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更年期で“漂流”した私が医療に望むこと

更年期についてニュースや番組で伝え続ける中で、当事者のみなさんから多く寄せられるのが「助けてくれる医療機関が見つからない」という声です。

医療過疎地の話ではありません。首都圏や人口規模の大きい地方都市に住む人たちが「いくつもの医療機関を転々としている」「病院探しに疲れ果てた」と訴えているのです。

一体何が起きているのか。そして、更年期症状が現れたとき、どうすればいいのでしょうか。2人の当事者たちの声から考えます。

「#みんなの更年期」取材班

寄せられた声①「必要な医療を受けられない」人口40万の地方都市でも…

「更年期は隠さなければならないことではないので」。

そう語って取材に応じてくれた平山久美さん、50歳です。

更年期医療をめぐる地方の現実を知ってもらいたいと投稿フォームに声を寄せてくれました。

平山さんは6年前、10年以上すごした東京から実家のある関西に移り住みました。

専門職として女性の体について学び更年期の知識も持っていたため、47歳で生理が不規則になると、「更年期の症状が重くなる前にかかりつけの婦人科を見つけておきたい」と病院探しを始めました。

しかし、そこから思いがけない苦労に直面することになったといいます。

助けてくれる医療機関はどこに

東京にはたくさん婦人科があり、仕事の合間などに気軽に受診できていたので同じ感覚で探し始めましたが地元の実態は全く違いました。

私が暮らす街は、人口約40万規模の都市。婦人科を専門とする医療機関は数が限られ、ほとんどが産科と併設しています。妊婦がひしめく待合室で複雑な思いで受診しました。

以前、東京の婦人科で処方を受けたことがある漢方薬を希望すると、3か月分をまとめて処方すると言われました。この病院で私にしか処方しない薬だからという理由でした。症状を丁寧に診てもらえなかったこともあって、別の医療機関を探すことにしました。

次に受診したのは、地域で唯一の婦人科専門医。予約をとろうとすると3か月待ちでした。受診を待つ間に更年期の症状が始まり、不眠や腰痛、関節痛、首にも痛みが出始め、動かすことができなくなってしまいました。昼間しか開いていなかったので仕事を休んでようやく受診。すぐにホルモン補充療法を始めることになりました。

ところが症状はすぐには改善せず、特に首の痛みが激しくなり、すぐに再診を希望しましたが、また3か月待たなければならないと言われました。

仕方なく近所の産婦人科を訪ねて相談しました。すると、高齢の男性医師は保健体育の授業で配られるようなプリントを見せて生理についての説明をはじめたのです。

「先生、そのあたりの事は当然知っています。30年生理と生活していますから」と言うと、「まずは更年期を認めるところからだ」と諭されました。その更年期の症状を治療したくて受診しているのに、噛み合わないやりとりに不信感がつのりました。

医療に望むのは「丁寧な問診」

新たな医療機関を探す気力がなくなくなる中、追い打ちをかけるように新たな症状が次々とあらわれます。


むくみの症状のために腕を思うように動かせなくなりました。


最もつらかったのは、のどがつかえるような感じがして食べ物をスムーズにのみ込めなくなったこと。


おにぎりを食べているときに喉が詰まり息ができなくなったこともありました。


最近になって、ようやく光が見え始めました。かかりつけの整形外科に併設された漢方外来で1時間ほど問診を受けて処方された漢方薬。


そして、海外で一般的に使われているというクリームを使い始めて症状が楽になり始めました。


更年期には終わりが来るのでそれまで今のやり方で付き合っていくつもりです。


私の場合はいろんな症状があったので、1時間じっくりと話を聞いてくれる先生でなければ効果的な治療にはたどり着けなかったと思います。


自分なりに頑張って医療機関を探してきましたが、ここに来るまで2年かかりました。


当事者として望むのは、どの地域でも更年期について丁寧な問診を受けられる医療の環境です。

寄せられた声② 治療にたどり着くまで10年「医療につながる窓口を」

首都圏在住の優子さん(仮名)、54歳。症状が出始めてから効果的な治療にたどり着くまでに実に10年もの歳月がかかったといいます。

さまざまな症状に悩みながら病院を転々としてきましたが、更年期による症状だと診断されたのは去年のこと。優子さんは更年期の症状について相談できる環境が職場などで身近になってほしいと感じています。

更年期とは思わないまま 医療機関を転々と…

不調を感じるようになったのは43歳のころ。なまりのように体が重く感じるように。当時は訪問看護の仕事をしながら転職に向けた勉強もしていたため、疲労がたまっているだけだと考えていました。

その後、転職しましたが、思考力が低下して指示されたことに対応できないなど、仕事に影響が出始めます。更年期のためだとは思い至らず、なぜ自分はこんなに仕事ができないのかと自分を責めていました。

やがて頭痛と血圧が上がる症状がひどくなったので循環器内科を受診。医師からは「体重を減らしましょう」と指導されました。疲れやすくなり、夜は無気力な状態でテレビをみていました。夫から怠けていると言われて落ち込みましたが、仕方がないと思っていました。

「ホルモン値」を調べても 血液検査をしても…

50代になると症状は悪化し、いったん生理になると経血がなかなか止まらなくなりました。更年期ではないかと産婦人科を受診すると、「ホルモン値がまだ動いているので更年期ではないのではないか」と言われました。


その後、頭痛がひどくなり、血圧も上がったことに加え、極度の眠気に襲われて日中の活動が困難になり、再度別の循環器内科を受診。そこでは血液検査をしましたが「原因が分からないので、別の診療科に行った方が良い」と言われました。


去年、新たに受診した婦人科で、ようやく医師から「更年期で自律神経が乱れている影響によるものだ」と言われ、治療が始まりました。今は漢方薬の効果で体調が良くなってきました。

ひとりで悩む女性を減らすために望むこと

この3年ほどは、頭痛やだるさのほかに、起床時の手の関節のむくみ、手のこわばり、血圧の上昇、などの症状があり、不安を感じてきました。ようやく診断を受けたとき、「自分は更年期だったんだ」と、これまでの体調不良が腑に落ちました。

自分のことは何でもわかっているようで、わからないものだと痛感しました。私は働いているので、企業の中で管理職世代の女性が相談できるカウンセラーがいればいいのにと思います。自分に合う病院にたどり着くことが難しいので、更年期に関する研修を受けた看護師や保健師が窓口になってもらえると安心です。

医師たちが指摘する「更年期症状・治療の難しさ」とは

なぜ二人は自ら医療を求め、実際に複数の医療機関で診察を受けてきたにもかかわらず、長い間、効果的な治療に結びつかなかったのでしょうか。NHKでは産婦人科の医師98人にアンケートを実施。そこからは更年期の症状を診察する上での医師側から見た難しさが浮き彫りになりました。

最も目立ったのは症状が多様で診察が難しいという点でした。そして、更年期の時期にはホルモン値が乱高下するため、一概に「高いから更年期ではない」と判断することはできず、診断は簡単ではないといいます。そのため、症状を丁寧に聞き取ることが必要になってきますが、問診に時間がかかる割には診療報酬が見合わないという点を指摘する医師も少なくありませんでした。

産婦人科医 小川真里子さん

産婦人科医はお産もやらなければならない、手術も入ったり、外来もあったりするという忙しい日々のなかでどうしても更年期症状の患者さんを診るのは時間がかかってしまう。しかも診察代や治療費として得られる金額は高くないという残念な問題があります。産婦人科にかかりやすく、相談しやすい環境になるといいと思います。

更年期の症状には、例えば「抑うつ的な気分」などの精神症状が含まれますが、精神科と産婦人科とでは診療報酬が大きく異なります。

初診料と再診料はそれぞれ同じですが、精神科の場合は患者と話す時間に応じて診療報酬がつきます。産婦人科の場合は、同じ時間話しても加算はされないのです。丁寧に更年期診療を行っても医療機関として経営が成り立つような制度設計を求める声は、今回多くの産婦人科医から聞かれました。

適切な治療につながるために必要なことは・・・

こうした現状の中で、ひとりひとりが更年期症状にどう対処すればよいのか。日本女性医学学会理事の寺内公一さんに話を聞きました。

病院を受診することへの抵抗感や迷いなどから、インターネットの情報や、市販のサプリなどで解決しようとする人もいますが、寺内さんは「更年期症状を自分1人で解決するのはかなり無理がある」といいます。

日本女性医学学会理事 寺内公一さん

1人で悩んでいるうちに症状が重くなって生活習慣が乱れ、さらに状況を悪化させてしまうこともあります。「更年期障害」ではなく、別の病気が隠れている可能性があります。「まずは病院へ」が大事です。

現状では、産婦人科の医師全員が更年期障害を得意にしているかというと、そうではありません。婦人科の治療に満足できないという方は、分娩やがんの手術を専門にする病院へ行っている可能性もあります。

日本女性医学学会では、更年期障害に積極的に取り組んでいる「女性ヘルスケア専門医・女性ヘルスケア指導医」の情報をホームページに掲載しています。これを病院選びのひとつの基準としていただくのもいいかもしれません。

最近では、医師が監修を行うオンラインの相談サービスなども登場していますので、そういったサービスを活用するのも一つの手だと思います。

ぜひ「治療の伴走者」を見つけていただきたいです。

※各相談窓口のリンクをクリックすると、NHKサイトから離れます。

更年期症状に詳しい専門医・専門資格者は
▼日本女性医学学会
https://www.jmwh.jp/※NHKサイトを離れます

更年期症状・治療に関する相談は
▼一般社団法人 女性の健康とメノポーズ協会
https://www.meno-sg.net/※NHKサイトを離れます
電話番号 03-3351-8001
(火曜・木曜 11~16時 無料相談実施 8月は休止)

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みんなのコメント(5件)

感想
1 の平山です
50代 女性
2022年3月4日
偏りがあるのでは?というお声がありましたので、補足をさせていただきます。
 私自身も全てが「更年期症状」ではなく、全て別ものとして対処してきました。身体を使う仕事をしている事もあり、最も多く整形外科にかかります。45歳頃から今までとは違うケガ以外の諸症状が出はじめ、酷い時はブロック注射などで対処してきました。そして47歳、生理不順から婦人科を受診、このあたりから45歳以降の外科的症状が一気に悪化。並行して整形外科には通院していましたが、整形外科医の口から更年期の助言はなく、更年期を結びつけることはできませんでした。1時間問診をして下さったのは、この整形外科の中にあった「漢方外来」の医師で、整形外科医でも婦人科医でもありません。予約をしたので1時間の初診を確保できたのです。その医師の処方で、45歳以降からの症状が改善しはじめたのです。後付けで全てが更年期と繋がった。というのが私の感覚です。
あさこ
50代
2022年2月28日
今回、更年期について「あさイチ」と「あしたも晴れ!人生レシピ」の両番組を見させていただきました。
産婦人科の診療報酬は時間加算がないと「あさイチ」で知ったあとで「あしたも晴れ!人生レシピ」で天野先生の受診連絡票のお話を聞きました。(過去の病歴や現在の症状について詳細に記したものを受診前に送付)
天野先生だからこそ、おできになることかも知れませんが問診の時間短縮に繋げるためにも良い方法だと感じました。技量の課題はありますが。
天野先生からは「自分のからだのことなので、まずは更年期に関する本を通読して」ともっともなお話もありました。私は更年期で乱れた自律神経を整える呼吸法等、自分でできることもあると読んで知り助けられました。
春子さんのAI活用というご提案、なるほどです。
医師が監修を行うオンラインの相談サービス、色々な方の体験談も参考になりそうです。
むく
50代 女性
2022年2月27日
整形外科で働く看護師です。ケース1で1時間じっくり症状を聞いてくれる病院でなければ治療が出来ない云々とありますが、午前の外来はだいたい4時間、その25%を1人の患者の問診に費やす事は出来ないと思います。更年期障害で出た症状で不眠、腰痛、頚部痛、肩が上がらない、、なぜこれを全て更年期からと決めつけて婦人科で相談しようと思うのですか?不眠以外は整形外科に受診される症状で偏りのある記事のように感じました。
春子
女性
2022年2月27日
お医者さんは病院へきてください。とおっしゃいますが、医療に詳しくないから来ているのに、病院いくたび、医者は話も聞かずに、あんたは更年期じゃないとか、更年期はすることないと、お説教します。そんなに、見た目ですぐわかるなら、苦労しません、と思います。
早く、AIとかで、この症状なら、あなたは、この病院のこの医者にかかる、という選別がされないと、医療難民状態で、何より、お金、時間がかかります医者も、アップデートして欲しいですね。
クリン
60代 女性
2022年2月26日
今から20年位前学校の非常勤講師をしていた頃、主任の先生のストレスの為か、不正出血が止まらず、貧血になりました。健康診断で保健師さんに婦人科を受診するよう勧められ受診しました。その時出血を止める為、ピルを処方して頂き良かったです。今考えると更年期症状だったと思います。しかし副作用で女性ホルモン剤のせいかワキ毛などが無くなりました。50歳過ぎていたのであまり気になリませんでした。