め安定になる「凪(なぎ)」。最終的には、まさに“解放期”という表現のように、本当に初めてホルモンに揺さぶられない、自分が頑張ったら頑張っただけのご褒美がもらえるような時期が来るんです。

国際女性デー スペシャル・コラボ座談会「#自分のカラダだから」より
高尾(産婦人科医)

「台風」すなわち更年期の時期は「人生の曲がり角」「体と心の曲がり角」であることは間違いありません。例えば車を運転していて、曲がり角をトップスピードで曲がる人はいませんよね。少しスピードを緩めて、限られた24時間の使い方を自分寄りにしてほしいんです。子どものために、パートナーのために、仕事のためなど、自分以外の何かのために使ってきた時間の使い方をぜひ少しだけ自分寄りにしてほしい。

そして睡眠時間の確保と運動の習慣を持つ。ガッツリ眠れた次の日って、それだけで機嫌いいでしょう?そして自分のために運動をする。更年期のメンタルの変化として多いのが「怒りっぽい状態になる」と「超うつになって落ち込む」。特に更年期のうつ状態は、どちらも運動習慣があるだけで症状が軽いことが分かっているんです。

「曲がり角」を安全にゆっくり曲がったら、その後は「凪(なぎ)」ですから、そこでトップスピードに戻り、お仕事でもなんでも頑張ってもらえると思います。

名古(VOGUE編集者)

今のお話を聞くと、すごく安心しますし、その先の“開放期”を迎えるのが むしろ楽しみになります。そのときに何をするか見通しが立てられるように思います。

高尾(産婦人科医)

以前は“開放期”が短かく、15年、20年しかありませんでした。でも、寿命が延びた今は生理があったのと同じ年数を生きられる。そう考えるとなおさら更年期は“曲がり角”に過ぎないんです。

自分のカラダと向き合うために

国際女性デー スペシャル・コラボ座談会「#自分のカラダだから」より
名古(VOGUE編集者)

私、勝手に「セルフ・ラブ・デー」というのを意識的に作るようにしています。ものすごく働いてしまっているところもあったりするので、率先して休む。「休む自分をいたわることがすごくすてきなことなんだ」という発信も同時に大事なのかなと思います。

岩本(日テレ アナウンサー)

「仕事がしたい」「周りに迷惑をかけたくない」という思いから、「更年期なんで症状が出ているので休みます」と言うのは正直なかなか難しいと感じています。

以前取材をした企業で勤務時間を自由に選ぶことができる『セレクト勤務制度』というものがありました。生理でも更年期の症状が出ていても、介護でも自己啓発でも、自分が休みたいときに休めるような制度です。休む理由をお互い干渉しないような制度になっていけば、自分の体をより いたわりやすくなるかなと思います。

高尾(産婦人科医)

私たち自身がハッピーでいることが大事なんですよね。親子の間では、自分自身が楽しんでいるお母さんの背中を見せることが、お子さんに対しては絶対いいことなんですよ。

私も医者として私が健康そうである状態が必要だと思っています。自分はもともと運動が好きで、またスポーツドクターでもあるので運動をしていますが、「こんなに幸せだよ」「こんなにいい形で年齢を重ねられるよ」ということを体現していくことが必要と思います。

みなさんも大変なこともあると思いますが、ぜひ自身が本当にハッピーな毎日を過ごしていただきたい。

武内(NHKアナウンサー)

更年期だと失っていくものがいっぱいあるんですが、あるものがダメになったら、代わりに何かないかなと思って探せるようになってきて、ちょっとハッピーな気持ちになって。

自分で最近編み出したんですが「マリー・アントワネット方式」って言ってるんです。「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」っていう、すごくわがままなことだと思っていたんですが、「なんか目尻が下がった。でも優しい顔になったからいいじゃない」とか。「こっちがダメでも、優しくなったからいいじゃない」みたいに。(笑)

岩本(日テレ アナウンサー)

20代前半で働き始めて、「出産は」「どこで産休育休取るんだろう」などよく分からない不安の中で、「何歳まで働くのか」などのキャリアデザインもなかなかできない。でも「マリー・アントワネット方式」が待っていると思うと、仕事がしやすくなるかな、もっとみんな考えやすくなるのではないかなと思います。

名古(VOGUE編集者)

「私は大変なんだ。誰か助けて!」という叫びも含めて届けていけたらと思います。

高尾(産婦人科医)

「こういう選択肢があるよ。どれか選んでみて」ということを一緒に伝えていただきたいですね。

名古(VOGUE編集者)

私たちメディアが、「たくさん選択肢がある」ということを今まで以上に発信していく必要がありそうです。「これだけたくさんの選択肢があるんだから、私はこれを選んでもいいじゃない」というように安心して実行できる社会を、空気を醸成していけたらいいなと思います。今日はどうもありがとうございました。

(座談会の<前編>は「生理・更年期を語ろう #自分のカラダだから<前編>」をご覧ください)

座談会の内容は、3月8日「国際女性デー」に、Eテレ『ハートネットTV』、R1『武内陶子のごごカフェ』(下記リンク)で放送しました。

※座談会の内容は以下でもご覧いただけます(NHKサイトを離れます)

●『VOGUE CHANGE』
https://www.vogue.co.jp/change/article/menopause-media-collaboration-talk

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