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HRTとは 更年期症状を改善するホルモン補充療法

女性ホルモン「エストロゲン」の減少によって引き起こされる更年期症状。改善に有効と考えられている治療の一つが、ホルモン補充療法(HRT)です。

欧米での普及率は約40%とされていますが、日本ではまだ広く浸透していません。このHRTについて、取材班には「もっと知りたい」というたくさんの声が寄せられています。

HRTの有効性や留意点について、更年期治療の専門家に聞きました。

「#みんなの更年期」取材班

NHKスペシャル「#みんなの更年期」

2022年4月16日(土)総合・夜10時放送
※放送から1週間は見逃し配信をご覧いただけます。

疑問にこたえてくれるのは日本女性医学学会 理事長 若槻明彦さんです。

日本女性医学学会 理事長 若槻明彦さん
科学的根拠に基づく安全な治療の指針となる「HRTガイドライン」を長年監修。国内外におけるHRTの実態や最新知見に詳しい。

ホルモン補充療法ってなに? どう使うの?

▼友人が“ホルモン補充療法”で更年期症状が劇的に改善したと言っていました。詳しく知りたいです。(愛知・50代、和歌山・50代など多数)

▼“ホルモン補充療法”をする時は毎回病院に通わなければいけないのでしょうか。(埼玉・40代)

▼「更年期障害は45歳~54歳までだから、ホルモン補充療法は55歳以上の人には保険適用されません」と言われました。(愛知・50代)

「ホルモン補充療法は、薬で女性ホルモンを投与し 女性ホルモンの減少程度をゆるやかにしていく治療です」

更年期症状の一番の原因は、女性ホルモン“エストロゲン”の急激な低下です。

「ホルモン補充療法(Hormone Replacement Therapy=HRT)」は、このエストロゲンを薬で補う治療法です。少量のホルモンを補うことでエストロゲンの減少程度をゆるやかにし、徐々に身体を慣らせば、症状が治まるというものです。

「薬は、自分で!“飲む・貼る・塗る”の3通り。比較的安価です」

薬の種類は3つ、飲むタイプ・貼るタイプ・塗るタイプがあります。
投与は自分で行い、何度も病院に通う必要はありません。
ただ、子宮がある人・手術などで摘出した人で投与方法が違います。

「症状はよくなっているか?」「出血や乳房痛などの副作用はないか?」などを医師に診てもらうために、数か月に一度受診する必要があります。

また年に一度、乳がん検査・子宮がん検査を受けることも大切です。

コストは使用する薬剤によって少し違いますが、診察代・検査代・薬代などで1か月2000円ほどだと思います。保険適用に年齢制限はありません。エストロゲンが減少し、更年期症状があると医師が判断すれば、いつでも保険診療で行えます。

ホルモン補充療法 なんだか危なそう !?

▼ホルモン補充療法をすると乳がんになると聞いたので、あまりやりたくありません。(東京・40代)

▼医師から「長く服用すると乳がんを発症するからやめましょう。不老長寿の薬じゃないんだから」と言われました。(千葉・50代)

▼不妊治療(体外受精)で数年間ホルモン補充をしていたので、さらに更年期でHRTをすると乳がんリスクが高まるのではと不安です。(東京・50代)

「医師による適切な管理下で処方している限り、安全性の高い治療法 最新研究で、より安全な投与方法・お薬の開発が進んでいます」

▼子宮体がん
エストロゲン剤と黄体ホルモン剤を同時に服用すれば、発生リスクはありません。

▼乳がん
HRTが乳がんのリスクに及ぼす影響は非常に小さいというのが、世界では標準的な考え方です。

20年ほど前、米国で「ホルモン補充療法により乳がんのリスクが高まる」という報告がありましたが、その後の研究で1000人の女性が1年間HRTを使用した場合での乳がんの増加は1人未満で影響はとても小さいとわかっています。

リスクを限りなく減らせる投与方法も研究が進んでいます。天然型のホルモン剤を使用したり、貼るタイプの薬を選択したりすることでより安全に行えます。

最近インターネットで個人でホルモン製剤を購入するケースもみられます。副作用を知っておくことや必要な量や正しい期間で飲むことがとても大事なので、注意してください。

不妊治療でのホルモン補充は、どういったホルモン剤を使用していたかわからないので確実な答えは難しいですが、一般的に排卵を誘発したり、着床や妊娠継続のためのホルモン剤によってリスクが高くなるというエビデンスはないと思います。

どんな症状に効き目がある?効果がないこともあるの?

▼約2年ホルモン補充療法を試してみましたが、あまり効果を感じられませんでした。(東京・50代)

▼いまは漢方を飲んでいますが、ホルモン補充療法も始めた方が良いですか。(東京・50代)

「欠乏しているエストロゲンを適切に補えば、様々な全身症状に効果がみられます」

特にホットフラッシュには非常に効果的で、約9割の方が1か月ほどで改善しています。

ただ精神症状や関節痛などは効果がでるまで時間がかかることもあるので、3か月ほど試してみると良いと思います。

また、漢方とホルモン補充療法は併用することも可能です。医師に相談し、併用したほうがよいか話し合ってみてください。

誰でもできる治療法なの?

▼高血圧なのでホルモン補充はできないと言われました。血栓症のリスクがありますか。(東京・50代)

▼わたしはBMI の数値が高く血栓が心配なので、ホルモン治療はできないと言われました。明らかにホルモン治療が原因で血栓ができた人がいるのでしょうか。また血栓が出来ているのか経過観察してもらうことはできないのですか。(60代) 

▼わたしのような脳疾患経験者にはホルモン補充療法は無理なのでしょうか。(愛知・50代)

「慎重に投与すれば治療可能なケース、絶対にやってはいけないケースもあります」

高血圧でも、薬などで血圧をコントロール出来ている場合、HRTを行うことは可能です。

血栓は、肥満の方や高齢者では懸念されますが非常にまれだと思います。口から薬を飲んだ場合、肝臓で成分が分解され、血栓が発生する可能性があります。貼るタイプの薬を使用すれば、皮膚から成分が直接血管に取り込まれていくため、血栓ができるリスクは少なくなります。心配な方は、医師と相談してみてください。

治療ができない人は、脳卒中や心筋梗塞、冠動脈疾患、重度の活動性肝疾患、血栓性静脈炎などの既往歴がある人や、現在妊娠中の人。乳がんや子宮内膜がんの治療中の人です。

そうした場合は、漢方治療も一つの方法です。

治療に使われることが多い漢方は、「加味逍遙散」(かみしょうようさん)「当帰芍薬散」(とうきしゃくやくさん)「桂枝茯苓丸」(けいしぶくりょうがん)です。症状だけでなく、その方の体力や体質も考慮し、それぞれに合った漢方薬を処方してもらえます。

副作用はある?

▼ホルモン補充療法を始めたらものすごく太ってしまいました。(大阪・50代)

▼黄体ホルモンを補充するとものすごい眠気に襲われてしまうため、断念しました。(神奈川・50代)

「副作用はありますが、半年ほどで気にならなくなるでしょう」

ホルモン補充療法の副作用で皮下脂肪が増えることは考えにくいです。ただ、体調がよくなり食欲が増進したという患者さんは見受けられます。活動的になり食欲が戻っていくのは良いことなので、食事もコントロールしながら生活してみてください。

天然の黄体ホルモン剤は鎮静作用があり眠気をひきおこす可能性があるため、夜寝る前に飲んでください。一方で、不眠症の方には睡眠効率があがるとの報告もあります。

いずれのホルモン薬剤も使用してみて合わなければ、違うタイプに変更することができます。

副作用は「不正性器出血」「おりもの」「下腹部痛」「乳房の痛みやハリ」などが多いです。

ただし2~3か月で軽減し始め、半年ほどでほとんどなくなります。

治療はいつから始められる?

▼更年期症状が辛いからHRTをお願いしたのですが「そこまでエストロゲンは下がり切っていない」と言われました。(埼玉・40代)

▼まだ生理が続いていますが、不眠や気分の落ち込みなどの症状があります。医師には閉経後6か月経たないとHRTは効果がないと言われました。いつになったら始められますか。(神奈川・50代)

「月経不順や、更年期症状が表れていると医師が判断すれば、HRTはいつでも始めることができます」

医師が診断の目安とするホルモン値はありますが、必ずしもその目安の値を下回っていないとHRTが始められないというわけではありません。閉経前でもHRTは始めることは可能で、効果もあります。

40歳未満で無月経となる、早発閉経の方は、30代や40代前半から始めても大丈夫です。

治療のやめどきは?

▼ホルモン補充療法のやめどきが分かりません。やめたときの副反応はありますか。(東京・50代)

▼HRTを続けた人がどうなるのか知りたいです。(岩手・50代)

「何年までという期間の制限はありません。様々な病気の予防目的で、欧米では閉経後、長く続ける人もいます」

何年以内など、期間の制限はありません。
更年期症状が改善し、日常生活を不自由なく送れるようになれば、やめてもよいでしょう。

急にやめると、これまで抑えられていた症状がぶり返すこともあるので、徐々に減らしてみてください。

更年期症状の改善だけでなく、閉経後に増加する動脈硬化や心臓病の発症予防効果、骨粗しょう症を治療する効果など、様々なメリットもあります。国際閉経学会でも「HRTの投与期間に一律の制限を設けてはならない。個々の症例ごとに検討して決める」としていて、欧米では閉経後も長く続ける人もいます。

ただ、日本では更年期症状が改善したと医師が判断した時点で保険適用外となります。

全女性に知ってほしい !!

「更年期は第二の人生の準備期間、我慢しないで」

ホルモン補充療法の治療は婦人科で受けることができます。つらい症状を何とか改善しようと、ご自身で一生懸命調べて考えたうえで受診する方も多くいます。日本で普及率が高くないがゆえに、もしかしたらせっかく受診しても、ホルモン補充療法の治療について医師との意思疎通がうまくいかないこともあるかもしれません。そういう時は、専門の先生を探すこともひとつの方法です。

更年期症状は我慢するものではありません。一過性だからと過ぎ去るのを待たないでください。
女性の、一生の健康のカギとなるのが更年期なのです。この時期に自分をどうメンテナンスするかで、それ以降の将来が変わります。人生90年の今、女性は閉経後30年以上も生きるのですから、その人生が心地よいものであるように、適切な治療につながってほしいと思います。

更年期症状の治療について相談窓口

○専門医・専門資格者を見つけたい
・日本女性医学学会のホームページ  
https://www.jmwh.jp/

○更年期症状について知りたい・相談したい
・女性の健康とメノポーズ協会のホームページ 
https://www.meno-sg.net/
 電話相談 03-3351-8001 
(火曜日・木曜日 11:00~16:00 ※8月はお休み )

関連番組の放送予定

NHKスペシャル「#みんなの更年期」

2022年4月16日(土)総合・夜10時放送
※放送から1週間は見逃し配信をご覧いただけます。

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