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ジェンダーをこえて考えよう #BeyondGender

ジェンダーをこえて考えよう #BeyondGender

“男らしさ・女らしさ”、夫婦別姓、性教育・・・。
社会や文化がつくりだしたジェンダーや固定観念に縛られていませんか?

誰もが “ありのままの自分” で生きられる社会になるように
ジェンダーをこえて、みなさんと一緒に考えながら取材を進めていきます。


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#Beyond Gender
2022年1月21日

"自分メンズなんだよね" 女子サッカーと「性の多様性」 ありのままの自分を発信する選手たち


今、女子サッカー界から「性の多様性」を発信する動きが加速しています。

東京オリンピック・パラリンピックでは性的マイノリティーであることを公表した選手は過去最多の220人あまり、サッカー女子で40人を超えました。

私がサッカーをやっていた16年間に出会った仲間にもLGBTQなどの人が大勢います。

“ありのままの自分”を表現しやすい土壌がある女子サッカー。

それぞれのカタチで発信し始めた選手を取材しました。

(仙台放送局放送部 ディレクター 内藤孝穂)


“性の多様性”を重視する女子サッカー界

開幕を宣言する岡島喜久子チェア 2021年9月撮影

昨年9月、日本初の女子プロサッカーリーグ、通称「WEリーグ」が開幕しました。

その理念の1つとして打ち出したのが、LGBTQなど性についてのさまざまな考え方を認める「性の多様性」です。

リーグトップの岡島喜久子チェアは開幕の挨拶で「日本のジェンダー平等を前に進める覚悟のリーグです」と宣言しました。


プライドマッチにレインボーフラッグを持って入場する選手たち 2021年5月撮影

女子サッカーは以前から「性の多様性」への理解促進に力を入れてきました。

全選手・指導者を対象とした性の多様性に関する研修会を開いたり、「プライドマッチ」と呼ばれる啓発イベントを東京や宮崎など全国各地で行ったりしています。

プライドマッチでは選手たちがLGBTQについて話すトークショーを行い、選手みんなでネイルや靴のひもを性の多様性を象徴するレインボーにしてプレーを披露しています。

「自分 "メンズ"なんだよね」
もともと女子サッカー界には“メンズ”という言葉があります。

正式な定義はありませんが、性的指向(好きになる性)が女性であったり、性別表現(表現する性)が男性寄りであったりと、男性的な要素を表す言葉です。

「自分、メンズなんだよね」という会話が選手間で交わされるなど、「男性・女性」と同じような感覚で自分を表現する言葉の1つとして使われています。


選手たちのレインボー色のネイル

私は小学生から大学生までサッカーをプレーしました。所属していた部活動や海外遠征などで出会った仲間にもLGBTQの人は大勢います。

さらにもっと多様でいろんな性のあり方を持つ人たちが身近にいました。

ありのままの自分の性を表現しやすい環境があり、その概念のあいまいさが優しい世界を生んでいるように思います。

1980年代にサッカー女子日本代表選手として活躍した経験をもつWEリーグトップの岡島チェアは、女子サッカーから発信することで“誰もが自分らしく生きられる社会”をめざしたいといいます。


WEリーグ 岡島喜久子チェア

WEリーグ 岡島喜久子チェア
女子サッカー界というのはLGBTQの選手たちが普通にカムアウト、話ができる自由な雰囲気があります。
ここから発信していくことで、自分の思ったとおりに生きられる社会を目指したい。企業、教育機関や他のスポーツ団体も巻き込んで大きな渦にしていきたいと思います。

“うそなく生きたい“ ヴィアマテラス宮崎 齊藤夕眞選手
選手自らが発信する動きも始まっています。

性的マイノリティーであることを公表しているサッカー選手の齊藤夕眞(ゆうま)さん、28歳。かつて日本代表選手としても活躍したことのある齊藤さんは小学生のころから心と体の性が一致しないことに悩まされてきました。


元サッカー女子日本代表 齊藤夕眞さん

トップレベルの選手になってからも、所属する企業から女性用の制服を着るように求められる度に違和感を持ったといいます。

女性らしいことばや振る舞いを求められることに耐えきれず、齊藤さんはおととし大好きなサッカーを辞め、男性として生きる決意を固めました。

サッカー女子日本代表選手 齊藤夕眞さん
キュロットみたいに下が半分に分かれていてスカートに見えるような制服でした。本当は着たくないという思いはあったけど、そういうことを言っても会社にもチームにも迷惑をかけるとなんとなく思っていました。

女性として将来生きていくイメージは自分の中でなかったので、『だったら男性だよね』って不安がものすごく出てきて、サッカーを一番に考えられなくなりました。

”自分を好きになれた”一方、サッカーへの思いも・・・
齊藤さんは戸籍上の名前を「“あかね”から“夕眞”」に変更。外見も変えました。

ホルモン療法や胸の膨らみを減らす手術を行ううちに齊藤さんが長年感じてきた不安は解消され、「自分にうそをつくことなく生きられるようになった」ことで以前よりも自分を好きになれたといいます。

しかし男性として生きる決断をしてサッカーから離れた生活が始まると、どこかもの足りなさを感じるようになりました。

いくら職場で成果をあげたとしても、サッカーで感じた喜びや達成感には代えられないことに気づいたそうです。

「ホルモン療法」がドーピング違反につながることも
齊藤さんは再びサッカーをするためにチームを探し始めました。

そこで直面したのは「性的マイノリティーである自分を受け入れてくれるチームがあるのか」、そして「再びサッカー界に復帰することができるのか」という不安でした。

かつて齊藤さん男性ホルモンを身体に投与する「ホルモン療法」を受けていました。

その後、体調を崩してホルモン療法を中止したものの、大会やリーグに参加する選手を対象にしたドーピング検査で、男性ホルモンの規定値を上回ってしまうことを懸念していました。男性ホルモンを意図的に増幅させることはドーピング違反にあたります。



そんなときに出会ったのが、2020年に宮崎県で活動を開始したチーム「ヴィアマテラス宮崎」でした。

齊藤さんがチームの運営陣と自身の性について話したところ、返ってきたのは「それもあなたの個性。全く問題ないし一緒にサッカーをしよう」という言葉でした。
齊藤さんは強い安心感を得たといいます。

サッカー女子日本代表 齊藤夕眞さん
自分がチームにいるだけで『男みたいなやつがいるぞ』と言われるなど、チームも一緒に被害を受けるのではないかと怖かった。

でも自分がLGBTQ当事者であることを最初に話したときに、『全然大丈夫。いろいろあっていいよね』と言っていただいて、すっと受け入れてもらえた感覚がありました。
“このチームは自分の居場所だ”と感じました。

再び女子サッカー界へ 見つけた自分の居場所
その後、サッカー界へ復帰するためにホルモン値の検査を受けたところ、男性ホルモンは規定値以下でした。

2020年12月、齊藤さんは2年ぶりにサッカー界に復帰するとともに、自ら性的マイノリティーであることを自身のSNSで明らかにし、チームからも社会に公表しました。現在は齊藤さんが参加する地域リーグから了承も得て、試合に出場しています。


チームメイトと練習に取り組む齊藤さん


齊藤さんのチームメイトに話を聞くとー

チームメイトA
うーさん(齊藤さん)は、いつもすごく明るくてチームのムードメイカー。試合になると超真剣。勢いのあるエースストライカーです。
SNSで自分のことを発信するなど、自分に自信を持っていて、堂々としていてかっこいいと思う。

チームメイトB
自分の将来に向けて一歩踏み出した齊藤さんの勇気や強さは、自分にとっても刺激になった。

去年、ヴィアマテラス宮崎はチームのエースストライカーである齊藤さんの活躍もあって、初めて全国大会への切符を手にしました。

サッカー女子日本代表 齊藤夕眞さん
自分自身の気持ちにウソをつきたくない、自分が納得する生き方をしたい。

それに自分がサッカーを通じて『LGBTQって何?』という感じではなくて、自分を表現しながら生きているみたいな、恥ずかしいことじゃない、そんな感じにとらえてもらえる発信ができたらいいなと思います。


2021年9月撮影 全国大会が決まった試合の齊藤さん(後列右から3番目)とチーム

“悩む人の助けになりたい” 自らの経験を発信
多くの人に支えられ、再びサッカー界に戻った齊藤さんはかつての自分と同じように悩んでいる人の助けになりたいと、チームの本拠地である宮崎県新富町でパートナーシップ制度*の導入へ向けた会議に参加したり、WEリーグの研修会で講師を務めたりしています。
*パートナーシップ制度…LGBTQのカップルを自治体が婚姻に準ずる関係として証明する制度。宮崎県新富町は2021年9月に導入。

去年7月にはWEリーグの選手たちを対象にした性の多様性を考えるオンライン研修会に参加。元日本代表選手として “女子サッカー” でプレーすることについて、当時抱いていた葛藤などそれまで胸に秘めてきた思いを語りました。


WEリーグの性の多様性に関するオンライン研修会で話す齊藤さん 2021年7月

司会
かつて、“女子サッカー”でプレーすることに葛藤はありましたか?

齊藤さん
日の丸を背負ったときや働いているときに、女なのか男なのかわからないような自分が『何かを表現してもいいのだろうか”』とか、チームや会社への影響を気にしていました。
当時は『女子サッカー選手として自分はこうあるべきだと決めて過ごしていたとき』と『ありのままの自分でいられるとき』を使い分けていました。

司会
だれかに相談していたのでしょうか?

齊藤さん近くにいてくれる友達や職場の上司だったり、理解してもらいたいなという人には相談していました。

最後に伝えたのはそうした経験をしたからこそ気づいた人生の選択に関する切実な思いでした。

齊藤さん
胸の(膨らみを抑える)手術までは自分の意志でやりました。だけど声が高いのが嫌でホルモンを投与したこと、女っぽい名前が嫌で改名したことを振り返ると、それは(自分自身が欲するというよりも)世間体を気にしていたからというほうが強かったと今は思います。

今後サッカーを辞めたときに手術をしようと思っている人がいるかもしれないですが、それは自分の意志なのか、それとも世間体を気にして“世の中がこうだからこうしなきゃいけない”というふうに思ってのことなのか。

すごく大事にしてほしいです。



一度は男性として生きることを決めた齊藤さんですが、今は“男でも女でもない齊藤夕眞として生きる”と話します。

サッカー女子日本代表 齊藤夕眞さん
いま『自認する性』は男性ではないです。最近はLGBTに加えてQ(クイア、クエスチョニング)などいろいろな言葉が出ていますが、言葉の概念にとらわれない、男でも女でもない齊藤夕眞がいまの自分だと思います。

誰もが自分が“生きたい性”を自信をもって生きることができる、互いに認めあえる社会をめざして、齊藤さんの発信は続きます。

海外で気づいた「隠すことではない」 下山田志帆選手

下山田志帆さん

2021年リーグまでスフィーダ世田谷FCの選手としてプレーしていた下山田志帆さん(26歳)も積極的な発信を続けています。

3年前、現役アスリートとして日本で初めて性的マイノリティーであることを公表して以来、LGBTQを支援する団体のイベントや講演会を通じて自らの経験を語ってきました。

大学を卒業後にドイツへ渡り、女子サッカーリーグで2年間プレーしたときに、チームメイトから当たり前のように「彼氏はいるの?」ではなく「パートナーはいるの?」と聞かれたことや、選手たちが同性のパートナーを連れてきて監督やファンに紹介している様子を見て、「隠すことではないんだ」と気づいたそうです。

当事者の視点から『生理の悩みを軽減する製品』を開発
去年、下山田さんは新しい製品の開発を手がけました。液体の量によっては1枚で過ごすことのできるくらい高い吸水力のある下着です。

きっかけは、自らの経験を発信してきた下山田さんのもとに寄せられるようになった、生理に関するLGBTQ当事者の人たちからの声でした。

「毎月、生理がくるたびに自分の身体の状態と性自認の不一致を突きつけられます」

自分と同じ悩みを抱えいる人たちがいることを知り、開発に踏み切ったといいます。



スフィーダ世田谷FC 下山田志帆さん
生理に対して向き合わなければいけない自分がすごく嫌だなと思ったり、(生理がくると)改めて自分が女性であることをすごく思い知らされるような感覚がしたりしていたので、もっと楽に、ある意味 生理であることを忘れられるぐらいの製品を作りたいと思いました。

下山田さんが目指したのは生理のときも“かっこよく”いられるパンツ。

どんな色やデザインを望むかアンケート調査を実施し、圧倒的に希望の多かった黒を基調とし、飾りのないシンプルなデザインにしました。


下山田さんらが開発した吸水型パンツ

下山田志帆さん
生理用品はすごくかわいらしいものが多くて、選ぶときに違和感をもつこともありました。

そこで普段、自分たちが履いているようなメンズ型のボクサーパンツのデザインを吸水型パンツに落とし込んで作りました。

多くの人が感じていた悩みを解決
開発に必要な資金をクラウドファンディングで集めたところ、当初想定していた100万円を大きく超え、目標の6倍以上が集まりました。アスリート以外の方からも多くの感想が寄せられました。

「こういうものがほしいと思うのは『自分だけではない』と感じることができた」
「レディース・ボクサーじゃなくてメンズ・ボクサーがいいと思って、ずっと探していました!」



購入者から寄せられた感想

また、性的マイノリティーではない女性たちからの声も相次ぎました。

「トイレに行く回数が減りました」
「黒だから生理の日も経血の色が目立たないため、着用しやすい」


性的マイノリティー当事者の違和感を解決するために生まれた商品が、当事者以外の多くの人たちの悩みを解決することにつながりました。


会社を立ち上げた仲間と打合せをする下山田さん(右)

下山田志帆さん
『生理用品=フェミニン(女性的)が当たり前』であることに我慢してきた人が社会に多くいたこと、自分が生きたいように生きたいと思う人たちが少なくないことに驚きました。

LGBTQの当事者やアスリートでなくても、同じように悩みを抱える人のためになることもできることに気づきました。

自分たちの経験も大切にしながら、いろんな人の声をもとに もっと多くの人へ伝えるサービスや商品を模索していきたいです。

言葉の理解から、その先へ
今回、取材に応じてくださったサッカー選手の方々は「“ひとりの性的マイノリティー”でなく“ひとりの選手”として認められる女子サッカー。この世界が社会にも当たり前のようになれば」という思いから、心の内を話してくださいました。

私の大学時代のサッカー部の先輩でもある下山田さんが語ってくれた言葉が強く残っています。

当事者を“配慮してほしい”がゴールでは全然ない。『当事者/非当事者』『配慮する/配慮される』という世界でなくて、みんながいろいろな要素を持ち、それぞれがありのまま生きていくことが肯定しあえる社会をつくる。それがゴール」

いろんな性のあり方を多様な個性として大切にする女子サッカー界の動きは、差別をなくしたり、当事者たちが生きやすくなったりするだけではなく、多くの人にとってポジティブな影響を与えることにつながると感じました。

“性的マイノリティー”や“LGBTQ”のことばが広がる中で、ことばの理解だけにとどめず、ひとり一人の個性や生き方を認め合い、みんなにとって安心感ある空間づくりをしていくことが必要だと思います。

世界の女子サッカーリーグではトランスジェンダーの選手に関する規定を策定するなど、スポーツから社会に“性の多様性”の理解を促す動きが始まっています。“性の多様性”を認め合う社会へのヒントを探るべく、これからも取材を続けていきます。

性の多様性”が認められるスポーツ競技が増えるためにどんなルールや工夫があればいいと思いますか?あなたのご意見や記事への感想を下の「コメントする」か、 ご意見募集ページから 意見をお寄せください。


※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

#Beyond Gender
2022年1月7日

『生理リサーチ』 生理についてあなたのご意見・経験を教えてください


↓↓↓こちらのサイトでご意見募集中↓↓↓
シチズンラボ 生理リサーチ
性別、年齢、生理の有無に関わらず、たくさんの声をお待ちしています


これまで公に語られることが少なかった「生理」
一方で、自分の体におきる困りごとについて相談できずにひとりで悩む人や、パートナーや身近な人の生理にどう向き合えばいいか分からず困る人が大勢いるのも事実です。

どうしたら生理のことをもっとみんなで理解しあえるようになるか?
子どもたちへの性教育にいかせるいいアイデアはないか?

NHKはそのヒントを探るべく、性教育の実態や皆さんの「生理観」を調査するプロジェクトを始めました。調査の結果は研究者とも共有し、今後の性教育を考えるための手がかりにしていきます。

また、お寄せいただいた声の一部は『みんなでプラス』で紹介させていただいたり、今後の番組取材にもつなげていきます。

はじめて生理のことを知ったときのことを覚えていますか?
生理の教わり方を振り返ってどう思いますか?

質問に答えながら思いを馳(は)せていくと、新しい気づきがあるかもしれません。

あなたの経験や意見をシチズンラボ 生理リサーチにお寄せください。
性別、年齢、生理の有無に関わらず、たくさんの声をお待ちしています。
みんなで時代をアップデートしましょう。


※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

#Beyond Gender
2021年12月20日

「更年期にはまだ若い」医師の言葉に悩む女性たち 医療現場の理解不足も

更年期のさまざまな症状によって、仕事やキャリアを失う人が推計100万人にのぼるという「更年期ロス」。その実態を先月、放送や記事でお伝えしたところ、150人以上の方から切実な声が寄せられました。見えてきたのは、更年期について十分な理解が広がっていないことで適切な医療を受けられず、苦悩を深める当事者の姿です。

(報道局社会番組部 ディレクター 市野 凜、報道局ネットワーク報道部 記者 金澤志江 )


「更年期ロス」を解消するために何が必要か。私たちは取材を通してみなさんとともに考えていきます。記事に対する感想やご意見、あなたの体験談、取材してほしい内容などをページ最後の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。


「更年期にはまだ若い」年齢の壁


「自分も更年期ロスを経験した」と声を寄せてくれたヨシコさん(仮名・43歳)は去年、更年期症状が原因で20年続けた仕事をやめました。不調が出始めたのは2年前、41歳のときでした。

ヨシコさん(仮名・43歳)
「めまいがして動悸(どうき)が急にして動けなくなったり、とにかく体が思うように動かなくて、家事もできないし、仕事にも行くのが精いっぱいでした。」

生理の周期が不安定になり、月に2回きたり 経血の量が減ったりしていたため、ヨシコさんは病院を受診し、更年期による不調ではないかと伝えました。

しかし医師から言われたのは「更年期にはまだ若い」「めまいは誰にでもある」という言葉。婦人科、内科、耳鼻科など次々と病院を回りましたが原因はわからず、治療してもらえませんでした。

ヨシコさん(仮名・43歳)
「『更年期にはまだ早い早い』という感じで笑い話みたいな、『それくらい大丈夫だよ』と。自分が大げさになっているだけなのかなと思いました。」



心配をかけたくないと家族にもつらさを隠していましたが、症状は徐々に悪化。仕事をやめざるを得なくなったのです。

ヨシコさん(仮名・43歳)
「誰か助けてほしいというのと、『休めて楽』とかでなくて『動きたい、動きたい、でも動けない』という葛藤と、『こんなに休んでだめな人間だ』という思いでずっと過ごしています。」

ヨシコさんを更年期ロスに追い込んだものは“年齢の壁”でした。

更年期は女性ホルモンが減少し生理がなくなる閉経の前後10年間を指し、45歳から55歳ころとされています。



ヨシコさんはその後 別の病院で更年期症状と診断されたものの、症状が出始めたのは40代前半だったため治療を受けることもできなかったのです。

「更年期症状ではないのでは…」 症状の壁
さらにもうひとつ見えてきたのが“症状”の壁です。

更年期の症状として よく知られているのは「ほてり」や「イライラ」ですが 実は「めまい」や「関節痛」「不眠」など 症状は多岐にわたります。このことへの理解が医療現場でも進んでいないため、休職に追い込まれたという人もいます。



大手メーカーで正社員として27年間働き続けてきたマサエさん(仮名・51歳)は「ほてり」や「イライラ」などはありませんが、50代に入ったころから「不眠」や「だるさ」「集中力の低下」を感じるようになりました。

マサエさん(仮名・51歳)
「前はできていたことができなくなったというのが、すごく実感としてあって、その理由がわからなくて。」

職場でチームを束ねる立場にありましたが、会議など意見をまとめなくてはならない場面で判断力が落ち、結論を出すことができなくなりました。



責任を果たせないと感じたマサエさん。ことし6月、休職することを選びました。

マサエさん(仮名・51歳)
「ミスが多くなったり、仕事を段取りよく組めなくなったり、頭が働かなくなってきたり、すごく自己肯定感が下がる。私はここにいるのがふさわしくないなとだんだん思うようになっていきました。」

「年齢的にも、自分は更年期ではないか」と思い、婦人科を受診しましたが、医師は検査も行わないまま「更年期の症状ではない」と告げたと言います。

マサエさん(仮名・51歳)
「『あなたはのぼせやほてりなどの更年期の主症状がないので 更年期じゃないかもしれません』ということを言われました。この先生はもう面倒をみてくれないんだなと思って、どうやったらしんどいのから抜けられるのか方法が分からないまま時間が過ぎていって、もっともっとしんどくなっていったので残念でした。」



不調を感じてから1年半、マサエさんは先月 別の病院で女性ホルモンの値を調べる検査を受け、ようやく更年期症状と診断されました。

今月復職し、これから治療と仕事を両立していきたいと考えています。

マサエさん(仮名・51歳)
「ほっとしました。更年期の時期を過ぎれば解決するんだという希望を持ちました。『本当に更年期抜けたな』と実感するまでペースを落として仕事はしていこうと思います。」

“更年期ロス”防ぐために 医療現場に必要なことは
なぜ2人は最初に行った病院で、更年期症状と診断されなかったのでしょうか?

更年期専門家は医療の現場でも更年期症状についての理解が十分ではないことが一因だと指摘します。


昭和大学医学部講師 有馬牧子さん

昭和大学医学部 講師 有馬牧子さん
「医師においても、知識と経験にまだ差があったり 専門分野が違ったりというのもあるので問題です。医師が適切な診断を下し、問診と検査もして治療を行うというのが一番ベストなんですよね。(更年期は)先が見えにくい時期でもあるので見通しを立ててあげる、そういう働きかけが医師からもできるといいんじゃないかなと思います。」

適切な診断と治療を行える医師を増やすことの必要性はNHKと専門機関が共同で行った調査の結果にも表れています。



「更年期症状を経験した」と答えた女性およそ1万人のうち、「婦人科を受診していない」と回答した人は6割以上に上りました。さらに受診しても更年期障害と診断された人は19%にとどまっています。

更年期症状は適切な治療を行えば改善し、仕事を辞めなくてもすむことがほとんどです。日本女性医学学会は更年期症状に詳しい医師を認定して学会のHPで公開しており、いち早く適切な治療につなげてほしいとしています。

更年期症状に詳しい専門医・専門資格者は
▼日本女性医学学会(https://www.jmwh.jp/
※ホームページ左側の日本地図から近隣の専門医を探すことができます。

更年期症状・治療に関する相談は
▼一般社団法人 女性の健康とメノポーズ協会(https://www.meno-sg.net/
電話番号 03-3351-8001(火曜・木曜 11~16時 無料相談実施 8月は休止)

更年期症状による仕事や生活への影響に関する相談は
▼NPO法人POSSE(https://www.npoposse.jp/
電話番号 03-6699-9359(労働相談)
電話番号 03-6699-6313(生活相談)

専門家による調査の詳細分析
https://www.jil.go.jp/tokusyu/covid-19/collab/nhk-jilpt/index.html
※NHKサイトを離れます。


あなたの更年期障害をめぐる体験談や取材してほしい内容や、記事への感想やご意見などをページ最後の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。

※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

#Beyond Gender
2021年12月17日

障害のある人が明かす”生理の悩み” 「ナプキンを替えられない」ことも

「生理をオープンに語ろう」。最近 生理についてメディアで取り上げられることが増えてきましたが、「目を向けられることのなかった」人たちがいます。障害のある人たちです。

生まれつき身体にまひがある、病気で運動機能が低下していく、などで車いすや介助が必要な人たちにはどんな生理の悩みがあるのか。取材すると、見過ごされてきたさまざまな“生きづらさ”が見えてきました。(バリバラ『生理を語ろう!』2回シリーズで放送。) 

(『バリバラ』ディレクター 藤井幸子)

■目次

車いすユーザーの女性 生理ケアの悩み
取材を始めると まず聞こえてきたのが「生理ケアに悩んでいる」という声です。

小澤綾子さんは『筋ジストロフィー』という全身の筋力が徐々に低下する進行性の難病で、3年前からは歩くことが難しくなり、外出時に電動車いすを使うようになりました。

外出時のトイレの際には 障害者や高齢者などが使う”多機能トイレ“を利用しています。車いすをできる限り便座に近づけ、手すりを使って移動します。

筋力が弱い小澤さんにとって 多機能トイレはまさに命綱です。


車いすを便器に横付けし、手すりを使って移る

普段から多機能トイレの場所を意識的にチェックしていますが、どこにでもあるわけではありません。そのため生理のときは特にたいへんです。

かつて歩くことができたころは2時間おきにナプキンを交換していましたが、今は6時間に1回だけ。日中一度も交換できないことも度々あるそうです。

仕事の出先に多機能トイレが無く、13時間ナプキンを交換できなかったことも。経血が漏れて下着や服も汚れてしまい、ショックを受けたといいます。

小澤綾子さん
「歩くことができていたときには、ナプキンを替えられない状況なんて想像もしたことなかったんですけど。車いすになって生理がすごく大変になりました。」

同じような悩みは取材で出会った多くの女性たちも抱えていました。

多機能トイレがなかなか見つからないため、外出時はオムツをするという女性も。しかしお尻が蒸れて、かゆみが出てしまうのがつらいといいます。

車いすで利用できるトイレを探すことに苦労するため 生理中は家に閉じこもることもあるという女性もいました。

介助を受けるゆえの悩みも
また 生理ケアに介助が必要な女性たちは介助を受けるゆえの悩みも抱えていました。

油田優衣(ゆだ ゆい)さん、24歳。筋肉が萎縮する難病で 24時間の介助を受けながら1人暮らしをしています。


24時間の介助を受けて生活する油田優衣さん

筋力が弱く 自力で立ったり下着を脱いだりすることが難しいため、まずはヘルパーに抱えられてベッドへ移動。横になった状態で下着とナプキンを外してもらいます。そして横抱きの状態で便座へ。


ベッドで下着とナプキンを外して 横抱きの状態で便器へ

移動する間に経血がぽたぽたと垂れ、床や介助者の服を汚してしまうことがあるそうです。

油田優衣さん
「汚してもどうこう言うヘルパーはいないけど、小さい頃から『血で汚しちゃいけない』という意識があるから、『嫌な顔されんかな』という怖さがどこかにずっとある。」

ヘルパーと信頼関係を築きながら自立生活をしている油田さんですが、生理介助の際には緊張感や怖さを抱いていると語ってくれました。

生理に関する情報が無い
こうした悩みの声を聞かせてもらう中、多くの女性が同じような言葉を口にすることに気づきました。

「これまで誰とも生理の話をしたことが無いので・・・。障害がある人が生理の時にどうしてるのか、すごく気になります。」

障害がある女性たちはみんな どんな生理の悩みがあって、どのような工夫をしたり、介助を受けたりしているのか。知りたいのに情報交換をしたことがない。

また ネットや雑誌を調べても、立って歩くことができる、自分でナプキンを交換できるといった人たちに向けた情報しかありません。

生理ケアのバリアは高い上に誰にも相談もできず、情報も得られない・・・。生理を語ることがタブーとされてきた社会のしわ寄せが障害のある女性に集中しているのではないかと感じました。

“子宮を取りなさい”
さらに取材を進めると、障害がある女性たちが経験してきた深刻な人権侵害の問題も浮かび上がってきました。「子宮摘出手術」です。

1990年代半ばまで「生理介助の負担軽減」などを理由に、障害のある女性たちが子宮を摘出させられる事態が障害者施設などで広く行われていたと、社会学者の瀬山紀子さんは指摘します。(障害のある人に強制不妊手術を行っていた歴史について詳しくはこちらから)

瀬山紀子さん (社会学者)
「過去、“生理の始末が自分でできない人は障害者施設に入れない”と言われて、子宮摘出や月経をなくすことを目的とした放射線照射を受けさせられた時代があったんです。」


社会学者・瀬山紀子さん 介助者としても20年以上の経験がある

そして、この残酷な歴史の背景にあったのは 社会のまなざしだったといいます。

「障害がある女性は、子どもを産まない/産めない/産むべきではないため、月経はなくてもよい/ないほうがよい」

実際に手術を勧められたという女性が自身の体験を話してくれました。

みかちゃんさん(仮名)52歳。筋肉が萎縮する難病で 介助を受けながら1人暮らしをしています。


ヘルパー制度を利用しながら、1人暮らしをする みかちゃんさん

みかちゃんさんは12歳から28歳までの16年間、障害者が暮らす施設で過ごしていました。そこで中学生のときに女性職員からある言葉を度々投げかけられたと言います。

「面倒くさいから生理を止めなさい。みんな手術をしているんだから。」

毎月 生理がくる度に職員から嫌な顔をされ、次第に自身の体や生理に対し否定的な思いが強まっていったといいます。

みかちゃんさん
「『子宮はどうせ使わないし、取っちゃえばいいじゃん』と言われて。そっか、無きゃいいのかって。自分に生理があることは本当に良くないことなんだと思い、自分が女性であるということを考えないようにしていました。」



さらに生理時のトイレ介助を男性の職員が行うこともあったといいます。女性の職員に変えてほしいと施設に訴えても取り合ってもらえず、恐怖を感じながら生理期間を過ごさなければいけませんでした。

みかちゃんさん
「私は『みかちゃん』という人間だけど、そのときは人間じゃないというか。女の子でもなかった。」

障害がある女性を 女性とも尊厳のある人間とも見なさない。そんな社会の中で苦しみを抱えてきた人たちがいたのです。

女性であり、障害者である二重の生きづらさ
この問題は過去のこと、施設での話として片づけられるものではありません。

24時間の介助を受けながら生活している油田優衣さんは以前、家族から似たような言葉をかけられた経験があるといいます。

「生理あっても、子どもを産むかも分からんのに。」

10年くらい前、中学生だったときに実家で油田さんの介助を一身に担っていたおばあちゃんが、ぽろっとこぼしたひと言でした。


油田優衣さん  バリバラ「生理を語ろう(2)障害×生理」2021年11月25日放送より

油田優衣さん
「『(子宮摘出手術は)昔のこと』とみんな言うかもしれないけど、重度障害がある私にとっては いつ言われてもおかしくない言葉。すごくリアリティがある話なんです。」

「あなたに生理はいらないよね」と言われたことがある人はどれだけいるでしょうか。少なくとも私自身はありませんし、そこにリアリティを感じることもありません。

しかし女性であり障害者であるというだけで、こうした言葉をいとも簡単に投げかけられてきた人たちがいます。

そして今も危機感を感じながら、生きづらさを抱えている人たちがいます。

さらに、痛みを背負いながら沈黙せざるを得ない状況にあることが分かりました。

これが今の社会の現実であり、多くの人が見過ごしてきた問題だと気づかされました。

タブーなく生理を語るということ
もう一つ、今回の取材を通して気づいたことがあります。それは「生理」について語ることが 人と人とを“つなぐ”ということです。

子宮摘出手術を促された みかちゃんさんが話してくれた言葉です。

みかちゃんさん
「生理でお腹(なか)が痛くてつらいこともありますが、生理があることで女性としての生きやすさというか楽しさ、『ああ、こういうふうになるんだな』ということが経験できて、みんなと話もできるから良かったかなって思います。」

生理は障害の有無に関わらず、多くの女性が経験するものです。腹痛や気分の浮き沈みなどを伴う“つらいもの”でもありますが、多くの人がその痛みをひとりで抱え込んでいると思います。

その中で 介助が必要な障害のある人たちは、自分の生理についての経験を望むと望まざるとに関わらず他人とシェアする必要があり、生理について語らざるを得ない人たちでもあります。

だからこそ、“生理のタブー”を打ち破っていくことができる存在であること、そして、障害の有無を越えて 人と人とがつながり合っていくこともできるのだと教えてもらいました。

そして今回、多くの女性たちが勇気をもって声をあげてくれました。
「自分たちの悩みや生きづらさについて知ってほしい。」
「障害がある女性が安心して生きられる社会にしたい。」

この声が1人でも多くの人に届き、障害がある人たちが置かれた現状に気づいてもらえたらと願います。

なぜ障害がある女性には子宮摘出手術が公然と行われてきたのか。なぜ障害者の生理はこれまで語られることがなかったのか。今この社会に生きるひとりの人間として、みなさんと一緒に考えていけたらと思います。これからも生きづらさを抱えるマイノリティーの人たちについて取材を続けていきます。

今回取材した内容は以下の番組で放送する予定です。
【放送予定】
2021年12月23日(木)[総合]午前8:15~
あさイチ「障害がある女性の生理の悩み」


障害のある方、自身の性に違和感のある方、あなたはどのような生理の悩みを抱えていますか?どのような声かけやサポートがあればいいと思いますか?ご意見や記事への感想などを下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。

※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

#Beyond Gender
2021年12月10日

「夫が女性になりました ~家族のカタチを求めて~」Vol.45

「夫から女性になりたいと打ち明けられたのは結婚後のことなんですよ。」

そう話す永田香織さんと出会ったのは今年2月でした。合意の上でLGBTQの人たちと結婚したりパートナーになったりすることはあっても、結婚後に相手に打ち明けられてから夫婦関係を続けるのは簡単ではないのでは…。香織さんと夫のマコさんがどんな思いで、また家族がどのように生活されているのか取材を始めました。

(『あわとく』ディレクター 松元柊吾(所属は取材当時))

長男の出産直後に”衝撃の告白”

左から 香織さん、涼眞くん、マコさん、奏真くん

永田さん夫婦を知ったきっかけは、夫のマコさん(47)がインターネットのクラウドファンディングで「女性限定のラリー競技会にトランスジェンダーの女性として参戦したい」と資金を募っていたのを見たことでした。マコさんの取材を進めるうちに、カミングアウトされた側の香織さん(39)にも話を聞いてみたいと思い、ご自宅を訪ねるようになりました。

香織さんとマコさんは奏真(そうま)くん(6)と涼眞(りょうま)くん(4)と4人で徳島県阿南市で暮らしています。

学習塾を自ら経営しながら講師として働く香織さんは毎日 仕事が始まるお昼までは掃除や洗濯などを、2人の息子の園などへの送り迎えはマコさんが担当しています。マコさんは近所に事務所を借り、フリーランスのシステムコンサルタントとして働いています。


左:化粧をするマコさん 右:涼眞くんの送り迎えをするマコさん

マコさんは男性として生まれ、心は女性のトランスジェンダー。6年前、「女性として生きる」と決意してからは「マコ」という名前で生活しています。

香織さんとマコさんが出会ったのは12年前。大学卒業後、京都の生命保険会社で働いていた香織さんが取引先の会社に勤めるマコさんに次第にひかれていき、2年近くの交際を歴て経て結婚しました。


結婚前のマコさんと香織さん

結婚の翌年、香織さんが奏真くんを出産した直後のことでした。

授乳を終え、お布団に入ろうとしたとき、マコさんから耳元で「あのね、女性になりたいんだけど・・・」と告白されました。



永田香織さん
「(最初は)ぽーっと。『はあ・・・』みたいな。趣味でそういうの(女装)をやってみたいと言っているのか、本当に女性に変わりたいのか、判断もつかない感じで聞いていました。その後しばらくして『結婚生活を続けていけるのかな』という漠然とした不安が湧いてきました。別々の生活環境にするべきなのかな」みたいな。けんかをしたときに『あんた詐欺だから』と言ったこともあります。」

なぜカミングアウトは結婚後?
マコさんは幼少の頃から自身の性に違和感があったそうです。
しかし小学生のときに受けた性的虐待の体験がきっかけで自身の性を抑えこむようになったといいます。



永田マコさん
「『あー、僕が女の子でいると、こういうことになっちゃうんだ』と思いました。それ(被害)をきっかけに、女の子でいたいという気持ちを隠さなきゃならいんだ、ばれちゃいけないんだと。だから努力して男の子に、男の人になろうと思いました。」

以来、マコさんは自身の性の違和感を抑え込み、苦しみを抱えながら生きてきましたが、男性として振る舞っていても、どうしても自分の気持ちと行動の“つじつまがあわない”感覚から逃れられませんでした。

そんな生活を20年以上続けながらも、自らが本当に望む自分の理想像を追い求める気力もなくなり、また男性として生きることにも慣れてきたときに出会ったのが香織さんでした。

その後 2人は結婚。このまま ごくごく普通の家庭を築いていくと思っていたマコさんですが、奏真くんを出産してお乳をあげたり、『ママ』と周りから呼ばれたりしている香織さんの姿を見ているうちに抑えきれない感情が出てきてしまったといいます。

マコさん
「自分は産めないんだなって。私はやっぱ女性にはなれないんだなって思ったし悔しいなという思いもありました。そして元々 自分がなりたかった像が、イメージが浮かんじゃったんですよね。そっちに近づいていきたいなって思った。」

そして離婚を切り出されることも覚悟で香織さんに打ち明けたのです。

変わりゆく夫の姿に葛藤する日々
マコさんが香織さんに衝撃の告白をして以降、夫婦の葛藤の日々が始まりました。

告白の直後からしばらくの間、香織さんは当時一家で暮らしていた京都を離れ、徳島県内の実家で奏真くんを育てることにしました。初めての子育てを母親に支えてもらうためでもありました。

マコさんが週末に香織さんたちを訪ねてくるときには男性の姿でしたが、京都でひとり生活をしている間に女性の服装を試し始めていました。そのことに香織さんはうっすら気づいていたものの考えないようにしていました。

しかし10か月後、育児も落ち着き、息子と京都での生活に戻ると、寝室にマコさんの女性用の服や化粧品が置いてあるのを見て、現実に引き戻されました。

マコさんはそのころ、花柄プリントのスカートにリボンやレース付きのトップスなど いわゆる“かわいい系の女の子”の服を買っては身につけて外出するようになっていました。香織さんは周囲の目を気にして、マコさんと一緒に出かけることはありませんでした。

変わりゆく夫をなかなか受け入れられない自分自身に当時がっかりしたといいます。

香織さん
「テレビでそういう人が出てくると、おもしろい、かっこいい、すてきと思っていたんですけど、目の前に現れると『いやー』となって。自分が意外とそういう人を受け入れられていないんだなと思ったときに『他人ごとと思っていたんだ』ということに気づきました。」

家族であり続けるために、妻から夫へ2つのお願い
それでもマコさんと家族でいたいという強い思いが香織さんにはありました。

香織さんが弱っているときは、自分がどんなに忙しくても香織さんのために時間を割いて悩みを聞いてくれたり、香織さんがチャレンジしてみたかった学習塾の経営も後押ししてくれたりしました。

いつも香織さんのことを最優先して応援してくれるマコさんを、ひとりの人間として愛し、尊敬していました。また自分たちの子どもにとっては かけがえのないお父さんでもあるからです。



京都で再び一家で暮らし始めたとき、香織さんはマコさんに2つのことをお願いしました。

一つは「家庭の中ではパパでいてね」。
もう一つは「少しずつ変わっていってほしい」ということでした。

香織さんはマコさんが幼いころから自分の中に押さえ込まざるを得なかった「女性として生きたい」という希望を、家族のことを大切にしながらも かなえてほしいと思っていました。

ただ急激に服装が変わったり化粧を始められたりすると自分の心が追いついていかないため、初めのうちは化粧はファンデーションと眉毛だけにしてほしいと頼みました。

香織さん
「一気に変わられたら、受け止めきれないなと思いました。

また マコさんが本当に周りの人に受けいれてもらいたいのなら、自分の『変わりたい』という要求だけを伝えるのではなく、相手がどう思うか、その気持ちも考えながら話さないといけないよね、と2人で話し合いました。

マコさんもその思いを汲んでくれて一度に「こうしたい」とは言わなくなって、ちょっとずつちょっとずつ変わってきてくれたから、私も受け止めることができたのだと思います。」

マコさん
「『今かなえたいことをかなえるんじゃなくて、先を見て、あなたはほんとにどういう人になりたいの、それをすることで どんなふうに人として思われたいの?』と香織から問いかけられました。自分でも自問自答しました。

でも一方、女性の服や化粧が自分に似合っているものは似合っていると香織は言ってくれます。100パーセントダメとは言わない彼女の優しさに救われています。」

マコさん自身、「子どもが混乱しないことが大切」と考え、家庭の中では「パパ」として子どもたちと接しています。マコさんのカミングアウトから6年の月日を経て、香織さんは徐々にマコさんのことを受け入れられるようになり、今では2人で堂々と買い物ができるまでになりました。


買い物をする香織さんとマコさん夫婦

奏真くんの姿に重なった マコさんの“個性”
“女性になりたい”というマコさんの願いを香織さんが受け入れようと考えたもう一つのきっかけは奏真くんの存在でした。

生まれたときから脳性まひがある奏真くん。毎週金曜日は午前中は施設で歩行や生活動作の訓練を、午後は言語療法、そして自宅で療法士によるリハビリも行っています。香織さんとマコさんは終日付き添って共に見守ります。



自分のペースで徐々に成長していく奏真くんの姿を見るなかで、香織さんはマコさんの変化も“個性”として受け止められるようになったといいます。

香織さん
「奏真は知的にも身体的にもハンディがあって、他の同じ年の子とは成長の度合いが全然違います。それでも『奏真はこれが奏真なの』というのを受け入れるという意味では、マコさんをマコさんとして受け入れることは同じ、と思うようになりました。

マコさんは外見など変わったところはたくさんあるけど、いつも真剣に子どもたちや私の気持ちを受け止めてくれるマコさんの優しい根っこの部分は何ひとつ変わっていないということに気づきました。」

しかし 受け入れにくいことも… 模索する日々
数年間におよぶ葛藤の末、4年前には次男の涼眞くんも生まれ、穏やかな日々を送ってきた香織さんとマコさん一家。しかし最近、新たな悩みを抱えています。マコさんが外見や装いだけでなく、体も女性になりたいと思い始めているのです。

最近マコさんは男性ホルモンを抑える薬を飲み始めました。

第3子を望んでいる香織さんにとって、それを受け入れることは大きな決断でした。

香織さん
「第3子に女の子がいればかわいいなとは思っているんですが、マコさんが(男性ホルモンを抑える)お薬を飲んでる時点で、その希望はかなり薄いみたいです。でも マコさんは飲まないと自分のアイデンティティ、マコさんというアイデンティティを多分保てないのだろうなと思って、ぐっと自分の中で気持ちを押さえ込んでいます。仕方がないのかなと。」

さらにマコさんは将来、性別適合手術を受けることも望んでいます。

香織さんは手術についてはどうしても受け止めきれずにいます。

繰り返し夫婦で話し合っていますが、答えはまだ出ていません。


話し合いを重ねるマコさんと香織さん

第3子の望みが完全についえるとともに、マコさんの体に副作用などが起こるかもしれないなど十分な知識や情報がない中で香織さんは漠然とした不安に襲われています。

香織さん
「自分の都合のいいところだけを支えてもらって慰めてもらってやっていくのが家族ではないと私は思います。逆に私も同じですよね。自分のやりたいことばかりを突っ走ってやり続けていれば、絶対に家族にそのしわ寄せはきます。

そこまでして何かをやっていきたいときというのは、たぶん選択しなきゃいけないとき。 自分だけの人生をとるのか、家族をとるのか。家族である以上はそこは常に考えていかなきゃいけない。たぶん人生を一緒に生きていくというのはそういうことなのかなと思います。」

どうして香織さんはマコさんと家族であり続けられるのだろう。

そんな疑問から取材を始めましたが、マコさんをひとりの人間として、「マコさんはこれがマコさん」として受け止め続けている香織さんの姿勢と言葉に引きつけられました。

その一方でもう一つ、香織さんの言葉が強く印象に残っています。

香織さん
「スマホなどで“カミングアウトされた側”と検索しても何もヒットしないんですよね。周りに理解してくれる人や悩みを共有できる人がいない。自分だけの戦いです。」

取材を通してLGBTQの人たちも生きやすい社会になっていくことが大切だと思う一方で、大切な人から「性的マイノリティーだ」と打ち明けられた側の人たちが何に悩み、どう向き合わなければいけないのかにも目を向ける必要があると強く感じました。
これからも、永田さん一家の取材を続けていきます。

もし、あなたがパートナーや大切な人から、性的マイノリティーだと打ち明けられたらどうしますか?どうしたらその後も以前と同じような人間関係を維持できると思いますか?みなさんのご意見や記事への感想などを下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。

取材した内容は以下の番組で放送する予定です。
【放送予定】(※徳島県域で放送)
あわとく『家族であるために ~夫が女性になりました~
2021年12月10日(金)[総合]午後7:30~7:55
【再】2021年12月11日(土)[総合]午前10:55~11:20

※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

#Beyond Gender
2021年12月3日

テレビの女性・男性、ジェンダー 視聴者アンケート結果Vol.44


女性や男性、さらに多様な性のあり方について、テレビでの取り上げ方や描き方をどう思いますか?

テレビ番組の多様性の向上に役立てることを目的に、NHKは11月にWEBアンケート調査を行いました。全国の18歳から69歳の1164人から回答がありました。以下、アンケート調査の内容と結果の一部を紹介します。

(テーマ)

(編成局展開戦略推進部 #BeyondGender プロジェクト班)

調査では性別の選択肢は「女性」「男性」、「女性・男性にあてはまらない」「性別無回答」の4つを設けました。回答者の内訳は、女性570人 男性579人 、「女性」「男性」に当てはまらない9人 、「性別無回答」6人。「女性・男性に当てはまらない」とした人と性別無回答の方は数が少ないため、その回答内訳は一部のみで記述しています。
女性・男性の性役割やジェンダー 日常での違和感は?
アンケートではまず、普段から女性・男性の性役割や「女らしさ」「男らしさ」、さらにLGBTQなどを含めた多様な性のあり方についての発言や考え方が気になったり、違和感を抱いたりすることはあるか聞きました。

「よくある」「ときどきある」を合わせた『ある』と回答した人の割合は全体のおよそ3分の1を占めました。若年層に多い傾向がみられます。
年代・性別にみてみると、特に多かったのは10代女性で7割近く(69%)、次いで多かった20代女性、10代男性でも半数を超えました。

一方、40代~60代では女性・男性ともに「あまりない」「まったくない」を合わせた『ない』が7割前後に上りました。


テレビの女性・男性やジェンダー どう見る?
ここからは本題のテレビ番組についての見方です。登場する女性・男性の取り上げ方や描き方、その違いなどに違和感や疑問、不快感などを抱いたりすることはあるかを聞きました。

「よくある」「ときどきある」を合わせた『ある』と回答した人の割合は全体のおよそ3分の1を占めました。やはり10~20代の若い世代に比較的多い傾向がみられます。
年代・性別にみると、最も多かったのは20代女性で半数以上(53%)、次いで10代女性が50%、そして10代男性(47%)でした。

一方、「あまりない」「まったくない」を合わせた『ない』が最も多かったのは50代女性で7割を超えました(75%)。次いで多い順に60代男性、40代女性、40代男性で、いずれも7割以上でした。



どんな番組について違和感や疑問などを抱いたのか。前の質問で「よく」「ときどき」あると回答した人たち(404人)に、そう感じた番組のジャンルを聞きました。

特に多かったのは「ニュース・報道」、「バラエティー・お笑い・芸能」でいずれも回答者のおよそ半数以上、「生活情報・ワイドショー」は半数近くを占めました。



続いて、どのような点が問題と感じたのか。「問題だと感じることはない」を含めた13の選択肢から選んでもらいました(複数回答)。     

回答者のうち3割以上は「問題だと感じることはない」と答えています。

一方、「問題だと感じた」という人が多かったのは「メインのキャスターや司会は男性、女性はアシスタントという番組が多い」でおよそ4人に1人。
そのほか、「女性は身体の露出が多い装いや胸や足を強調するなど性的な描写、演出や言及が目立つ」、「女性には『優しい』『美しい』『母親のような』といった表現、男性は『強い』『頼りになる』『男らしい』といった表現を使うことが多い」、「識者や社会的地位にある人には男性が多く、女性は専門職や補助的役割が多い」がそれぞれ およそ5人に1人でした。



性別でみると、女性の回答者の方が問題だと感じていることが多いことがわかります。



前の質問で指摘されているような問題が起きるのは何が影響しているからだと思うか。7つの選択肢から最も影響が大きいと考える要素を3つまで選んでもらいました。

最も多かったのが「社会の実態を反映している」で回答者の半数近く、次に多かったのが「社会の価値観を反映している」、そして「取材・制作者の価値観を反映している」でした。

テレビの“多様な性のあり方” どう見る?
LGBTQなどを含めた多様な性のあり方(自分の性別をどう認識するかという性自認や、どの性別の人を好きになるかという性的指向、どのような服装や振る舞いなどをするかという性表現など)についてのテレビの取り上げ方、描き方に違和感や疑問、不快感を抱いたことはあるか聞きました。

全体では「あまりない」「まったくない」を合わせた『ない』と回答した人が全体の7割を超えました。年代・性別にみると8割を超えた層もありました。

一方、「よくある」「ときどきある」を合わせた『ある』が最も多かったのは20代の女性と男性でした。



今回のアンケート調査では性別の選択肢を「女性」「男性」「女性・男性にあてはまらない」「性別無回答」の4つにしました。1164人の回答者のうち「女性」と回答した人が570人、「男性」が579人、「女性・男性に当てはまらない」とした人が9人、「性別無回答」を選んだ人が6人いました。

「女性」「男性」に当てはまらないとした人では、上記の質問に対して「よくある」「ときどきある」を合わせた『ある』と回答した人が9人のうち7人(「よくある」4人、「ときどきある」3人)で、「あまりない」が2人、「まったくない」を選んだ人はいませんでした。性別無回答の6人の内訳は「ときどきある」が2人、「あまりない」が3人、「まったくない」が1人でした。

前の質問で、多様な性自認、性的指向についてのテレビの取り上げ方、描き方に違和感や疑問、不快感を抱いたことが「よくある」「ときどきある」を合わせた『ある』と回答した人たちに、それはどのような番組だったか、あてはまる番組のジャンルを選んでもらいました(複数回答)。

ここでも「ニュース・報道」、「バラエティー・お笑い・芸能」、「生活情報・ワイドショー」を選んだ人が多く、いずれも回答者の4割を超えました。



続いて こうしたテーマの取り上げ方について自身の考えに近いものを選択肢の中から選んでもらいました(複数回答)。

最も多かったのは「もっと自然なかたちで出演者や登場人物として取り入れてほしい」で4割近くでした。次に多かったのが「今のままでよい」、続いて「ステレオタイプや固定観念を助長しない取り上げ方をしてほしい」でした。

女性10代・20代では「取り上げる機会を増やしてほしい」が他層より多い傾向がみられました。



さらに性別でみると、女性と男性ともに最も多かったのは「もっと自然なかたちで出演者や登場人物として取り入れてほしい」、続いて「今のままでよい」でした。

一方、「女性」「男性」に当てはまらないとした9人では「普段からもっと多様な性のあり方について配慮した番組づくりをしてほしい」6人、「ステレオタイプや固定観念を助長しない取り上げ方をしてほしい」が6人と比較的多くなりました。「今のままでよい」は1人もいませんでした。

「性別無回答」の6人では「普段からもっと多様な性のあり方について配慮した番組づくりをしてほしい」2人、「ステレオタイプや固定観念を助長しない取り上げ方をしてほしい」2人、「あまり取り上げないでほしい」を選んだ人も2人いました。

“多様な性のあり方” 見聞き・参考にするメディアは?
多様な性のあり方のテーマについて見聞きすることが多いメディア、情報を参考にすることが多いメディアはあるか。録画再生やそれぞれのメディアのオンラインでの利用も含めて、あてはまるものを選択肢の中から選んでもらいました(複数回答)。

最も多かったのは「テレビ番組」で回答者のおよそ半数でした。次いで多い順に「ニュースのまとめサイトのオンライン記事」、「新聞記事」、「ソーシャルメディアへの投稿」でした。一方、「そうした情報は特に見聞きしていない」は4割近くでした。



年代別にみても、すべての年代で最も多かったのが「テレビ番組」でした。「ソーシャルメディアへの投稿」を選んだ人は10代が最も多く、若い世代ほど割合が高くなっています。 一方、高齢層では「新聞記事」が多い傾向があります。



女性・男性や“多様な性のあり方” テレビの影響力をどう見る?
女性や男性、性役割、LGBTQなどを含めた多様な性のあり方の、テレビ番組での取り上げ方や描き方が人々の考え方に影響していると思うか聞きました。

「大いに影響している」と「やや影響している」を合わせた『影響している』と回答した人は全体のおよそ2分の1を占めました。最も多かったのは10代女性で7割近くに上りました(69%)。続いて60代女性、20代女性、20代男性でした。その他のほとんどの年代・性別でも半数を超えました。

一方、「あまり影響していない」と「まったく影響していない」を合わせた『影響していない』とした人が半数以上を占めたのは10代男性でした。



前の質問で『影響している』と回答した人たちに、テレビの社会的な影響について、自分の意見や考えにあうものを3つまで選んでもらいました。

最も多かったのが「多様な人々がおかれている社会の現実について知る機会になっている」で回答者の半数を超え、次いで「多様なモデルや多様な可能性を示してくれる」が3割以上で、テレビが多様な人々や社会について情報を発信していると考えていることがわかりました。

一方で「多様性を排する固定観念、無意識の偏見や差別を助長している」が3割近く、「多様な可能性を閉ざすようなステレオタイプを示している」が2割など、テレビがマイナスの影響を与えているという意見も一定の割合を占めていました。



今回のアンケート調査はインターネットの調査会社に登録している方たちを対象に実施したものです。世論調査と違い、国民の声を代表するものではありませんが、テレビ番組を視聴者がどう見ているかを知る手がかりとなる貴重な意見です。

調査はNHK編成局展開戦略推進部 #BeyondGender プロジェクト班がNHK放送文化研究所メディア研究部とともに行ったもので、詳しい調査内容については、放送文化研究所の月刊誌『放送研究と調査』でも報告する予定です。

<調査の概要>
期間:2021年11月16日(火)~19日(金)
方法:インターネット
回答数:全国の18歳~69歳の1164人(女性570人、男性579人、「女性」「男性」にあてはまらない9人、性別無回答6人 / 18-19歳 90人 20代 210人 30代 213人 40代 214人 50代 220人 60代 217人)

・調査結果の%は小数点以下を四捨五入し「整数」で表示しているため、%の合計が100にならないことがあります。
・複数の選択肢を合計する場合、実数を足し上げて%を再計算しているため、%を合計した値とは一致しないことがあります。
・本文やグラフで使っている『』(二重かぎかっこ)は、複数の選択肢を合わせたものを示しています。


あなたは、このアンケート結果についてどう思いますか?気になるデータはありますか?記事への感想やご意見などを下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。



※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

#Beyond Gender
2021年11月19日

石川発 LGBTQユーチューバー “あなたはひとりじゃない” Vol.43


今年3月、石川県出身の2人組YouTuber「がんこちゃん」(写真 左:コネさん 右:カオルさん)がLGBTQ当事者であることをカミングアウトして発信している動画と出会いました。北陸で若い世代のLGBTQ当事者が顔を出して動画を発信することはあまりありません。過去の専門家の調査で “LGBTQに不寛容”という結果まで出てしまっている北陸の人たち。

「がんこちゃん」はなぜ あえて顔と名前を出して発信しているのか。取材を申し込むと、10代で自分の性や 好きになる相手の性に悩みながらも誰にも相談できずに “しんどかった” 頃のことを詳しく話してくれました。

(金沢局ディレクター 小野京香)

制服、恋バナ…10代の当事者の悩み
「がんこちゃん」の1人、石川県内で生まれ育ったカオルさんが自認する性は男性、戸籍上は女性のトランスジェンダーです。20才の時に親にカミングアウトをして、その後「性同一性障害」の診断を受けて性別適合手術を受けました。

幼い頃からスカートよりもパンツが好きでスカートを履かされると泣きわめいていたといいます。小学校からは制服がありましたが進んで着たいとは思わず、ランドセルも中性的な黄色を選びました。異性のことをまだ意識していなかった小学生時代は男子の友達とドッジボールや鬼ごっこなど外遊びをして楽しく過ごしていました。

状況が変わったのは中学に進学したとき。多くの同級生が異性に興味を持ち始め、普段のおしゃべりでも恋バナをすることが増えました。「異性のことが好き」という前提で話は進み、カオルさんは「誰が好きなの?」と聞かれる度に「恋愛には興味がない」と答えていました。

仲の良かった異性の友人に告白されたこともあり、自分が女性として見られることに抵抗を覚えたそうです。そして何よりもつらかったのは自分が好意を抱いていた女性の友人から恋バナを聞くことでした。堂々と好きな相手のことを「好き」と友達同士で言い合える同級生をうらやましくも思っていたそうです。

学校生活で慣れなかったことが他にもありました。友達と休み時間に女の子たちがそろってトイレに行くことや 学校で先生が生徒たちに「男子!女子!」と呼びかけることでした。

カオルさん
「先生から『男子!女子!』と言われるたびに自分のなかで違和感が増していきました。学校では絶対に『女子』で反応しないといけない。他の呼び方があればいいのになと思っていました。

恋愛話になると自分の好きな性別が分からない。相手のことを友達として好きなのか、恋愛対象として好きなのか。自分がなんなのかすら分からなくなってきました。」

サッカーが “逃げ道”
中学生の頃、カオルさんは自分の性は何なのか、答えを出すことに恐怖を感じながらも毎日ほぼ24時間 考え続けていたそうです。それがとても“しんどかった”といいます。

考える時間をなくそうと カオルさんは女子サッカーのクラブチームに所属して大好きなサッカーに打ち込みました。また サッカーをしていると髪を短くしていることやボーイッシュな格好をしていることに周りは不思議がらないと考えたからです。「サッカー女子」を演じることで自分の性に対して抱いている違和感に触れられないように、悟られないようにしたそうです。

カオルさん
「サッカーを使うのが手っ取り早かった。練習で日々忙しくすることができたので、自分の性に対して深く考える時間はなくなりました。逆に当時、サッカーをしていなかったらどうなっていただろうなと怖くなります。」

サッカーはどんどん上達し、高校は県外の女子サッカー強豪校へ進み、寮生活をしていました。そこで初めて自分以外の「体の性」と「自認する性」が一致しない当事者に出会います。サッカー部の先輩でした。当事者であることは学校の先生から説明があり、いつも入浴をみんなと別にしていました。そのことについていろいろなことを言う部員たちの様子を見て、カオルさんは “本当の自分”をひたすら隠し続けたそうです。


“本当の自分”になることを選んだカオルさん

転機は大学生のとき。所属していたサッカー部でLGBTQであることをカミングアウトしている先輩と出会いました。その先輩から「LGBTQ」という単語も教えてもらいました。とても生き生きしている姿に衝撃を受け、「本当の自分を打ち明けても、受け入れてもらえるかもしれない」と希望を感じたといいます。

同時に身体も戸籍上も女性から男性になるという選択肢が浮かびます。カオルさんにとって“本当の自分になる”ことはサッカーで生きる道を断つということでもありました。男性ホルモンの治療を始めるとドーピングの疑いをかけられる可能性があり、プロのサッカー選手として活動することは難しくなるからです。しかし「自分にウソをつき続けたくない」とカオルさんは男性として生きる道を選びました。

家族にカミングアウトをしたとき、おばあちゃんが言ってくれた言葉があります。

「悪いことをしているんじゃないから、堂々としていなさい」

このひと言でカオルさんの心は一気に軽くなったといいます。

カオルさん
「カミングアウトする前は まわりの人の悪い反応しか想像できませんでした。だけど家族も友人も思っていた以上にすんなり受け入れてくれました。“本当の自分”でいられるのはうれしかったです。

ただ カミングアウトした直後は自分が男性になりたいということを理解してほしいという思いが強かった。そのため親が自分を娘としてみているような発言があるとモヤッとすることがありました。いま思い返すと、自分が女性だった事実や今までの20年間、娘として生きてきた思い出や記憶は変わらない。過去の思い出は受け止めないといけないなと思います。

家族がどれだけLGBTQに理解があるといっても初めは動揺します。しっかり受け止めてもらうためにはきちんと時間をかけて話して理解してもらうことが必要だと思います。」

思春期のLGBTQ当事者の悩みは“家族”
生活を共にする家族に“本当の自分”を受け止めてもらえていないと感じている若いLGBTQ当事者は少なくありません。

『LGBTQ Youth TODAY調査リポート』(2020年11月 出典:『プライドハウス東京』)によると、12~34才のLGBTQ当事者の73.1%が「家族などの同居人との生活について困難を抱えている」と答えています。そのうち「同居者からLGBTQでないことを前提にとした言動がある」と答えた人が41.6%、「同居者に自分のセクシュアリティを隠さないといけない」と答え人が36.6%に上りました。

石川県内でLGBTQに関する小中学校での学習指導や当事者・家族サポートを行っているグループ「にじはぐ石川」の代表、植田幸代さんは思春期に思い悩む当事者は多いといいます。

植田幸代さん
「10代でも特に中学3年生あたりになると身体の成長も起きる。胸がふくらんできたり、ひげが生えてきたりする。そこで改めて自分の『性』をつきつられてショックを受ける子もいるんです。その事実を本人自身が受け止められなくて誰にも相談できず一人で悩む子ども多いです。」

さらに自分の子どもがLGBTQ当事者ということに戸惑いを受ける保護者も少なくありません。子どもの性の違和感に家族が気づくこともありますが、自分の子どもは当事者だと思いたくないために、戸籍上が娘なら女の子っぽいところ、息子なら男の子っぽいところを探し出すことで、それを否定しようとする家族もいるそうです。

「あなたはひとりじゃない」10代の当事者に伝えたい
カオルさんの他にも当事者の方々を取材すると「身近な人に相談できなかった中高生時代がつらかった」という言葉を聞きます。カミングアウトができるのは名前などをふせて素性を隠せるインターネットやSNS上。自分が生きている日常の世界ではウソをつき続けなければならなりません。

一番分かってほしい人たちに本当のことを言えないことに苦しみが募り、カミングアウトしても「受け入れてもらえないのではないか」という不安や恐怖に襲われ悶々と悩み続ける時間が続くといいます。


2人組YouTuber「がんこちゃん」 左:コネさん 右:カオルさん

いまカオルさんがコネさんと一緒にYouTuber「がんこちゃん」として顔を出して発信しているのは、「地方にもLGBTQ当事者がいる」ということを伝えるためだといいます。以前、カオルさんが2年ほど東京で生活したときに、石川県の人々は他県に比べてLGBTQ当事者についての認知度が低いことに初めて気づきました。

カオルさん
「自分たちが顔を出して石川県から発信することで 地方にも当事者がいることをまず知ってもらえる。当事者の方には『決して1人ではない』ということを伝えたいです。地方だと親戚や近所の方との距離が近いからこそカミングアウトしにくいという環境もある。LGBTQの認知度が上がることで理解が深まり、カミングアウトをしやすくなったり、生きやすくなったりすることにつながるのではないかと考えています。」

LGBTQの10代の思い ラジオ・ドラマで描く

FMシアター『僕たちの塩田Summer』キャストの皆さん 最前列右:「海斗」役・南出凌嘉さん、最前列左:「ナオ」役・豊嶋花さん

カオルさんが中学生や高校生だったときに感じたこと、そして いま中学や高校に通っているLGBTQ当事者の方々が悩んでいることを1人でも多くの人に伝え、じっくり耳を傾けていただけたら。そんな思いから金沢放送局はラジオ・ドラマ『僕たちの塩田Summer』(2021年10月2日放送)を制作しました。

舞台は石川県の能登半島。そこで代々塩づくりを営んできた一家の一人息子、中学3年生「海斗(かいと)」と 塩田の手伝いにやってきたLGBTQ当事者の「ナオ」が出会い、「本当の自分とは何か」を互いに考える ひと夏の成長物語です。

「ナオ」は戸籍上は女性で 自認している性は男性のトランスジェンダー。このキャラクターはカオルさんの中学時代の経験をもとに設定しました。出てくる登場人物も全員石川県の人々にしました。地方の一都市を舞台にすることで誰にとっても身近なことだと感じてほしかったからです。

主人公の海斗は最初、ナオがLGBTQ当事者であることを受け入れるのに戸惑いを感じます。身体と心の性が一致していないということが理解できなかったのです。しかし、2人で話すなかで次第にナオが性に対する違和感をもっていることや恋愛対象が女性であることを知り、そのままのナオを素直に受け止めることができるようになっていきます。

一方、ナオは海斗にカミングアウトするまでは誰にも自分の性のことを話したことはありませんでした。でも“ありのままの自分”を受け入れてくれた海斗と出会い、ナオは「1人ではない」ということが分かり、自信をもって地元の町へと戻っていきます。

「LGBTQ」を物語に溶け込ませる
ドラマを作る上で悩んだのは「どこまでLGBTQを説明するか」という点でした。耳で聞くドラマなので難しい単語や印象の強い単語を使いすぎるとストーリーに集中してもらえないかもしれません。最初はLGBTQという単語だけはセリフに使う予定でしたが、「LGBTQの人」と「そうでない人」を分断しているように聞こえてしまうのではないかとも思いました。そこでLGBTQなどの用語を一切使わずに表現することに挑戦しました。

当事者役のナオの一人称を「僕」や「わたし」でなく「自分」としたり、ナオの身体が女性であることに触れる場面では胸のふくらみなど直接的な身体表現は避けて、「Tシャツの中、胸になんか巻いていて…」として、リスナーの気持ちを性に関することばで邪魔することなく、物語の世界に溶け込ませていけるように工夫しました。

ドラマでLGBTQ当事者の方々の思いを伝えることができただろうかと不安でしたが、放送後、カオルさんから「自分が伝えたかった以上のことが物語に入っていた」と感想をいただきました。

“LGBTQに寛容”な地域へ
2015年に全国を対象に行われた性的マイノリティについての意識調査によると「近所の人が同性愛者だったら嫌悪感を抱くか?」という質問に『嫌悪感を抱く/どちらかといえば抱く』と答えた人の割合を見ると、北陸(新潟を含む)は2位の四国を約13ポイントも引き離し、61.5%にダントツのトップ。この調査結果だけを見れば、北陸は“性的マイノリティーに不寛容な地域”と言わざるを得ません。(*『性的マイノリティについての意識 2015年全国調査』広島修道大学・河口和也 教授)

でも そのイメージを払拭する第一歩ではないかと心が躍る出来事がありました。2021年10月10月に金沢市で金沢プライドパレードが行われたのです。私も参加しました。LGBTQの理解促進と誰もが安心して暮らせる社会をめざして開かれたこのイベント。楽しそうに歩く当事者とアライ(支援者や味方の意)の人たちに向けて歩道からレインボーフラッグを振ってくれる方や声援を送ってくれる方もいました。


金沢プライドパレード 2021年10月10日 撮影

「性はグラデーション」と言われているように一人一人自分の性に対する感覚は異なります。ラジオ・ドラマで描いた物語はその一例で、もっともっといろいろな方の人生を描くことで理解を深めていけたらと思います。

「LGBTQ」や「多様性」という用語をわざわざ使わなくても みんなが生きやすい社会になることを目指して、これからも取材を続けていきたいです。

ドラマや映画などで描かれる「LGBTQ像」に違和感を覚えたことはありますか。また「多様性を描いたこんな番組があればいいな」と思うことはありますか。みなさんのご意見や記事への感想などを下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。


※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

#Beyond Gender
2021年11月15日

『予期せぬ妊娠』赤ちゃんの命を守る ドラマで考える Vol.42

子どもの虐待死・遺棄死で最も多いのは「生まれたその日に亡くなる赤ちゃん(新生児0日死亡)」という事実をご存じですか? 10年間で100人近くにも上ります。

また亡くなった赤ちゃんの母親の3割が10代。10代~20代を合わせると実に6割を超えます。さらに「新生児0日死亡」で「“実父の存在”を確認できない場合」が全体の約7割を占め、 データから“孤立した女性たちの姿”が浮かび上がってきます。 *厚生労働省2021年『子ども虐待による死亡事例等の検証結果などについて』

愛知県でも2020年6月に、20歳の女子学生が公園のトイレでひとりで赤ちゃんを出産。死体を遺棄する事件が起きました。県内では児童相談所が長年にわたって“予期せぬ妊娠”をした女性たちに寄り添い、どうしても自分で育てられない場合に育ての親に託す“赤ちゃん縁組”(新生児の特別養子縁組)を行ってきました。

それにもかかわらず、なぜ赤ちゃんを救うことができなかったのか。“小さき命”を守るために何ができるのか。NHK名古屋放送局のディレクターと記者たちが議論を重ねドキュメンタリードラマを作りました。

(NHK名古屋 チーフ・ディレクター 猪瀬美樹 、ディレクター 美濃里亜)


『命のバトン ~赤ちゃん縁組がつなぐ絆~』
11月18日(木)BS1よる8時~

“小さき命”を守るために 私たちにできること

赤ちゃんの死体遺棄事件の現場にたむけた花(撮影:猪瀬)

愛知県で赤ちゃんの死体遺棄事件が起きたあと、事件現場となった公園のトイレに何度も足を運びました。若干20歳の女の子とその赤ちゃんをこの場所に追い込んだものは何なのだろうかと考え続けてきました。そしていま、それは「私たちの社会なのではないか」と確信に近い思いを抱いています。

事件が繰り返される社会を変えるために、ひとりでも多くの“小さき命”を守るために、大人として、メディアとして私たちにできることは何か。事件の直後から、NHK名古屋放送局では虐待や性暴力被害、特別養子縁組について取材し、報道番組やドキュメンタリーで発信を続けてきたディレクターや記者たちが集まり、議論を重ねてきました。

まず取り組むべきは予期せぬ妊娠をして誰にも相談できずにいる人たちに“命を守る すべ ”を伝えること。そして地域の中に「SOSを逃さずキャッチできる仕組み」を作ることだと思いました。そのため私たちは《ドキュメンタリードラマ》という形を選びました。

《ドラマ》の手法を選んだのは若い世代にもこのテーマを身近に感じてほしいと考えたからです。更に《ドキュメンタリー》を組み合わせたのは、予期せぬ妊娠をした女性たちに寄り添い、救ってきた人たちが現実にいること、救われた命があることを知ってほしかったからです。

このテーマをひとりでも多く人に届け、ひとりひとりが『自分自身にできることは何か』を考えていただく機会になればと思っています。

“予期せぬ妊娠” 相談できない・・・

高校2年生の結(鈴木梨央)と交際相手の翔太(鈴木宗太郎)
結の妊娠をきっかけにふたりの関係に変化が… 『命のバトン』より


ドラマは高校2年生の主人公・桜田結(鈴木梨央)が妊娠に気づくところから始まります。「妊娠22週」を過ぎており、既に中絶はできなくなっていました。しかし、おなかの子どもの父親・同級生の翔太(鈴木宗太郎)は現実を受け止めることができず、結に背を向けます。

結の母(田中美里)はシングルマザー。介護士として女手一つで娘を育ててきました。毎日、朝早くから夜遅くまで働く母親に結は妊娠を打ち明けることができず、自殺を試みるまで追い詰められます。


右・千春(倉科カナ) に声をかけられ、自殺を思いとどまった結

ビルの屋上から飛び降り自殺を図ろうとした結。しかし偶然すれ違った結の様子をいぶかしく思い、あとをつけてきた児童相談所の職員・千春(倉科カナ)に声をかけられ、思いとどまります。そんな結を千春は喫茶店に誘いました。

~『命のバトン』より~
千春「知り合いに見つかりたくなかったんだよね」
結「すいません…
(涙がこぼれて言葉にならない)
千春「いいよいいよ。ゆっくりでいいよ」
結「私のことで…、お母さんを呼び出したりするんですか?」
千春「勝手にそんなことしない。あなたから聞いた話も、親とか学校に勝手にしゃべったりしない」

ドラマに登場する千春のモデルの一人、愛知県の児童相談所で働いていた萬屋育子さんは“予期せぬ妊娠”をした女性の心理について次のように説明します。

萬屋育子さん(愛知県児童相談所・元所長)
「“予期せぬ妊娠”をした女性が なかなか周囲に打ち明けることができない場合があります。妊娠自体に罪悪感を持っていたり、『恥ずかしい』と感じたりしているためです。大好きな親だから、身近な先生や友人だからこそ余計に『知られたくない…』という感情が働きます。

こうした女性たちにどう寄り添えばよいのか。私の場合はすぐに事情を聞くことはせず、しばらく一緒に時間を過ごします。相手が落ち着いてきたタイミングで『私にお手伝いできることはあるかしら?』と声を掛けます。相手が何に不安を感じているかを探り、『私はあなたの味方。あなたがどうしたいかが一番大事だよ』と伝えることが大切です。」

“赤ちゃん縁組”という選択肢

千春は結に“赤ちゃん縁組”という選択肢を示した

結は交際相手の翔太と話をすることさえできずにいました。ひとりで育てていく覚悟も持つことができず悩んでいました。千春は「赤ちゃんと結の将来」のために、結にいくつかの選択肢を伝えます。その一つが“赤ちゃん縁組”(新生児の特別養子縁組)でした。

“赤ちゃん縁組”とは、予期せぬ妊娠をした女性が産んでも育てられない子どもを民法の「特別養子縁組制度」を使い、育ての親に託す取り組みです。子どもの福祉を目的とした養子縁組制度で、裁判所の審判が下りれば戸籍上も家族になります。女性たちが赤ちゃんを育てられない理由は10代の妊娠、性暴力被害による妊娠、貧困などさまざまです。

ドラマには実際に“赤ちゃん縁組”で結ばれた家族のかけがえのない瞬間を捉えたドキュメンタリー映像もふんだんに織り込まれています。


赤ちゃんと育ての親の初対面の瞬間(2014年放送『クローズアップ現代』「“親子”になりたいのに… ~里親・養子縁組の壁~」より)

愛知県の児童相談所では全国に先駆けて30年以上前から特別養子縁組制度に基づいた“赤ちゃん縁組”(別名「愛知方式」)を続けてきました。

育ての親は多くの場合、不妊治療をしても子どもを授かることができなかった夫婦です。「愛知方式」では縁組を希望する夫婦に厳しい心構えを求めています。子どもの「性別や障害、病気の有無」を選ぶことはできません。

また裁判所の審判が確定する前に「生みの親の同意が翻った場合」、子どもを返すケースもあることを理解してもらいます。これまでに縁をつないだ家族は250組を超えています。

“お母さんと赤ちゃん”に寄り添い続ける

揺れ動く結の気持ちに寄り添い、支える千春

“赤ちゃん縁組”という選択肢を知った結。しかし おなかの赤ちゃんが成長するにつれて次第に愛情も芽生えてきます。「育てたいという気持ち」と「育てることが難しい現実」の狭間で葛藤する結。そんな結に、千春やホームステイ先の里親など周囲の大人たちは寄り添います。

出産シーンの撮影は愛知県の産婦人科で行われました。ドラマに登場する助産師や看護師は実際に病院で働くスタッフです。この病院では長年、結のような予期せぬ妊娠をした女性たちのケアを行ってきました。「思い悩む女性をひとりでも救いたい」と撮影に全面的に協力してくれました。

戸川晴美看護師長(助産師)
「(予期せぬ妊娠をした女性は)やっぱり『どうしたらいいんだろう』っていうふうになってしまって、ただ戸惑うだけでどんどん(妊娠)週数がきてしまって。最終的によくいろんな事件が起きたりすることもあるので。周りがいろいろケアしてあげなきゃいけないのかなと思います」

周囲の人たちに不安や葛藤を受け止めてもらえる環境の中で、結は次第に「赤ちゃんの幸せにとって何が一番なのか」を真剣に考えるようになります。

男性にも“予期せぬ妊娠”に向き合ってほしい

迫真の演技をぶつけ合う「結」役の梨央さんと「翔太」役の宗太郎さん

これまで取材した複数の事例では“思いがけない妊娠”の末に事件へと至るような場合、おなかの赤ちゃんの父親である相手の男性と連絡が取れなくなり、女性が孤立し 追い詰められていたケースが少なくありませんでした。こうした現状を男性にも知ってほしいと私たちは考えました。

ドラマの後半、出産した結は交際相手の翔太に思い切って電話を掛けます。ふたりは妊娠が判明して以来、初めてお互いに正直な気持ちをぶつけ合います。7分間に及ぶ長いシーン。「結」がどんな思いをぶつけ、それを「翔太」がどう受け止めるのか。ふたりは演技について何度も議論を重ね、撮影に挑みました。

~『命のバトン』より~
結 「赤ちゃんに会いたくない?」
翔太「俺? そんな資格ないよ」
結 「なにそれ? 資格とかじゃなくて『翔太があの子にやってあげられること、なんかないの?』って言っているの。悪いけど、もう翔太の気持ちとかどうでもいいの!」
翔太「ごめん……」
結 「簡単に言わないで」
翔太「結……、大丈夫?」
結 「私、これまで生きてきた中で、一番傷ついたし、一番悩んだ。ひとりぼっちにしたこと一生許さない。なんか言って!」
翔太「全部俺が悪いんだ!」

このシーンの最後、結は翔太に赤ちゃんと真正面から向き合うことを約束させます。

ドラマの演出を手がけた大橋守ディレクターはあえて細かい指示をせずに「結」と「翔太」と同世代の俳優・鈴木梨央さんと鈴木宗太郎さんが感じたまま演じるように伝えました。

チーフ・ディレクター 大橋守(ドラマ・パートの脚本と演出を担当)
「女性が一方的に責任を追わされることが少なくないという現実を若い男性にも考えてもらいたくて。クライマックスで翔太が遅まきながら結に初めて向き合うという場面を作りました。実際の2人のやりとりは“電話の会話”ですが、演出として体と体をぶつけあうような芝居をふたりに託しました。」


左:「翔太」を演じた鈴木宗太郎さん(23歳) 右:「結」を演じた鈴木梨央さん(16歳)

俳優・鈴木宗太郎さん(翔太役)
「(翔太を)『すごい無責任なやつだ』というふうに言うのはすごく簡単だと思うし、それを言われたらもう『ごめんなさい』というふうに言うしかないんですけど。それでも、『そうだよな。そういう怖さってあるよな』とも理解できて。それを自分も一緒に背負えたら、そういう気持ちで演じていました。」

俳優・鈴木梨央さん(結役)
「(結は)今までは翔太に対する思いが強かったのに対して、このシーンはそれよりも赤ちゃんのことをすごく考えるようになって。同世代の私から見てもすごく大人のように感じて何かぞわぞわくるというか。結ちゃんになるべく自分が気持ちを近づけられるようにという思いが強かったです。 

今回初めて子どもを出産する結という役を演じさせていただき、私たちの命は一人だけではなくて、たくさんの人たちの愛によって育まれているんだなと深く感じました。この番組を見てくださる方々が助けられる命についてや、その人たちのつながり、その奇跡を考えたり、感じたりしていただけたらうれしいです。」

この番組をきっかけに「もし、自分や大切な人が“思いがけない妊娠”に直面したら?」、「どんな支えがあれば、命を救うことができるのか?」。友達、交際相手、家族と、そして地域で《対話》を行う機会になれば幸いです。


ドキュメンタリードラマ「命のバトン ~赤ちゃん縁組がつなぐ絆~」
【放送予定】
▶11月18日(木)[BS1](前編)午後8:00~8:50、(後編)午後9:00~9:50
【再放送】
▶11月23日(火・祝)[BS1](前編)午前11:00~11:50、(後編)午後0:00~0:50
▶12月11日(土)[総合]午後4:15~5:55(※中部7県)
▶2022年1月7日(金)(前編)午後8:00~8:50、(後編)午後9:00~9:50

あなたは、もし身近に“予期せぬ妊娠”をした人がいたら、なんて声をかけますか?“赤ちゃん縁組”についてどう思いますか? みなさんのご意見や記事、ドキュメンタリードラマ『命のバトン』への感想などを下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。


※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

2021年11月5日

#みんなの更年期 ご意見募集中 Vol.41

ご意見をお聞かせください


”更年期症状”が原因で仕事を辞めた人の数
57万人 (専門家推計)

「しんどい時に休めない」
「働き続ける自信がなくなった」
「相談できる人がいない」

気分の落ち込みや体の痛みなどの更年期症状が、働く人たちに深刻な影響をもたらしています。一方、社会のサポートや適切な知識・治療があれば、仕事へのマイナスの影響 『更年期ロス』を防げることも、近年の研究や海外の取り組みから分かってきました。

人生のなかで 誰もが経験しうる更年期症状
ともに働く人にとっても ひと事ではありません
あなたの問題は みんなの問題


NHKは取材を通して みなさんと一緒に考え、今後さまざまな番組やニュースで取り上げます。
ぜひ、あなたやあなたの身近な人の経験を聞かせてください。
こちらの 「#みんなの更年期」アンケートフォームで募集しています。
取材してほしい内容やご意見もお待ちしています。

<更年期について>
更年期はすべての女性が経験します。女性ホルモンが急激に減少する閉経前後の40代半ばからの10年間の時期を指します。
一方男性でも、ストレスなどの影響で男性ホルモンが低下することで、40代から60代頃にかけていわゆる更年期症状が出ることがあります。


※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

2021年11月5日

“更年期ロス” 100万人の衝撃 データで見る#みんなの更年期① Vol.40

ほてり、頭痛、憂うつ…。
性ホルモンの減少によって起こる心身の不調、いわゆる「更年期症状」が働く人たちに深刻な影響をもたらしていることが、NHKと専門機関が行った初めての大規模な調査から明らかになりました。

更年期症状によって仕事に何らかのマイナスの影響があった、いわば「更年期ロス」にあたる人は専門家の推計で100万人を超えます。

働く現場でどんな問題が起きているのか、調査結果を詳しくお伝えします。

(クローズアップ現代+“生理の貧困” 取材班 ディレクター 市野 凜)

「更年期ロス」を解消するために何が必要か、みなさんと考えていきたいと思います。
記事に対するご意見やあなたの体験談、取材してほしい内容などをぜひ教えて下さい。
記事の最後の「コメント欄」かこちらの『#みんなの更年期』アンケートフォームからお寄せください。

国内初の大調査「更年期と仕事に関する調査2021」


働く女性およそ3000万人のうち、45歳から54歳の「更年期世代」はおよそ4分の1を占めます。

しかし更年期に現れる諸症状によって仕事にどのような影響があるのか、これまで大規模な調査は行われてきませんでした。その実態と必要な対策を探るため、今回NHKはインターネット上で大規模なアンケートを実施しました。
調査は「女性の健康とメノポーズ協会」、「POSSE」、「労働政策研究・研修機構」、「#みんなの生理」との共同企画で2021年7月に行いました。

「更年期症状を経験」 女性で約4割
全国の40代と50代の男女およそ4万5千万人に聞いたところ、更年期特有の症状を「現在、経験している」または「過去3年以内に経験した」という人は女性で約37%、男性で約9%でした。



「更年期ロス」女性75万人・男性29万人
過去3年以内に更年期症状を経験した人のうち、治療の必要があるとみられる人を専門家の助言のもと およそ5300人(女性4296人・男性1038人)を抽出し、仕事への影響を詳しく聞きました。

調査では更年期症状によって仕事に何らかのマイナスの影響があった人を「更年期ロス」として集計しました。

  • 「仕事を辞めた」
  • 「雇用形態が変わった(正社員から非正社員になった など)
  • 「労働時間や業務量が減った」
  • 「降格した」
  • 「昇進を辞退した」
  • など、雇用や収入に影響があった人が女性で15.3%、男性で20.5%に上りました。

    これは働く40~50代女性では推計で75.3万人、40~50代男性では推計で29.2万人になるといいます。(日本女子大学 周燕飛教授の分析)



    「仕事を辞めた」人は約1割
    実際に仕事にマイナスの影響があった「更年期ロス」の内訳を見ると女性では「仕事を辞めた」という人の割合が最も多く、9.4%。男性では「人事評価が下がった・降格した」人の割合が7.8%と最も多くなりました。



    更年期ロス「自分のせい」と考えがち
    「仕事を辞めた」「降格した」など「更年期ロス」を経験した人にその理由を聞いたところ、勤務先や上司に指示・命令された人が一定数いる一方、最も多かったのは「仕事を続ける自信がなくなった」、次いで「職場に迷惑がかかると思った」など “自分のせい”と考えている人が多数に上りました。女性では「育児や介護と仕事の両立が難しかった」という人も10.2%いました。



    職場や周囲の対応も影響
    さらに更年期症状が原因で職場で抱えた問題について詳しく聞いたところ、「更年期ロス」は当事者ひとりの問題ではなく、職場や周囲の対応に原因があるのではないかということも見えてきました。

    降格や人事評価の低下や退職勧奨など労働面での問題に加えて(図・更年期症状が原因で職場で抱えた問題①)、「症状への業務上の配慮がなかった」「偏見を感じた」「からかわれたり軽くあしらわれたりした」「嫌がらせやハラスメントを受けた」という人も少なくありませんでした(図・更年期症状が原因で職場で抱えた問題②)





    「誰にも相談しない」人が過半数
    職場で問題を抱えたとき 誰に相談したかを尋ねると、女性では「同僚」、男性では「産業医や主治医」がそれぞれ24%、およそ4分の1に上る一方、「誰にも相談していない」という人が女性では60.8%、男性でも47.2%とそれぞれ最も多くなりました。



    家計・生活にも影響
    家計への影響が深刻であることも分かりました。更年期症状による収入低下や治療費用の捻出によって生活に起きた変化を聞いたところ、「食費を切り詰めた」「貯蓄を取り崩した」という人が男女ともにおよそ20%に上りました。



    求められる「休みやすい制度」「収入補償」
    更年期症状と仕事を両立するために、国や職場でどんな支援や制度が必要か尋ねたところ、女性では「育児休暇や生理休暇の使いやすさ」が43.6%で最も多く、次いで「休んだときの収入補償」41.6%でした。男性で最も多かったのは「休んだときの収入補償」40.2%、次いで「治療の経済的支援」34.3%でした。



    「誰もが更年期症状を理解できる」環境へ
    さらに職場で更年期症状がどのように扱われるのが望ましいか聞いたところ、男女ともに40%近くが「職場の誰もが更年期症状や対処法について理解できる研修(職場の全員への研修)」を望んでいた一方、「職場の人には知られたくない・自分ひとりの問題にしておきたい」という人も女性で9.5%、男性では16.8%に上りました。



    更年期は“みんな”の問題
    これまで更年期症状によってもたらされる さまざまな困難は「個人の問題」とされ、支援が必要だといった社会的な認知は十分に進んできませんでした。しかし調査に携わった専門家は周囲や社会が適切にサポートすれば「更年期ロス」はなくすことができると強調しています。


    (「更年期と仕事に関する調査2021」に関わった 昭和大学医学部 有馬牧子講師)

    昭和大学医学部 有馬牧子講師(医学博士)
    「ずっと仕事を頑張ってきたこの世代がこれだけ辞めていくということは、やはり企業や社会の更年期への認識がこれまで薄かったのだと思います。更年期症状には安全性が確立された治療法がありますし、『更年期に具合が悪くなるかもしれない』と理解して、本人や周囲が備えられていれば防げる損失です。更年期に合わせた評価制度、研修、休暇などを考えることが大事になってくると思います。」

    記事に対する感想やご意見、あなたの体験談、取材してほしい内容などを下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。


    更年期による症状・治療・職場・生活に関する相談は
    ▼一般社団法人 女性の健康とメノポーズ協会(https://www.meno-sg.net/
    電話番号 03-3351-8001(火曜・木曜 11~16時 無料相談実施 8月は休止)

    ▼NPO法人POSSE(https://www.npoposse.jp/
    電話番号 03-6699-9359(労働相談)
    電話番号 03-6699-6313(生活相談)

    専門家による調査の詳細分析
    https://www.jil.go.jp/tokusyu/covid-19/collab/nhk-jilpt/index.html
    ※NHKサイトを離れます。


    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2021年11月2日

    生理についてどう話してる? 世界各地で聞いてみた Vol.39

    「生理についてもっとオープンに語ろう」とよく耳にするようになりました。
    でも言うは易し。どう言葉にすればいいかわからないし、いきなり語られても受け止める人も戸惑うのでは…?

    そこで私たちは生理についてオープンに話し合っている世界各地の家族、カップル、友人たちを取材することにしました。

    生理中の人への「思いやり」を教える台湾の小学校。
    「男性がナプキンを買ってきてくれるのは普通」と話すブラジルの高校生。

    生理をめぐる色とりどりの価値観を見つめていくと、従来の「生理」のイメージが心地よく覆されていきました。

    (『ハロー!生理』ディレクター 柿沼 緑)


    『ハロー!生理 世界で聞いた5つのストーリー』<11月3日(水・祝)よる10時55分~>


    “ママブロック” 「子どものため」が障壁に

    (生理用品 左:月経カップ、中央:タンポン、右:ナプキン)

    日本で生理のことを話しづらくしたり医療的なケアを受けづらくしたりしている要因のひとつに“ママブロック”があると言われています。

    娘のためを思って母が教える生理にまつわる情報や振る舞い方が、娘の思考や行動を“ブロック”して生きづらくしているというのです。例えば、こんな言葉を取材中に何度も見聞きしました。

    「生理のことは隠すのがお上品」

    「若い娘が婦人科に行ったら周りの人に妊娠したと思われるのでは」

    「避妊ピルを飲んでいると知られたら 性に奔放な子だと思われる」

    こうした言葉が積み重なって娘たちの意識の中に刷り込まれ、生理痛が重くても耐えるばかりで医者や周囲に相談できず、病気の発見が遅れたりしています。

    立ち上がれないほどつらい生理痛を抱えながら大学受験を乗り越えなくてはいけない、PMS(月経前症候群)で心のバランスを崩しながら就職活動をしなくてはいけないという人も少なくないようです。

    「幼い頃に知っていたら…」男子学生の声
    また、取材をする中で印象的だったのは、日本の男子大学生の声でした。小・中・高校で生理のことについて詳しく学ぶことなく育った世代です。

    男子大学生たちの声
    「母は機嫌が悪く理不尽に怒る日があるけど、それがPMSのせいだと最近知った。幼い頃に知ることができていたら お互いにつらい思いをせずに済んだのに…」

    「パートナーが生理痛などに苦しんでいるから助けてあげたいけど、どう接すればいいかわからない。ネットの情報を頼りにしているけど、何を信じればいいのか わからない」

    家族や学校が子どもたちに生理のことについて正しい情報を詳しく教えようとしてこなかったために、本人や周りが不意に傷ついたり、自分の大切な人を思いやることができなかったり、苦しい思いをしているのだということを知りました。

    ”生理への思いやり”を教える台湾

    (台湾の小学校 「生理中の人を思いやる」ことについて考える授業)

    今回取材した国や地域の中で、生理についてオープンに話す文化が根強いと感じたのは台湾です。

    生理周期を管理するアプリをスマホに入れてパートナーの体調を一緒にケアする男性も少なくないと聞きました。生理用品をお盆のお供え物にする例もあるそうです。

    生理がタブー視されていない社会だなと驚きました。

    ある小学校では、保健体育などの授業以外でも先生が日常的にこどもたちに生理の話をするそうです。生理のメカニズムだけではなく、生理中の人に思いやりをもってどう接するべきか、具体的に伝えます。

    生理を、生理がある本人だけが抱え込まなくていい社会の基盤を垣間見たような気がしました。


    (妻の生理についてオープンに話し合う台湾の夫婦)

    生理中の妻を夫が手厚くサポートするという台湾の夫婦にも話を聞きました。

    いつもは家事を分担している二人ですが、生理期間中は夫が一手に引き受け、買い物に行く前には生理用品や鎮痛剤の在庫を確認し、足りなければ買い足しておくそうです。

    妻が普段から自分の生理の周期や症状について包み隠さず話すので、夫は妻の痛みを理解して的確なサポートができるのだと感じました。

    日本では夫婦やカップルの間で生理について歩み寄って話すということは比較的に少ないように思います。本人は生理の周期や それに伴う心身の変化について“つつみ隠す”、そして夫やパートナーも“関わらない”傾向が強いのではないでしょうか。

    でも台湾の人たちの対話を見ていると、日本で感じる生理に関す対話の“断絶”は、男女の身体的な違いから生じるわけではないということをまざまざと感じます。

    “断絶”を生んでいるのは「男だからわからない」「女にしかわからない」という“思い込み”や、そうした“思い込み”を生み出してきた日本の社会や文化のありかたにあるように思います。

    男性も普通に生理用品を買う ブラジル

    (生理用品 『ハロー!生理』のコマ撮りアニメより)

    ブラジルの高校生が教えてくれたことで印象に残っている言葉があります。

    「この町の男性は普通に生理用品を買ってきてくれる。お店から電話してきて『どの商品がいい?こんなのがあるよ?』って聞いてくれるの。」

    「生理を隠す」という風潮にはメディアも長年、加担してきたと思います。日本で取材する中で「ナプキンは体につけるものだと思っていた」「タンポンを見たことがない」という声を男女どちらからも たびたび聞きました。

    そこで番組で生理用品のコマ撮りアニメを作りました。生理用品を包み隠すことなく、男女問わず みなさんが直視しても恥ずかしくない形で画面に提示したいと思いました。繰り返し洗って使える月経カップも登場します。

    生理用品ひとつで、ひとりひとりの日々の暮らし方や仕事の進み具合が大きく変わります。いろんな選択肢があることを知ってもらい 気軽に手に取って試してもらえるようになるといいなという願いを込めています。

    番組のナビゲーターはモデルで俳優の水原希子さん。世界各地の家族やカップルの“生理の対話”を見ながら、自分の初潮のときの思い出を笑いながら赤裸々に話してくれたエピソードには共感できる人も少なくないかもしれません。ぜひご覧いただきたいです。


    (『ハロー!生理』ナビゲーターの水原希子さん)

    水原希子さん
    「私はこれまで『男の人には生理の話をしてもわかってもらえないのでは?』と思っていたけれど、この番組には性別や世代を超えてフランクに、そしてほほえましく生理について対話するチャーミングな人たちが登場します。

    日本でもさらっと『今日、生理なんだ』と言えるようになったらどんなに楽かなと思いました。そうすれば、いろんな誤解や勘違いもなくなり、結局みんなが幸せになるんじゃないかな。番組をご覧になって、この感覚をぜひ味わってください。」

    世界各地の“生理の対話”を取材して…

    (フランス 生理について語り合う幼なじみのふたり)

    私自身、小学校で男女に分かれて受けた性教育の授業で生理について学び、家庭の中でもナプキンをこそこそ隠しながらトイレに行くような環境で育ちました。

    でも、海外に一歩飛び出してみると、生理の会話はまるで天気の話をしているかのごとく軽やかでした。老若男女が垣根なく生理について語り合い、「あはは」と笑えて、ちょっと沁(し)みる…。人間模様がぎゅっとつまった対話がたくさんありました。そして、生理について話すことは「みんなが心地よく生きるための術」であることを学びました。


    生理について悩みがあっても人に話せない、身近な人の生理についてどう力になればいいかわからないなどで困っていることはありますか。どうしたらそうしたモヤモヤを解消することができると思いますか。ご意見や記事への感想などを下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。


    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2021年10月29日

    まだ「生理」を語れない だから、ドラマで描いてみた Vol.38

    「雨が降ると、死にたくなる時があるー」。

    ちょうど季節の変わり目で生理痛がひどかった去年秋のある日、私はその一文を目にしました。あるインターネットのサイトにアメリカ人の女性がPMS(月経前症候群)に襲われたときの気持ちを綴った一言。強烈に見えますが、私はとても共感したのです。月に一度PMSに襲われ、もし雨が降れば低気圧も作用して まるで人が変わったように物事を悲観的に見てイライラしてしまう…。そんな状態に長年苦しんできたからです。

    仕事や学校など社会の場で語りづらい生理を「何か」をきっかけに、周りの人たちと“自然に”語り合うことができたら、多くの人の心が癒やされるかもしれない。そんな場はもっと当たり前にこの日本の日常にあるべきだと思いました。

    だから、言葉の陰に隠れた感情こそを描く「ドラマ」で、月経に伴い心身に生じる“生理現象”を抱えて生きる葛藤を描きたいと思いました。テレビを通じて生活の中に届くように。
    そうして『雨の日』を制作しました。

    ドラマ『雨の日』 総合テレビ 11月3日(水・祝) よる10時~

         

    (ドラマ『雨の日』プロデューサー 家冨未央)


    ふと、語り合った事から生まれた『雨の日』プロジェクト
    イライラや不安感、お腹(なか)や乳房の張りや痛み…。
    生理の前に体や心に表れる不調「PMS」は最近ようやく日本でも雑誌やテレビで語られるようになり、症状やそれをやわらげるピルや処方薬の情報を誰もが手にできるようになりました。

    でも具体的にどんな痛みや苦しみがあり、その“感覚”が生理が来る前から来た時までどのように変化するかは本人それぞれによっても異なるため、周りの理解を得るのは依然とても難しいです。

    そんな難しさについて数名の同僚ディレクター(生理の当事者)たちとお茶飲みトークで話し始めたら、それぞれから出るわ出るわ、生理の悩みと生理が語れないストレスの数々…。

    会議中、生理で腹痛に襲われたが誰にも言えずに堪え続けて意識を失いかけた…
    ロケ当日の朝、トイレに長時間行けなくなることを予想して血が漏れ出さないように子どものオムツをあてた…
    など、人知れず乗り越えてきた闘いと悲しみの実話が飛び交いました。でも興味深かったのは みな一様に悲惨な事を共有しながらも、どこか癒やされているように見えたことです。

    それから、語りづらい“生理現象“をみんなで自然と語り合える“きっかけ”を作るべく、“当事者”であるディレクター、脚本家、監督、スタッフが大集結。今日も人知れず生理と闘っている人たちや、その人に何と声をかけたらいいかわからない人たちに届く作品を作ろうと『雨の日』という名のドラマプロジェクトが立ち上がりました。

    頑張りたい 幸せを感じたい、そんな時に生理…

    「ピンチはチャンスと言うけれど、跳ね返せないピンチもある」
    (写真:主人公・ヒカリ役/コムアイ)


    “生理現象“のつらさを最も他人に言いづらいのはどんな場だろう…。
    脚本家や監督と相談を繰り返す中で、グラビアモデルの皆さんの撮影現場に出会いました。

    青少年向けの雑誌の巻頭は魅力的な水着姿の女性たちが飾ることが多いです。そこで男性読者の間でファンが増え、一部のモデルのみなさんは俳優やタレントへと転身をとげていくこともあります。

    早速、あるグラビアモデルの方々に監督の酒井麻衣さんと一緒に取材してみると、撮影時にPMSや生理が重なって水着姿になることの不安や ボディラインがむくむことを気にしていることなど体験談をたくさん教えてくれました。

    意気込んでいた撮影当日に生理が来て、慌てて駅のトイレで慣れない挿入の痛みを我慢しながらタンポンを入れたという方や、早い年齢から低用量ピルを飲んで生理周期をコントロールしようと努めてきた方もいました。

    監督が取材の時、「もし あなたが撮影現場で生理になっていたら、スタッフは誰が知っている状態ですか?」と聞きました。

    撮影する時は、モデルを取り囲むカメラマン、メイクやスタイリスト、制作のお手伝いをする人、そして雑誌編集者やマネージャーがいます。男性が多くを占める現場が多いようですが、もしモデルが生理になったら最初に知るのはスタイリスト。つまり、他のスタッフは知らないまま進行することも多く、血が漏れない対策をアレコレして乗り切る局面もあるそうです。他のスタッフは何も知らないまま撮影が進むことは少なくないといいます。

    モデルの方々のお話を聞いていて印象的だったのは、それぞれみなさんが周りに迷惑をかけずに撮影をなんとか乗り切ろうとさまざまな工夫をしている様子でした。「生理だからつらい!」と言ってしまえたら楽だと思います。でも「それを言ったらチャンスが二度と巡ってこないのではないか…」と恐れる気持ちもあるのだろうと感じました。

    これはグラビアモデルの皆さんに限らず、学生、会社員、アスリート、子育てや介護などに従事する人など、さまざまな人たちにも通じる感覚なのではないかと思います。


    「私の成長は、ヒカリに撮ってもらう」
    (写真:かつてのヒカリの友達・ミドリ役/成海璃子)


    この物語は、何かの壁に立ち向かって意気揚々と乗り越えていくような話ではない。頑張りたいけれど頑張れない時もある。それでも かなえたい夢や幸せを感じたい心を捨てずに、人生を歩む話だと思いました。

    葛藤を乗り越えながらも前に進み続ける方々にリスペクトの気持ちをこめたオリジナルの脚本ができあがりました。

    生理は 辛い暗いだけじゃない、時にカラフルで “人生”そのもの

    「私、ここから成長したいです。だから、今の私を覚えていてくださいね」
    (写真:初めてのグラビア撮影に挑戦する あおい役/工藤遥)


    『Singin’ in the Rain ― 雨に唄(うた)えば』というミュージカル映画があります。ジーン・ケリーがどしゃぶりの中でタップダンスをしながら口ずさむ唄。生理のドラマを考え続ける中で、なぜかずっと頭の片隅であの唄が鳴っていました。

    特に日本ではPMSや生理は「重い、つらい、苦しい」というトーンで語られがちです。もちろん肉体的にも心理的にも負荷は相当ありますし、生理用品の購入など経済的負担も本当にバカになりません。

    しかし見方をちょっと変えてみると生理は興味深いものです。そのつらさの種類は人それぞれで、生理何日目なのか、どういう日を過ごすのか(仕事か休みかなど)によっても感じ方がだいぶ変わります。1日の中でも感じ方が変化します。

    だから、誰かがちょっと声をかけてくれることがとても優しく深く響くこともあります。そう考えると“生理現象“は人生そのもののような“浮き沈み”と“彩り”を持っているとも思えます。

    監督はこの作品に できるだけ“色”をカラフルに織り込みたいと考えていました。キャストの衣装も小道具も できるだけ色味とデザインを多様に配置。

    クライマックスの海辺のシーンの撮影場所は宝箱をひっくり返したような小道具に囲まれたロケ場所が選ばれました。写真にもあるレインボーカラーのビニール傘は、監督のこだわりの小道具です。

    撮影部や照明部のスタッフは色が美しく映えるように、光を意識して映像を切り取ってくれました。ずっと雨を降らせながら撮る物語だったので(撮影はタフでしたが)、雨が冷たい雨だけではなく、時に暖かく見えるように撮れないか…といった話し合いも行われました。

    色を意識して撮られた映像にみずみずしさを音楽が加えてくれています。写真にもある、ビニール傘を振って踊るように海辺を歩くシーン。

    「小さなオーケストラ」というコンセプトを元に身近な楽器を使いながら優しい音が飛び跳ねるような楽曲が生まれました。心の中が灰色なときもあれば、急に暖色に満ちていくような感覚を引き立たせてくれています。

    言葉、表情、空間、音…それぞれが色を持って重なる感覚を「ドラマ」の手法を使ったことで表現できたのではないかと思います。

    余談ですがドラマの撮影初日、生理2日目のダルさで顔をしかめていた私は息子から「ママのお腹(なか)はどれぐらい痛いの?」と聞かれました。

    その時「痛いというか、とてつもなく重いんだよ」と答えたら「えー、牛がいるぐらい?」と驚き、しばし牛がお腹の中にいる図を想像していた様子でした。

    小学校低学年の男の子が考える生理の感覚が面白くて、「自分が低学年の時は男の子たちは生理を学校で学んでいたかしら?」と思い返しながら顔の歪みは一瞬なくなった気がしました。牛を想像しながら心配してくれた息子の優しさが身に染みました。

    これからの日本は子供たちもが自然と“生理現象“について語れる、語りやすい社会になれたらすてきです。

    画面の中に、さまざまな当事者が存在できるように

    「知らなかった、こんなに種類があるなんて」
    (写真:あおいのマネージャー・須藤役/後藤剛範、ロケバスの運転手・航役/成宮涼)


    この写真(上)は撮影中に生理になってしまったあおいのためにドラッグストアに生理用ナプキンを買いにきたシーンです。手前の男性(あおいのマネージャー)はナプキンの種類のあまりの多さにどれを選べばいいのかわからず呆然としています。

    実はこのシーン、ドラマの立ち上げメンバーの一人の男性プロデューサーが妻から「ナプキンを買ってきて」と言われて「おりものシート」を間違って買って帰ったというエピソードから生まれました。

    生理がある人にとっては当たり前の売り場コーナーも、生理を経験したことのない人にとっては混迷を極める“ジャングル”なのだと作品づくりを通じて感じました。

    撮影中、「ナプキンてどうやって体に張りつけるの?」と尋ねてきた男性スタッフがいました。私は「体につけないですよ。下着につけるんです。」と答えると「ずっと知らなかったー!恥ずかしい!」と声を上げました。

    でもそれは決して恥ずかしいことではありません。わからないことをわからないと口に出して語り合えたことはとても貴重だったと思います。「炎上するから」「空気読めてない」と思われるから「わからない」と言えない世の中はとても窮屈だと感じます。

    そして生理を語るのは決して女性だけではなく、男性もトランスジェンダーの方もいてしかるべきだと思います。

    この作品を通じて出会ったトランスジェンダーの男性の方が、かつて生理が来て悩んだときのことを語ってくださったとき、「こういう人がいることを画面を通じて伝えられたら、昔の自分のような悩める人の気持ちをちょっとだけ救えるかもしれない」とおっしゃいました。

    私たちはほぼ無意識に「この話題は女性向け」「この話題は男性向け」と分けているときがあると思います。しかし生理は自分、家族、友人、知人、誰もが向き合っていることなので、逆に話す相手を広げてみると凝り固まった自分の感覚が広がっていくのではないでしょうか。

    作品をつくるために、キャストとスタッフととことん“生理現象“について会話した数か月はとても新鮮で、これまで「個人的なことだから我慢しなければ」「弱みを言ってはいけない」と暗黙のうちに抑えていた感覚が柔らかく多様に広がっていくような体験でした。

    ドラマ制作を通じて思うこと
    このドラマの制作は実はとても緊張感を伴う怖いものでした。

    物語の中で何か劇的な事が勃発するわけではありません。むしろ できるだけ登場人物の五感…つまり個人の中でアップダウンする感覚を丁寧に描きたいと思いました。

    そのためにチーム一同、とても繊細に各キャラクターを掘り下げる一方で、それぞれの性格や感情を一面的に“決めつけない”ように気をつけました。そして、ひとりひとり自分のパートナー、兄弟姉妹、親や子どものことを思いながら制作に取り組んでくれたと思います。

    『雨の日』の英語タイトルは『Our Rainy Days』にしました。

    “わたしたち”に向けたお話です。見てくださる方たちが雨の日を迎えるときにちょっとでも苦しいと思う気持ちを声にできたり、隣で苦しそうにしている人に優しく声をかけてみようと思えたりしたら、とても幸いです。

    これが一つの作品という以上に、社会がちょっと優しくなるための「きっかけ」としてお届けできますように。

    【放送予定】
    特集ドラマ『雨の日』11月3日(水・祝) <総合>よる10時~
    ドキュメンタリー『雨の日』11月3日(水・祝) <総合>よる10時55分~

    あなたは生理やPMSの悩みについて身近な人と話したり相談したりしたことはありますか。どんな言葉や対応に癒やされますか。どうすれば生理について話しやすい環境が生まれると思いますか。みなさんのご意見や記事、ドラマ&トーク『雨の日』への感想を下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。


    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2021年10月22日

    女子だから工学部はダメ!? “好意的な性差別”と進路 Vol.37

    「重いから女子は持たなくていいよ」
    クラスで、文化祭の準備をしているときに男子に言われた一言。
    「Aちゃん、さすが女子力高いね」
    合宿で、夕食後テーブルを拭いた女子にかけられる一言。

    日常生活に溶け込んでいる会話だと思います。発言した人に悪意はないし、日常的に男女差別をしている人というわけではもちろんないでしょう。しかし これらは強い言葉かもしれませんが「性差別」。相手を露骨に否定する“敵意的な性差別”ではありませんが、無意識で悪気のない“好意的な性差別”なのです。

    “好意的な性差別”は「学びの場」にも浸透し、進路にも少なからず影響を与えています。NHK「#学びたいのに」が制作した1分アニメを通して考えます。

    (「#学びたいのに」取材班 秦 圭矢乃ディレクター)

    「女の子だったら薬学部?」アニメで考える性差別
     

    大学で機械工学を学びたいと勉強を続けてきたサクラ。模試でA判定を取り、喜び勇んで家族に報告するとこんな言葉を投げかけられます。

    父親「本当に工学部に行く気なの?女子は少ないよ」
    母親「女の子だったら、薬学部なんかいいんじゃない?」



    家族は決して悪意があるのではなく、娘の将来を想像して良かれと思って声をかけます。その背景には「工学は男性の学問」「女性は資格職が良い」などの偏見が潜んでいます。サクラが男の子だったら同じ言葉をかけていたでしょうか?

    “女子は理系が苦手”ではない
    進路をめぐる“好意的性差別”は日本で理系に進む女子が少ないことの要因の一つと考えられています。

    各国の15歳の子どもたちの学力を測るPISA(国際学力調査)の結果を見てみましょう。OECD(経済開発協力機構)加盟国のうち17か国の男女の科学的リテラシーの平均点(縦軸)と数学的リテラシーの平均点(横軸)を示したグラフです。

    日本の男女の平均点は各国の男女に比べて高い水準です。日本の女子の平均点もトップレベルであることがわかります。


    (文部科学省・国立教育政策研究所 『OECD生徒の学習到達度調査(PISA2018)』よりグラフ作成。日本女子の平均点は、『2018年調査国際結果の要約』p.16④, p.19④より引用)

    日本の女子は科学的リテラシーも数学的リテラシーも各国と比べて極めて高いスコアにもかかわらず、理系の大学に進学する人は限られています。大学の学部進学者の男女の割合を見ると、理学部に進学する女子は27.9%、工学部は15.4%にとどまります。他の学部と比較すると著しく低いです。


    パンフレット内閣府・男女共同参画推進連携会議『ひとりひとりが幸せな社会のために ~令和2年版データ~』P.6より)

    また 女性の理系研究者の割合はOECD諸国で16.2%と最下位です。


    『令和元年版男女共同参画白書』 特集編「多様な選択を可能にする学びの充実」P.36より)

    「工学部に女子は少ない」「女の子だったら薬学部がいいのでは?」

    こうした無意識の”好意的な性差別“は家庭だけでなく、学校の先生や友人、さらにはインターネットやソーシャルメディア、テレビなどのマスメディアでも目にします。知らず知らずのうちに社会にも深く根付いてしまっているのです。

    「女の子だから」「男の子だから」という声かけが、未来へはばたく意欲を制限しているかもしれません。

    性別を理由に進路や生き方を型に当てはめることは「性差別」。ひとりひとりがそのことを意識することが、相手そして自分自身の可能性を広げるための大切な一歩と思います。


    あなたは性別を理由に進路や生き方を型にはめたこと、型にはめれたことはありますか。“好意的な性差別”をなくすためにはどうすればいいと思いますか。みなさんのご意見や記事への感想を下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。


    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2021年10月11日

    NHK×日テレ 本音トーク「これからの、テレビとジェンダー」<後編> Vol.36

    ニュース、ドラマ、バラエティ、アニメ…。テレビでのジェンダーの表現や描き方をどうすればいいか。NHK「#BeyondGender」プロジェクトのアンケートに寄せられた みなさんのご意見を交えて、日テレとNHKの制作者たちとりゅうちぇるさん(タレント)が一緒に考え、語り合いました。10月11日の国際ガールズ・デーに合わせて開かれたオンライン座談会の内容をお伝えします。<前編はこちら><中編はこちら>




    出演者・制作者の多様性は…

    (NHK×日テレ オンライン座談会「これからの、テレビとジェンダー」より)


    小西美穂さん・日テレ『news every.』キャスター
    (以下、小西(日テレ『news every.』キャスター))
    出演者のジェンダーについてアンケートでこんな声がありました。

    20代 女性 愛知県
    ニュース番組のアナウンサーの組み合わせで、比較的年齢の高い男性と若い女性が多いことに違和感を持っています。男性がリーダー的、女性が補助的役割を担うイメージに縛られていないでしょうか。

    小西(日テレ『news every.』キャスター)
    同じような声が本当にさまざまな世代から多数寄せられているんです。ここで日本テレビの大井さんに聞きたいのですけれども『news zero』は出演者の女性の比率が比較的高い番組だと思うのですが、どんなことを考えて番組作りに取り組んでいますか?

    大井秀一・日テレ『news zero』総合デスク
    (以下、大井(日テレ『news zero』総合デ スク))

    『news zero』のことだけで言うと超ラッキー番組でメインキャスターが有働由美子さんという女性で すごく経験を積まれた方がいらっしゃるんです。加えて、「年上の男性が何かみなさんに教えてあげる」みたいな番組にはしたくないと思っています。

    例えば(自分が曜日デスクを務める)水曜日は僕が話を聞いてみたいなとか、こういう人に意見を言ってほしいなという人を集めたら、レギュラー出演者6人中5人が女性だったりとかして。あまり「男性だ、女性だ」だということではなくて、やはりこの人の話を伝えたいなと思うこと、そういう人に出演していただくことがすごく大事だなと制作者としては意識していますし、思っているところです。

    小西(日テレ『news every.』キャスター)
    番組出演者の男女比でいうと、海外の英BBCでは「50/50」(フィフティー・フィフティー)という取り組みがあって、番組に出演するキャスターや記者や専門家たちの男女比を50%ずつにすることを目指す取り組みを続けていたりするんですよね。女性の割合を増やすことで多様な意見に光を当てたり、多様な声をすくい上げるという目的があって。それが結果的にはこの内容を豊かにしたり、多様にしたりする効果があるという意見なんです。

    野崎瑛理子・NHK制作局ディレクター
    (以下、野崎(NHKディレクター))

    番組の最初のルール作りの場に多様な人が参加していることはすごく大事だと思います。『u&i』でいうと学校向けの教材番組なので、現場の学校の先生や特別支援・障がい者支援の研究者を入れて一緒に作っています。専門家の みなさんの男女比は半々です。先ほど大井デスクがおっしゃられたことと全く一緒で、誰もがありのままでお互いを尊重できるということについて真剣に考えている方々とつながってお願いした結果、いわゆる男女比率が半々になったという感じです。

    松田伸子・NHK報道局記者
    (以下、松田(NHK記者))

    すばらしい大井さん、野崎さんのお話を伺った後に私たちニュースの現場でどれぐらいできているのかなって思っていたんですが、番組のゲストが複数のときは男女比を考えますが、まだまだ「専門家に聞きました」というようなときは男性が多いなと思います。変えなくてはいけないということで考えると、(出演者の)男性女性だけじゃなくて「他の性の方はどうなのか」「障害がある方がほとんどいない」「年代も偏っている」など、いろんな偏りが見えてきて、男女だけではない多様性も考えていかなくてはいけないと思います。

    りゅうちぇるさん
    (以下、りゅうちぇる)

    やっぱり一番おもしろい番組っていろんな人が出ている番組だと思うんですね。それはニュース番組でも絶対そうです。だから僕は男性なんですけど、年齢差的にすごい大物MCの方と2人でロケしていて、すごく教えてもらっている感じがあまりにも映りすぎるとなんとなくこういう“植え付け”みたいになっちゃうのかなと思います。

    それなので僕も僕で「これは違いますよ」とかしっかり自分を持つみたいなのはすごく大切にしています。そういうふうに女性でも男性でも自分を大切にするっていうことができると、なんとなくバランス的に見られるようになるというか。

    それはニュース番組でもそうで、人に合わせるというのは時によってすごく大事だとは思うんですが、それを見て「あ、そうしなきゃ」と思っている人も多いから、わりと意識して発言したりというのは “出る側”としてはすごく大事かなと思ったりします。

    小西(日テレ『news every.』キャスター)
    「いろんな人が出ている方がおもしろい」という りゅうちぇるさんの意見、すごく参考になりますね。“出ている側”としてもその方が楽しかったりしますか?

    りゅうちぇる
    絶対そうです。わかりやすくいうと、スーツを着た男性がいっぱい並ばれても、正直「ここまで聞こう」とか思いにくい。大きいメディアは「何か聞きたいな知りたいな」というきっかけ作りがすごく大切だと思うんですね。その中にはいろんな人がいる多様性だったり、全然 今までの番組と違うイラストの使い方、性にとらわれないだったりとか。そういうところで(視聴者が)「あ、なんかこの番組 信頼できる。何かすごくすてき。新しい感じ」とか、番組やその雰囲気をもっと知りたいと思う「きっかけ作り」が本当に大切と思います。

    「テレビが変わるには?」みなさんからのヒント
    小西(日テレ『news every.』キャスター)
    ここからテレビとジェンダーの未来に向けて考えていきます。アンケートの声をいくつかご紹介いたします。

    30代 女性 東京都
    ジェンダーのバランスや、人種、LGBTQ+を当たり前のように、自然と描いてほしい。

    30代 女性
    多様性やジェンダーへの配慮が満点の番組をいくつか作るだけでなく、その他ほとんどの番組の赤点ぶりをせめて50-60点くらいにしていただきたい。

    40代 男性 北海道
    教育の世界でもそうですが、「今までこうだったから」のノリで進めてしまうと少数の意見を排除してしまうことにつながります。

    20代 男女以外の性
    (テレビが変わるために必要なのは)こうした意見を募るプラットフォームだと思います。基本的なことだと思いますが、視聴者の意見を無視しては よい番組はできないと思います。

    20代 男女以外の性
    伝える内容に一つ一つ誠実であることが、結果として 誰にとっても見たいテレビになるのかなと思います。私はいわゆる若い世代の人間ですが、テレビを見ることが好きなので、テレビ業界の未来に期待したいです。

    小西(日テレ『news every.』キャスター)
    いろんな声をいただきました。最後にテレビ制作者のみなさんが思い描く「これからのテレビとジェンダー」についてお聞きしていきたいと思います。

    長谷部真矢さん・日テレ報道局プロデューサー
    (以下、長谷部(日テレ プロデューサー))

    気をつけているつもりでも私の中にもバイアスがあったり “思い込み”は多分強くあって。なのでそれをもちろん表現しないように、そのためにいろんな人の意見を聞くということ、まず私たちが多様性を持つことがとても大事だと思うので意識していきたいと思います。

    私は「そらジロー」メンバーのマネージャーもしていることもあって、「にじモ」のキャラクターはLGBTQの当事者がチームのメンバーにいて その声を聞いて誕生したんです。多様性を持っていることやそういうことをすごく特別視したいわけではなくて、先程りゅうちぇるさんもおっしゃっていましたが、「普通なんだ」「自分たちの周りに普通にいるメンバーなんだ」ということを、例えば子どもとか次世代の人たちに当たり前な感覚で表現できたら、それを頑張りたいと思っています。

    大井(日テレ『news zero』総合デスク)
    最後に紹介していただいた視聴者のみなさんの意見、本当にどれもそのとおりだなと思いました。きょうこれをご覧になってる方は、「ガールズ・デー」だからもしかしたらこういうことに関心のある女性の方の割合が高いのかなと思うんですが、自分も男性ですし、男性がここにめちゃくちゃ関心を持って見て、こういうのを「自分として当たり前のことだよね」と思える世の中にしたいと思いますし、それはテレビができることなんじゃないのかなと。

    いろんな人が、不特定多数の人がふとした瞬間に触れる機会があるテレビだからできることはある
    のかなと思うので、『news zero』で頑張っていきたいと思います。

    野崎さんと一緒に番組とか、同じテーマでやったら何かおもしろいことができるんじゃないかなと思いました。何かやりたいですね。お願いします。

    松田(NHK記者)
    大井さん、ぜひNHKのニュースともコラボを(全員・笑)。私はやっぱり娘のことも考えてですね、子どもとか若者がこれまでの固定観念に縛られて翼を折られてしまわないようなテレビにしていきたいなと思っていて。りゅうちぇるさんみたいに「好きなものは好き」「嫌なことは嫌」と言ったり、「何かを変えたい」と思った時にすぐ行動できたりするような、その時のための勇気とか言葉を見つけてもらえるような報道をしたいなと思っています。

    「生理の貧困」や緊急避妊薬の取材をする中で、当事者の中に「あ、こんなことを人に初めて話しました」「自分の経験を初めて語りました」という人が結構多いんですね。そういうこれまで埋もれてきた声、「心に引っかかってきたけれども(言えなかった)」などの埋もれた声を取材して、集まった共感を蓄積して、しっかりとデータで見えるようにして伝えていきたいなと思います。そうすることで社会が少しは良くなるのかなということがあるんだなと思います。見ていただいている みなさんにNHKのツイッターとかご意見募集のページなどに声を寄せていただいて、一緒に作っていきたいなと思います。

    野崎(NHKディレクター)
    大井デスクと松田さんに全部言われてしまったので、言うことがございませんが(全員・笑)、専門的に取材をしている部署の方とか、日テレというものすごい人気の民放さんといろんな意味でちゃんと組んで、新しい子ども番組を作ったりとか、作るだけではなくて、それをもとにいろんな世代とか、いろんな違う人どうしで、例えばざっくばらんにいろんなモヤモヤについて考えたりするようなイベントですとか。本当にみんなで一緒に考えていくということをぜひやっていきたいと思っています。ありがとうございました。

    小西(日テレ『news every.』キャスター)
    りゅうちぇるさん。NHK×日テレの特別トークセッションのスペシャルゲストとして加わっていただいたんですが、いかがでしたか?

    りゅうちぇる
    まずこんなすてきな機会に僕なんかが参加させていただけて本当にうれしかったです。僕も今テレビに出ている理由は「こんな生き方があっていいんだ」「こういうパパがいていいんだ」「パパなのにメイクしていいんだ」とか。自分で言うのもなんだけど「かわいくパパでいていいんだ」みたいな。そういう感じで思ってもらえたらうれしいなというか、一つずつそういうみんなが「自分らしく生きる」きっかけ作りになれたらいいなって思う。自分がそうじゃなくても僕みたいなタイプの方と出会ったときに「あ、りゅうちぇるみたいなタイプだ」とかで、「自分自身もりゅうちぇるみたいなタイプ」って言いやすかったりとか。そういう誰かの生きやすいきっかけや理由とかになれたらいいなと思っているんですね。


    (NHK×日テレ オンライン座談会「これからの、テレビとジェンダー」より)

    僕、きょう個人的にすごくうれしかったことがあって。きょう(枠の)縁が 男の子でパパなのにピンクなんですよ。こういうことってやっぱり僕がずっと僕でいつづけたから、スタッフさんもなんとなくそれをわかってくれて。「りゅうちぇるでピンク」みたいにしてくれたというのは僕自身こういう小さいことがすごくうれしいんですね。

    これをみんなに見てもらって少しずつ少しずつ「あ、これが当たり前でいいんだ」とか、自分の中でずっと思い描いていた固定概念が変わるきっかけになる。そういう人でいたいなと より強く思いました。そして 何かまた一緒にお仕事しましょう。

    小西(日テレ『news every.』キャスター)
    ありがとうございます!やはりこうして多様なメンバーが集まるというのは同じような集団で集まっているよりもいろんな意見が出て、時には摩擦とかが出るんですけれども、やっぱりそこからクリエイティブなものが生まれるんだなって、本当にきょうのセッションで実感しました。

    NHKは「#BeyondGender」そして日本テレビは「Talk Gender」を通じてこれからも女の子も男の子もすべての人が自分らしくいられるための情報をそれぞれに発信していきますので、ぜひ みなさんチェックしてください。

    そして りゅうちぇるさんもお声かけいただきましたが、次回またやりたいですよね?どうでしょう みなさん?やりたい人は拍手(全員拍手・笑)。ありがとうございます。 みなさんぜひやりたいと思います。ではまたお会いするその日まで、さようなら!

    (その他の「NHK×日テレ 本音トーク」は<前編>Vol.34<中編>Vol.35をご覧ください。)

    あなたは、テレビの出演者や制作者のジェンダー・バランスについてどう思いますか?テレビが変わるために何が必要と思いますか。みなさんのご意見やNHK×日テレのオンライン座談会への感想を下の「コメントする」か、「どう思う?ジェンダーとテレビ」ご意見募集ページからお寄せください。


    ※NHK×日テレ「これからの、テレビとジェンダー」の動画はYouTube日テレNEWS
    https://youtu.be/UHZnx7xBYDAでご覧いただけます。

    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2021年10月11日

    NHK×日テレ 本音トーク「これからの、テレビとジェンダー」<中編> Vol.35

    ジェンダーのバランスや表現に配慮したテレビ番組を作るためにはどうすればいいか。りゅうちぇるさん(タレント)をゲストに迎え、NHKと日テレの制作者が語り合いました。10月11日の国際ガールズ・デーに合わせて開かれたオンライン座談会の内容をお伝えします。<前編はこちら><後編はこちら> 



    “ジェンダー・バイアス” 子ども番組で伝える意味
    NHK「#BeyondGender」プロジェクトではアンケート「どう思う?ジェンダーとテレビ」を行っています。みなさんから寄せられたご意見をオンライン座談会で紹介しました。


    (NHK×日テレ オンライン座談会「これからの、テレビとジェンダー」より)


    小西美穂さん・日テレ『news every.』キャスター
    (以下、小西(日テレ『news every.』キャスター))
    アンケートでこんな声もありました。

    40代 女性
    自分が子どもだった頃に比べれば、描かれる女性キャラクターは「守られる存在」ではなくなってきたと思います。しかし まだまだだな…と思うこともしばしばあり、幼い子どもたちにジェンダーバイアスを植え付けることにならないかと懸念しています。

    アニメなどの番組を含めると、子どもへの影響を心配する大人たちの声は他にもいくつか寄せられていました。りゅうちぇるさん、いかがですか?

    りゅうちぇるさん
    (以下、りゅうちぇる)

    そうですね。僕も子どもができてから、なんか「全然まだまだだな」なんてメディアを見ながら思うことってやっぱり多くて。子どものうちから見ていたら、「女の子の色はピンクなんだ」とかそういうふうに自然に入ってきちゃうし、仕方ないなと思っていて。

    だからこそやっぱり僕たちは「仕方ない」で終わらせず、絵本とか読んでいるときも例えば、プリンセスとプリンスが出てくるお話だったら「このプリンセス、お城でずっとプリンスのこと待っているけど、女の子だって自分から追いかけていいんだよ」とか。何か絵本とか読んでいるときにちょっと声かけをしてあげたりとか、ちょっと考えるきっかけを与える。ちょっと言ってあげるだけで この意識が「あ、そっか」というふうに変わってきたりもするかなと思って。僕たちはこういうことを心がけていますね。


    小西美穂さん・日テレ『news every.』キャスター
    (以下、小西(日テレ『news every.』キャスター))

    野崎さんはEテレのディレクターとして担当番組『u&i(ユウ・アンド・アイ)』で男らしさ女らしさの思い込みや刷り込み、「ジェンダーバイアス」について伝えたんですよね。『u&i』そもそもどんな番組か教えてもらっていいですか。

    野崎瑛理子・NHK制作局ディレクター
    (以下、野崎(NHKディレクター))

    『u&i』は小学生をメインターゲットにした10分の番組です。学校の先生たちに授業で使って討論していただくようなことも目指しています。発達障がいの子ども、外国籍の子ども、いわゆる学校の社会の中でつらい思いをしやすいとされる属性のマイノリティーの立場の子を理解するための人形劇の番組です。

    いわゆるマジョリティー側の“普通の子”が対話を通じて困っている子のことをフラットに知っていき、最終的には「どうしたら相手も私も幸せになれるかな、笑顔になれるかな」ということを一緒に考えていきたくなるようなことを願って作っています。


    (Eテレ『u&i』より)

    小西(日テレ『news every.』キャスター)
    どんな経緯でジェンダーを扱う回をやられたんですか?

    野崎(NHKディレクター)
    私自身が「女らしいのはこうあるべき」などという抑圧のようなものを感じてきたというのもあり、そういう見えにくいものこそ子どもたちと一緒にちゃんと目を向けて考える番組が必要だと思って作りました。

    (登場人物は)主に2人出てきます。主人公「i(アイ)」(下図・左)は野球が大好きな少年ですが、実はぬいぐるみを手作りするのが大好きで かわいいものが大好き。「男らしくないことなのではないか」と思って、ひたすら学校や親にも(そのことを)隠しているというキャラクターです。もう一人は女の子、野球をするのが大好きでいつも一人で素振り練習しているという「u(ユウ)」(下図・右)。「野球をしたい」と学校の男の子たちに言うのですが、「女らしくないから 野球には入れない」と言われて傷つくという話です。

    この2人がお互い本音や “らしさ”について番組のキャラクターも介していろいろ自由に会話していく中で、お互い性別に基づくさまざまな偏見や押しつけに気づいていくというお話です。


    (左:“男らしさ”に苦しむi 右:“女らしさ”に違和感をもつu u&i『男らしく、女らしくがいいの?』より)

    小西(日テレ『news every.』キャスター)
    特に工夫したことはありますか?

    野崎(NHKディレクター)
    はい、二点あります。一つめは主人公。“普通”とされる(マジョリティー)側の設定を男の子にして、自身も実は「男らしさ、男は泣くもんじゃない」などという一種の“呪い”のようなものに苦しんでいるという設定を入れました。「女の子らしさ」の問題は女の子への抑圧だけじゃないよねというメッセージを込めています。

    2つめは、みんな「自分の意見」というのは自分が考えたものと思っているところが多いかもしれませんが、実は「自分の意見」というのはテレビに出てくる“望ましい女性像”とか、親から言われていることとか、さまざまな人の意見やメディアによって作られているのかもしれないな、本当に自分もそう思っているのかな」ということを一度ちょっとぜひ疑ってもらえたらなと思って作りました。

    小西(日テレ『news every.』キャスター)
    放送後、何か手応えはありました?

    野崎(NHKディレクター)
    『u&i』はEテレの朝9時、(視聴率の面で)非常に厳しい時間の番組なんですが、今まで一番ツイッターのリアルタイムで話題になったんですね。具体的には「この番組をすべての人が見た方がいい」とか「よく言ってくれたと」とか。結構励ましのお言葉が多く見られました。

    りゅうちぇる
    すごくすてきです。こういうことをやっぱりテレビの大きいメディアで伝えていって、どんどん授業でも取り組んで みんなで討論していってほしいなと僕もものすごく思いました。

    小さい頃、僕もわりとお人形遊びとかがすごく大好きで。おままごととかしていたら、リーダーシップをはる女子とか多いじゃないですか。(僕)マジそういうタイプで、すごいリーダーシップはあって めっちゃ引っ張っていたんですけど(全員・笑)。一部では「なんで おままごとしているの?お人形遊びしているの?」とからかわれて、すごく陰で泣いたりとかしていたんですね。

    やはり子どもって、人を傷つけたいわけでなくても「やっぱりこれはおかしいよ」というふうになってしまいがちと思うので、こういう番組はどんどん広がってほしいなと思いました。

    小西(日テレ『news every.』キャスター)
    野崎さん。こういう子ども向け番組でジェンダーに関するメッセージを伝える意義をどう感じていらっしゃいます?

    野崎(NHKディレクター)
    りゅうちぇるさんがおっしゃったとおり、「自分の意見が変なんじゃないかな」「自分だけなんじゃないかな」と思う子が本当に多くなりかねない中で、「自分の違和感は大事なんだ」、「自分の違和感とか感じたことを大事にする」ということは自分のことを大事にすること、そして友達を大事にすること、それはみんなにとっていいことだ、ということを伝える。低学年のうちにとにかくいろんな番組でそういうメッセージを伝えることが大事だと思っています。

    というのも“有害な男らしさ”という用語があって。これは誰かを少しおとしめたり、攻撃したり、支配したりするのが「男らしい」というような考え方の男らしさという定義です。こういうものは実は低学年、保育園、幼稚園のうちから出てきたり、それを周りも容認したりする中で強化されていくというような研究があります。常にいろんな媒体で「自分のこともみんなのことも大事にする」ということを伝える、伝え続けるということがとにかく大事だと思います。

    学校の先生からも、男の子たちにまっすぐ正しい情報を、「女の子たちはこういうことに実は困っているよ」ということも含めて伝えると、そうなんだと考えてくださると聞いています。

    小西(日テレ『news every.』キャスター)
    “刷り込み”という話が出ましたが、大井さんどうですか?

    大井秀一・日テレ『news zero』総合デスク
    (以下、大井(日テレ『news zero』総合デ スク))

    伝えるときの表現での”刷り込み”ってあると、今 聞いていて思いました。例えば、『news zero』 の中でスポーツニュースを扱うこともあるんですが、「男性のアスリートが優勝して男泣き」みたいなこと。男は泣かないのが普通だから男が泣いたときに『男泣き』って表現するんだよね、とか。「ママ アスリート」みたいな言葉もあると思いますが、「パパ アスリート」とあまり言わないなと思ったりもする。

    「ママ アスリート」だけ子育てと競技を両立していて。「パパ アスリート」も子育ても競技もどっちも楽しみながら活躍するというのが本当のすてきな言葉だと思うんですけど。「ママなんとか」とか「パパなんとか」とか「男泣き」みたいな、そういうちょっとした言葉づかいが“男らしい、女らしい”の刷り込みにつながっていることはあるかなと、今 伺っていて思いました。

    ”多様性の象徴” 新キャラクター誕生秘話
    小西(日テレ『news every.』キャスター)
    確かにそうですよね。“女らしさ・男らしさ”の押しつけのモヤモヤなど、ジェンダーバイアスについてはアンケートでこんな声もありました。

    35~39歳 女性 東京都
    特集番組やジェンダーに関わる番組だけでなく、日常を描くドラマなどにも、ジェンダーの問題に関わるキャラがいてもいいのではないかと思います。

    りゅうちぇる
    僕はわりと海外ドラマとかも結構見るんですけど、最近日本のドラマでもLGBTQの方が主役としてストーリーが展開されていくものとかもあるじゃないですか。海外ドラマだと脇役とかにゲイカップルがいたりとか。そういうふうに「ジェンダーのドラマです」って別にしなくとも当たり前のようにそういう方々が出てくるドラマが海外ではやっぱり多いなと思うんですね。そういうふうにしていくのもすごく大切と思います。

    そういうドラマを見て、その脇役というか主役じゃない人たちのゲイカップルの人達などを見たりして、「もしLGBTの当事者の方に出会った時はこういう声かけやこういうふうに距離感を縮めていけばいいのかも」とか、みんなのヒントになると思います。そういうドラマがもっと増えていっていいんじゃないかなって。本当に日常っぽく、普通っぽく、普通に表現する。そうしたら すごくすてきに自分でも実践できたりしやすいんじゃないかなと僕も思いますね。

    小西(日テレ『news every.』キャスター)
    日本テレビの長谷部さんが担当するお天気キャラクターの「そらジロー」の仲間に、新たに多様性を象徴する新しいキャラクター「にじモ」(下図・左)がこの春加わったんですよね?


    (日テレのお天気キャラクター 左:にじモ 右:(左から)ぽつリン、そらジロー、くもジロー)

    長谷部真矢さん・日テレ報道局プロデューサー
    (以下、長谷部(日テレ プロデューサー))

    5月31日がデビューで まだちょこっとしか出ていないのであまりご存じの方もいらっしゃらないかと思いますが。7色ではなくて6色の虹をモチーフとしたキャラクターで、「そらジロー」のお友達を誕生させました。「そらジロー」は真ん中の黄色い子(上図・右グループの中央)、「そら」ジローなのでお空のお天気のキャラクター。次の年にグレーの「くもジロー」、雲をモチーフとしたお友達の男の子、それから5年後にピンクの「ぽつリン」という女の子のキャラクターが誕生しました。

    小西(日テレ『news every.』キャスター)
    それに加えて、どのように「にじモ」が生まれたんですか?

    長谷部(日テレ プロデューサー)
    日本テレビのジェンダー・チームでジェンダーに関する社内の勉強会を東大の瀬地山角(せちやま かく)先生にお願いしました。そのときにこのキャラクター3体を見せたら「女の子が1人で、しかもピンクというのはあまりよろしくないですね」というご指摘を受けまして。言われるまで全然気づかなかったというか、「女の子=ピンク」みたいな安直な感じに作ってしまっていたかもしれないと、改めてキャラクターを見直しました。

    (どうして「ぽつリン」がピンクなのか)リサーチしてみました。もともと雨のキャラクターなので水色で作ろうということで最初のデザインがあったのですが、テレビの制作の事情でクロマキー*を使ったときに水色が抜けて透明になってしまうので水色が使えなかったというのが一つの理由。(*「クロマキー」…背景に青や緑色のスクリーンを用いることによって映像を合成するクロマキーセット。カラーテレビの画面合成の技法の一つ。)

    あと、ぬいぐるみにしたときにどうしてもピンクが売れるというか、やはり人気があるなど、マーケティングの事情などもあってピンクに最終的に決まったと聞きました。

    「女の子のピンク」というのが決していけないというわけではないんですが、3キャラクターしかいなくて、ジェンダーバランスなど 当時ちょっと配慮が足りなかったなと反省して、「にじモ」のキャラクターが誕生しました。

    青・仕事=男? 赤・育児=女? テレビの課題と試み

    (NHK×日テレ オンライン座談会「これからの、テレビとジェンダー」より)

    小西(日テレ『news every.』キャスター)
    りゅうちぇるさんも おもちゃ売り場によく行かれると思いますが、こうしたキャラクターとかおもちゃとか、やはりピンクとか青とか気になります?

    りゅうちぇる
    女の子のコーナーは本当にピンクでキラキラしていて。マーケティング的にも売りやすいというのは確かにあるかもしれない。でもやっぱりそうじゃない女の子たちもいる。だからこそ いろんな人たちがどんどんトライしてみるってすごく大事だと思うんですよね。

    逆に言うと なんで売れやすいかと言ったら、女の子=ピンクのものが多くて、別にそこまで好きじゃなくても「まあでもなんかカワイイ」みたいなものが“刷り込み”として小さいうちから入ってきちゃって普通にピンクを選ぶ。だけど もしブルーやイエローがあったら「あ、これの方が好き」とそのときにようやく子どもは気づけたりすると思うんですよ。だからいろんなジャンルをもっともっと増やしておくといいのかな。

    松田伸子・NHK報道局記者
    (以下、松田(NHK記者))

    子どものおもちゃの取材をしたことがあるのですが、ジェンダーの観点で変わってきているところがあって。動物のお人形のおもちゃだと、お母さんウサギのエプロンをやめていたりとか、お父さんウサギが料理してたりとか、変化は見られるんですよね。

    ただ一方で、うちの娘は3歳なんですが、私はピンクのものとか与えていないのにやはり絶対ピンクが大好きなんですよね。服も「今日もピンクじゃないと行かない!」みたいなところがあって。ピンクって女の子がすごく好きな色なんだなと思って。

    ブロックのおもちゃがありますが、ブロックのおもちゃって結構男の子向けだったんですね、これまで。男の子向けの色味とか、テーマとか、恐竜とか、そういうものが多かったのですが、(おもちゃの会社が)これを女の子にも使ってほしいとピンクや紫を使ったら女の子にも人気が出た。それはそうだと思うんですよね。

    またブロックで遊ぶ機会がこれまでなかった女の子、「色がちょっと嫌だな」と手に取りづらかった女の子がピンクだから遊ぶというのは、それはそれでいいことだなと思っていて。だから色が悪いとか、女の子がピンクを選んではダメとか、そこをフラットにするということではなくて、「女の子はピンクだよね」とその当たり前だと思っていることや、押しつけることをしなければいいんだなと感じました。

    小西(日テレ『news every.』キャスター)
    子ども向け番組を作っていらっしゃる野崎さん、いかがですか?

    野崎(NHKディレクター)
    恥ずかしながら、我々の番組も実は女性の声優さんにやっていただいているキャラクターはピンクで “おしゃれ好き”で、男性の声優さんにやっていただいているキャラクターは薄い茶色なんですね。このこと自体が問題かというとちょっと難しいですが、やはりどこかで女の子っぽいキャラクターはピンクだというふうにも決めつけていたかもしれないなとちょっと反省しています。


    (左:『u&i』キャラクター「シッチャカ」声・伊野尾慧 右「メッチャカ」声・きゃりーぱみゅぱみゅ)

    番組のキャラクターがいわゆる身体が男性の男の子に対しては「くん」付けをしていて、身体が性別上の女子に対しては「ちゃん」付けをしています。ここも実は制作チームで結構悩んでいまして。こちらも専門家の先生たちと議論しているんですが。

    小西(日テレ『news every.』キャスター)
    先生方と議論しながら進めていらっしゃるということですね。子ども向け番組の現場であってもそういうことなんですね。私たちがやっているニュース番組でもジェンダー・バイアスにつながる表現をうっかりしてしまっているっていうことがあって。

    私、ニュース解説のコーナーを担当していましてイラストを作ってもらうんですが、やはり細かく指示しないと自動的に「医師は男性」「看護師は女性」「経営者・政治家は男性」で作られることが多いんですね(下図・左端)。最近ですと「コロナ関連のコールセンターのイラストを描いてください」となると電話を受けているのが女性ばかりだったり。


    (日テレ『news every.』より)

    職業以外のイラストですと、スーパーで買い物している人、育児をしている人は女性になりやすかったです(上図・中央)。お風呂とか入浴とかのイラスト発注するんですけど、これもなぜか女性になりやすいっていう現象があるんですね。ですからやはりこの“刷り込み”、バイアスにつながらないか、性別役割分業につながらないかということで、エブリでは新しい試みとして性別がわからないイラストという挑戦もしてはいるんですけれども(上図・右端)。これは私の『news every.』での体験なんですが大井さん、『news zero』でのイラストのジェンダー表現で気をつけていることはありますか?

    大井(日テレ『news zero』総合デスク)
    全く同じ課題に直面しています。油断すると、弁護士とか社長とか先生がほぼほぼ男性、しかも年配の方になりがちというのはもう本当に「ニュース番組あるある」だなと思って伺っていました。あとは人種とか。例えば「アメリカ人」と言ったときに白人と黒人、アングロサクソン系の方とアフリカ系の方、あとヒスパニックの人、アジア系の方もいたり。

    「〇〇人」と言ってもイラストの描き方は本当に難しいなと思うことが多いですね。イラストにすればするほどステレオタイプになりがちだなというのは番組をやっていて感じて。気をつけるんだけどついついやっちゃうなと。

    小西(日テレ『news every.』キャスター)
    NHKの報道も同じような問題を抱えていませんか?

    松田(NHK記者)
    まったく同じです。やはり職業によって男性女性ということもありますし、わかりやすいところでは男・女が青・赤にしたりとかありますね。でも意識的に変えようと現場ではしていて、男・女に緑・オレンジを使ったりですね。人型のイラストなどは先程、小西さんも紹介していただいたように、男女がわからないようにするということはしています。

    NHK全体でも「ジェンダーに関する表現や言葉づかいについて共通のガイドラインが必要だよね」という声が各部署や番組の現場から上がり始めています。

    野崎(NHKディレクター)
    みなさんがおっしゃられたようにガイドラインや議論はすごく大事だと思います。加えて大事なのが、番組を作るときに制作者の意識がどうしても出てしまうということを自覚することだと思っています。例えば私の場合は「性自認は女性」で「学歴は大卒」。「家族は独身」、「国籍は日本人」、「会社はNHK」。どういう属性の中にいるのかというのを制作者一人一人が客観的に自覚しておくことがすごく大事だと思っています。

    小西(日テレ『news every.』キャスター)
    逆に自覚しないで「私は大丈夫」と思ってしまうと、「あ、やばいな」と思った方がいいんだなと今の話を聞いて思いました。

    (続きは「NHK×日テレ 本音トーク<後編>」Vol.36をご覧ください。)

    あなたは、テレビによるジェンダーの“刷り込み”についてどう思いますか?テレビが変わるために何が必要と思いますか?みなさんのご意見やNHK×日テレのオンライン座談会への感想を下の「コメントする」か、「どう思う?ジェンダーとテレビ」ご意見募集ページからお寄せください。


    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2021年10月11日

    NHK×日テレ 本音トーク「これからの、テレビとジェンダー」<前編> Vol.34

    きょう10月11日は世界中の女の子たちに平等で、より幅広い機会を確保しようと国連が定めた「国際ガールズ・デー」。この日にあわせてNHKと日本テレビ(以下、日テレ)が局の垣根をこえ、「ジェンダーとテレビ」についてオンラインで対談しました。ゲストはタレントのりゅうちぇるさん!若い世代のインフルエンサーで “自分らしく生きる”ことを大切にしています。

    NHKは「#BeyondGender ジェンダーをこえて」、日テレは「Talk Gender もっと話そう、ジェンダーのこと」を掲げて、それぞれジェンダーの課題と解決の手がかりとなる情報を積極的に発信しています。

    ジェンダー・ギャップを埋めるためにテレビにできることは何か。両局の制作者たちが番組の舞台裏や思いを交えて話し合ったオンライン座談会の内容をお伝えします。<中編はこちら><後編はこちら>

    (編成局展開戦略推進部 #BeyondGenderプロジェクト班)




    NHKと日テレ “ジェンダー” 発信の取り組み

    小西美穂さん・日テレ『news every.』キャスター
    (以下、小西(日テレ『news every.』キャ スター))

    NHK×日テレ スペシャルトークセッション『これからの、テレビとジェンダー』進行を務めます、日本テレビ報道局解説委員小西美穂です。スペシャルゲストのりゅうちぇるさん、よろしくお願いします。

    りゅうちぇるさん
    (以下、りゅうちぇる)

    よろしくお願いします。なんかまだ日テレなのかNHKなのかよくわかっていないんですけど。普段ライバルですよね?視聴率とかすごく競っているイメージだから、なんかきょうは“仲良しこよし”できて楽しいですね

    小西(日テレ『news every.』キャスター)
    私たちも楽しみなんです。この座談会の様子が配信されるきょう10月11日は、国連が世界中の女の子たちを力づけようと制定した「国際ガールズ・デー」なんです。りゅうちぇるさん、知っていました?

    りゅうちぇる
    「国際女性デー」は知っていたんですが、「国際ガールズ・デー」もあるんですね。

    小西(日テレ『news every.』キャスター)
    そうなんです。今回この「国際ガールズ・デー」に合わせてNHKと日本テレビのテレビ制作者がジェンダーや女性をめぐる表現について普段どんなことを考えて番組を作っているのか、そしてこれからどんなふうに良くしていけるのか、一緒に楽しく考えようということなんです。

    りゅうちぇる
    僕わりとNHKも日テレもめっちゃ出ているんです。日テレさんとNHKさんにすごく僕好かれているんです。夢のようです(全員・笑)。


    (NHK×日テレ オンライン座談会「これからの、テレビとジェンダー」より)

    小西(日テレ『news every.』キャスター)
    実はですね、今回この画期的な試みが実現したのにはいろんな経緯があるんです。まずNHKでは去年秋から「#BeyondGenderジェンダーをこえて」プロジェクトを開始したんですよね。

    野崎瑛理子・NHK制作局ディレクター
    (以下、野崎(NHKディレクター))

    はい。NHKを背負ってご説明させて頂きます。「#BeyondGender」というのは報道番組や教育番組など、さまざまなジャンルの番組が連携しているプロジェクトです。具体的には、女性や男性の人権を含む男女共同参画や、性の多様性、性教育などジェンダーをめぐるさまざまな課題やその解決の手がかりとなる情報を発信しています。

    また今NHKが全局で取り組んでいる「NHK・SDGsキャンペーン」とも連動しています。来月11月は集中月間です。福岡局、新潟局などNHKの地域放送局を含めてジェンダーをテーマにした番組を積極的に放送していく予定です。


    (NHK「#BeyondGender最新番組情報」より)

    小西(日テレ『news every.』キャスター)
    そして日本テレビに参りましょう。日本テレビでも今年2月に有志メンバーでジェンダー・チームが発足したんですよね。

    長谷部真矢さん・日テレ報道局プロデューサー
    (以下、長谷部(日テレ プロデューサー))

    今年は何かとジェンダーに関する問題がニュースで扱われることが非常に多くて、 みなさんの意識も高まった時だと思います。そんな中で私たち日本テレビでも報道局を中心にジェンダー関連のことに興味がある人たちが有志で集まってジェンダー・チームを立ち上げました。メンバーが報道局中心なんですけど、アナウンサーだったり他の部署も横断的に集まって活動しています。活動内容としては勉強会を開いたり情報共有とか取材したりオンエアに繋げたりと幅広くやっています。

    この秋から「Talk Gender(トーク・ジェンダー)もっと話そう、ジェンダーのこと」というスローガンを掲げ、これからもっと積極的に発信していきたいと思っています。


    (日本テレビ ジェンダー・チームのみなさん)

    小西(日テレ『news every.』キャスター)
    私もこのジェンダー・チームに参加しています。こんなふうにジェンダーで(NHK、日テレ)それぞれが活動しているんです。

    りゅうちぇる
    わりと最近そういう社会の流れになってきたのかなと思うんですけれど、やっぱり世代によってバラバラだったり地域によってバラバラだったり。この認識みたいなものは若干差があるなって思うんです。そんな中で大きいメディアがこういうふうに取り組みをしていくと、より広がりやすいし、すごくすてきな試み、活動だなと思います。

    小西(日テレ『news every.』キャスター)
    ありがとうございます。でも長谷部さん、NHKに比べると日本テレビはまだまだ始まったばかりですよね。

    長谷部(日テレ プロデューサー)
    そうですね。本当に試みとして歩き始めたばかりで。この会をもうけさせていただくきっかけになったのもNHKさんのまねをしたくてというか、お手本としてどんなことをしているのか教えていただきたくて訪ねていったことがきっかけで。その中で意気投合して「ぜひ一緒にやろう」というふうになったので、今回たくさん学ばせていただけたらと思っています。野崎さん、松田さんも番組ももちろん作っていますし取材もたくさんされているので、そういったことを聞けたらなと思ってとても楽しみにしています。

    野崎(NHKディレクター)
    恐れ多いです。よろしくお願いいたします。

    松田伸子・NHK報道局記者
    (以下、松田(NHK記者))
    私たちも探り探りやっているので、ぜひ一緒に考えていきたいと思います。

    小西(日テレ『news every.』キャスター)
    きょうのディスカッションを通じて、私たちテレビというメディアが未来の世代を担う女の子たち、男の子たち、性別に関わらず あらゆる方々にも希望と可能性を届けていけるように、いい気づきをたくさんシェアしたいと思います。

    どう思う? “ジェンダーとテレビ” みなさんの声

    (NHK×日テレ オンライン座談会「これからの、テレビとジェンダー」より)

    小西(日テレ『news every.』キャスター)
    この座談会に先立ちまして、NHK「#BeyondGender」プロジェクトでは「どう思う?“ジェンダーとテレビ”」と題してアンケートを実施しました。どんな声が届いたのか見ていきましょう。

    20代 女性 滋賀県
    違和感があるのは「女社長」とか、「女子高生YouTuber」のように、女性の場合だけ「女」という名詞がついているのを見たとき。

    10代 女性
    コメンテーターの男女割合が男性の方が多い番組が多く、女性目線として少しずれていると感じることが多々ある。(最近だと「生理と貧困」の問題)

    20代 男性
    男性が筋肉を見せつけてそれを美ボディともてはやすメディアの姿勢が非常に差別的だと感じます。

    30代 男性
    いろいろな性を知ることが必要と思います。もっといろいろな性のトーク番組を増やしてほしいです。

    小西(日テレ『news every.』キャスター)
    こうした声、いかがですか?

    りゅうちぇる
    それこそ お友達どうしとかではわりと話しやすいことって多いじゃないですか。すごく筋肉のある男性を、友達だからこそ 2人の関係性をわかっているからこそ「かっこいいね」とか褒め合うこともある。それを大きいメディアを通じて言ってしまうと、「あ、こうやって人に普段から言っていいんだ」みたいな感じに、知らず知らずの植え付けみたいなものが生まれてくるのかなと思う。やっぱり そういうところは意識してテレビという大きいメディアは発信していかないといけないんだろうなとすごく思いますね。

    松田(NHK記者)

    コメンテーターが男性が多いというご指摘、本当にそうだなと思っていて、意識して直そうとしているんですけれど、まだまだだなというところがあります。しかも10代の女性の方がこのご意見をくださったと思うと、やはり しっかり取り組んでいかなくてはいけないなと思います。

    大井秀一・日テレ『news zero』総合デスク
    (以下、大井(日テレ『news zero』総合デ スク))

    いただいたコメントの中で「『女性社長』とか『女子高校生』みたいな何か特定の職業とか役割で女性が付いていることをことさら取り上げているんじゃないか」というのは結構グサッときましたね。近いところで言うと、ちょっと前だったら理系の女性「リケジョ」と言って取り上げていたこととか。別に女性が理系であることが珍しいわけではないですし、何かを取り立てて性別によって不必要に取り上げることというのは「ああ、やっちゃったな」と思うことはありますね。

    生理の貧困 取材で見えてきた実態
    小西(日テレ『news every.』キャスター)
    たくさん興味深い声をいただいて制作者として耳が痛いなと思うことも多かったわけですが、まずは私たちメディアの主な役割である「伝える」という視点を入り口に「テレビとジェンダー」について考えていきましょう。

    NHKの松田さんは報道記者として「生理の貧困」や「緊急避妊薬=アフターピル」など、若い女性の身体や健康に必要な情報を取材して発信してこられましたよね。まず生理の貧困の企画でどんなことを伝えられましたか?

    松田(NHK記者)
    経済的な理由で生理用品が買えない、買うのが難しいということはこれまであまりマスメディアでは取り上げられてこなかった問題だと思うんですね。そこに着目して実際に困っている当事者の女性とか、どれくらいの人が困っているのかというNPOの調査結果、生理用品を配布する支援をしてきた団体などを取材をして その動きを伝えました。


    (左:NHK「WEB特集」より 右:NHK「みんなでプラス」より)

    「生理の貧困」というと経済的に困っている方のことかなっていう印象を持たれるかと思いますが、経済的に苦しい家庭だけでなくて、親が厳しかったり、親が生理を汚いものというような扱いをして子どもに教えていたり、シングルファザーの家庭だったりすると生理がきたこと、初潮を迎えたことを言い出せないということもありました。そこで生理用品にアクセスできないという女性も結構いることがわかりました。

    例えば、ネグレクトを受けていた女の子は生理が来たことを言えずに1年以上トイレットペーパーで代用していたというケース。やっと林間学校があったときに学校の先生が気づいて親に言ったというようなケースもありました。さらに生理痛で学校や授業を休んだり遅刻をしてしまったり、生理が原因でいろんな苦労をしている女性が多いということがわかりました。調査ではおよそ半数の女性がそういった困難を抱えていることもわかってきたんです。

    小西(日テレ『news every.』キャスター)
    そういう中で特に若い女性に伝えたいことは何でしょう?

    松田(NHK記者)
    苦しい、つらい、しんどい思いをしてきた女性の方たちにお話を聞かせていただいたのですが、生理用品がなかったり生理痛がつらかったりということを「これはしょうがないことだ」「当たり前のことだから、これくらい我慢しなきゃ」「自分で何とかしなきゃ」と思っている方は多いなと思ったんですね。

    そうではなくて、「おかしいことはおかしい、嫌なことは嫌だと思っていいんだよ。それを言ってもいいんだよ」ということを伝えたいなと思います。そして、言ったあなたを私たちはサポートするし、「あなたはサポートされるに値する存在なんだよ」ということに気づいてほしいなと思って、そういったメッセージを伝えたかったです。私たちもその声をしっかり受けとめて、寄り添っていくっていう姿勢を伝えたいなと思いながらやっていました。

    小西(日テレ『news every.』キャスター)
    伝えた後に何か手応えはありましたか?

    松田(NHK記者)
    この報道の後に国、自治体、企業に動きがあったというのがうれしいところでした。学校とか公共施設のトイレに生理用品を無料で置く、すぐ使えるようにトイレの個室などに置くという学校もあったりするんですね。それが今 全国に広がっていまして、全国で600ぐらいの市町村で無料配布などの政策が始まっています。

    生理・アフターピル テレビはどう伝える?
    小西(日テレ『news every.』キャスター)
    報道することで問題解決に向けて少しでも前進するというのは記者にとってはすごくうれしいことですよね。声を拾っていくというのもテレビメディア、テレビ報道の大事な役割の一つです。

    りゅうちぇる
    僕は5人きょうだいの末っ子で、お姉ちゃんが3人いるんです。すごくありがたい環境だった。3タイプそれぞれの生理痛を小さい頃からお家で見ていたんです。なので僕、ぺこりん(りゅうちぇるさんの妻)と最初おつきあいしたときも、「生理痛はいろんなタイプがあるから、しっかり ぺこりんも ぺこりんの生理痛も理解しよう」という土台作りができていたなって。本当に環境が良かったなと思うんですね。

    だけど女きょうだいがあまりいなかったり、あまり性教育に対して親が取り組まれていない、世代的にもそういう家庭も絶対にあると思うんですね。よくナプキンの広告とかでブルーのお水で表現されていたりとかするじゃないですか。だから生理のときの血はブルーだって、青色だって勘違いしている男友達もいたぐらい、本当に女きょうだいの中で育たないとそういうことも生まれる。

    だけど誰が悪いかって言ったらその男の子じゃなくて、教育現場もそうなんですけど、大きいメディアでどんどんそういうジャンルの番組とか、取り組みみたいなものをもっともっといろんなところで取り入れていく必要もこれからはあるんじゃないかなと思いましたね。

    小西(日テレ『news every.』キャスター)
    りゅうちぇるさんの話を聞いていると、やはり男性も正しく知ることが大事なんだなと思います。アンケートでこんな声もあったんです。


    (NHK×日テレ オンライン座談会「これからの、テレビとジェンダー」より)

    30代 女性 千葉県
    女性の問題をただ取り上げるだけではなく、それを変えるために男性には何ができるのか、心ある男性へのヒントを投げかけ続けてほしい。

    りゅうちぇる
    そうですね。たとえば男性が女性と一緒に働いていて、仕事仲間の人にどうやって声をかけたらいいのかとか。女性の心もあるじゃないですか。「すごく心配されたい」とか「ちょっと気づいてもらうだけで、ほっておいてほしい」人もいれば、「心配してほしい」という人もいて。ほんとにタイプによって違う。「生理痛きついよね」と男性に言われても「気持ち悪い」と思う女性だっている。

    男性もいろいろ考えすぎてどうやって声をかけたらいいのかとかそういうところも全然わからない。それって人にも聞きづらいし、調べたところで本当に偏った意見が出てきたりしたら大変なので。「いろんな方にいろんなタイプがいるんだよ」ということを、恥ずかしいことじゃないから どんどんいい時間になるために発信していくのもアリだなと思いますね。

    小西(日テレ『news every.』キャスター)
    大井さん、『news zero』でも生理の貧困って伝えてましたよね。

    大井(日テレ『news zero』総合デスク)
    そうですね。まさに伝えたときの悩みとしては、これをやっぱり女性だけの問題にしちゃいけないんだっていうところを一番考えました。普通だったら女性の側からの意見というものを伝えることが多いと思いますが、やはり男性の、うちの出演者、解説担当の人が「生理の貧困」の問題を伝えて。松田さんもおっしゃったとおりで、女性がいろんな立場、教育や社会で活躍するチャンスにも関わるような、そういうのを失いかねない問題なんだというのは女性だけの問題でなくて、男性にとってもすごく悲しいことだったり、大きな損失だったりっていう。本当に男性にとっての“自分ごと”にしてもらうことがすごく大事だなと思って伝えましたね。

    アフターピルなんですけど。『news zero』 に嵐の櫻井翔さんも出演されているんですが、実は番組の中でアフターピルが薬局でちゃんと販売できるようになるべきなのかどうかという取材を櫻井翔さんにしていただいて伝えていただいたこともありました。やはりアフターピルの問題も女性だけではなくて、性行為、性交渉というのは男性ももちろん関わることですので、男性も正しく知っておくことが大事ですよね。いかに男性の問題意識として捉えてもらうかということを『news zero』 として本当に悩みながら伝えました。

    長谷部(日テレ プロデューサー)
    私自身は何か番組で発信したりとかしたことはまだないんですが、2人の小学生の娘がいまして、性教育が始まる前だけど知識は入ってきて、生理用品であればもちろんCMで見たりスーパーで見たり、家では私のものを見たりとか。そうするとやはり「これはなに?」とか「赤ちゃんはどこからくるの?」とか、そういうことをちょっとずつ質問してきてくれて。すごく大切なことだし、そう遠い将来じゃなくて結構近い将来 彼女たちに関係してくることなので説明したいなとは思うんですけど。

    学校でこれからどういう性教育を受けるか、学校の方針だったりとか、子どもどうしで多分そういう話をしたときにお友達の保護者がどういう考えであるかとかがつい頭をよぎって。私もいろんなことをオブラートに包んでしまうことがあってよくないなとは思っている、どうしていいかわからないと悩んでいます。

    だからメディアみたいな多くの人が触れるところでちょっとそういうハードルを下げて、家庭の中でもうちょっと話題にできるようなきっかけがあると、私だけではなく母親だけでなくて父親だったり周りの男性だったりとかと一緒に話ができるきっかけになっていいなと思う。

    先程りゅうちぇるさんがおっしゃっていましたが、本当に生理一つとっても女性みんな違うので。私は私の生理しかわからなくて、娘はどういう生理を迎えるか もちろんわからないので。たくさんの情報をフラットに知り得る機会があったらいいなと思います。

    野崎(NHKディレクター)
    私は小学生から中学生ぐらいを取材することが多いのですが、子どもたちが言っているのは人間関係が学校か家庭しかない。「なんか おかしいな、嫌だな、困っているな」と思ったこともやはり言えないという。これがずっと課題だなと感じているので、さまざまなメディアで、親とか先生とか いろんな人が正しい情報を伝えて、みんなで「応援してるよ」「君、あなただけじゃないよ」ということを伝えるのはすごく大事だと思いました。

    (続きは「NHK×日テレ 本音トーク<中編>」Vol.35をご覧ください。)

    あなたは、テレビの“ジェンダー”発信についてどう思いますか?ジェンダー問題の解決のためにテレビができることは何だと考えますか?みなさんのご意見やNHK×日テレのオンライン座談会への感想を下の「コメントする」か、「どう思う?ジェンダーとテレビ」ご意見募集ページからお寄せください。


    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2021年10月8日

    “ジェンダーとテレビ” みなさんの声① Vol.33

    “男性アナウンサーはスーツ、女性アナウンサーはスカートと化粧…なぜ?”
    “性的マイノリティの人たちが出るドラマや番組が少ない”


    #BeyondGenderでは “ジェンダーとテレビ”について ご意見を募集しています。これまでにみなさんから寄せられた声の一部をご紹介します。また10月11日(月)の国連「国際ガールズデー」に配信する日本テレビとNHKの制作者によるオンライン座談会でも紹介させていただく予定です。

    (編成局展開戦略推進部 鈴木彩美)


    テレビにおけるジェンダーどう思う?
    出演者の割合に偏り

    30代 女性

    性別によって、演出のされ方(番組での立ち位置や役割など)、そもそもの出演割合などに偏りを感じる。 元々の割合を反映してだろうが、スーツやジャケット姿の男性ばかりの番組に威圧感を感じる時がある。

    取り上げられ方に男女差がある

    40代 男性 東京

    番組作りやニュースの取り上げ方、扱い方などがまだまだ男性中心だとひしひしと感じる。たとえば、女性アスリートにはやたら女性らしさを求めたり、そういう要素をむりに強調したり。夫婦に関する話題の取り上げ方は必ず夫が先、妻があと、など。例をあげれば枚挙にいとまがない。

    「好きな異性のタイプは?」に違和感

    20代 女性 東京

    バラエティや情報番組で、ゲストに対して なんのためらいもなく「好きな異性のタイプは?」と質問することに違和感。「彼女に作ってほしい手料理は?」なんて最悪。男性芸人が当たり前のように風俗の話を持ち出すのも不快極まりない。女性はいつまで消費される側の性なのかと、そのたびに悲しくなる。

    「女性としてどう思う?」にモヤモヤ

    20代 性別・男女以外

    女性にセクハラ/性的に扱う番組がまだまだ多い。また、女性に何か意見を求めるとき、「女性としてどう思いますか?」などは違和感しかない。男性には聞かないでしょう。そもそも意見には性差なんてないと思う。 好感をもった番組はない。

    昔に比べると配慮されている

    40代 男性 滋賀県

    昔のテレビ番組の録画を見ると差別的発言の多さに驚くことがある。現在は配慮されていると感じる。もちろんまだ工夫の余地はありつつも、視聴者側も寛容にならないと、表現の難しさで番組づくりへの悪影響が出かねないとも思う。

    「価値観を変えよう」と訴えている

    30代 女性

    男女平等や、新しい価値観となるにはまだまだ遠く及ばない。好感が持てるのは、一部のキッズ向けアニメ。未来を担う子供たちに向けて作っているからこそ、いち早く今までの価値観を変えようと訴えていると感じる。

    「女性アナウンサーのタレント扱いに違和感、「夫」「妻」に好感

    30代 女性 愛知

    女性アナウンサーや女性気象予報士のタレント的扱いに強い違和感。また、ドラマなどで男性が女性を「お前」呼びするシーンなどは、見ていてとても嫌な気持ちになる。 「主人」「家内」などの発言が字幕では「夫」「妻」と表示されることについてはとても好感をもった。ぜひ続けていただきたい。

    制作現場の男性率が多いのか

    30代 女性 埼玉県

    昔のドラマや映画などの再放送で、女性は「男性の恋愛対象」か「男性を支える母的存在」としてしか出てこない作品を見ると、バランスが悪くて違和感。現実には恋愛に興味が薄い人、自分の仕事に没頭したい職人肌の人は男女問わずいると思うが、そのようなキャラクターは大体男性がやっている。このような 端折(はしょ)られた描かれ方をされるのは、現場の男性率が多かったからなのかなと想像する。

    制作者の本音を視聴者は察している

    20代 女性

    番組でジェンダーバランスを問題視していても、制作している方の本音や意図が本当にそうなのか視聴者は鋭く察してしまうように感じる。

    「感覚」が大事

    40代 女性 長野

    ラジオですが、 「女子アナ」と言った相方に対して 「女性アナウンサーなっ」と さらっと訂正している場面があり、 意外にグッときた。 すごく小さなことだが この感覚が大事だと思う。

    ジェンダーのバランスや表現に配慮したテレビ番組を作るには?
    番組の作り手はジェンダーバランスの配慮を

    40代 男性 北海道

    教育の世界もそうですが、「今までこうだったから」のノリで進めてしまうと少数の意見を排除してしまうことにつながります。作り手(上司・職場)がジェンダーのバランスに配慮していることが必須だと思う。

    「それって本当に当たり前?」の切り口を

    30代 女性 東京

    当然ですが、テレビも社会の一部なのでテレビだけを変えていくのは無理、社会が変わってテレビも変わるのだとは思う。でも、みんなが「あたり前」と思っていることと違う例をたくさん紹介してもらいたい。「あなたがあたり前と思っていること、それってほんとにあたり前?それで生きづらさを感じている人がいるかも!?」みたいな切り口。

    子どもたち・若い世代へ積極的に伝えて

    40代 性別・答えたくない

    男性でも女性でもどちらでもある人もどちらでもない人も、人の生き方はそれぞれに自由であるべきで、それを社会に、とくに子どもたち、若い世代に積極的に伝える社会的役割を、テレビ業界で真剣に追求する姿勢が必要。

    作る側に多様性が必要

    20代 女性 埼玉

    そもそも作る側の人に多様性があるのかということが必要ではないかと思う。多様性はジェンダーの話だけではなく障害や国籍なども含まれる一方で、周りにいなければ、いないことにも気づかないと思うから。

    制作者も男女同じ割合に

    30代 女性 東京

    ジェンダーにとらわれず、多様な価値観や考えがあるという前提に立った番組であれば問題ない。あえて言うと、アナウンサーだけでなく、取材しニュースを書く記者などにも、男女が同じ割合で参画することで、より中立的で多様な内容のテレビができるのでは?

    制作側の価値観の定期的アップデートを

    30代 女性 東京都

    テレビ業界は業界そのものが典型的なオールドクラブ、マッチョイズム、有害なホモソーシャル社会だと思う。テレビを作る側の人達が自分や仕事仲間を大切にできるようになってほしい。番組制作スタッフを責任者~バイトまで定期的に講習会受講を義務づけるなどして、全体の価値観のアップデートをすることが必要。

    “自由に問題提起できる”風通し良い制作環境を

    20代 女性 愛知

    問題があるものは昨今炎上します。問題に気づいた人が年齢や性別や職層に縛られず、自由に問題提起をできる風通しの良い環境であることが一番の配慮につながる。ぜひ一度 局内でジェンダーの理解度や問題意識についてアンケートを取ってみていただきたい。

    制作側は“自分がされたらどうか”を考えてほしい

    40代 女性 福岡

    性差をネタにしていないかどうか、人の欠点をあげつらう表現をしていないか、同じことを自分がされたらどう思うか。制作側はそんなふうに足元からもう一度番組製作を捉え直してほしいです。そういった番組が増えていくことで、見ている視聴者にも伝わり、人を特別扱いしないことがトレンドに、当たり前になっていくと思います。

    “特別視しない描写”を日々積み重ねる

    40代 女性 東京都

    そこにいるだけ、特別視しない描写。 ドラマの中に横切る車椅子ユーザー、さり気なく手助けする人、髪の色肌の色が違う人が通りすぎる風景、遠くで手話ユーザーが話している様子、“お茶要(い)る人は?」と立ち上がる男性社員、子どもを預けて伸び伸び働く女性、肩書きに「女」がつかない医者や社長、全て俳優と表記される役者……。 これらの描写を毎日のニュース、ドラマ、バラエティなどで細々と説明なく加えていく、積み重ねていく。

    引き続き、みなさんの声を募集しています。「ジェンダーとテレビ」ご意見募集ページからお寄せください。これからも「ジェンダーをこえて考えよう」で紹介していきます。

    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2021年10月1日

    どう思う? “ジェンダーとテレビ” ご意見募集中! Vol.32

    “男性アナウンサーはスーツ、女性アナウンサーはスカートと化粧…なぜ?”
    “性的マイノリティの人たちが出るドラマや番組が少ない”


    テレビにおけるジェンダーについて みなさんから さまざまな声が#BeyondGenderに寄せられます。あなたはどう思いますか?

    ご意見をお聞かせください

    日本テレビとNHKが 局の垣根をこえてオンライン座談会を開きます!
    ジェンダーのバランスや表現に配慮した番組をつくるには?
    誤った思い込みを変えるためにテレビは何ができる?


    りゅうちぇるさんをゲストに迎え、両局の番組制作者が ざっくばらんトーク。
    10月11日(月)国連「国際ガールズ・デー」(配信時間未定)



    りゅうちぇる さん



    あなたは、テレビにおけるジェンダーのバランス、縛り、表現などについてどう思いますか?テレビが変わるために何が必要だと思いますか? ご意見・お考えをこちらにお寄せください。


    みなさんの声は今後の番組取材につなげていきます。また『みんなでプラス ジェンダーをこえて考えよう』や、10月11日(月)「国際ガールズ・デー」に配信するNHK×日テレ オンライン座談会などで一部を紹介させていただきます。 (※10月6日(水)までにお寄せいただいた声の一部を同オンライン座談会で紹介させていただく予定です。)

    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2021年9月28日

    東京オリンピックとLGBTQを考える Vol.31 

    「多様性と調和」が大会の理念として掲げられた東京オリンピック。LGBTQなど性的マイノリティーであることを公表して出場した選手が180人以上と過去最多となり、トランスジェンダーである選手が初めて自認する性別で出場しました。

    ここ数年の間に人事制度を整備する企業やジェンダーレスな制服を導入する学校が増えています。以前からLGBTQについて取材を続けてきた私自身、社会のLGBTQをめぐる対応が少しずつ変化してきたと感じています。

    しかし今回のオリンピック・パラリンピックを通じて実際にどれくらい、LGBTQの人たちに対する社会の理解は進んだのでしょうか。長年この問題の理解促進に取り組み続けてきた当事者の方をオリンピック前から取材しました。

    (首都圏局 ディレクター 柳田理央子)


    “東京オリンピックを契機に” プライドハウス東京レガシー
    7月23日に行われた東京オリンピックの開会式は、歌手のMISIAさんが性の多様性を象徴するレインボーカラーのドレスで国歌斉唱を行って話題となりました。

    この開会式を特別な思いで見つめていた人がいます。自らもゲイであることを公表し、LGBTQへの理解促進や当事者の居場所づくりのための活動を進めているプライドハウス東京コンソーシアムの代表、松中 ごん さんです。



    プライドハウス東京コンソーシアム 代表 松中 権さん
    「式の進行の中で何度も『レディース・アンド・ジェントルマン』とアナウンスされる場面がありました。『男性』『女性』という性別のみを前提としたこの呼びかけは、今では大手航空会社の機内アナウンスでも使われなくなるなど、性の多様性への配慮が進んでいます。『多様性と調和』を掲げる東京オリンピックでこのフレーズが使われていることは非常に残念でした。

    どれだけ多くの人たちがこの(東京オリンピックの)タイミングで変えたい、このタイミングを生かしたいと思えるか次第だと本当に感じています。日本が『多様性と調和』というのを本当に体現できる国になるのかならないのか 瀬戸際だと思います。」

    松中さんは東京オリンピック・パラリンピックは「多様性と調和」の実現に向けて社会を変える大きな契機になると考え、去年10月 新宿に「プライドハウス東京レガシー」を開設しました。

    LGBTQの当事者や家族、観戦に訪れた観光客やメディアの人たちが気軽に立ち寄り安心して過ごすことのできる空間を提供する日本初の常設のLGBTQセンターです。東京大会の理念を象徴する公認の施設に選ばれていました。


    (去年10月に開設した「プライドハウス東京レガシー」 ライブラリーにある関連書籍は自由に閲覧できる)

    プライドハウスではLGBTQ当事者が主人公になっている絵本や手記、研究書など約2000冊の関連書籍を集めたライブラリーや 若い世代の当事者の悩みを聞く相談ブースなどを設けています。

    LGBTQや性の多様性などについて学ぶ勉強会もこれまでに50回以上開催。現役のスポーツ選手やチームの関係者、東京大会に関わるスタッフたちにも 当事者に対してどんな配慮が必要かなどを伝えてきました。


    (スポーツ関係者向けに行われたオンライン研修会)

    松中さんが特に大切だと考えているのは「アライ」(英語で「支援者」という意味。LGBTQの人たちの権利を守るために積極的に行動する人)を増やすことです。

    有名アスリートたちに「アライ」としてプライドハウスの活動への参加を呼びかけ、マラソンでバルセロナとアトランタのオリンピック2大会でメダルを獲得した有森裕子さんをはじめ元日本代表選手やメダリストなど20人以上から多様な社会への理解を促進するメッセージの動画を寄せてもらい、WEBやイベントで公開しました。

    元々「プライドハウス」は、2010年のバンクーバーオリンピックの時に地元のNPOが始めた取り組みで、その後、ラグビーW杯など大規模なスポーツ大会の度に各地で設立されてきました。


    (世界各地のプライドハウス 左:パンアメリカン競技大会(2015年 カナダ・トロント) 右:リオデジャネイロオリンピック(2016年))

    松中さんが日本にプライドハウスをつくろうと思ったきっかけは、6年前に母校の大学で起きたある同性愛者の死です。男性の大学院生が男性の同級生に好意を打ち明けたところ、そのことをSNSで他の友達に暴露されてしまい、自殺したのです。

    遺族が大学を訴えた裁判のニュースを松中さんはブラジルのリオデジャネイロで見ました。大手広告代理店のプランナーとしてリオデジャネイロ大会に関わる仕事で現地にいたのです。

    リオ大会は、LGBTQを公表する選手の出場が過去最多(当時)となり、世界ではLGBTQへの理解が深まっていると実感していただけに日本の現状にショックを受けたと言います。

    松中 権さん
    「ゲイであるというだけで命を落とすことにつながることが、まだ日本で起きているという現実を突きつけられました。しかも自分の母校だったので、結構本気でショックを受けたし、亡くなった彼は僕自身だったかも知れないなと感じました。この社会を変えていくということは本当にマストなことだと思いました。」

    LGBTQの人々を取り巻く社会を変えてきたオリンピック


    オリンピック・パラリンピックはこれまでも社会を変える契機になってきました。

    2013年にロシアで同性愛者の活動を制限する法律ができた翌年に開かれたソチオリンピックの開会式。ロシア政府に抗議して各国首脳が欠席する事態が起きました。これを機にオリンピック憲章が改定され、性的指向による差別の禁止が明記されます。

    2016年のリオ大会ではLGBTQであることをカミングアウトした選手が多く出場し、表彰式直後の会場で同性パートナーからプロポーズを受けた選手もいました。

    日本でも東京大会の開催を前にさまざまな変化がありました。

    例えば企業。東京大会の組織委員会が物品やサービスを調達するとき、差別やハラスメントの禁止やLGBTQなどの社会的少数者の権利の尊重など一定のルールを守った企業から行うことを定めています。

    この「調達コード」で性的指向(好きになる相手の性)をめぐる差別の禁止が明記されました。


    (東京2020オリンピック・パラリンピック『持続可能性に配慮した調達コード 基本原則』)

    松中さんはオリンピック・パラリンピックのスポンサー企業などに向けて大会前から研修会を頻繁に行ってきました。

    こうした流れの中で、同性パートナーにも配偶者と同等の福利厚生制度を認めるなどLGBTQに配慮した社内制度を整備する企業が増えていきました。LGBTQに関する企業の取り組みを評価するPRIDE指標*で、最高評価のゴールドを獲得した企業は、2016年の53社から2020年には183社と、この5年で3倍以上になっています。(*PRIDE指標…企業や団体においてLGBTQなどの人々に関するマネジメントの促進を支援する任意団体が策定した評価指標)


    (LGBTQなどの人に配慮した ある企業のトイレの表示)

    進まない法整備


    一方で取り組みが進んでいないのが法整備です。

    東京大会を前に性的マイノリティーへの理解を促進するための法案の成立を目指す動きがありましたが、自民党内で意見がまとまらず国会への提出が見送られました。

    OECD(経済協力開発機構)の調査では、日本は同性婚を認める法律や差別を禁止する法律がなく 戸籍の性別を変更する際に性別適合手術を条件としていることなどから法整備の状況は35か国中、下から2番目の34位です。


    (早稲田大学法学学術院 教授 棚村政行さん)

    家族法が専門でLGBTQに関わる問題に詳しい早稲田大学法学学術院教授の棚村政行さんは国としての取り組みの遅れを指摘しています。

    早稲田大学法学学術院 教授 棚村政行さん
    「草の根での取り組みが進む一方で、これだけ政治が遅れているというのは海外から批判され、オリンピックの理念を理解していないとすら思われかねません。

    政治の現場の議論では同性婚などの法整備について『社会全体の理解が必要』と言われることが多いですが、各種調査などを見てもすでに市民の理解は深まっていますし、自治体レベルでの取り組みは先行しています。一刻も早く国が動くことを期待しています。」

    LGBTQをめぐる報道で感じた日本と世界の差

    (プライドハウス東京レガシーの取材に訪れたブラジルのテレビ局)

    性的マイノリティーへの理解促進法案が議論された今年6月以降、プライドハウス東京レガシーには海外メディアからの取材が相次ぎ、大会終了までに30以上のメディアが訪れました。

    一方で国内では以前から取材を続けてきた一部のメディアに限られました。松中さんは報道姿勢にも海外と日本の意識の差を感じたと言います。

    松中 権さん
    「海外メディアは性的マイノリティーの選手の活躍が社会にどんなインパクトを与えるかとか、日本の法整備の遅れなどと関連して大会をどう見ているかなど、すごく深く突っ込んだ取材をしていて、関心の高さを感じました。

    日本の報道では、ゲイであることを公表している男子シンクロ高飛び込みで金メダルを獲得したイギリスのトーマス・デーリー選手を『イケメン編み物王子』と報じるような取り上げ方が多く、表層的に見えました。彼がカミングアウトに至るまでのストーリーや当事者の若者に向けて発信しているメッセージについて取り上げるようなメディアはほとんどなく、とても残念に思いました。」

    東京オリンピックでは、性的マイノリティーであることを公表した選手の出場が180人以上と過去最多となり、ニュージーランドのウエイトリフティング選手やカナダのサッカー選手などトランスジェンダーを公表している選手が初めて出場しました。

    松中さんはこうした状況を喜ばしいニュースとしてだけ伝える報道にも違和感を覚えたと言います。

    松中 権さん
    「より多くの選手が自分を偽らずに大会に参加できたことはとてもうれしいです。一方でカミングアウトができない選手もまだまだ少なくないことに目を向けなくてはならないと思います。

    東京大会に参加した国や地域の中でもまだ性的マイノリティーであることが処罰の対象となっていたり、中には死刑を科したりすることさえあります。

    カミングアウトできた選手たちの前向きな話題だけではなく、いまだに苦しんでいる当事者やその周辺の人たちの安心・安全をどう確保していくかまで議論を進めていかなくてはいけないと思っています。」

    東京大会の「レガシー」は継続させること

    (左:『SPORTS for EVERYONE』 右:『メディアガイドライン』)

    プライドハウスでは東京大会に合わせて2つのハンドブックを作成してホームページで無料公開しました。

    1つは競技団体などスポーツの現場で配慮すべき点などをまとめた「SPORTS for EVERYONE」というハンドブック。もう1つは東京大会を取材する報道関係者向けに発行した「メディアガイドライン」。LGBTQに関わる基礎知識から回避すべき表現などまでわかりやすくまとめています。国際オリンピック委員会(IOC)が行った海外メディア向けのブリーフィングでも このガイドラインが紹介されました。

    これらがオリンピック・パラリンピックが終わった後もスポーツ大会などさまざまな場面で指針となるよう、今後はメディア向けの研修会を開くなどして広く周知をしていきたいと松中さんは考えています。


    (プライドハウス東京レガシーを視察するフランスのスポーツ担当相)

    オリンピック閉会式の前には次の夏の大会が開催されるフランスのスポーツ担当相がプライドハウス東京レガシーを視察に訪れました。パリにはまだプライドハウス設立の動きはないということで、松中さんたちは2024年に向けてパリの当事者団体とも連携をとって活動を広げて行こうとしています。

    東京オリンピック・パラリンピックが終わった今、「多様性と調和」のスローガンを一過性のものに決してせず、根づかせていかなければならないと松中さんは考えています。

    松中 権さん
    「『LGBTQを公表する選手がたくさん出場できてよかった』で終わってはいけないと思います。オリンピックという一種のお祭りが終わった後も当事者たちの生活は続いています。

    華々しく活躍した選手たちのことだけではなく、今も誰にも言えずに苦しんでいるLGBTQ当事者やその家族たちが身近にいることにも思いを寄せて、その人たちの安心・安全が確保される社会を一緒につくっていきたいと考えています。そうした機運を継続させていくことが今大会の大きなレガシーになると思います。」

    取材をして…
    コロナ禍で開催された東京オリンピック・パラリンピックは いい意味でも悪い意味でも「なぜオリンピックを開催するのか?」「オリンピックの意義とは何か?」を多くの人たちが考えさせられた大会だったのではないかと思います。

    私自身このコロナ禍で開催するのであれば、せめて東京大会のもたらした何かが今後の社会に長く残るようにしていきたい、その何かが大会の理念である「多様性と調和」であってほしいと思い、取材をしてきました。大会後に改めて松中さんに話を聞いて、それを残せるか残せないかはこれからの私たちの行動次第だと感じています。これからも取材を続けます。

    東京オリンピック・パラリンピックは「多様性と調和」において何をもたらし、それを今後につなげるために社会に何が必要と思いますか?あなた自身が身近な人との関わりや日々の生活で心がけようとしていることはありますか?みなさんのご意見や記事への感想などを下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。


    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2021年9月21日

    Vol.30 国防婦人会 戦争にのめり込んだ 母親たちの素顔

    今から70数年前、アメリカや中国などと戦争をしていた日本に「国防婦人会」という女性団体がありました。かっぽう着姿で日の丸の小旗を振って兵士を送り出し 地域の女性たちを戦争協力へと駆り立てる、映画やマンガによく登場する女性たちです。

    会に所属していたのは主婦たちで、自分の子供を戦場に送り出し 戦死の知らせにも涙を見せなかったといいます。本当はどんな思いで活動に参加し、家族の死を心の底ではどのように受け止めていたのか―。そんな素朴な疑問から取材を始め8月14日に NHKスペシャル「銃後の女性たち~戦争にのめり込んだ“普通の人々”~」を放送しました。

    取材前、私たちが国防婦人会の女性たちに抱いていたイメージは 軍国主義を信奉する一部の“戦争おばちゃん集団”でした。しかし、その娘さんたちに話を聞く中で見えてきたのは、女性として母親として社会の中で葛藤を抱えながら生きた“普通の女性たち”の姿でした。

    (NHKスペシャル「銃後の女性たち」取材班)


    “出番のなかった”女性たちが 国防婦人会に感じた“やりがい”

    (大阪で誕生した国防婦人会)

    国防婦人会は日本が戦争の時代へと突入した満州事変の翌年、1932年に大阪で誕生しました。はじめは港から中国大陸へと向かう兵士たちを茶で接待するボランティアだったそうです。その後、戦争を経済的に支えるための国債購入や戦死した遺族の慰問など 地域社会から戦争を支えていく存在となっていきます。

    母親が国防婦人会で活動していたという大阪在住の久保三也子さん(92歳)は大勢の人を前に壇上に立ち、いきいきと活動方針を説明する母親の姿が強く印象に残っていると言います。


    (久保三也子さん<左>の証言をもとにイラスト化した 壇上で話す母・キクノさん<右>)

    久保三也子さん
    「母は第一線に立ってやってたよ。一生懸命になると思うよ それまで母親なんて出番がなかったんだもん。

    投票権も何もないし、女は黙々と台所で働くのが女やと思って。 “ 生まれては親に従え、嫁しては夫に従え、老いては子に従え”でしょ。男性のほうが優位だった。そんな時代。」

    当時小学生だった久保さんは公の場で意見を述べる母の姿を誇らしく感じたと言います。

    その時代、女性は、教育の機会や相続の権利など あらゆる点で不平等な立場に置かれ、参政権も認められていませんでした。働くことができる職場は限られ、ほとんどの女性は結婚して夫の「家」に入って家事や育児をするしか選択肢がありませんでした。

    国防婦人会の活動は 女性が社会に出て男性と同じように振る舞うことが許される数少ない機会となっていたのです。

    社会で必要とされる喜びを感じた女性たち
    今回の取材で 国防婦人会の活動を懐かしそうに振り返る女性の証言テープも見つかりました。そこからも当時の女性が抱えていた“生きづらさ”が活動の原動力になっていたことが見えてきました。


    (片桐ヨシノさんと肉声が記録されていたテープ)

    片桐ヨシノさんは当時30代で、夫の家で姑(しゅうとめ)と同居し2人の子供を育てていました。厳しい姑に「絶対服従」という窮屈な生活でした。しかし 国防婦人会の勧誘に来た女性が「お国のため」と姑を説得し、それ以来 堂々と家の外に出て活動することができたと言います。

    片桐ヨシノさん
    「大阪駅のホームでね、ベンチで夜を明かすことがあるんです。というのは夜、長い輸送列車とかが駅に入ってきて『大阪じゃ 大阪じゃ』って兵隊さんが降りてきてね。『兵隊さん、お水もお湯もありますから』言うて、たばこを持ってきてあげたりね。いろんなことしましたよ、実際。来る日も来る日もカラスの鳴かん日はあっても、片桐さんが来ない日はないというくらいに行ったもんです。心の底からの国防婦人会でしょうね。」

    兵隊のお世話にまい進した喜びを話す片桐さんの声は 青春の1ページを語るかのような華やぎを帯びていました。

    国防婦人会は こうした女性たちの前向きな思いをくみ取る形で拡大し、全国に広がっていきました。財政的に支援するなど その後ろ盾となり、監督下に置いたのが陸軍でした。大阪市史編纂(へんさん)所には当時 軍が国防婦人会の女性に送った表彰状が大量に保管されていました。


    (軍から国防婦人会に送られた表彰状・大阪市史編纂所 所蔵)

    国防婦人会の資料を分析した元大阪市史料調査会主任調査員の石原佳子さんは 陸軍が 全国の各地域で活動する女性たちから自発的な戦争協力を巧妙に引き出していったと指摘します。

    研究者 石原佳子さん
    「感謝状を贈られる経験というのは普通の女性にとっては(それまで)あんまりなかったことじゃないでしょうか。公的な表彰状をもらうということは、とても名誉だと思って『もっと頑張ろう』という気持ちにはなったんじゃないかなと思います。“命令”では地域の1人1人の女性の心は動かしにくいですから。」

    国策に取り込まれていく女性たちの“やりがい”
    しかし女性たちは歴史の大きなうねりの中に巻き込まれていくことになります。 国防婦人会を監督下に置いた軍のねらいは、たとえ夫や子どもが戦争の犠牲になったとしても反戦感情を抱かないように国防婦人会を通して女性たちを教育することにありました。


    (国防婦人会の幹部と陸軍の幹部)

    今回見つかった文書には、軍が求める女性像についてこう書いてあります。

    『よき子を生んで之(これ)を忠良(ちゅうりょう)なる臣民に仕立て 喜んで国防上の御用に立てる 家族制度の本義に基く女子に与えられました護国の基礎的務めです』

    (「大日本国防婦人会の指導と監督に就いて」より)


    軍の思惑は、女性たちが国防婦人会に抱いていた 社会に出て働く喜びとは、全く異なるところにあったのです。女性たちの活動は、次第に息苦しいものになっていきました。

    “産む性”として…戦争に息子を出したら一人前
    日中戦争、太平洋戦争と戦線が拡大するに従って国防婦人会の会員は増え、やがて1000万人を擁する最大の女性団体となります。多くの兵士が必要となる中で、女性たちには男子を産み育て 兵士として国に捧げることが強く求められるようになりました。


    (左:戦時中のポスター/阿智村 所蔵  右:国防婦人会の機関誌)

    当時発行されていた国防婦人会の機関誌には、こう書かれています。

    『国防婦人会の良き会員となって、その宣言にもある通り「日本古来の婦徳(ふとく)を養ひ 堅実善良な子女を育て、良く家を整へ而(しこう)して男子をして後顧の憂なからしめるようにする」ことが出来るならば、女子としても、小さな力を御国の為めに捧げ得たと云(い)へませう。
    「夫にやさしい、良く子どもを可愛(かわい)がる、裁縫や料理が非常に上手だ、経済がなかなかうまい」と云(い)ふだけで、それで、現代の日本女子として十分といえませうか。』

    (「三重国防婦人」より)



    “産む性”としての役割が求められる中、地域社会で追い詰められていった女性がいました。三重県のある町で国防婦人会の役員をしていたという梅本多鶴子(たづこ)さん(87歳)の母親、シカノさんです。


    (前列左から3番目:梅本さんの母・シカノさん)

    地域では若い男性たちが次々と出征していき、女性たちは「戦地で命をかける夫や息子のために」と国防婦人会の活動にのめり込んでいきました。 一方、梅本さんの家には出征する男性がいませんでした。シカノさんは息子2人を幼くして病気で亡くし、高齢の夫も召集されませんでした。当時小学生だった梅本さんは母が婦人会の活動から戻って来た時にもらした言葉がいまも忘れられません。

    梅本多鶴子さん
    「母は『あんたのところは戦争も行っとらんのやから、まあ偉そうなこと言うたらあかんよ』というふうな口ぶりで言われたらしいです。『どこどこの息子さんはどこへ出征した』とか、『外地へ行った』とか。そういう話で持ちきりやから。戦争に行った家は、『うちは偉いもんや』という気持ちがありますね。子どもとか主人とか、命をささげに行っているから。行かない家は、それを言われると一番つらいですわね。」

    母・シカノさんは、地域の行事や農作業などなんでも引き受けましたが、周囲から認めてもらうことはできなかったと言います。

    梅本多鶴子さん
    「女としてね。一人の親として戦争に一人でも出していたら一人前。だけど(子どもが)女の子で戦争に誰も出さなかったら半人前以下。

    戦争ですよ、やっぱり。心の戦争やったと思います。」

    家族を失った女性たちもまた、苦しい思いに押しつぶされそうになっていました。三重県に住む三好三重子さん(94歳)の母親は息子が戦死したときにも人前で涙を見せませんでした。

    近所でも戦死の報が相次ぎ その死が「名誉」だとされる中、悲しみを見せることは国策に背くことだとみなされていたのです。三好さんは家の中で一人肩を震わせていた母の姿が目に焼き付いています。

    三好三重子さん
    「誰にも見られたくないから夜中、みんなが寝静まった頃に声を殺して涙をこぼす。(周囲に)涙を見せる女は、言うも悲しき情けない女ということになる。自分の胸の中に収めておくという、そういう戦時中の女性の思いやわね。」

    息子を出征させた女性、させられなかった女性、どちらの姿も「女性とは母親とは、こうあるべきだ」という価値観から逃れることがいかに難しかったかを、物語ってるように思いました。

    “変わった”“変わらなかった” 女性たちの歩んだ戦後
    戦後、女性をとりまく環境はどのように変わり、また変わらなかったのでしょうか。

    出征する男性がいないことで周囲から責められた梅本多鶴子さんの母親・シカノさんは戦後は一転、「あんたのところは勝ったな。子どもを失わずに済んだんやから」と言われたそうです。


    シカノさんの娘 梅本多鶴子さん(87歳)

    梅本さんは、女性に「あるべき姿」を押しつける社会のあり方は、戦後も変わっていないと感じています。梅本さん自身、結婚後に子どもができなかったことで周囲から心ない言葉を浴びせられることが幾度となくあったのです。

    梅本多鶴子さん
    「『あのお家な、いいんやけど子なしなんやわ』っていうことはよく聞きますね。そやから子どもがあって普通。私たちも どれだけ言われたかわかりませんよ。戦争やないですけど今の世も、子どもができて男の子でも女の子でも子どもができたら普通なんです。」

    梅本さんは社会の価値観に合わせて自らを否定せず、自分の人生を生きようとしてきたと言います。夫や親戚との関係を大切に築く一方、銀行の仕事に誇りをもち正社員として65歳まで勤めあげました。自分自身が幸せだと思う生き方を大切にしてきたと語ってくれました。

    私なりの考えをちゃんと持って生きたい
    戦後、女性に認められた参政権の重みをかみしめながら生きた人もいました。

    母親が国防婦人会で活動していた久保三也子さんは初めて選挙権を得た時、「この人だ」と思う政治家に一票を投じようと、空襲の焼け跡が残る大阪の街を走って投票所に向かったと言います。

    初めて投票した時の喜びを語る久保三也子さん(92歳)

    公務員として働いた久保さんは女性だけに求められていたお茶くみや掃除を拒否し、おかしいと思った事は新聞に投書して自らの考えを表明してきました。50年以上続けた投書は100件を超えると言います。そして今も選挙がある時には欠かさず投票所に足を運んでいます。

    その原動力となってきたのが、戦時中 目の当たりにした、戦争に協力する道しか選べなかった母や女性たちの姿だったと言います。久保さんは戦時中よりも自由に情報に触れ、発言もできるようになった今だからこそ同じ過ちを繰り返したくないのだと力強く語りました。

    久保三也子さん
    「ただ漠然と生きるの嫌やもん。私は、私なりの考えをちゃんと心に持っていたいのよ。間違うてるかも分からへんけど。「私はこうや」って思うことをした。そやないと、戦時みたいにお偉いさんがわあーって言って、『はい』言うてやっとったら、どないなるか分からへん。世の中ちゃんと見ておかな あかんなと思って。」

    “銃後の女性たち”を取材して
    「社会に必要とされることに感じる喜び」「求められる女性像にとらわれた振る舞い」
    国防婦人会の女性たちを戦争協力に強く突き動かしたのは、今の私たちにも身に覚えのある感情や社会や文化がつくり出した固定観念でした。

    番組放送後に視聴者の皆さんからも「その時代に生きていたら自分も国防婦人会に入って一生懸命活動したと思う」「社会から求められる女性らしさは変わっていない」「善意が利用されるって今でもある」など、当時の女性たちの姿に今の社会や自分を重ねる声が多く寄せられました。

    もちろん戦時中と今とでは女性をとりまく社会の状況も法的な権利も異なり、簡単に重ね合わせることはできません。しかし いつでもどのような時代でも私たちは間違った道を歩き始めてしまう危険性があることを常に意識し行動しなければならないと強く感じます。時代の空気や固定観念にとらわれず、おかしいと思ったことには立ち止まって考えること、そして一人一人の考えや生き方を尊重し認め合うことが、社会がよりよい方向へ進んでいくことにつながると思います。
    これからも、歴史の荒波を生きてきた人々の声を取材していきたいと思います。


    あなたの身の回りで「こうするべきだ」とされているけれど、おかしいのではないかと感じることはありますか?固定観念にとらわれず行動するためには何が必要だと思いますか?みなさんのご意見や記事への感想などを下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。


    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2021年9月3日

    Vol.29 働く女性と生理  “ひとりで悩ませない” 企業の取り組み最前線

    生理の痛みは“あって当たり前”だと、いまも多くの女性がなんとかやり過ごしているのではないでしょうか。働いている時のつらさに どう対処されていますか?

    労働力人口の約45%が女性で、企業や組織での役割も高まっているにもかかわらず、女性の健康については十分なケアがなされているとは言えません。下腹部の痛みやイライラなど生理に伴う症状が原因の労働損失は年間4900億円に上るという試算もあります。

    私がこのテーマを取材するようになったのは去年春、自分と同じように報道現場で撮影の仕事をしている若い後輩からの相談がきっかけでした。

    「生理がつらいと上司に伝えると大切な仕事を任せてもらえなくなるのではないか…」。生理の不調を訴えにくいと悩んでいました。

    私自身は頭痛や出血が長引くなどの不調があっても、あまり深く考えてきませんでした。考えようとしてこなかったのかもしれません。

    どうしたら職場でひとりで抱え込まずに解決に進めることができるのか。先進的な取り組みを進める企業や、啓発活動を行っている産婦人科医のグループを取材してみると、改善には一人一人が自分の体を知ろうとすることに加え、企業や組織からの“働きかけ”が大きな鍵となることが見えてきました。

    (報道局映像センター 早川きよ)


    社員の8割が生理痛 模索する企業

    ((左)つくば市内のサロンの社員の皆さん ・(右)施術イメージ)

    全国に172店舗を展開する大手エステサロン「ミュゼプラチナム」は3年前から生理に悩む社員の支援に取り組んでいます。社員およそ3500人の9割以上が女性です。

    サロンでは腰をかがめた姿勢でお客さんの肌の手入れをするため、勤務の間は休憩時間をのぞくと ほとんど立ったままです。生理の不調でつらい時もほぼ立ったままとなると 苦痛は想像に難くありません。


    (つくば市内のサロン 店長 吉原晴菜さん)

    茨城県つくば市内の店舗の店長をつとめる吉原晴菜さん(32歳)は長年、腰の痛みや気分が落ち込むといった生理の不調に悩まされてきた1人です。かつては生理のつらさを理由に仕事を休むことがはばかられ、市販の痛み止めを飲むなどして接客にあたることもあったと言います。

    吉原晴菜さん
    「生理痛がある時は、腰や おなかが痛いことがあるのですが、そんな中でも仕事をしなければいけないのが結構つらかったです。腰が痛い時には、コルセットを巻いたりして、調整することもありました。」


    (本社 社員のみなさん)

    「生理による不調のケアについて、会社の課題として取り組んでほしい。」

    3年前、1人の女性社員の声をきっかけに、会社は生理に関する啓発活動を行っている産婦人科医のグループ「日本子宮内膜症啓発会議」に相談して、社員の生理の実態を知ることから始めました。

    2019年と2020年の2回、全女性社員を対象に大規模なアンケートを実施。設問は「生理中、おなかの痛みがあるか?」「出血量はどれくらいか?」。また月経前にイライラ、発汗、対人関係不良などはあるか。さらには「不調は仕事にどれくらいの影響を及ぼしているか?」など38項目にわたります。


    (会社が実施した女性社員へのアンケート 著作権:日本子宮内膜症啓発会議)

    その結果、回答した およそ2600人の社員うち8割以上に生理痛があることが分かりました。また生理痛があると答えた社員の5割以上に子宮内膜症や子宮筋腫などの病気が潜んでいる可能性があることも明らかになりました。


    (会社が日本子宮内膜症啓発会議と行ったアンケート結果2020年)

    さらにPMS(月経前症候群)や更年期障害など生理によるほかの症状もあわせて、社員のパフォーマンスの低下による労働損失額は年間13億8千万円にのぼると試算されました。


    (社員の生理対策に取り組んでいるCSR推進室室長 柳沼政樹さん)

    ミュゼプラチナム CSR推進室室長  柳沼政樹さん
    「80%の人は痛い思いをしているのだと感じて、これは大変なことだと思いました。会社として13億円(の労働損失)という数字のインパクトは大きいです。それだけ生理で悩んでいる社員が多い、対策が不十分なために彼女たちに”しわ寄せ“が来ている。『この仕事をずっと続けられるのかな?』と思う社員も絶対にいると思うのです。そういうところを改善したいと率直に考えました。」

    自分の生理・病気のリスクを知ってもらう

    (2019年の研修会の様子)

    アンケートの結果を受けて、会社は2年前から定期的に産婦人科医のグループと話し合いを始めました。

    また全国各地を回って各店舗の店長などを集めた講習会を開き、生理のしくみや関連する病気の具体的な症状について社員自身が学ぶ機会を設けています。


    (つくば市内のサロン店長 吉原晴菜さん)

    生理に悩んできた店長の吉原さんはその講習会に参加して、自分の抱えるリスクに気づいたといいます。

    吉原晴菜さん
    「“異常”とされる生理の出血の量や状態を聞いて、『あ、ちょっと私 危険かも。病院に行った方がいいかな』と思いました。『普通だと思っていたことは普通じゃない』と気づくことができました。」

    講習会をきっかけに産婦人科を受診したところ、「月経困難症」と診断されました。放置すると子宮内膜症などにつながる可能性もある病気です。

    吉原さんは医師から処方された薬を服用したら出血の量が減り、気分の浮き沈みも改善されたと言います。さらに働き方にも変化が見られるようになったと上司は評価しています。


    (吉原さん(左)と上司の工藤邦子さん)

    つくば市内のサロン 工藤邦子さん
    「以前はイライラしていて笑顔が少なかったり、指示を出しても『私はやっているんですけど』などマイナスな発言をすることもありましたが、今は笑顔も増えて すごく前向きになりました。仕事に対しても、考え方もそうです。店長が明るく仕事をしてくれるようになると、周りのスタッフも明るく仕事をしてくれます。スタッフの成長にもつながっていますし、店舗の成長にもつながっているのではないかと思います。」

    ひとりで悩ませない
    会社は8月から講習会で新たな取り組みを始めました。
    生理の不調から産婦人科を受診して病気が見つかった社員たちが自らの体験を語る動画を各店舗で見てもらい、ディスカッションを行います。

    誰でも病気になり得るということ、そして その怖さを実感してもらうと同時に生理を“自分ごと”として捉え、周りと話し合うきっかけをつくることがねらいです。


    ((左)社員が自己体験を語る動画・(右)動画を視聴する社員)

    動画では1人の社員がおりものの量が多く、においも普段と違っていたり、疲れやすい状態が生理が終わったあとも続いたりしたことから病院に行ったところ、子宮けいがんが見つかったという話をしていました。

    子宮内膜症と診断されたという別の社員はひどい生理痛に加えて生理前には気分の落ち込みがあり、「死にたくなるような孤独感」を感じることもあったと言います。

    この店舗では動画を見たあと、社員が3人ずつに分かれて自分自身の生理の経験や、いま不安に思っていることを語り合いました。同じ職場で働く仲間の証言を見たあとだけに活発に意見を交わしていました。

    「私も生理がちゃんと来なかったり、生理痛が多かったりするけど受診するべきかな?」

    「自分がつらい時には周りにフォローしてもらい、声をかけてもらえたらすごくありがたい。だから自分もなるべく周りを見てフォローできるようにしたい」

    「今回の研修を受けていないスタッフには『生理のつらさは改善できるよ』と教えてあげた方がいいかも」

    会社では新しい動画を制作中です。内容は“女性社員が産婦人科に行ってみた”というもの。実際に診察台に座ってどのような診察がされるのか、産婦人科医からどんな質問をされるのかを撮影しています。

    「産婦人科で何をされるのか分からない」という恐怖感を取り除くために、病院内の様子や 必ずしも内診をするわけではないことなどを紹介しています。

    CSR推進室室長 柳沼政樹さん
    「ただ『研修をやりました』では行動に移せず、結果として『何も変わらないじゃないか』となることは十分想定できます。会社にとって何が課題で、それを解決することで社員にどんなメリットがあるのかを分かった上で取り組みをしていけば、結果が変わってくると思います。

    一過性で終わらせない。長く取り組み続けることによって徐々に働く環境がよくなってくるのかなと思っています。」

    取り組みを進めて3年。生理の問題をひとりで抱え込む社員が減り、社員の欠勤率が12.8%から5.3%になり、経営上も改善が見られるようになったといいます。

    企業の生理ケア ビジネスチャンスに!
    生理に悩む女性に新たなサービスを提供しようという企業もあります。大手商社の丸紅はヘルスケア関連企業とともにオンライン診療のシステム開発に乗り出しました。オンライン診療であれば自宅や会社のちょっとした時間で診察を受けることができ、手軽に生理の悩みを医師に相談できると考えたからです。


    (オンライン診療を受ける社員)

    このオンライン診療の実証実験に参加している20代の社員は病院に行かずに医師から薬の処方を受け、自宅に配達してもらっています。


    (オンライン診療を行う産婦人科医)

    産婦人科医 「月経痛が重いって話だったけど、その後どうですか?」

    社員 「だいぶ楽になって、すごく痛いということが無くなりました。どのタイミングでピルを飲むのをやめるんですか?」

    産婦人科医 「妊娠したいタイミングでやめる人が一番多いです。ただ、やめたくなったらいつでもやめて大丈夫だからね」

    この社員は4月からサービスを利用し、薬を服用しはじめてからは生理痛が軽減したと言います。

    社員
    「産婦人科に行くこと自体ちょっと抵抗もあるし、これくらいの症状で産婦人科に行ってもいいのかな?とか悩むところがありました。いろんなオンライン診療がある中で、どこが安心できるのか、自分で判断するのはすごく難しかったので自分の会社が契約している病院があるのはメリットだと思います。」

    女性の働きやすさにつながるオンライン診療のシステム。この商社では今後、ほかの企業などの福利厚生としてもビジネス展開したいと考えています。

    組織、国をあげた対応を
    働く女性の生理について詳しい産婦人科医は、取り組みを浸透させるためには組織や国をあげた対応が必要だと指摘しています。


    (聖路加国際病院 女性総合診療部部長 百枝幹雄医師)

    聖路加国際病院 百枝幹雄医師
    「メタボを中心にいろいろな健康課題がある中、月経の問題が本当に重要なんだということを認識している方がまだ少ない。職域検診(健康診断)の中に月経の状態を聞くような項目を追加するだけで、『やっぱりこれは、問題なんだ』ということに女性自身が気づくことができます。

    女性のキャリア形成がなかなか進まないのは月経などの健康問題が背景にあるかもしれないことを認識して、国の問題として取り組むことが重要ではないでしょうか。こうした問題点が改善されれば女性はもっと活躍できると思います。

    男女平等が求められますが男女が平等に働くためにも、男女の身体的な生理的な違いにきちんと対応することが不可欠です。」

    『働く女性と生理』を取材して…
    私自身、男性の多い職場で同僚たちと同等に働きたいという思いから、男女の身体の違いについて考えないようにしてきました。男女格差を測る「ジェンダーギャップ指数」は日本は世界156か国中120位(2021年3月 世界経済フォーラム発表)。百枝医師が指摘するように、企業や組織が男女の身体の違いに応じてしっかり対応することが男女格差を解消する上で欠かせないと思います。

    また学校や職場の定期健康診断の問診票に生理関連の質問を入るだけでも、ひとりひとりの意識は少なからず変わると思います。そこで異常を感じて すぐに病院に行くものではないにしても、年に1、2回 生理のことを問われ続ければ定期的に意識するだけでなく、周りの同僚や家族で話したり考えたりしやすくなるのではないでしょうか。

    一生を健康的に生きることが出来るかどうかにまで影響を及ぼし、新たな命を授かる上でも大切な「生理」。“タブー視”せず、女性だけの問題ととらえず、社会全体で考えていく必要があると感じています。生理の悩みについて一人で抱え込まずに女性だけの問題ととらえず、女性も男性も気軽に話し合える環境を作るためにどうすればいいか。これからも取材を続けます。

    生理の問題をひとりで抱え込まないようにするために、どんなことが必要と思いますか?企業や組織にどのような対策を求めますか?記事への感想やご意見などを、下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。


    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2021年8月27日

    お寺とジェンダー 京都の古寺を守りつづける家族の記録

    男性のイメージが強い寺の世界。 しかし京都にある浄土真宗の寺、宝蓮寺には、パワフルな女性たちと、 その女性たちが活躍できる環境づくりを心がけている男性たちの姿があります。これまで当たり前とされてきた男性・女性の立ち位置や役割を見直すのは決して容易なことではありません。 しかし、今の日本におけるジェンダーの在り方は、アップデートが必要であることは、 私自身も日ごろ感じていることです。 話をする側と聞く側、どちらも勇気がいるこの時代に、宝蓮寺の家族が率直な言葉で「対話」する姿勢に、未来への希望を感じました。
    近年、お寺の話題といえば、 宗教離れや後継者不足による 空き寺のニュースが先行されがちです。 そんな中、 「今の時代、お寺はどうあるべきなのか? どうすれば必要とされる存在になれるのか?」 私はこの問いを胸に10か月間、宝蓮寺に通い続けました。

    ノーナレ『寺と家族と“私”』ディレクター 山崎エマ)


    800年の歴史を継ぐ師恩 寺に入る晴香
    私が初めて宝蓮寺を訪れたのは、 ニューヨーク大学の映画学科を卒業したばかりの2012年。 私が抱いていた「お寺」のイメージを吹き飛ばす場所でした。英語が飛び交い、古いものと新しいものが混在する独特の空間に圧倒されました。 そこには、カナダの大学に留学中だった当時21歳の師恩さんが、 自分の運命に向き合おうと模索する姿がありました。

    そして、2020年春、師恩さんが婚約したと聞き、 婚約者の晴香さんに会うため、再び宝蓮寺を訪れました。


    (師恩さん(左)と婚約者の晴香さん)

    宝蓮寺は800年の歴史をもつ浄土真宗のお寺。師恩さんは次期、24代目の住職になる身として、檀家さんへのお参りや読経などを行いながら、日々、修行を重ねていました。

    膨大な宝蓮寺に関する資料や仏教の書物を前に、「ここにあるすべての情報を、いずれ自分の頭と心に入れなければ」とはにかみながら師恩さんは言いました。

    師恩さん
    「父、祖父、曾祖父はそれぞれ違うやり方で寺を守ってきた。僕も時代にあったやり方を見つけないと。」

    一方、晴香さんは一般の家庭に育ち、寺社会とは縁のない人生を歩んできました。師恩さんとの出会いを機に、仏教の勉強を始め、いずれは自らも僧侶となって宝蓮寺を支えていく決意を固めていました。

    晴香さん
    「まさか自分がお坊さんになるなんて思ってもみなかった。ここは800年続いてるお寺なんだよっていうのを聞いて、一体何時代のことだろう?みたいな感じ。同じ仕事を代々続けて行こうと思っても、強い思いがないと続けていけないと思うから。受け継がれてきた思いの強さは計り知れない。」


    (晴香さん)

    伝統のカタチにとらわれない宝蓮寺
    宝蓮寺は現在、師恩さんの父で、23代目住職の千佳(せんけい)さんと、妻で坊守*の和美さんを中心に、家族が一丸となって守っています。長男の師恩(しおん)さんは、次期住職となることを目指して、両親のサポートを続けています。

    (*坊守 ぼうもり…寺の番人、浄土真宗で住職の妻)



    (宝蓮寺を守る家族(左から)師恩さん、晴香さん、千佳さん、和美さん、阿梨耶さん、承阿(じょあ)ちゃん)

    和美さんの祖父が21代目の住職を、父が22代目の住職を務めた後、三人姉妹の長女である和美さんが、寺を継ぎました。

    和美さん
    「その当時、女の子が後を継ぐということは多くはなかったのですけれど、11歳の時に祖母から『あなたがお寺を継ぐのよ』と言われました。その後、24歳のときに今の住職と出会い、今に至ります。」

    名古屋の寺の次男だった千佳さんと和美さんはお見合い結婚。千佳さんは宝蓮寺の23代目住職になることが決まったとき、和美さんにも、僧侶になるための儀式「得度」を受けてもらい、一緒に寺をやっていきたいと告げました。

    その後、千佳さんがカリフォルニアの大学院で仏教を学ぶために、長女の阿梨耶(ありや)さんが3歳の時に家族で渡米。師恩さんはアメリカで生まれました。そのため、今も家庭の内では英語が飛び交い、寺は異なる文化的背景を持つ人たちが集うにぎやかな場所となっています。


    (外国人を含むコミュニティーの子供や大人に紙芝居を読み聞かせる坊守の和美さん)

    阿梨耶さんは、檀家や近隣住民をつなぐためのコミュニティーづくりの中心を担っています。宝蓮寺の子供図書館を運営したり、近所の店に案内のポスターを配り歩くのも阿梨耶さんの務めです。


    (長女・阿梨耶さんと娘の承阿ちゃん)

    阿梨耶さん
    「弟の師恩と私は この寺の24代目。この先30年で、恐らく寺のコミュニティーは縮小していきます。だからこそ、寺の存続と発展について考えていかないといけない。私が考える寺は、宗教、年齢、人種に関係なく、誰もが歓迎される場所。居心地のいい、第二の家みたいなところを目指している。

    幼い頃から色々な文化や宗教に触れること、それが父の教育方針でした。ずっと宝蓮寺にいたら、この場所の良さに気づいていなかったかもしれない。色々な世界を見せてもらえたおかげで、このお寺の良さだとか、様々な文化や宗教のいいところどりをできた感じがする。」

    師恩さん
    「僕たちのビジョンは世界だよね。誰が来てもウェルカムなお寺」

    誰もが歓迎されるオープンな寺。それは、家族全員が目指す寺の在り方です。

    “寺を継ぐ” 葛藤

    (長男・師恩さん(左) 長女・阿梨耶さん)

    父・千佳さんの後を継いで、宝蓮寺の24代目住職になるのは、師恩さんです。実は、姉の阿梨耶さんも、師恩さんと同じく子供の頃に得度を受け、僧侶として活躍しています。寺への思いが強く、長い間、後継ぎの序列というものに釈然としない思いを抱いてきました。

    阿梨耶さん
    「長女である私が住職になれる順位は、2人の弟たちに次いで3番目です。いい住職になれる自信があったのに。師恩は料理の道に進みたいとう夢も抱いていたので、彼が寺を継ぐという決断をするまで、私は待ち続けなければならなかった。とてもつらかったです」

    最終的に師恩さんは、お寺を継ぐ道を選びました。しかし、彼の中にも戸惑いがありました。

    師恩さん
    「常に父と比べられ。姉たちとも比べられる。毎日少しずつ努力を重ねていけばきっとやっていけるよね?理論上は。でも、どうだろう…。」

    自分は次期住職として寺を守っていけるのか…。師恩さんの肩にのしかかる重圧を、晴香さんはいつも優しくはねのけます。

    晴香さん
    「家帰る車の中で、『もう全然がんばってない。あかん、もっと努力しな』って言って。寝るときでも、一生懸命読書し始めて。別にそこで埋めなくても…って。」

    師恩さん
    「ありがとう。こんなの一人じゃできない。一人で寺を守っていくのは無理だもん。」


    (母で坊守の和美さん)

    2人の娘と2人の息子、4人の子を持つ母親として、和美さんには、寺の後継ぎを決めることに大きな葛藤があったと言います。

    和美さん
    「『誰が寺を継ぐのか、4人きょうだいで話し合って決めなさい』と言ってもよかったのですが、やっぱり悪いけれど、『長男である師恩が一番』。そう言いました。子どもたちに番号を付けるということはつらいんですけども・・・。今でも、これでいいのかなって思うことはあります。」

    “夫婦で共に寺を守る” 晴香さんの決意
    2020年秋。晴香さんが僧侶になるための得度式が東本願寺で行われました。千佳さんと師恩さんが見送る中、坊守の和美さんとともに式に向かいました。

    晴香さんはこの夏、車の運転中もお経の録音を再生して聞くなど、仏教の勉強に励みました。実は、現住職の千佳さんが寺を継ぐことが決まった時に和美さんに「一緒に寺をやっていきたい」と告げた話を聞いていました。「夫婦が共に寺を守る」。2人の姿に強く引かれ、晴香さんも僧侶になることを決意したのでした。


    (得度式を終えた晴香さん(右)と、夫・師恩さん)

    晴香さん
    「何も目標ややりたいことがなかった自分が、初めて、真剣にやってみたい、やりたいって思えることが見つかった気がしました。」

    得度式を終え、家族は宝蓮寺に戻り、檀家たちへの報告を行いました。

    和美さん
    「この度、お坊さまが一人誕生いたしました。名前は「晴れる」に「照らす」と書きまして『晴照』です。」

    僧侶になった晴香さんの晴れやかな表情を、阿梨那さんは温かく見つめていました。かつて母が父に勧められて得度を受けて坊守になったことで、父と対等の立場で扱われることを目にした阿梨那さん。自身も、弟・師恩と平等の関係性を維持するために得度を受けました。

    阿梨耶さん
    「男女平等を示す親がいたから、私も師恩と対等に、素直に話せる。『師恩がやりたくないなら私が住職を継ぎたい』とも言える。私たちはそういう仲になれたよね。住職を継ぎたい気持ちはきっと消えないと思うけれど、もう、そのこだわりはない。師恩が晴香ちゃんと結ばれたおかげで、もう心配がなくなったから。これからもいろいろあると思うけど、大切なのは私たちが幸せでいること。家族が幸せであれば他の家族にもそのエネルギーを分け与えることができる。お寺のコミュニティーにも。」

    違和感を語り合える家族
    2021年、春。ドイツで暮らす次女の摩阿那(まあな)さんが一時帰国したのを機に、次男の有縁(うえん)さんも加わり、久しぶりに家族全員がそろいました。

    摩阿那さん
    「日本をしばらく離れて帰ってくると、日本の色んなところが見える。それがどういうふうに宝蓮寺に影響してるかっていうところも。すごく大きい課題があると思う。」

    阿梨耶さんが最も気になっていたのは、日本における男女格差です。


    (ドイツから一時帰国した次女の摩阿那さん)

    摩阿那(次女)
    「SDGsのランキングで,日本は男女格差が153カ国中121位*。びっくりした。」
    (*2019年に発表した世界各国の男女格差を測るジェンダー・ギャップ指数のランキング。政治参加、経済、教育、医療の分野で調査。)

    阿梨耶(長女)
    「それは日本社会もだけど、このお寺の中にもあるからね。お寺からそれを変えていかないと。」

    摩阿那(次女)
    「そう。例えばお寺にはご縁様(住職)がいて、坊守とその他の人たちがいる。でも多くの事柄はご縁様だけが決めている。」

    阿梨耶(長女)
    「トップダウンに感じる。」

    長女と次女の発言に対し、家族の男性たちからは戸惑いの声が上がりました。

    千佳(父)
    「我々はそうやって責められると、とてもナーバスな気持ちになるわけ。これだけはまず男のメンタリティーとして知ってほしい。」

    師恩(長男)
    「言い方が難しいんだ。男女が平等であること。それが目標。でも男としては、女性が気分を害さないようどう話せばいいか…。」

    寺を未来へつないでいくためには、このままではいけない。摩阿那さんと阿梨耶さんは、これまで溜め込んできた思いを、せきを切ったように語り始めました。


    (長女・阿梨耶さん)

    摩阿那(次女)
    「現実を見たくないっていう人がたくさんいるから、この会話をすること自体がすごく大変なこと。その『大変だ』っていうことをわかってほしい。」

    阿梨耶(長女)
    「私たちは普段から思ってることがいっぱいあるし、ちょこちょこ言ってはいるけれど、変わってるように思えないとこがまだいっぱいある。それが私の娘の代になっても変わらず、同じような状況が繰り返されるのは見たくない。例えば、次の世代も長男じゃないとお寺を継げないとか。私たちは家族みんなで調和しながら、最終的にはお寺のコミュニティーを作ろうとしてるわけだから。すべてはファミリーから始まるべきだと思う。」

    師恩(長男)
    「家族でしゃべるときは、みんな立場上でなくて、ひとりひとりの意見を言い合う場所でいいんじゃないの。

    千佳(父)
    「いいよ。」

    摩阿那(次女)
    「そうなったらうれしい。」

    師恩さんは、晴香さんとの出会いを経て、自分の考え方が徐々に変わってきたことを伝えました。

    師恩(長男)
    「そんなすぐには変わらないけど、僕は晴香ちゃんと真剣につきあって、結婚するとこまでいったら、いろんなことも見てくれて、いろんなことも変わってくるし。もし僕たちが子供を授かるとしたら、男であっても女であっても、お寺を継ぎたいっていう思いがあれば全然オッケー。それは僕たちの子供かもしれないし、阿梨耶の娘でもありうる話。そこはもう全然考え方が変わった。」

    摩阿那(次女)
    「師恩の言葉、うれしいよ。」

    師恩(長男)
    「時間かかったけど。」

    阿梨耶(長女)
    「(晴香さんに)感謝だね。」

    ひとりの僧侶として…
    得度式から4か月、晴香さんは僧侶としての務めを始めていました。檀家を訪れたある日、仏壇でお経をあげた後に思わぬ言葉をかけられました。


    (僧侶としての務めを始めた晴香さん)

    檀家さん
    「私がまだ幼稚園生くらいだった頃、宝蓮寺の一つ先代のご住職がうちへいらしてお経をあげてくださり、おふくろの膝の腕でそれを聞いていたのを思い出しました。本当にいいお務めしてもらった。」

    晴香さん
    「そう言っていただいて、受け入れていただいているなって、うれしいです。」

    檀家さん
    「自然やと思います。今みたいに、このままずっと行かれたら良いと思います。僧侶なられるということは、もうそれを決断された時点でそうなられてるんじゃないでしょうか。なかなかこんな大きな決断はできないですからね。」

    晴香さん
    「うれしいです。」

    晴香さんの目に涙がにじんでいました。

    800年の伝統を支え、変えていく女性たち
    2021年5月、師恩さんと晴香さんは結婚式を挙げ、二人は正式に結ばれました。


    (2021年5月 師恩さんと晴香さんの結婚式)


    (宝蓮寺の未来を語り合う三姉妹)

    阿梨耶さん、摩阿那の姉妹と、新しい家族になった晴香さん。
    3人は、宝蓮寺のこれからについて語り合いました。

    阿梨耶(長女)
    「先々代がお参りに行った記憶があるギリギリの世代がまだいる。この同じ仏壇で24代目のうちらが手を合わせているって、すごいことよね。」

    晴香(義妹)
    「それが、お寺とは何にも関係ない女の私で。」

    阿梨耶(長女)
    「でも晴香ちゃんが来てくれて、ほんとうに空気感が変わった。宝蓮寺の100年後の歴史を晴香ちゃんがしょってくれていると思うし。それをみんなで支えたい。阿梨耶は、これからその宝連寺に来やすい環境をつくっていこうと思うし。一緒にがんばろう。」

    晴香(義妹)・摩阿那(次女)
    「がんばろう。」



    宝蓮寺を取材して
    今回の取材を通して、古くからの風習や伝統にとらわれた考え方や価値観をより良い方向に変えていく上で、「今後、お寺はどうあるべきなのか?」の問いの、大きな一つのカギとなるのは『家族の愛』だと確信しました。

    宝蓮寺は、“新しい家族”を迎えるたびに、新たな風が吹き込まれ、脈々と受け継がれてきた寺のカタチを少しずつ変えてきています。現住職の千佳さんが和美さんと結婚して「夫婦ふたりで守る寺」になり、晴香さんが師恩さんと結婚して、「僧侶の夫婦・きょうだいで守る寺」になり…。そして、家族みんなが一つの大きな船に乗り、時にはぶつかり合いながらも、互いを認め合い、対話を続けることで、 800年続いてきた寺を未来につなげるのだという強い覚悟を感じます。

    私は、これからも宝蓮寺を見守り続けたいと思っています。 師恩さんの代、そしてその次の代が住職を継ぐ頃には どのような寺になっているか。 そしてその頃、日本はどんな社会になっているのか。 「お寺」という存在の可能性を、「家族」というものの力を、 そして性別を超え、ひとりひとりに秘められた力と可能性を、宝蓮寺を見続けながら考えていきます。 そこに、これからの日本が変わっていくための ヒントがあると信じて。

    あなたの身近に、男性と女性の役割をめぐる偏見や伝統的な価値観について見直すべきだなと感じる現場や風景はありますか?それらを改善するために私たち一人一人にできることは何だと思いますか? みなさんのご意見や記事への感想などを下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。


    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2021年8月13日

    Vol.27 みなさんの声から考える LGBTQのハナとトイレのこと

    6月にEテレで放送した海外ドラマ『ファースト・デイ わたしはハナ!』(全4回)は、男性の体で生まれ、男性として生きてきたトランスジェンダーの主人公ハナが、自分らしく女性として中学校生活をスタートする“はじめの一歩”を描いた物語です。放送中と放送後に、みなさんから たくさんのご意見や感想が寄せられました。ありがとうございました。

    「言葉で多少知ったつもりでいたトランスジェンダー問題について、反省、感慨、さらなる関心など、たくさんの刺激をもらいました」(70代・静岡)

    「ハナの体験は、これから我が子に起こるだろうことを追体験している気持ちになり、親の立場としては涙が止まりませんでした」(40代・兵庫)

    「多目的トイレがあり、LGBTQの人たちはトイレに不便はないと思っていましたが、ドラマを見て、そう簡単でないと知りました」(40代・東京)

    寄せられたご意見で比較的に多かったのは、ハナが直面した「トイレ」の問題。そこで、ドラマの関連するシーンと、みなさんからの声を紹介しながら、LGBTQの人たちをはじめ、誰もが安心してトイレを使えるようになるためにはどうすればいいか、考えます。

    (編成局 展開戦略推進部 鈴木彩美)


    多目的トイレを使うことを強いられるハナ
    ドラマは、小学校まで「トーマス」とう名前で男性として生活していたハナが、中学校に進学するのを機に本当の自分として生きることを決意し、母親と一緒に校長先生との面談に向かうところから始まります。教職員みんなでハナの学校生活をサポートするという校長先生の言葉にハナは喜び勇み、トイレについて尋ねます。


    (「ハナ」を演じるのは自身もトランスジェンダーのイーヴィー・マクドナルドさん)


    ハナ「…じゃあ女子トイレも使えますか?」

    校長先生「すぐにはまだ。当面は保健室の『だれでもトイレ』を…」

    ハナの母「電話でも話しましたが、女子トイレを使っても問題は起きないと思います」

    校長先生「今後、検討はしていきますが、ほかの保護者にも配慮しないと。男子が女子トイレを使うとなると…」

    ハナ「男子じゃありません!」  

    (ドラマ『ファースト・デイ』より)


    親子の訴えもむなしく、しばらくは保健室にある多目的トイレを使うように言われます。教職員以外には自分がトランスジェンダーであることを隠しておきたいハナは、多目的トイレを使うことで自分の“秘密”が生徒たちにバレてしまうことをとても心配していたのです。


    ハナの母「(入学前の)お休みの間に一緒に考えてみよう。(なぜ『だれでもトイレ』を使っているのか、誰かから)聞かれたときに、なんて言うか」

    ハナ「そんなの聞かれたくないよ。ただ、みんなと同じようにしたいだけなのに…」

    (ドラマ『ファースト・デイ』より)


    そして迎えた中学校の初日“ファースト・デイ”。仲良しの友達もでき、ハナは順調に学校生活をスタートさせますが、ある日、恐れていた“そのとき”が訪れます。



    男子生徒たちから、ハナのことを好きな生徒がいるという話を聞いて、気まずさを感じたハナ。「ちょっとトイレに行ってくる」と言って、その場から離れようとすると、1人の男子生徒から問いかけられます。


    男子生徒「なんで『だれでもトイレ』使ってんの?」

    ハナ「入ったことない?広いんだよ。それに1人で使えるし、待たなくていいし…」

    (ドラマ『ファースト・デイ』より)


    一生懸命 言い訳をするハナ。「本当の自分として生きようとしているだけなのに、そのために友達にウソをつかないとならないなんて…」。胸が痛くなった視聴者の方も少なくないのではないでしょうか。

    ハナの気持ち わかります

    60代・北海道

    わたしも、仕事場で『だれでもトイレ』を使っています、というか、使うように言われています。 女子トイレを使えないのは、とても寂しい気持ちになります! 受け入れられていないんだなと思います! 普段生活していても、バレないかと、ビクビクしながら生きています!ハナの気持ちがとてもよくわかります。

    社会生活で悩むことほど つらいものはない

    20代

    ドラマでも取り上げられていたトイレや服装の問題。社会生活をする上で欠かせないものに悩むことほど、つらいものはありません。また、名前の呼ばれ方、「さん」「君」や「彼女」「彼」という呼び分けが性別によって異なる今の風潮は、人格を否定する要素になると思います。

    「どのトイレ使おうか」が当たり前になってほしい

    40代・神奈川

    トランスジェンダーだとカミングアウトするのに戸惑わない世の中にしないといけないと思う。「私、女じゃないかも」ってサラッと言えて、「じゃ、どのトイレ使おうか」って会話が当たり前になったらいいのに。

    みなさんの職場ではどうしていますか?

    50代・福岡

    アライ*になりたいと心がけています。 私の職場に、結婚してお子様もいて、60過ぎまで戸籍上は男性として生きてきた方が、女性の格好をし、女性になりたい、好きになるのはきれいな若い女性と言って、女性のトイレやロッカールームの使用を求めていました。でも、周りの女性はこれまでのその方の言動を見ていて、同じトイレの使用を拒否しています。皆さんの職場ではどうされているのでしょうか。

    *アライ(ally):LGBTQの人たちの支援者や味方の意。


    ハナの日本語の声を演じた井手上 漠(いでがみ ばく)さん。身体も戸籍も男性ですが、性別にこだわることなく生きています。漠さんは、男子トイレを使うことにも、女子トイレを使うことにも違和感があるそうです。


    (「ハナ」の日本語の声を演じた井手上 漠さん)

    井手上漠さん
    「私が女子トイレに入ったら、普通に『いい』っていう子もいるかもしれないけれど、『え?』って思う子もいるかもしれない。私がすがすがしい気持ちでも、『え?』って思った子からしたら、嫌な気持ち。これって平等じゃないじゃないですか。だからすごい難しい。今の私にとって、ほんとに小さな救いといえば『多目的トイレ』なんです。でも『多目的トイレ』が当たり前の世の中かって言われるとそうじゃない。」

    変わりはじめた日本のトイレ
    実は、日本の公共の場所に設置されているトイレも少しずつ変わりはじめています。



    このようなマークがついたトイレを見たことはありませんか?これは「オールジェンダートイレ」の目印。性別に関係なく、誰でも使えるトイレだということを表しています。空港やショッピング施設、大学、飲食店などでも、こうしたトイレの設置が増えています。

    「オールジェンダートイレ」はLGBTQの人だけのものではありません。障がいのある人やお年寄りなど、トイレに介助が必要な人にとっても、介助する人が異性の場合、一緒に入りやすくなります。また、女性用、男性用のトイレが長蛇の列というときに「オールジェンダートイレ」を使うことも可能です。

    さらに自由な発想でトイレをデザインしなおそうという動きもあります。大手住宅設備メーカーLIXILが新たにつくったのは「男女共用」でも「男女別」でもない新発想のトイレでした。


    (大手住宅設備メーカーがつくった新発想のトイレ)

    トイレの入り口の手前に「自分にあった個室をお選びください」という案内表示があり、ピクトグラムでそれぞれのトイレの機能が紹介されています。手洗い場が中にある、着替えスペースがある、車椅子で入れるなどを見て、自分がそのとき使いたい機能のトイレを選んで使うというトイレなのです。


    (トイレの入り口に掲げられた案内表示)

    従来との大きな違いは、男性用トイレと女性用トイレを壁で隔てるのではなく、1つの広い空間にそれぞれの個室を配置していること。男女どちらかのトイレに入ることにためらいがある人やどちらのトイレに入ったかを周りの人に知られたくない人に配慮したそうです。


    (男性用トイレの個室)

    男性用の小便器も一つずつ個室にしました。それぞれの個室は床から天井まで壁で仕切られているので、プライベート性が高く、音やにおいなどを気にせず、リラックスして使うことができます。

    みんなが安心して使えるトイレを
    新しく開発したトイレは「オルタナティブ(=選択肢)・トイレ」。LGBTQの人や障がいのある人だけでなく、誰もが、そのとき、使いたい機能のトイレを選んで使うことができるというトイレです。企画した石原雄太さんに話を聞きました。


    (「オルタナティブ・トイレ」を企画した石原雄太さん)

    LIXIL 石原雄太さん
    トランスジェンダーの人がトイレに困っているという話から、新しいトイレを考え始めましたが、最終的に完成したものは、男性、女性、大人、子ども、健常者、障がい者という枠をなくし、誰もが用途に合わせて自由に選べるトイレでした。これから多様性を尊重する社会をつくっていく上で、こうした「オルタナティブ・トイレ」は大切なインフラになると感じていますし、このトイレを利用することで、「多様性を知る・考える」きっかけになると思います。

    オフィスや学校など日常的に顔を合わせる人が多い場所では、自分のセクシュアリティを知られるのは心理的に負担が大きいだろうということから、まずはオフィスのトイレで、オルタナティブ・トイレをデザインしました。

    今後は、さらに公共の場所でも「誰もが安心して使えるトイレ」をめざして、引き続き調査・開発していきます。

    誰もが安心して暮らせる社会に・・・ 私たちができることは? 
    ドラマでは、その後、ある生徒の心ない行為によって、ハナがトランスジェンダーであることを学校中が知ることになります。すると親友たちは、ハナが女子トイレを使えるようにしてほしいと校長先生に粘り強く頼みます。一部の生徒からは嫌がらせを受けたり、冷たくされたりもしますが、ハナは“ありのままの自分”を受け入れてくれた友達に支えられ、“本当の自分”をつらぬいて生きていくことを固く決意して、物語は終わります。

    LGBTQの人たちをはじめ、誰もが安心して日常生活を送れるようになるために、私たちひとりひとりは何ができるのか。寄せられた声を紹介します。

    性別に関わらず“自分らしくできるよう”みんなが協力する

    10代 愛知

    学校でトランスジェンダーの授業を増やして、トイレや更衣室や服装の性別はなくして、それぞれが思う性別を、学校や会社のみんなが理解するようになればいい。性別に関わらずに、自分は自分らしくできるよう、みんなが協力していけばいいと思います。

    「個人の性は“個性”」と言える社会になる

    20代

    私達は、生まれるときに名前も性別も国も家庭も選べません。好みや考え方は人の数だけ違います。個人の性が「個性」だと言える社会となるために、“その人らしさ”という個人の性が「普通」の時代になってもいいのではないでしょうか。

    セクシュアルマイノリティーの人が出演するドラマを! 

    20代・兵庫

    今後、朝ドラなどに井手上 漠さんが出演するのを見たいです! まだまだセクシャルマイノリティーの人たちがドラマに出演することが日本では少ないと思うので、当たり前のように出演するようになると、ちょっとは世の中の人に“普通のこと”として受け入れられるようになっていくのではないかと思います。

    親は子どもの“ありのまま”を受け入れてほしい

    30代・神奈川

    親が寛容でなかったりする状況に子どもたちが本当に苦しんでいるなあと思いました。子どもが生まれてきてくれたそのことに感謝して、ありのままを受け入れていくことの大切さを再認識しました。

    区別すべきは男女でなく“心の性”ということを教育する 

    10代・北海道

    着替えるときに男女でお互いに恥ずかしさを感じるのはきっと生まれたときから“男女は違うもの”として教えられているからだと思う。区別すべきは「心の性」だということを教育できる世界になれば解決されると思います。

    トイレの問題も、LGBTQの人たちが生きづらいという課題も、すぐに解決につながる答えが出るものではありませんし、ひとりひとりが置かれている場所や環境によっても答えは違ってくると思います。だから「こういうトイレをつくらねばならない」「全員こうしないといけない」ということではなく、たとえば職場、学校ごとに、空間を共有するみんながどうすれば気持ちよく過ごすことができるのか、率直に話し合える環境をつくることがまずは不可欠と思いました。

    8月21日(土)夜9時30分からEテレで放送予定の『ウワサの保護者会』では、中学生たちが『ファースト・デイ わたしはハナ!』を見て、多様な性について考えます。ぜひご覧ください。

    あなたは、「誰もが安心して使えるトイレ」を学校、職場、公共の場で増やすためにどうすればいいと思いますか?私たちひとりひとりは何ができると思いますか?ご意見や記事への感想などを、下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。


    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2021年7月21日

    Vol.26 夫の家事育児と妻のホンネ

    いまや男性が家事や育児をするのは“当たり前”。NHKの調査※でも「台所の手伝いや子どものおもりをするのは当然」と答えた男性は88.2%(2018年)でした。さらに『ウワサの保護者会』(Eテレ)で男性の家事育児についてアンケートを行ったところ、男性たちから「掃除と洗濯は自分の仕事」「休日は料理をしている」などの声が多く寄せられました。
    (※「第10回 日本人の意識」調査」2018年
    しかしいざ妻たちに取材すると「やるのはいいけど“ガサツ”」「恩着せがましいのが嫌」など不満の声が続出。一体どうしてなのでしょうか?
    7月3日に放送した『ウワサの保護者会 夫の家事育児と妻のホンネ』では、“ホゴシャーズ”(小中学生の保護者)の男性2名、そして“尾木ママ”こと教育評論家の尾木直樹さんら専門家とともに、不満を口にする妻のホンネについて考えました。

    (「ウワサの保護者会」ディレクター 大島悠也)

    「妻を助けたい」と家事を始めたけど・・・
    “ホゴシャーズ”のひとり、都内の飲料メーカーに勤めるジャッカルさん(仮名)は、フルタイムで働く妻と小学5年の長男の3人家族です。これまでほぼすべての家事を妻に任せていましたが、コロナ禍のリモートワークで時間ができたことを機に、忙しく働く妻の助けになりたいと家事をするようになりました。

    この日も夕食後に家族全員の皿を洗い、その出来栄えに自信満々。

    ジャッカルさん「100点ですね。120点!」

    (皿洗いをするジャッカルさん)

    でも妻のあゆみさんの評価は「80点」。お皿に汚れが残っていたり、シンク周りの拭き上げが足りていなかったりするところが気になるようでした。


    (左:洗い残しがある お皿 右:シンクの様子)

    あゆみさんは夫の思いやりをうれしく思う反面、家事については不満を感じていました。


    (妻あゆみさん)

    妻あゆみさん
    ひと言で言うと“がさつ”なんです。信じられないと思うほど。

    でも夫には細かいところもあるんです。家族旅行で遊びに行く時は何時にどこに行くか、車の中でどんな音楽をかけるか、など細かく決め、詳細なスケジュールを作ります。

    (家事では)何回言っても変わらないから諦めるようになりました。いくらやってくれても汚かったら、私がまた洗わなければいけないじゃないですか。だから任せられないんです、すべてを。」

    ジャッカルさん
    「妻が(仕事から)忙しく帰ってきて、家でも(家事で)忙しいじゃないですか。だから(助けたいと思い)『ゴミとか出しておくよ』と言うと『やらなくていい』と言われる。やると怒られる。言葉は変ですけど、せっかく『やる』って言ってんだから『やらしてくれよ!』みたいな。で、結局やらなかったらやらなかったでまた『なんにもやんねぇ』って怒るじゃん、みたいな。」

    「家事」の発想を変える
    妻を助けたいと家事をしているのに「やらなくていい」と言われてしまうジャッカルさん。どうしたらいいのか、家族関係や親子関係の問題に詳しい恵泉女学園大学学長の大日向雅美さんや尾木ママとスタジオで話し合いました。


    (スタジオ 左から大日向雅美さん、尾木ママ、ジャッカルさん)

    尾木ママも、かつて家庭でお皿洗いをしていたとき、ジャッカルさんと同じように妻や娘に注意されていたそうです。2人からの指摘を“細かい”と感じていたといいます。

    尾木直樹さん
    「(皿洗いが)うまくいかなかったときに娘がね、『お父さんこうやるんだよ』と言って、向こうもしびれを切らしたみたいな感じでやりかたを教えてくれて。そうすると、ものすごく能率よくきれいにあっという間に終わるわけ。そういうことを教わって、『なーんだ早く教えてくれよ』と思いました。やっぱり家事をやっていても、心のどこかに片隅にね、『やってあげてる』っていう気持ちがあるの。だから(夫は)そこではごまかそうしたりなんだかんだね、理屈をこねるわけですよ。

    大日向雅美さん
    「ジャッカルさんは、“がさつ”だと言われてモヤモヤしていらっしゃるけど、”がさつ”でいらっしゃるんですか?お仕事とか他のことではどんな感じの方なんですか。」

    ジャッカルさん
    「結構、計画的に物事を進めるのが好きなんです。仕事とか数字を扱ったりする業務ではあるんで。あと自分の興味のあることはすごく緻密にやっていますね。家族旅行などでも、誰かが喜んでくれるのが分かるとやりたくなっちゃうんですよ。」

    会社の仕事や家族旅行の際には緻密なのに、家事では“がさつ”と思われてしまうのはなぜか。大日向さんは2つの理由を指摘しました。


    (恵泉女学園大学学長 大日向雅美さん)

    大日向雅美さん
    「ギャップを感じる理由の一つは、ジャッカルさんが<『仕事と家事は別と捉えている』ことです。もし職場の仕事であれば、上司や仲間から注意されたら”ダメ出し”としてでなく、改善やスキルアップのアドバイスとして捉えるはずです。もう一つは『家事を”喜ばれること”と捉えていない』こと。家事は本来シンクをきれいにしたり、美味しい食事を作ったりして、家族と喜びを分かち合うことです。」

    解決のためには発想の転換が必要といいます。

    大日向雅美さん
    『家事は仕事の一つ。注意は“ダメ出し”でなくてアドバイス』
    『家事は、家族と喜びを分かち合うこと』


    そのように発想を変えると、ジャッカルさんの持っている素養や素質が発揮できるはずです。」

    夫は家事育児フル回転 でも妻には気になるところが
    都内の日用品メーカーに勤めるカッパさん(仮名)は、フルタイムで働く妻と大学2年生の長女の3人家族です。リモートワークを機にほぼすべての家事を引き受けるようになったといいます。


    (料理から掃除まで、あらゆる家事をこなすカッパさん)

    平日は毎朝6時過ぎに誰よりも早く起き、家族の朝食をつくり、妻が職場で食べる軽食も用意します。妻を車で駅まで送ったあとは部屋の掃除と洗濯。その後、会社の就業時間の8時半から17時まで仕事をきっちりこなします。お昼休みには長女のごはんを作り、終業後は家族全員分の夕ごはんの支度を整えます。

    しかしそんなカッパさんに対し、妻のカイツブリさん(仮名)は、感謝しつつも気になっていることがあるそうです。それは家事をしているときに時折、不機嫌な様子を見せること。


    (夫の不機嫌な様子が気になるという妻カイツブリさんと夫カッパさん)

    妻カイツブリさん
    「私が(仕事で)すごく疲れていて、食卓に伏せて寝てしまうこともあるんです。そうすると男気があって『(夕飯の後片づけも)俺がやるよ』と言ってくれるのだけど、やっぱりそれ(お皿を洗うことが)がしんどくて、ぶつぶつ言っちゃう。」

    一方カッパさんは「不機嫌な様子が態度に出るのは悪い」としつつ、「そういう不満を出すくらいがちょうどいいのでは」と反論します。

    カッパさん
    「朝から夜にかけて家事やら仕事やらをやっていくと、時計が10時を指したころには眠気が襲って疲れがたまってきて、おでこに“たこじわ”が寄ってしまう。『なんで俺がやってるんだ』という不満が言葉と態度に出てしまいますが、それがなかったら、爆発してしまいます。」

    こうした夫の不機嫌な様子を見る妻の心境を、大日向さんは「自分が責められているような気持ちになるのでは」と分析します。

    大日向雅美さん
    「妻のカイツブリさんもつらいと思います。カッパさんに感謝していればいるほど余計に申し訳ないという気持ちがはたらくのではないでしょうか。『本当は自分がもっと仕事を減らして夫に楽をしてもらわなきゃいけないんじゃないか』とか、カッパさんの不機嫌が自分の胸に刺さるように思っちゃうのかなって。」

    “夫に言えなかった…” 妻のキャリアへの思い

    (発展途上国の開発支援をする会社で働くカイツブリさん)

    カッパさんの妻カイツブリさんは、発展途上国の開発援助をする会社で働いています。多くのプロジェクトを抱え帰宅が深夜になることもある中、「夫が家のことを、ほぼやってくれているので、仕事に没頭できている」と感謝を示す一方、これまで夫には打ち明けることのできなかった複雑な思いがあるといいます。


    (タンザニアに出張したときのカイツブリさん 37歳当時)

    カイツブリさんは大学卒業後、両親の勧めもあり地元で高校の教員になりました。しかし以前から興味のあった国際協力の仕事に転職しようと、27歳で東京に移り今の業界に入りました。その後、勉強を重ねて現地に赴いて活動する専門職に就き、アジアやアフリカなどの国々を飛び回り、現地に2週間から2か月滞在して活動するなど、充実した日々を送っていたといいます。

    そんな中でカッパさんと出会い、40歳で母親となりました。子育てを優先するために、海外には行かず国内で出来る仕事に切り替えました。


    (長女が生まれたころのカッパさんとカイツブリさん)

    カイツブリさん
    「その時はしかたないと思っていました。家族のためなら、子どものためなら一歩引いてしまうところはどうしてもありましたね。子育てに自分が一番責任を負っていると思っていました。」

    娘が小学校に入ったころから、夫の協力を得て海外での仕事を再開したものの、以前のように長期の出張をすることはままならなかったといいます。もっと他にやり様があったのではないかという思いが、今になって何度も頭をよぎるそうです。


    (カッパさんの妻カイツブリさん)

    カイツブリさん
    「かつて、私に指名で『入ってほしい。すぐにどこどこの国に行ってほしい』という案件がありましたが、悩んだ末に、『子どもが小さいから行けません』と断りました。あんなチャンスもこんなチャンスもあった、あれを全部やっていたら今、違うポジションにいたよなと思うことがあります。

    夫も子育てに協力してくれました。でも仕事も大事、子どもも大事。すごいジレンマでした。そういう苦労を夫は知らないと感じるんですよ。あのとき一緒に考えてもらえたら、もうちょっと方法ないか考えてみようと言ってもらえたら、めっちゃうれしかったかもしれません。」

    “妻の気持ちに気づけなかった…” 背景に男女の役割意識


    妻がひとり抱えてきた思いについて語る映像を見ていたカッパさん。思いに気づけなかったこと、そして妻と話し合いをしてこなかった自分を責めているようでした。

    カッパさん
    「妻が、具体的にそこまでやりたかった仕事を犠牲にしてまで、家事育児をやってくれていたというのは改めて知りました。子どもが小さいころって、妻と向き合える時間が取れなかったというところもあるし。私も逃げていたところがあるんですよ。」

    大日向さんは、夫婦で話し合わなかった原因は、時間がないことだけではないのでは、と指摘します。



    大日向雅美さん
    子どものことは『母の役割だ』という思い込みが、どこかにお互いあったのではないでしょうか。

    カッパさんも妻のカイツブリさんが海外出張に行っている間は、長女の世話や家事のため、仕事を早めに切り上げるなど、職場のつきあいなどを諦めてきた部分もあったと思います。(でも)カイツブリさんはいろんなものを失い、捨ててきたのでしょう。

    世間では『女性活躍』なんていうが、そんな上っ面なものじゃないんですよ。実際に結婚し、子どもを持って家庭を持ったら、仕事も大事、家庭も大事と揺れていく。そういう中で一枚一枚翼をもがれていくような思いで生きている女性たちがたくさんいるのが実態です。

    大日向さんは、カッパさん夫婦に「今からでも遅くありません。もう一度、会話や対話をすることで『実りの多い第二の人生』になるはずです」とアドバイスしました。

    カッパさん
    「今になって、彼女の思いを少しでも還元してあげたいというか。今の自分のできることで恩返ししたいなと思います。」

    お互い納得できる夫婦関係を築くコツは?
    最後に、大日向さん、尾木ママに、よい夫婦関係を築くためのコツを聞きました。


    (左:恵泉女学園大学学長 大日向雅美さん 右:教育評論家 尾木直樹さん)

    大日向雅美さん
    「相手が一番聞いてほしいことは何なのか。その糸をたぐり寄せることができるたら、夫婦はうまくいくと思います。

    また100点満点を求めすぎず、『夫婦2人で100点くらいでいいじゃないか』と思うことが重要です。パートナーであるということは、人生を分かち合うということ。そして『家事育児』はまさに人生。家事育児の夫婦分担を『4:6』『7:3』などの割合で考えるのではなく、夫婦で家事育児を分かち合うことが大切です。その原点は共感なんです。

    尾木直樹さん
    「夫婦だといろいろ面倒になったり、嫌になったり、ぶつかり合うこともあると思うんです。大事なのは相手の立場に立ってみること。それでお互いが納得した関係性でいられたらすばらしいですね。」

    取材を通して感じたこと
    私自身も「家事をやっているほうだ」と自負していました。でも今回、取材を進める中で、いつも家事をしながら妻に「こんな夫いないでしょ?」と“ドヤ顔”していた自分に気づき、赤面しました。今振り返ると、心のどこかに「本来は自分の仕事ではない」という意識があるが故の振る舞いだったのだと思います。仮に夫のほうが家事育児を多くこなしていても、「男は仕事、女は家庭」という役割意識がなくならない限り、対等な夫婦関係を築くことができないのではないかと思います。

    ジャッカルさんが取材の最後におっしゃっていた次の言葉にとても共感しました。 「子どもには、『お父さんとお母さん2人足して100点だよ』っていうのを実践して見せていきたいと思います。彼らが大人になったときには、『女の人だから男の人だから』とかいう意識がなくなり、ボーダレスになればいい。」

    次世代が”らしさ”の縛りのない社会で生きられるように、自分たちの日々の言動も見直していく必要があると強く感じています。

    あなたは、「男は仕事、女は家庭」という思い込みをなくしていくために、何が必要と思いますか? 記事への感想やご意見などを、下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。


    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2021年7月16日

    Vol.25 この仕事は男性?女性? ジェンダー・バイアスを考える授業

    「ジェンダー・バイアス」って聞いたことはありますか?「女の子なんだからお行儀よく」「男らしく決断しろ」・・・このような(社会的・文化的な意味での)性差に対する固定概念や偏見のことです。

    福岡県嘉麻(かま)市では、ほとんどの公立小中学校で、「ジェンダー・バイアス」について考える授業を行っています。この情報を知ったのは福岡県庁で取材をしているときでした。聞いたときには「え?嘉麻市で?」と驚きました。嘉麻市は人口3万7千。市全体の72%が森林と耕作地という、自然豊かでのどかなまちです。ジェンダーの取り組みとイメージが結びつかなかったのです。

    なぜこのまちで、子どもたちに「ジェンダー・バイアス」について教えているのか。実際どんな授業なのか。一つの小学校を取材しました。

    (福岡放送局 ディレクター 廣瀬温子)

    ジェンダー・バイアスを問い直す 小学校の授業

    (福岡県嘉麻市)

    嘉麻市は福岡県のほぼ中央に位置する農業がさかんな地域です。嘉麻市立下山田小学校では3年前から全学年を対象に「ジェンダー・バイアスを学ぶ」授業を行っています。この日、私たちが取材したのは4年生の教室でした。


    (4年生の担任 篠原美代子さん ※取材当時)

    授業の冒頭、担任の篠原美代子先生は、子どもたちに「男だから○○、女だから○○」と言われた経験があるかどうか尋ねました。

    男子児童「男だから台所に立ったらダメだと言われた。」

    女子児童「女の子だからお手伝いをしなさいと言われた。」

    福岡県で生まれ育った私自身も小さい頃、このように両親や親戚から言われていましたが、今でもあまり変わっていないのだなと感じました。

    続いて先生は複数のカードを子どもたちに配りました。カードには「大学の先生」「トラックの運転手」「お花屋さん」などの職業や、「赤ちゃんのお世話」「裁縫」などの家事が、イラスト付きで描かれています。

    カードを配り終わると、先生は「手元にあるカードを『男性がすること』『女性がすること』『どちらでもよいこと』のいずれかに仕分けてください。あまり深く考えずに直感で分けてみて」と子どもたちに伝えました。


    (職業や家事の絵が描かれたカード)

    黙々と作業を進める子どもたち。手元をのぞくと多くの子どもが「大工さん」や「野球選手」「トラックの運転手」は『男性がすること』に、「キャビンアテンダント」や「裁縫」は『女性がすること』に、「幼稚園の先生」や「赤ちゃんのお世話」は『どちらでもよいこと』に分類していました。


    (ある児童が仕分けたカード:左から「男性がすること」「どちらでもよいこと」「女性がすること」)

    次にそれぞれの役割が本当に男や女“だけ”がすることなのか、みんなで考えていきました。

    先生「“トラック運転手”。これは、女性がやっているのを見たことがある人はいますか?」

    一人の女子児童が手を挙げます。

    先生「どこで(女性のトラック運転手を)見た?」

    女子児童「お父さんがトラックの運転手で、そこで見た」

    先生「お父さんの職場でも女性の方がおられるそうです。じゃあこれは、男性だけがすることでは…?」

    児童たち「ない!」

    先生「女性が(トラックの運転手を)しても?」

    児童たち「いい!」

    そのほかの職業についても、「そういえばテレビで女性の大工さんを見たことがある」とか、「男のキャビンアテンダントもいるよね」などと、活発に意見が交わされました。

    最後に子どもたちは自分が仕分けたカードを見直して『男性がすること』や『女性がすること』に分けていたカードをすべて、『どちらでもよいこと』に移動させていました。

    授業のあと児童に感想を聞きました。

    男子児童
    「今まで男女の職業を決めつけていたけど、話を聞いてどちらでもよいと思うようになりました。」

    女子児童
    「自分は女だからといって、できない仕事はないってことがわかりました。」

    多くの子どもたちが「男女関係なく、自由に何でもできるっていいな」と、目をきらきらさせていました。たった45分の授業。しかしそれは、子どもたちの人生を大きく変えうる時間だと思います。

    この授業を導入したのは下山田小学校の宮脇教子教頭(取材当時)です。子どもたちが、ジェンダー・バイアスについて考える授業を毎年繰り返し受ける中で、確実に意識の変化が生じているといいます。

    宮脇教子 教頭
    「授業を受けた子どもたちは一様に、“良かった!”“うれしい”“ほっとした”といった反応を示します。性別による制限はないとわかり、自由が増えた、可能性が広がった、と実感しているのでしょう。そして委員長や応援団を決めるときなどに、男だからする、女だからできない、という話はまず出てきません。」

    さらにジェンダー平等の考え方がしっかりと子どもたちに浸透するよう、授業にある工夫がされているといいます。

    宮脇教子 教頭
    「意識改革は継続しないとすぐに元に戻ります。そのため“点”ではなく“面”で指導していくようにしています。ジェンダー・バイアスについて考える機会を、道徳・家庭科・社会科・ホームルームなど、さまざまな授業の中に“バラまく”のです。例えば、家庭科で家事の学習をする際に、“家事は、お母さんだけでなく、お父さんも行うものだ“と教えるとか、ホームルームで係を決めるときに、“男の子も女の子も、どんな係をやってもいい”と教えるなどです。そして考え、話し合う機会を増やしています。」

    このカリキュラムは嘉麻市内の小中学校では必ず実施することになっています。

    嘉麻市のジェンダーに関する授業は、あるテキストに基づいて行われています。2010年に制定された「嘉麻市男女共同参画推進条例」を、児童向けにイラスト入りでわかりやすく解説した『学ぼう そして 行動しよう』(2018年)です。市の男女共同参画課と教育委員会などが協働し、2年がかりで作成しました。


    (福岡県嘉麻市『学ぼう そして 行動しよう』2018年)

    「男女共同参画社会」とは、「女だから」「男だから」ではなく、誰もが自分の力を発揮し、のびのびと生きることができる社会であることや、そうした社会を実現するために基本となる考え方などについてわかりやすくまとめています。“男女共同参画は、自分たちのまちの条例で定められているんだ”、ということを、子どものころから認識することもとても大事だと感じます。

    子どもへのジェンダー教育に力を入れる市民団体「かまネット」
    このテキストの作成や、嘉麻市のほとんどの小中学校で行っているジェンダー・バイアスの授業を発案し、教育現場に協力を呼びかけたのは、地元の市民団体「かま男女共同参画推進ネットワーク」、通称「かまネット」です。男女が対等に活躍できる社会を目指し、15年前に結成されました。

    中心メンバーの職業は農家、お弁当屋さん、福祉施設職員、元教師などさまざまです。みなさん、過去に職場で差別を受けたり昇進を妨げられたりするなど、性別を理由に差別や不公平を感じた経験があるといいます。


    (「かまネット」のみなさん)

    かまネットはジェンダー・バイアスの授業のほかにも、男女で形が違う小学校の通学帽を子どもたちそれぞれが自由に選べるように提案したり、市の諮問機関である審議会の女性の割合を増やしたり、男女共同参画の条例を作るよう市に働きかけたりしてきました。さらには地元広報誌で、ジェンダー・バイアスを助長するような表現があったらそれを指摘して修正を求める、などの活動を続けてきました。

    長年にわたる かまネットの活動が少しずつ成果を出してきてはいるものの、「なかなか男女が平等であるというところには行き着いていない」そうです。そうした中、子どもたちの教育に力を入れることが重要と、代表の大塚裕子さんは言います。

    かまネット代表 大塚裕子さん
    「大人の意識はなかなか簡単には変わらない。だからこそ子どもたちには、今からこんな平等な社会を作っていこうねって、思ってほしい。」

    かまネットのメンバーたちは少しずつ、まちが変わっていきていると感じています。

    かまネット代表 大塚裕子さん
    「子どもたちが学校でジェンダー・バイアスを学んで帰ってくることで、親や祖父母、地域のおじいちゃんおばあちゃんなど、大人たちがハッとさせられることが多い。“私たち大人がそれを否定しないように、伸びている芽を摘まないようにしないとね”と、話し合っています。」

    さらに老人会や隣組など、地域の役員の“会長”に女性が就任するようになってきたり、地域の集まりの時に男性がお茶を入れたりするようになってきているといいます。男性も「ジェンダー・バイアスはおかしい、是正していくべきだ」と考え始めていると実感しているそうです。

    取材して…
    社会に根強く残っているジェンダー・バイアス。それに気づき、なくすという作業は簡単ではありません。生まれたときからあまりに当然のように、わたしたちの身の回りにあるからです。そういった中、小学校のころからジェンダー・バイアスを知る機会があるというのは、とても貴重なことだと思い、授業の取材をさせて頂きたいと申し込みました。

    根気強く声を上げ続けている『かまネット』の皆さんももちろんすごいですが、実際に制度を変えたり、新しく授業をはじめたりするためには、行政や教育現場の理解や協力がないと実現しません。地域の未来のために、そして子どもたちのために、地域が一体となって前に進んでいる様子が印象的でした。

    あなたは 子どもたちに「ジェンダー・バイアス」について教えることについて、どう思いますか?また、あなたの周りで「ジェンダー・バイアス」についてみんなで考える取り組みはありますか? 記事への感想やご意見などを、下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。


    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2021年7月9日

    ジェンダーVol.24 ジェンダー格差 男性はどう思ってる?  NHK世論調査より②

    男女格差や女性活躍について、男性はどのように感じているのでしょうか。NHKは3月末に2890人を対象に電話による「ジェンダーに関する世論調査」を行いました。Vol.23「ジェンダー 社会の“本音”は?」に続いて、今回は世論調査の結果を男性の視点から捉え、専門家の意見を交えて掘り下げます。

     (NHK放送文化研究所 岡田真理紗 (所属は調査当時))


    現役世代の男性の3~4割が“不利益”を感じている
    調査では、男性・女性の性別によって不利益を受けたと感じたことがあるかどうかを尋ねました。今回、調査に協力いただいた1508人のうち、不利益に感じたことが「大いにある」「ある程度ある」を合わせた『ある』は3割強、「まったくない」と「あまりない」を合わせた『ない』は6割に上りました。



    この結果を男女別にみると、不利益を感じたことが『ある』と答えたのは、男性は26%、女性は42%でした。自分の性別によって不利益を感じている人は、男性より女性のほうが多くなっています。



    さらに男女の年層別に見ると、性別による不利益を感じている男性は若い年層ほど多く、女性は40~50代が5割近くで多くなっています。



    筆者(岡田)は30代後半ですが、出産するまでは女性であることに不利益をそれほど感じたことはありませんでした。ただ出産してからは、育児の負担が女性に偏っていると感じることが多くあります。ですので、女性のほうが不利益を感じる人が多いという結果は予想していました。しかし調査結果を見て、男であることの不利益を感じている男性が、18~39歳は4割近く、40~59歳が3割あまりいることは少し意外に感じました。

    性別による不利益を感じている男性が、現役世代に少なくない背景に何があるのか。ジェンダー論が専門の東京大学の瀬地山角(せちやま・かく)教授に聞きました。



    瀬地山教授
    「不利益を受けていると感じている男性には2つのパターンがあると考えられます。

    1つ目は『男は仕事、女は家庭』などといった性役割分業の考えに否定的な人です。男性は『育休が取りにくい』『働いて家族を養わなければいけない』『女性におごらなければいけない』といった男性に押しつけられた役割に反発し、それを不利益だと感じている人たちです。

    2つ目は性役割分業には肯定的だけれども『女性が優遇されている』と感じる人。例えば、女性専用車両やレディースデーなどを『女性優遇』であると認識し、相対的に『男性は不利益を受けている』と考える人たちです。」

    女性専用車両やレディースデーなどを例に挙げて「女性のほうが優遇されている」という意見は、SNSなどで目にすることがあります。こうした考えをもつ人は、最近増えているということなのでしょうか。

    瀬地山教授
    「『女性のほうが優遇されている』という声は、男女平等を訴える声が社会で強くなるほどに、それに対する攻撃として出てくるものだと理解しています。いわゆる“バックラッシュ(反動)”です。

    1960年代に『住友セメント事件』という裁判がありました。会社が定めた『女性社員は結婚したら退職しなければいけない』という決まりに対して、女性が会社を訴えたものです。いま考えれば『結婚したら退職』という制度はあきらかに女性差別ですが、当時の週刊誌などを見ると、差別を訴えた女性の側を激しく攻撃しているものもあります。差別をなくそうという動きが高まるたびに、こうした意見は必ず出てくるものではないかと思われます。ただ今回のデータを見ると、『女性のほうが優遇されている』と感じている人は一部にとどまっていると言えると思います。」

    「女性より男性のほうが優遇されている」
    世論調査では、「社会では男女どちらが優遇されているか」という質問も行いました。「どちらかといえば」を含めた『男性のほうが優遇されている』と答えた男性は7割弱、女性は8割弱に上りました。



    さらに結果を男女の年層別に見ると『男性のほうが優遇されている(「どちらかといえば」を含む)』と答えた人は、男女ともにどの年層でも多数を占めています。一方『女性のほうが優遇されている(「どちらかといえば」を含む)』と答えた人が、男性では18~39歳の比較的若い世代で多い傾向がみられました。また「平等である」と思う人は、女性の40~59歳では5%と極端に少なくなっています。



    若い男女ほど「男女平等である」「女性のほうが優遇されている」と思う傾向があることについて、瀬地山さんは次のように指摘します。

    瀬地山教授
    若い世代に『男女は平等』だと感じる人が多いとすれば、1つには結婚や出産といったライフイベントをまだ経験していないから、といったことが考えられます。20代の初めまでは学生もいますから、学校にいるうちは男女の差を感じにくい。具体的な根拠はないのであまり断定的なことは言えませんが、もう1つ理由があるとすれば、世代によって考え方が変わってきている可能性も考えられます。

    女性活躍について現役世代の男性は
    世論調査では、国会議員や企業の役員などについて一定の割合を女性に割り当てる、いわゆる「クオータ制」導入への賛否についても聞きました。男女の年層別にみると、女性の全世代と男性の60歳以上では「導入するべきだと思う」は7割超でしたが、18歳から50代の現役世代の男性は6割弱にとどまりました。



    瀬地山教授
    「強烈なデータですね。特に男女の40代の意見の違いが、きれいに出ています。女性の40代は82%と圧倒的多数がクオータ制の導入に肯定的なのに対し、男性の40代は55%とより否定的です。

    40代は、組織のなかで昇進などの真っただ中にいる人たちなので、男性にとってはクオータ制が自分の昇進などに不利に働くと感じている。不平等と思っている人も少なくない。それが数字に表れているのでしょう。

    60代で『賛成』が一気に8割近くに増えるのは、自身が退職して、自分ごとというよりは一般論として考え始めるので『別にいいんじゃないか』と感じるのだと思います。

    ただ全体で見ると、クオータ制には肯定的な人が、出世レースの真っただ中にいる40代の男性でも過半数を超えている。すべての年代の男性がクオータ制を肯定しているということのほうが、私には驚きでした。」

    女性では、クオータ制に『賛成』している人は40代で8割を超えます。職場で自身も管理職や役員として力を発揮したいと考える現役世代の女性は多いのでしょうか。

    瀬地山教授
    「今の女性の40代では、正社員として働いている人の割合はそこまで高くないと思います。それでもこれだけ数字が高いのは、かつて正社員だったときの自分の経験や、現在非正規で働いている環境などを含め、多くの女性が不当な立場におかれていることを知っているから。8割というのは重く受け止めるべき数字だと思います。」

    男性の育児休業 男性の本音は
    最後に注目するのは、男性の育休取得への賛否のデータです。



    男性の育児休業について、どちらかといえば賛成の人を含めた『賛成』が8割強と大多数を占めています。しかし、国のデータ(令和元年度・厚生労働省『雇用均等基本調査』概要 全体版P.22)を見ると、実際に取得できた割合は、7.48%にとどまっています。このギャップをどうご覧になりますか。

    瀬地山教授
    「今回の調査で男性の育休取得に『賛成』と答えた人が、おそらく想定している育休期間は1~2週間程度だと推測します。実際に育児の戦力として役立つかと考えると、十分な期間とは思えません。育児休業で1か月以上あるいは1年休むことについて意見を聞いたらもっと『賛成』が少なくなると思います。」

    6月には、男性が育休を取りやすくするために法律が改正され、通常の育休とは別に、妻の産後8週間以内に男性が最大4週間取得できる新しい育休制度の新設や、企業が従業員に育休取得の意向を確認する義務がもうけられました。しかし三菱UFJリサーチ&コンサルティングが平成31年に実施した調査※では、男性が育休を取らなかった理由として、最も多かったのが「会社で育休制度が整備されていなかったから」(23.4%)、次いで「収入を減らしたくなかったから」(22.6%)、「職場が育児休業制度を取得しづらい雰囲気だったから」(21.8%)などの理由が挙げられています。
    (※平成31年2月『労働者調査 結果概要』 4.男性の育児のための休暇・休業の取得 P.21図表19)

    なぜこんなに男性が育児することが難しいのでしょうか。

    瀬地山教授
    「1つは、政策的な側面があると思います。配偶者控除や会社からの配偶者手当の制度などは、『男は仕事、女は家庭』という性役割分業を促進するものになっています。 “妻が専業主婦になったほうが得ですよ”という制度が2つも3つもある中で、男性の育休に多少のインセンティブを設けたところで、社会全体は動かないということだと思います。

    また日本の場合、一度正社員をやめたら簡単には戻れないという雇用慣行があります。そこで第一子を出産後に女性が退職してしまうと、再び働くにしても非正規雇用が多く、それが男女の収入の決定的な差につながってしまう。日本の雇用慣行が男性に育児をさせず、女性にとっては生涯賃金の大幅な低下という大きな不利益を生み出していると思います。」

    収入を担うこと、家事育児をすることの負担が男女どちらかだけに偏らないようにしていくには、まずは制度や仕組みを変えていくことが不可欠なのでしょうか。

    瀬地山教授
    「もちろん個々の人々、個別の家庭で相談して変えられることはあると思います。ただ男女の性別役割分業に誘導しないような制度をつくらないと、社会全体としては解決しないだろうと思います。女性の出産後の就労に中立的な制度ができて初めて、どちらがどれだけ働くか、どれだけ家事・育児をするかという話を始められるのではないでしょうか。配偶者控除が問題の大きな要因のひとつであることは何十年も前から指摘されています。」

    世論調査を行って
    女性は過去に、参政権が認められない、結婚・出産したら退職する、などのあからさまな不利益がありました。一方、男性が「稼がないといけない」「おごらなければいけない」などの固定観念を押しつけられることは、“見えにくい不利益”だと思います。また、男性は社会的には「優遇されている」と自身が感じ、周りにもそう見られているために、「なんで自分が稼がないといけない?」「なんで自分がおごらないといけないのだろう」などの疑問や違和感を口にしにくい面もあるように思います。

    調査結果を見ると、社会の状況やライフスタイルが大きく変化する一方で、性別によって「こうあるべき」という意識は根深く残っています。男女ともに、押しつけられた価値観と現実とのギャップに違和感を抱いたり、苦しんでいたりする人は少なくないと感じました。

    遠くない未来に「男だから」「女だから」といった理由で、個人が抑圧されない社会を実現することができるのか。これからも注視したいと思います。

    あなたは、「性別による不利益」をなくしていくには、何が変わることが必要だと思いますか? 記事への感想やご意見などを、下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。


    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2021年7月1日

    Vol.23 ジェンダー “社会の本音”は? NHK世論調査より①

    社会や家庭における男女の役割、夫婦別姓、同性婚…
    「ジェンダー」をめぐるさまざまな問題ついて、人々はどのような価値観や考えを持っているのでしょうか。NHKは3月末に電話による「ジェンダーに関する世論調査」を行いました。その結果をテーマ別に紹介します。

    (テーマ)
    ・家庭における男女の役割・育て方
    ・夫婦別姓
    ・同性婚
    ・女性リーダー
    ・性別による差別

    調査は2021年3月26日から28日までの3日間、全国の18歳以上を対象にコンピューターで無作為に発生させた固定電話と携帯電話の番号に電話をかけるRDDという方法で行いました。調査の対象となったのは2,890人で、このうち52.2%にあたる1,508人から回答を得ました。

    (NHK放送文化研究所 世論調査部 研究員 岡田真理紗)



    家庭における男女の役割について
    現在「共働き世帯」(雇用者の共働き世帯)は1245万世帯、「専業主婦世帯」(男性雇用者と無業の妻からなる世帯)は582万世帯。「共働き世帯」は「専業主婦世帯」の2倍以上です。(『男女共同参画白書 令和2年版』 ※NHKサイトを離れます。)

    家庭における男女の役割や、男女の子どもの育て方について、人々はどのように考えているのでしょうか。


    Q1.「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」に、賛成?反対?



    「反対」「どちらかといえば反対」を合わせた『反対』は49%と約5割を占めていますが、「賛成」「どちらかといえば賛成」を合わせた『賛成』も41%で約4割に上っています。


    Q2.男性の育休に、賛成?反対?



    国は男性が育児のために仕事を休む「育児休業」を増やそうとしています。これに関連して、男性が妻の出産後、一定期間、仕事を休んで育児や家事をすることについて、賛否を尋ねました。「どちらかといえば反対」を合わせた『反対』は全体の2割弱。「どちらかといえば賛成」を合わせた『賛成』は8割を超えました。

    子どもの育て方
    Q3.子どもに家事を手伝わせるなら、男の子と女の子どちらかにさせる?どちらにもさせる?



    9割以上は「家事は、女の子にも、男の子にも、同じくらいさせたほうがよい」でした。「家事は、主に、女の子にさせたほうがよい」は4%、「家事は、主に、男の子にさせたほうがよい」は0%(1,508人中2人)「その他」も0%(1,508人中3人)でした。


    Q4.「男は男らしく、女は女らしく育てる」という考えには賛成?反対?



    「どちらかといえば」を合わせた『賛成』は6割近くで、「どちらかといえば反対」を合わせた『反対』は3割強にとどまりました。

    夫婦別姓について
    今の法律では結婚した夫婦は、同じ名字を名乗らなければなりませんが、同じ名字にするか、別々の名字にするか、選べるようにするべきだという意見もあります。これに関連して、選択的夫婦別姓への賛否と、その理由を尋ねました。

    Q5.夫婦は同じ名字を名乗るべき?それとも、選べるようにすべき?



    「夫婦は、同じ名字を名乗るべきだ」が4割に対し、「同じ名字か、別の名字か、選べるようにすべきだ」が6割近くにのぼりました。


    Q6.「別の名字にしないほうがよい」と思う理由は?



    第5問で「夫婦は、同じ名字を名乗るべきだ」と答えた人に、別の名字にしないほうがよいと思う理由を選択肢の中から1つ選んでもらいました。最も多かったのは「夫婦は同じ名字を使うことが当然だから」4割近く。次いで「子どもに好ましくない影響を与えるから」、「家族の絆や一体感が弱まるから」「周囲の人が混乱するから」がそれぞれ2割前後でした。


    Q7.「同じ名字か別の名字か、選べるようにするべきだ」と思う理由は?



    第5問で「同じ名字か別の名字か、選べるようにするべきだ」と答えた人に、そう思う理由を選択肢の中から1つ選んでもらいました。最も多かったのは「個人の意思を尊重するべきだから」が約6割。次いで「女性が名字を変えるケースが多く、不平等だから」が約2割でした。

    同性婚ついて
    日本の婚姻制度では、結婚は男女の間に限られていますが、同性婚を認めることへの賛否と、その理由を尋ねました。

    Q8.男性どうし、女性どうしの結婚も認めるべきだと思うか



    同性婚を認めることに「どちらかといえば賛成」を合わせた『賛成』は全体の約6割。「どちらかといえば反対」を合わせた『反対』は約4割。『賛成』が『反対』を上回りました。


    Q9.同性婚に賛成の理由は?



    男性どうし、女性どうしの結婚も認めるべきだという意見について「賛成」「どちらかといえば賛成」と回答した人(856人)に、その理由を選択肢の中から1つ選んでもらいました。同性婚に『賛成』の理由で最も多かったのは「誰にでも平等に結婚する権利があるから」が8割近く。次いで「愛しあっていればよいと思うから」、そして「海外でも認められているから」でした。


    Q10.同性婚に反対の理由は?



    男性どうし、女性どうしの結婚も認めるべきだという意見について、「反対」「どちらかといえば反対」と回答した人(552人)に、その理由を選択肢の中から1つ選んでもらいました。「子どもが生まれず少子化が進むから」と「結婚は男女ですべきものだから」が、いずれも36%。次いで「伝統的な家族のあり方が崩れるから」24%でした。


    Q11.自分の家族が同性と結婚したいと言ったら、受け入れられますか?



    「どちらかといえば受け入れられる」を合わせた『受け入れられる』は45%。「どちらかといえば受け入れられない」を合わせた『受け入れられない』は49%でした。

    同性婚については『賛成』という人が57%と多くても(Q8)、自分の家族の同性婚について『受け入れられる』という人は45%にとどまっています。

    女性リーダーについて
    Q12.「女性のリーダー」の割合をどう思うか

    日本の国会議員や企業の役員などに占める女性の割合について、どう考えるか、「今よりも、女性が多いほうがよい」「今のままでよい」「今よりも、女性が少ない方がよい」の3つの選択肢の中から1つ選んでもらいました。



    「今よりも、女性が多いほうがよい」が全体の約6割で最も多く、次いで「今のままでよい」が3割で、「今よりも、女性が少ないほうがよい」はわずかでした。


    Q13.女性リーダーが増えたほうがよい理由は?



    第12問で「今よりも、女性が多いほうがよい」を選んだ人(855人)に、その理由を選択肢の中から1つ答えてもらいました。最も多かったのは、「物事を決めるときに女性の考えが反映されるから」で全体の5割弱。次いで、「男女が平等な社会になってほしいから」が約3割。「女性が社会で活躍するための目標になるから」が2割。「日本のイメージアップをはかれるから」はわずかでした。


    Q14.日本でも「クオータ制」を導入すべき?

    女性のリーダーを増やすために、国会議員や企業の役員などについて、一定の割合を女性にする制度を、日本でも導入するべきだと思うかどうかを尋ねました。



    最も多いのは「どちらかといえば導入するべきだと思う」の44%で、次いで多い「導入するべきだと思う」の24%と合わせると、『導入するべきだと思う』が約7割にのぼりました。「どちらかといえば」を合わせた『導入するべきだとは思わない』は約2割。「わからない、無回答」が1割でした。

    性別による差別
    男女格差を測る「ジェンダーギャップ指数」(世界経済フォーラム2021年3月)で、日本は156か国中120位。依然として政治や経済の分野で大きな格差があると指摘されています。

    実際、日本の社会では、男女の地位は平等と思うか、性別によって差別を受けたことがあるか、尋ねました。


    Q15.男女の地位は平等?どちらかが優遇されている?



    最も多いのは「どちらかといえば男性のほうが優遇されている」の49%で、「男性のほうが優遇されている」の22%と合わせて約7割でした。「平等である」は15%、「どちらかといえば」を合わせて『女性のほうが優遇されている』は7%にとどまりました。


    Q16.男性、女性といった性別によって、不利益を受けたと感じたことがありますか?



    「大いにある」「ある程度ある」「あまりない」「まったくない」の4つから選んでもらいました。最も多かったのは「あまりない」の40%で、「まったくない」の20%と合わせると、不利益を受けたと感じたことが『ない』は6割。一方「大いにある」は8%、「ある程度ある」は26%で、合わせて3割あまりが不利益を受けたと感じたことが『ある』と答えています。

    <調査の概要>
    期 間 : 2021年3月26日(金)~ 28日(日)
    方 法 : 電話法(固定・携帯RDD)
    対 象 : 全国の18歳以上2,890人
    回答数(率) : 1,508人(52.2%)


    ・ 調査結果の%は小数点以下を四捨五入し「整数」で表示しているため、%の合計が100にならないことがあります。
    ・ 複数の選択肢を合計する場合、実数を足し上げて%を再計算しているため、%を合計した値とは一致しないことがあります。
    ・本文やグラフで使っている『』(二重かぎかっこ)は、複数の選択肢を合わせたものを示しています。


    あなたは、世論調査の結果についてどう思いますか? 気になるデータはありますか? 記事への感想やご意見などを、下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。


    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2021年6月29日

    Vol.22 夫婦別姓 子どもはどうなる?家族は変わる?

    夫婦が希望すれば、結婚前の姓を名乗ることができる選択的夫婦別姓。今、この制度の賛否をめぐって大きな議論になっています。もし夫婦ともに結婚前の名字を選べるようになったら・・・子どもはどうなるのか? 家族のあり方は変わるのか?

    6月26日にEテレで放送された「ウワサの保護者会」では選択的夫婦別姓制度について、“ホゴシャーズ”(小中学生の保護者のみなさん)や親子同士、そして“尾木ママ”こと教育評論家の尾木直樹さんや専門家とともに考えました。

    (「ウワサの保護者会」ディレクター川崎彰子)


    結婚と名字にまつわる歴史
    1876年、当時の明治政府は、妻に実家の名字を名乗るよう「夫婦別姓」という指令を出しました。それにもかかわらず、庶民の間では妻が夫の家の名字を名乗ることが多くなってきたと言われます。そして1898年、いわゆる明治民法で「家制度」が規定され、妻は夫の家の名字を名乗ることが決められました。


    (『明治民法』で妻は結婚によって夫の家に入り、夫の名字を名乗ることが決められた)

    1947年に改正された民法では、家制度は廃止され、夫か妻のどちらかの名字を名乗る夫婦同姓が定められました。

    女性の社会進出などを理由に夫婦別姓の機運が高まり、2017年の政府の調査では、選択的夫婦別姓制度に賛成する意見が42.5%と過去最高となりました。


    (2017年に政府が行った調査で選択的夫婦別姓制度への「賛成」が過去最高となった)

    なぜ「選択的夫婦別姓制度」が求められる?
    家族法が専門の早稲田大学法学学術院教授・棚村政行さんは、選択的夫婦別姓制度は、さまざまな理由から名字を変えたくない人たちのアイデンティティや自由を守るために不可欠なものと話します。

    棚村政行さん(早稲田大学法学学術院教授・弁護士 家族法が専門)
    「別姓を希望する人は、生まれたときから使ってきた名字も自分のアイデンティティとして捉えていたり、結婚前から続けてきた資格や仕事のキャリアが断絶してしまったりするため、困っています。この制度では、名字を同じにしたい人は一緒にすればいいし、名字を変えたくない人は別姓を選べる。変えたくない人の自由を認めようというものです



    (早稲田大学法学学術院教授 棚村政行さん)

    1996年には選択的夫婦別姓制度の法案が準備されましたが、伝統的な家族のあり方を壊すのではないかという意見もあり、国会への法案の提出が見送られたまま、現在も議論が続いています。

    世界を見渡すと、1970年代以降多くの国で選択制を導入しています。現在、法務省が把握している限りでは、法律で夫婦同姓を義務づけている国は日本しかないとされています。

    旧姓に戻したい母 子どもはどう思う?
    「ウワサの保護者会」のホゴシャーズの一人、ユーカリさんは、夫婦別姓を選択できるようになったら、名字を元に戻したいと思っています。現在、結婚前から続けてきた仕事に支障が出ないよう旧姓を使っていますが、2つの名字を使い分けることに違和感を抱いてきました。

    その思いを長男に伝えてみたところ・・・


    (ユーカリさん(右)と長男)

    ユーカリさん
    「ママは自分の名字を選びたいんだよ。生まれた時の自分のままでいたいしさ。ママが元の名字に戻すの、どう思う?」

    長男
    別にいいんじゃない。もし変えるのが自分の立場になったら絶対嫌だと思うし。もし戻してもいいよってなったら、自分なら多分戻すと思うから」


    (ヒトミさん(右)と子どもたち)

    もう一人のホゴシャーズ、ヒトミさんは、結婚した当時、夫の名字を名乗ることに違和感を抱いたといいます。もし、今から名字を戻したら子どもたちはどう思うのでしょうか。

    長男
    「僕たちに関係ないし…」

    長女
    できれば戻さないでほしい。名字が違うと家族がまとまってないって感じがする。お母さん、私が生まれてからずっとこの名字だったから、それが変わっちゃうとなんかさみしい」

    母親
    「名前が変わっちゃったら、ちょっとさみしい気がするんやな。自分が結婚する時、もし選べたらどうする?」

    長女
    「うーん、選べるんだったら…私は名字を変えたくない・・・やっぱり今の名字にすごい親しみがあるというか…他の名字にするのは、なんか気持ち的に変えられる気がしない」

    長男
    「僕はどっちだっていいよ」

    母親
    「“俺の名前にしろよ”とか思わないの?」

    長男
    「思わない」

    長女
    「えー!なんで?こだわりはないの?名字変えちゃったら、うちの家が終わっちゃうじゃん」

    長男
    「いいよ、別に。」

    長女
    「えーっ?!」

    母親
    「うん、終わっちゃう。それで日本はずっときたんだよね、長男が継ぐってことで。難しいよね。どうしたもんかねぇ」

    親子によって考え方はさまざま
    2つの親子の話し合いを受けて、スタジオで4人のホゴシャーズ、“尾木ママ”、早稲田大学教授の棚村政行さんが話し合いました。


    (スタジオでも意見が交わされた)

    チャボさん(父親)
    「母親の名字は元に戻しちゃだめって言いつつ、自分は変わりたくないって。兄弟でも違うし」

    ヒトミさん(母親)
    「こういう話題、みなさんもそうだと思うんですけど、真面目に話したことがなかったので面白かったです。自分の子どもの意見なんですけど、あ、なんか意外に考えてるんだなとか」

    ミーアキャットさん(母親)
    「夫の名字に変わることを私はネガティブに捉えたことがない。私の娘も家族がバラバラになった感じがするから嫌だって」

    ヒグマさん(父親)
    家族の中だと名字で呼ぶことはないので、家庭内ではあまり違和感ないのかな」

    棚村さん
    「今、結婚は年間およそ60万件で、離婚がおよそ21万件。この数字を見ると、家族は名前を1つにすれば必ずしも強くなるわけではない。シングルで育てるなど、いろいろな家族の形があるので、家族の形に合わせてサポートできる法律の整備が求められていると思う。その1つとして、選択的夫婦別姓の提案があると思うんです」

    さらに、家族で名字がバラバラだと子どもがいじめられないか、と心配する意見も出ました。

    ヒトミさん(母親)
    「親が離婚して名字が変わったお友だちがいると気をつかうという話を子どもから聞いたことがあるので、子どもは子どもで親には言わなくても気にしているのかな」

    チャボさん(父親)
    「娘のクラスに外国籍の方がいて(親と子の)名字が違うけど、仲間はずれになっていない。親よりもむしろ子どもたちの方がこだわりはないのでは

    尾木ママ
    「夫婦別姓が当たり前になったら、逆にイジメは起きないと思う」

    棚村さん
    「1996年に準備された法案でも、子どもの名字については混乱が起きないように結婚時にどちらにするかあらかじめ決めておいて、兄弟はみな同じ名字を名乗るという配慮がされています。

    現在、再婚も増えており、親が名字を変え、子どもたちもそれにあわせて名字を変えなければならないのは非常に不便。結婚時に別姓も選べるようになれば、子どもたちへの負担も減ると思います」

    現在の制度のもとで夫婦別姓を選んだ家族
    長野県に暮らす内山由香里さんと小池幸夫さんのご夫婦は、それぞれが結婚前の姓を名乗るために、婚姻届を出さない「事実婚」を選択しました。

    内山さんが夫婦別姓を望んだきっかけは、女性が夫の名字に変えるのが当たり前にされてきたことに違和感を感じたことでした。夫の小池さんは最初のうちは戸惑いを見せましたが、2人で話し合いを重ね、理解したといいます。

    小池幸夫さん
    「姓を変えることによって自分自身じゃない存在になっていくのは大変なことだなと」

    内山さんは別姓を選びましたが、子どもたちは小池の名字にするため、結婚と事実婚を繰り返してきました。


    (小池幸夫さん内山由香里さんご夫婦と次女の真実さん)

    夫婦別姓を選んだ家族の子どもは…
    両親の別姓が当たり前で何不自由なく育った次女の真実さん(大学2年生)は、両親の選択をどう思っていたのでしょうか。

    真美さん
    「家にハンコが2つあったぐらいで、同姓の家族となにも変わらないと思う。親が夫婦別姓だと、なんで子どもがかわいそうって思われるのかな」

    真実さんは、高校生のときに「夫婦別姓」について調べ、映像作品を作りました。制作のきっかけについて聞くと・・・

    真美さん
    「結婚したら96%(の夫婦)が夫の名字になることを知って、男女平等じゃないんだってショックを受けたんです。(今の法律では結婚したらどちらかの名字にすることが定められていて)『男性の名字にするとは決まってないのに、なんでだろう』って。私と同じように、同世代の子たちも夫婦別姓のことを全然知らないと思うんですよね。この映像をきっかけに考えてもらえたらいいなって」

    真美さんは、両親が夫婦別姓を選択するまでの過程や思いについて初めて知ったといいます。

    真美さん
    「お互いの名字のまま2人とも対等な関係で、お互いの当たり前を大事にしながら、ちゃんと話し合っていろいろ決めてきたのが、いいなぁと思いました。

    性別とか国籍とか年齢とか障碍とか関係なく、みんなが困ることなく自分の普通や当たり前を持って暮らせるようになったらいいな。いろんな考え方を認め合える世の中になってほしいと思います。」

    “自分らしく生きる” “夫婦が理解し合っている姿”が大切
    専門家のお二人に、選択的夫婦別姓制度をめぐって、大切なポイントをまとめてもらいました。


    早稲田大学法学学術院教授 棚村政行さん・教育評論家 尾木直樹さん)

    棚村政行さん(早稲田大学法学学術院教授)
    ・自分らしく生きられることが大事。
    ・家族のあり方が変わる中、実態に合わせた法律にすることが大切。

    尾木直樹さん(教育評論家)
    ・多様な考えがある中で、夫婦が話し合い理解し合っている姿が 子どもに与える影響は非常に大きい。
    ・次世代の子どもたちのために、どういう社会を展望しつくっていくのか、  話し合うことが大切。


    取材後記
    今回の番組を制作する過程で、夫婦別姓を選んだ内山由香里さんが、取材を受けてくれた理由を語ってくれました。

    実は最近、内山さんの長女が結婚。長女は婚姻届を出して夫の名字を名乗ることになり、一日かけて銀行やクレジットカードなどの名前変更手続きをしました。その最中に、長女から電話があり、泣きながらこう話したそうです。「名前変更手続きが、まるで自分を葬っているようだ」と。

    そのとき内山さんは、自分が結婚時に名字を変えることに違和感を覚えた経験を思い出し、それから30年たった今も、娘に同じような目に遭わせてしまっていることを悔やんだと言います。「何も変えられなかった、今からでも次世代の娘たちにとって生きやすい社会を作れたらと願っています」と、内山さんは話してくれました。

    私自身、「嫁に行く」という言葉にずっとモヤモヤを感じていました。今回、夫婦の名字の歴史背景を知り、たくさんの方々を取材する中で、自分の価値観を大切に生きている人は、周りの人の思いも大切にしていたのがとても印象的でした。息苦しい思いをしないで、自分が納得して選んで生きられる社会に少しでもなればいいなと思います。

    もし選択的夫婦別姓制度が導入されたら、あなたはどう思いますか?こどもへの影響など心配なことがありますか?みなさんのご意見や記事への感想などを下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。


    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2021年6月28日

    Vol.21 地方で暮らすLGBTQの“私たち”

    好きになる相手の性、自分の認識する性は、ひとりひとり違います。でも、同性の人を好きになる、恋愛感情をもたない、自分の性に違和感があるなどのLGBTQ※当事者の人たち、とりわけ地方に住むLGBTQの人たちにはなかなか焦点があてられてきませんでした。(※LGBTQ…L(レズビアン)、G(ゲイ)、 B(バイセクシャル)、T(トランスジェンダー)、Q(これらの定義でくくれない性)

    NHK松江放送局では、そうした皆さんのことを、広く知ってもらうために、「私たちはここにいる」キャンペーンを行っています。島根県の出身者や島根県に住んだことがあるLGBTQ当事者の方々の声を取材して集め、松江放送局のホームページやツイッターに掲載しています。

    当事者の皆さんの声から見えてきたのは、あからさまな差別ではないものの、固定観念や偏見によって相手を傷つけてしまう行為、“マイクロアグレッション(小さな攻撃)”の実態でした。

    (松江放送局ディレクター 岩永奈々恵)


    「LGBTQがいないことになっている」当事者のつぶやき
    キャンペーンを立ち上げたきっかけは、私がLGBTQの当事者の方々に取材でお話を聞く中で、出雲市に住むシロクマさん(30代)がポツリとつぶやいた一言でした。「島根県では、LGBTQが“いないこと”になっているんです」

    “いないことになっている”…。その意味がすぐには理解できませんでしたが、話を聞いていくうちに、シロクマさんのように同性のことが好きになる人や、男性も女性も好きにならない人、自分の体と自認する性が一致しない人など、多様な性をもつ人たちがいる実態が日常生活の中で“無視されている”場面がたくさんあるということが分かりました。

    シロクマさんが特に違和感を覚えたのは、中学生の保健の授業だったそうです。「人は、思春期になると、異性への関心が高まってきます」。そのように習い、“異性”という文言にシロクマさんは動揺し、「自分はおかしいんじゃないか」「ばれたらどうしよう」と不安になったといいます。

    友達との会話でも、「好きな異性のタイプは?」「彼氏はいるの?」と“異性愛が前提”の話が出る度に、本当の感情は押し殺してウソをつき、そのことに傷ついていたそうです。「男性と女性の2つしかいない世界」「人は異性を好きになるものだという前提で成り立っている世界」では本当の自分のままでは生きていけないのだと、当時は将来への希望も持てず、絶望的な気持ちで過ごしていました。

    シロクマさん
    「もしも、保健の授業の時に、先生が『異性を好きになる人ばかりじゃないんだよ』『同性を好きになる人もいるし、恋愛感情を持たない人もいるよ』と補足してくれてさえいればどんなに救われたか…。」

    このように、悪意がなくとも、何気ない日常の中で、自分にとっては“普通”でないことを“普通”として認識させられるような状況も、マイクロアグレッションの1つです。

    同じ悩みを抱えるLGBTQ当事者が見えづらい…
    松江市出身で広島県在住の松島彩さん(30歳)。LGBTQについての情報がネットや書籍などで出ている今は自分の性別について「男でも女でもない」、好きになる対象も「性別問わず」と感じているそうですが、テレビなどで「オカマ」と揶揄(やゆ)される人たちを見て、“自分のことは絶対に周囲には言ってはいけない”と ひた隠しにしてきたといいます。また、自分と同じような悩みをもつ人たちが周りにいることにも、日々の暮らしの中では気づくことはなかったそうです。

    高校生の頃、自分の性別や恋愛対象のモヤモヤを母親に話したことがありました。しかし、返された言葉は意外なものでした。

    「小さい頃は、性同一性障害を疑って、病院に連れて行こうと悩んだこともあったんだけど。最近は女の子らしくなって安心していたのよ。」

    女性らしい振る舞いをしたがらない娘を心配して、母親なりに調べ、身体の性と自分自身が認識している性が一致しない「性同一性障害」かもしれないと考えたようでした。しかし、その説明は自分にとってはしっくりくるものではありませんでした。

    「“性別がない”と思っているのは、世界で私ひとりなんだろうな」。学校の先生や、友人に相談することもなく、孤独に悩み続けていたといいます。

    2年前、大阪でLGBTQの集まりに参加した際に、初めて「Xジェンダー(性自認が男性にも女性にもあてはまらない)」という言葉を知り、自分は性同一性障害ではなく、男らしさ・女らしさなど社会がつくり出した性(ジェンダー)と自分自身が認識している性の違いを非常に敏感に感じていることが分かったそうです。

    松島彩さん
    「あの頃、もし自分の周りにも、自身の性について悩みを抱えているLGBTQの当事者の存在が見えていて、お互いの思いや心の声を語り合える仲間がいたら、どれだけ心強かったか…と思います。」

    「気にしすぎだよ」善意のつもりでも…
    当事者が抱えている悩みを、周りが軽く受け流したり、善意のつもりでかけたりする言葉も、当事者のアイデンティティや気持ちを傷つけてしまうことにつながる場合もあります。

    5年前、東京から島根県の中部の山あいの邑南町(おおなんちょう)に移住した藤彌葵実(ふじや あみ)さんは恋愛感情をもっていません。また、松島さんと同じように、女性・男性という性別で区別されることに違和感を覚えています。ことし4月に放送したNHKの番組でそのことを話してくれました。すると、放送後に周りの人から「気にしすぎじゃない?」「藤彌さんは、カミングアウトしなければ、普通の人と変わらないから大丈夫だよ」という言葉をかけられたといいます。


    藤彌葵実さん
    「自分が日常生活で傷ついたり、悩んだりしているのは、私が『気にしすぎ』だからなのかな?カミングアウトせずに、周囲に合わせていたらいいってこと?それとも、私を励まそうと善意で言ってくれているのかな…。それぞれの言葉を聞いて、モヤモヤしました。

    (自分の存在が)ないものにされてしまっているという感覚が強いです。女性は女性らしく振る舞うことや、異性と恋愛をすることなど、「○○が普通です」と、“普通です”の顔をした差別がすごくあると思っています。」

    “自己肯定感を下げてしまう” マイクロアグレッション
    4人目は、日本海に面した島根県浜田市出身で、東京在住の大賀一樹さん(32歳)。臨床心理士としてLGBTQの人たちの支援も行っています。大賀さんは、明らかな差別ではないものの、誤った先入観や偏見によってLGBTQの人たちを傷つけてしまう「マイクロアグレッション」は、あからさまな暴言や暴力を受けるのと同程度の、心理的な負荷がかかると指摘します。


    大賀一樹さん
    「そういう言葉をかけられた本人は、私が悪いのかなとか、私はいちゃいけないのかなと思わされてしまうんです。自己肯定感などが低下したり、”死にたい“とか”消えてしまいたい“という気持ちを増幅させてしまう一つの要因となるといわれます。私自身も、島根にいたときにそれを経験して、”もうここではやっていけない、死んでしまうかも“という思いに襲われ、”強くならなきゃ“という危機感があって、東京に出ました。」

    大賀さん自身も小さい頃から、自分の性について悩みを抱えてきました。保育園の時から話し方やしぐさが「女っぽい」というだけで「オカマ」と呼ばれ、小中高校時代も、先生、友達、親の理解をなかなか得ることはできず、18歳で逃げるように東京の大学に進学。学生時代に性的マイノリティーのサークルで初めて同じ悩みをもつ仲間と出会って救われたそうです。

    大賀さんによると、マイクロアグレッションは、そうした言葉をかける側も、かけられる側も、“差別”として認識していないことがほとんどだといいます。

    大賀一樹さん
    「マイクロアグレッションは、周りが“相手を傷つけるためにて言っているわけではない”ということ、また言われた側も “私が弱いからダメなんだ”とか、“私がもっと強くないと”と思わされてしまう。どちらの側も、“差別している”、“差別されている”とはっきり認識できないからこそ、複雑で難しいものと思います。

    どうすればマイクロアグレッションをなくせるか
    LGBTQの人たちに対する社会の理解を深め、マイクロアグレッションをなくすためにはどうすればいいか。当事者それぞれに話を聞きました。


    シロクマさん(男性と女性の間の中性だと感じている、女性を好きになる)
    「自分だけの考えが全てじゃなくて、色々な人がいるというのを、本当にみんなが思っていれば、声かけひとつ変わってくると思います。自分の考えが正しいとか普通だと思って発言するよりも、自分はこう思っているけど、そうじゃない人たちもいるよねと思って発言した方が、傷つく人が減ると思います。」


    松島さん(女性でも男性でもないと感じている、性別を問わず好きになる)
    「“ふつう”を持ち出して話をするのではなく、“自分はこう思う”で話をすることだと思います。“ふつう”を持ち出す人は、説明を怠けているんです。そして、言われた側も、「あなたにとっての“ふつう”って何ですか?」と恐れず聞くことが大事だと思います。目の前の人に向き合って、話をすることだと思います。」


    藤彌さん(性別で区別されることに違和感がある、恋愛感情をもたない)
    「周りにLGBTQであることをカミングアウトしても、やっぱり変わらない部分もありました。地域や文化に強く根ざした価値観や意識を変えるのは非常に難しいと思います。当事者ばかりが頑張るんじゃなくて、行政側も、社会としてLGBTQへの理解を深めたり、差別をなくすような制度や体制を早く整えて、“普通”をアップデートすることも大事だと思います。」


    大賀さん(男性でも女性でもない、他者に恋愛的にひかれることはほとんどない)
    「自分は“恵まれている”と思う部分と、“人と違うなあ”って思う部分って、自身がマジョリティー、マイノリティーのどちらに属していようが関係なくあると思うんです。“恵まれている” と “人と違う” 部分の両方を自覚することが必要と思います。

    また、もし性をめぐることで何か間違った発言や行動をしてしまったとしても、自分や相手を責めるのではなく、言葉を訂正したり素直に謝罪したりして、未来を変えていくのは自分なんだと “主体性”を持つことが大事だと思います。 」


    島根でLGBTQの方々を取材して…
    普段から地域で、自分の親世代以上の方々を取材する中で、「彼氏はいるの?」「結婚しているの?」「うちの息子の嫁にどう?」と言われることがあります。笑って受け流していますが、こうした質問が重なると つらくなることがあります。でも私自身、同世代の人たちとの会話で「彼氏いないの?」「結婚しないの?」「子ども(をつくること)は考えているの?」、こういった言葉を何気なく使っていたことが、これまであったと思います。しかし、LGBTQの方々から「それは“ふつう”の側に立って話しているから出る言葉ですよ」と教えていただくことで、こうした発言には自分の必ずしも正しくない“思い込み”や“常識”が混ざってしまっているということを思い知りました。

    相手は何かしら自分の“常識”とは違う部分を持っているかもしれません。それを私が知らないだけかもしれません。それを思うと、言葉選びも変わってきます。「彼氏いないの?」ではなく「パートナーはいるの?」。「結婚しないの?」ではなく、「結婚とか考えたりするの?」。「子どもいないの?」は聞かない、などです。

    いろんな人がいることを知り、それをわざわざ評価せずに、「そうなんだ」とただ思うだけでいいと思っています。

    相手の何気ない言動で、“常識”を押しつけられていると感じたり、傷ついたりした経験はありませんか。どんな発言に傷ついたか、どんな声かけだったらうれしいか、みなさんのご意見や記事への感想などを下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。


    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2021年6月18日

    ジェンダーVol.20 LGBTsの私が地方で暮らして 見つけた“希望”

    女性、男性という性別で区別されることに違和感があり、恋愛感情もない。私が出会った藤彌葵実(ふじや あみ)さんは、性的マイノリティー・LGBTsの中でも、L(レズビアン)、G(ゲイ)、 B(バイセクシャル)、T(トランスジェンダー)の定義ではくくれない性「s」の一人です。

    藤彌さんが暮らすのは島根県の山間にある小さな集落。「女は結婚して家庭に入り、子を産み、育てる」。そんな考えが根強く残る地方で、藤彌さんが何を感じ、周囲とどんな関係を築きながら暮らしているのか?そんな関心から取材を始めました。

    (松江放送局ディレクター 岩永奈々恵)


    どこにも居場所がない…東京から逃げるように地方へ

    (初めて会った頃の藤彌さん(中央)と筆者(左))

    「私たちだって、 恋愛してなくても十分“リア充”しているのにね!」

    初めて藤彌さんと会ったのは4年前。NHK松江放送局に赴任したばかりの頃、プライベートで参加した地域イベントでした。お互いの年齢が近く、一緒にランチを食べながら恋愛トークになったのですが、それまで同世代と交わしてきた恋愛トークとはちょっと違いました。

    いきなり藤彌さんが「わたし恋愛とかってちょっと分からなくって…」と言いました。恋愛に疎い私は即座に「わたしもです」と返しました。そこから話は、「なぜ世の中は恋愛をしないと“非リア充 認定”されるのか。私たちは恋愛してなくても、十分リア充してるのに」「この世の中は、異性恋愛至上主義だ!」と、社会に対する憤りの方向へ…。とても印象的な出会いでした。

    意気投合して以来、何度か会って話をするうちに、ご自身がLGBTsであり、それを家族に伝えることなく、身寄りのないこの地に移住したことなどを語ってくれるようになりました。

    藤彌さんは29歳。5人家族の長女として広島県で生まれ、中国地方で育ちました。父親の転勤で転校も多かったといいます。子どもの頃、好きだったのは恐竜のフィギュアで遊んだり、少年マンガを読むこと。

    しかし、周囲からは「女の子らしい遊びをしなさい」と言われました。遊びから服装まで、いろんなことが「男の子」「女の子」に分けられていると感じ、ストレスのためか、小学生ながら円形脱毛症や胃潰瘍になったといいます。

    中学や高校で、同級生が恋愛トークをするようになっても、自身は部活や趣味に忙しかったという藤彌さん。「恋愛感情がない」と気づいたのは大学生のときでした。

    ずっと感じてきた“周囲に馴染めない感覚”。

    その正体について調べるうち、自分が「Aジェンダー」(女性/男性という性別で区別されることに違和感を持つ)、「アロマンティック」(恋愛感情をもたない)、「アセクシャル」(性的感情を持たない)だと分かったのです。自分と同じような人が他にもいることも知りました。しかし、友人に打ち明けても理解されず、孤立感を深めていきました。


    (東京で働いていた頃の藤彌さん)

    大学3年で就職活動を始める頃から、「社会になじまないといけない」と、自分を押し殺すようになっていったといいます。ネットなどで学んだ就活生の“正しい服装”にあわせ、メークをしてスカートを履くようになったのもこの頃からです。

    東京の大手企業に就職すると、同僚や上司とのつきあいの中で、自分の思いとは裏腹に、男性より一歩下がるなど、“望まれる女性像”に近づいていきました。

    ある日、つらい出来事が起きます。同僚から恋心を抱かれ、拒否すると嫌がらせを受けるようになったといいます。

    周囲に相談しても「気を持たせたあなたが悪い」と理解されませんでした。自分の思いのとおりに生きることを許されず、自分の思いを押し殺して生きても理解されない。家族にも話しづらい。「どこにも居場所がない・・・」。一時は「死ぬ」ことさえ考えました。

    すべてをリセットしたいと、5年前、偶然ネットで求人募集を見つけた島根県邑南町への移住を決めたのです。

    藤彌さん
    「砂漠に生きてる魚みたいな。この社会で生きるのに、わたしは向いていません、死ぬしかないって思ったんです。ただ、死ぬのって案外難しくて…。だから、死んだつもりになって、田舎に移住しようって思いました。」
    過疎の集落で初めて感じた “生きていてもいいかも”

    (島根県 邑南町 日和地区)

    藤彌さんが移り住んだ島根県邑南町日和地区は、高齢化と過疎化が進む山間の集落です。人口はここ10年あまりで2割以上減り、およそ400人が暮らしています。

    自分のことを誰一人知らない土地で暮らし始めて半年、自然豊かでのんびりとした環境に身も心も癒やされる中で、少しずつ自分らしく振る舞えるようになっていきました。肩よりも長かった髪の毛は、徐々に短く。「これでも大丈夫かな?」と周囲の目線を気にしながらも、服装は動きやすいトレーナーやズボンへと変えていきました。


    (町役場で働く藤彌さん)

    藤彌さんは町役場の職員として働きながら、地域の活動にも積極的に参加するようになっていきました。集落の青年部では祭りを企画。人手不足で途絶えていた集落の花火を30年ぶりに復活させました。また、後継者がいなくて衰退しかけていた、集落に古くから伝わる神楽団では笛を担当し、今では中心的な存在になっています。

    一人都会からやってきた藤彌さんに、集落の人たちは優しく接してくれました。神楽団の師匠たちは、藤彌さんのことをわが子のようにかわいがってくれ、夕食を自宅でごちそうになることも少なくありません。温かく見守り、助けてくれる集落の人たち。地域の活動では、頑張れば頑張るだけ感謝され、喜んでもらえる。自分の居場所を初めて見つけた気がしたといいます。


    (地元の人と話す藤彌さん)

    藤彌さん
    「日和ってすごく良いところなんですよ。私こういう話するとウルッと来ちゃうんですけど、人も優しいし、みんなすごい見ててくれるし、褒めてくれるし、助けてくれるんですね。神楽団も(住民たちと)一緒で、青年部も一緒で、職場も一緒で、いろんな面を知ってるのが田舎の特徴かなと思っています。『私一人で、あなたも一人で、マジョリティーとかマイノリティーじゃなくて一対一だよね』って。とりあえず生きてていいかなと思います。へへへ。」

    LGBTsであることを告白 でも…
    藤彌さんは、これまで、職場の仲間や一部の親しい人を除いて自分がLGBTsであることは伝えていませんでした。しかし、地域の人たちが藤彌さんの活躍ぶりを見て信頼を寄せてくれている、自分を“女性”としてでなく「藤彌葵実」という個人として見てくれていると感じるようになるにつれ、伝えてもいいかもしれないと思うようになりました。また、集落の人たちから「結婚はまだ?」「息子の嫁に」といった言葉がかかるたびに、ごまかす答えを返しながら、相手にうそをついてしまっているような後ろめたさも感じていました。


    (日和地区山根谷集落の会合)

    おととし9月、藤彌さんは意を決して、地域の人たちに自分のことをカミングアウトすることにしました。集落の戸主が月に1回集まる会合に出席。みんな70代以上の男性、これまで自分のことを優しく見守ってくれてきた人たちです。藤彌さんはその席でおそるおそる、「恋愛とか結婚は考えられない」と伝えました。

    藤彌さん
    「私、日和に住んでていろいろ活動してるんですけど、あんまり今、恋愛をしたりとか、結婚したりっていうビジョンがないんですね。そういう考え方で、日和で過ごすのってどうですか?」


    (言葉を失う集落の人たち)

    藤彌さんの告白に一瞬、みんな言葉を失いました。これまでこの地区で、LGBTsであることをカミングアウトした人はいません。藤彌さんの言葉の意味を真剣に考えようとしながらも、どうしても理解できない様子でした。

    住民
    「若いもんの考えが分からん。」
    「いつか良い人ができるよ、そりゃ。」


    自治会長の佐々木正晴さん(73)は、これまで、特に藤彌さんのことを気にかけてくれていました。地域の活動に熱心に取り組む藤彌さんを「若いから」と不安視する住民に対し、「信頼して任せよう」と説得してくれたこともありました。いずれは、藤彌さんに集落の住民と結婚してほしいと願っていただけに、思いがけない告白に混乱を隠せませんでした。

    自治会長 佐々木正晴さん
    「うーん。結婚する気がないっちゅうのが、わしもよく分からんのじゃけど。藤彌さんは全くおかしいことはないよ。ものすごく正常なつきあいというか、わしらもいっぱい話をさせてもらって。だけど、結婚を考えてないっていうのはちょっと、こういうこと言っちゃいけないかもしれないけど、異常って感じがする。」



    すぐには受け入れてもらえないかもと覚悟はしていたものの、藤彌さんはこれまで親しくしてきた人たちが戸惑う姿に、言いようのない悲しみを感じました。

    藤彌さん
    「幸せな人生ですねって言われてもいいはずなのに、幸せじゃないと思われる。異性と恋愛をして、結婚をして、子育てをして、幸せな家庭を築いて、老後を迎えて死ぬっていうステレオタイプがあって、そうじゃない人はそうなるように努力しなければいけないんじゃないかって思わされてしまう気がします。」

    男女の役割分担の壁 話し合いは平行線、それでも…
    「結婚して幸せに」。そんな価値観とともに、藤彌さんがぶつかっていた壁がありました。男女の役割分担です。

    特に藤彌さんが納得できないでいたのが消防団の活動です。藤彌さんも所属する町の消防団は男女別に分かれていて、男性消防団は消火活動など力仕事、女性消防団は被災者のケアや広報活動などと役割が異なります。


    (男性消防団と女性消防団)

    藤彌さんが消防団に入ったのは、隣の家が火事になったとき、避難の手助けなどを手伝ったことがきっかけです。藤彌さんは、これまで繰り返し、現場で消火活動に関わりたいという思いを伝えてきましたが、女性消防団は現場に行かせられないと言われてきました。

    この春に行われた消防団の防火パレードでも、女性消防団として参加するように言われました。しかも、女性らしく車両に乗って手を振る役。どうしても納得できず欠席しました。

    「自分の本当の気持ちを伝えずに殻に閉じこもる」。このままだと、東京で自分を偽っていた頃とまったく変わらない…。消防団の活動でも、自分の思いを率直に伝えるべき時が来ていると感じていました。

    藤彌さん
    「東京にいたときは、“納得できません”って言えなくて。“スカートを履かないといけないなんて納得できません、私はズボンで出社します”って言えなかったんですね。本当はそう思っているのに、そう思っている自分を否定して、社会の常識を肯定してしまっていたんです。でも、それだと、私がこの社会で生きてる意味はないんじゃないかって思えてくるんですよ。“納得できません”って言うこと自体は、自分を肯定することだと思うんですよ。」


    (女性消防団の副団長 中井伸人さんと藤彌さん)

    思い切って、女性消防団の副団長で、神楽団や集落のバドミントンサークルの仲間でもある中井伸人さん(66)に、「女性消防団を辞めて、男性消防団で消火活動に参加させてほしい」と訴えました。消防団に入ったきっかけやLGBTsであることも伝えました。中井さんはじっと聞いていました。

    中井さん自身、葛藤していました。「藤彌さんの気持ちを受け止めてあげたい。その一方で、男性と女性とではやはり役割に違いがあるのではないか…」。そう思う原点は中井さんのこれまでの人生にありました。中学生の時に亡くなった父の代わりに母と2人の弟を養うため、高校卒業後、集落に残り働く道を選びます。同級生の多くが大学進学や就職で都会に出る中、苦渋の選択だったといいます。


    (郵便局で働き始めた頃の中井さん(前列中央)と中井さんの母と弟2人)

    それでも、男だから家族を守るのは当たり前だと考えていました。一生懸命、地元の郵便局で働き、弟たちを進学させ、母親の面倒を見続けました。男性と女性、それぞれに役割があり、そのためには個人の我慢も必要だと考えてきたのです。

    1か月後、中井さんは藤彌さんを事務所に呼び、伝えました。「男性の消防団に入ることを認める。しかし、条件が一つ。人手不足の女性消防団にも残り、今までどおりの仕事も続けてほしい。」

    条件を加えた背景には、もう一つ、一対一の人間として藤彌さんと向き合いたいという中井さんの思いもありました。藤彌さんの意見も聞き入れる代わりに、消防団としての願いも聞いてもらう。それが 「一対一の関係」ではないかと感じていました。

    しかし、「“男性”と“女性”だけを想定して制度ができている」ことそのものに違和感を覚えてきた藤彌さんは、中井さんの結論に納得できず、中井さんに率直に自分の思いをぶつけました。


    (話し合う中井さんと藤彌さん)

    藤彌さん
    「私は、個人の話をすればいいじゃないって最初から思っているので、現場に来れる人は来る。できることをみんながやるっていうことだと思うんですよ。」

    中井さん
    「それは違うよ。男子じゃけ、それなりの力をもっとる、で、現場で皆が大きな声だして、こうじゃないああだ!って言えるじゃない。女性には、けがさせちゃいけんと思うじゃない。例えば顔に傷。男がここ(顔)擦り傷するのと、女性がここに 擦り傷するのとじゃ違うじゃない?」

    藤彌さん
    「そこまで話をすると、じゃあ私は消防団に入っている意味はないんじゃないかと思って。」

    中井さん
    「もう少し辛抱することはできんかね?だってそんなこと言ったら、人生も全部一緒じゃん。嫌だったら辞めればいいってものじゃないでしょ。」

    議論は最後までかみ合いませんでした。

    「めっちゃイライラしました!」 
    そう言いながら、話し合いから戻ってきた藤彌さん。表情はスッキリしているようにも見えました。



    藤彌さんは落胆していませんでした。たとえ考え方が違っても、こうして自分の意見を伝えられたこと、それを聞いて本心で議論してくれる人がいることのありがたみを実感していました。そして、「中井さんとのつきあいは、これまでどおり続けていく」と、力強く語りました。

    藤彌さん
    「こんな場面なんて山ほどあって、そのたびに屈していたら生きていけないことを実感したので。それをされたからこの人は敵だ、もう話ができないと思うんじゃなくて、概念がかみ合わないところはそのまま置いておいて、他のところで仲良くなればいいんじゃないかな。中井さんとは、また神楽とかで一緒になりますし、今日もこれから一緒にごはんを食べますし。そうやって暮らしていくんだと思います。」

    “一人の中に、いろんなアイデンティティーがある”
    「結婚=幸せ」なの?「男女の役割分担」って何?過疎化が進む集落に藤彌さんが次々と投げかける疑問。地元の人たちの考え方も少しずつ、変わり始めています。

    「結婚するつもりはない」という藤彌さんに「異常」と言った自治会長の佐々木さん。そのことを反省していました。「性別は男女だけではない。多様な性がある」ということを知り、その後の集落の会合で、こんな言葉を藤彌さんにかけました。

    自治会長 佐々木さん
    「結婚するかどうかは個人の自由ですからね。特別じゃない。普通のひとと変わらないよ。なあ、藤彌さん。」

    2人はこれまでと変わらず大事につきあっていくつもりです。


    (神楽団の仲間と話す藤彌さん)

    藤彌さんと同世代の男性や女性たちも、「結婚が当たり前」という年配世代の考え方を柔軟に捉えるようになっています。かつては「結婚はまだ?」と近所の人に聞かれるたびに傷ついていましたが、今は「この人は私のことを思ってくれている」と、言葉の裏にある、その人の思いを受け止めるようになったそうです。

    藤彌さん自身も「結婚はまだ?」は、「幸せになってね」と変換して受け取ればいいと考えるようになりました。

    藤彌さん
    「田舎に来てから、人って一面だけの存在じゃないんだなって。その人の中にいろんなアイデンティティーがあるなって思います。だから一面だけをみて判断するんじゃなくて、社会がLGBTsを前提としていなくても、そこに生きてていいし、自分らしく生きてていいし、幸せにもなれる。」

    性が多様なのと同じように、一人一人の中にも多様性があると気付いた藤彌さん。地方で暮らす中で見つけた“希望”です。



    取材を続けて感じたこと
    4年前に出会った頃、藤彌さんは地域に根ざした結婚観や、男女の役割分担が押しつけられることにいらだっているように見えました。「地域の価値観は古いもので、当然アップデートされるべきだ」と、当時は藤彌さんも、私も、思っていました。しかし、ちょうどカメラを回し始めた2年前あたりから、藤彌さんの考え方が次第に変わっていったように感じます。いちばん驚いたのは、ことし3月、ロケの終盤にさしかかった時に「自分が変わりたくなかったように、相手も変わりたくないと思う」とおっしゃったことです。

    相手へのリスペクトを忘れずに、互いに変われる、変わりたいと思うところは変える、変わりたくないところは受け入れる。時に衝突することがあっても、それまでと同じように、共にご飯を食べ、働き、対話を絶やすことなく暮らし続ける地域の方々と藤彌さん。その姿に頭が上がりません。また、どうしたら誰もが暮らしやすい社会になれるか、大きな手がかりを教えてもらったように思います。これからも取材を続けます。

    (取材した内容は2021年4月に「目撃!にっぽん 地方で暮らすLGBTsの私」で放送しました。)

    地方に根強い価値観によって、生きづらさを感じることはありませんか?またそういった声を聞いたことはありませんか?誰もが暮らしやすい地域になるためにはどうすればいいか。みなさんのご意見や記事への感想などを下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。


    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2021年6月3日

    ジェンダーをこえて考えようVol.19  トランスジェンダーのハナ 演じた2人の思い

    6月4日(金)からオーストラリアのドラマ『ファースト・デイ わたしはハナ!』(全4回)が放送されます。主人公のハナはトランスジェンダー。男の子の体で生まれ、自分の性に違和感をもちながら生活してきましたが、中学生になるのを機に女の子として生きることを決意。家族に支えられながら 新しい友だちや先生との出会いの中で新たな一歩を踏み出すストーリーです。

    主演を務めるのは、みずからもトランスジェンダーのイーヴィー・マクドナルドさん。日本語版の吹き替えを担当するのは井手上 漠(いでがみ ばく)さん。放送前にふたりにこのドラマや自身について話を聞きました。



    “わたしの経験も含まれた「ハナの物語」”
    物語は、小学校の卒業を間近に控えたハナが、女の子として生きていこうとするところから始まります。ハナを演じたイーヴィーさん自身も幼い頃から自分の性に違和感をもって生きてきた経験があります。


    (イーヴィーさん演じるハナ<左から2人目>と新しい友だち 『ファースト・デイ わたしはハナ』より)

    Q:「ハナ」を演じてどうでしたか?

    イーヴィーさん
    演じてみて もっとも難しかったのは、自分が経験してきた感情をハナとして再現することでした。自分自身の感情を思い返し、ハナに合わせて変えたりもしました。ハナの物語は、たくさんの人の実話をベースにしたものなんです。なるべくリアルにするために制作チームはトランスジェンダーの人々を取材しました。物語にはわたしの経験も含まれています。

    Q:イーヴィーさんは何歳くらいから「自分は周りとは違う」と思い始めたのですか?

    イーヴィーさん
    5歳のころから、自分は友だちとは違うなと思い始めました。その前から自分は女の子だと思っていたのですが、両親から わたしは女の子ではないと言われていたので戸惑っていました。でも、学校に行き始めて自分が周りとは違うと はっきり分かったんです。

    Q:当時は誰かイーヴィーさんのことを理解してくれましたか?

    イーヴィーさん
    わたしの両親が支えてくれました。ふたりに理解してもらうまで9年間、口論と対話を繰り返しましたけどね。今は家族にも友だちにも本当の自分を受け入れてもらえていることが、大きな力になっています。

    Q:日本の学校では、男子と女子で分けられることが多いですが、そういう経験はありますか?

    イーヴィーさん
    はい、ありました。オーストラリアでは、天気が悪いと屋外授業が室内授業に切り替わるんですが、ある雨の日に、男子は体育館で運動を、女子は教室で絵や工作をすることになりました。わたしはスポーツではなく、女の子とたちと教室に残っていたかったのに、先生はわたしを教室から引きずり出したんです。両親はひどく怒って、その日に学校を辞めさせてくれました。


    (現在、高校生のイーヴィー・マクドナルドさん)

    Q:第2回(6月11日放送予定)では、ハナが一番の親友に自分がトランスジェンダーであることを打ち明けるシーンがあります。あなた自身が友だちに初めてトランスジェンダーだと伝えたときはどんな気持ちでしたか?

    イーヴィーさん
    わたしが友だちのひとりに、生物学的には男性で生まれたんだと伝えたとき、その子は気にしませんでした。一緒に笑って、「あなたはあなただよ」と言ってくれたんです。とてもすてきな経験でした。否定的な反応をする人もいますが、気にしないようにしています。

    Q:女の子であることを打ち明けてよかったと思っていますか?

    イーヴィーさん
    打ち明けたことは後悔していません。最大の後悔は、もっと早く打ち明けなかったこと。女の子として生活を始めてから過去を振り返ったことは一度もありません。自分の中に秘めていた本当の自分を外に出すことができたとき、心からうれしかったです。何ものにも代えがたい気持ちでした。

    Q:あなたにとって理想的な社会は?

    イーヴィーさん
    お互いを認め合い、相手に優しくできる社会。そして、知らないことを学ぼうとする社会です。 オーストラリアでは、同性婚が認められ、また、“紫色を身につけようデイ*”や“トランスジェンダー認知の日**”などを通して、人々の多様性への意識を高めようとしています。でも、小学校や中学校の教育はもっと改善できると思います。人種やインクルージョンなど多様性を教える科目を作ることが重要です。わたしはこれまで、みんなから あらゆることを質問され、説明してきました。それは子どもたちの多くがトランスジェンダーであることはどういうことかを知らないから、わたしのような人について教えられていないからです。

    *紫色を身につけようデイ(Wear It Purple Day)…オーストラリアの若者が運営する非営利組織がLGBTQの人たちへの理解と認知を広げるために毎年開しているイベント。紫色の服を着てLGBTQの人たちへの指示を表明する。
    **国際トランスジェンダー認知の日(International Transgender Day of Visibility)…毎年3月31日。世界中のトランスジェンダーの人たちの活動や勇気を祝い、差別の現状を知る日。


    Q:「ハナ」のように生きづらさを感じている子どもたちにメッセージはありますか?

    イーヴィーさん
    自分自身に正直でいてほしいです。周りから「あなたはこうあるべき、こうあってはならない」と言われても、どんな自分になりたいかを決めるのは、あなた自身です。だから自分に正直に生きてほしいです。

    “性別の壁をリアルに描いたドラマ”

    (声優に初挑戦した井手上 漠さん)

    日本語吹き替え版のハナの声を担当した井手上 漠さんは、体は男性、心は“男性っぽい部分”と“女性っぽい部分”の両方をもつ18歳です。

    Q:『ファースト・デイ』の見どころは どんなところですか?

    井手上さん
    このお話は、自分の18年間の人生と少し重なる部分が多くて。目に見えにくい部分とか、当事者でないと分からない壁をすごくリアルに描いています。性別の壁の問題を、このドラマを通して、みなさんにお見せすることができたらと思います。

    Q:お気に入りのシーンはありますか?

    井手上さん
    二つあります。一つ目は、ハナはあんまり人に自分のことを話すことができない子なんですが、仲良くなったお友達に自分のことをカミングアウトするシーン。見ていて自分も心動かされるというか、自分と重なったというのもあるんですけど、すごく感動しました。いろんな人に届けられるメッセージがあのシーンだけでもあるんじゃないかなというくらい、すごく感動的なシーンで好きですね。

    もう一つはハナが女の子の制服を着て、学校に初めて登校する日に、家でお兄ちゃんがさりげなく朝食を食べて、ハナの姿を見て、「あっ、かわいいじゃん」って言うんですよね。それが、なんかきょうだいなんだけど、しっかりハナのことを見ていて理解していて。その言葉が、お兄ちゃんからしたら さりげないんだろうけど、ハナからしてもそれが普通なんだろうけど。いいきょうだいだなと思うし、血がつながってるからこそのあの軽い表現っていうのが、わたしはすごく重く感じて。あのシーンは一番好きかな。


    (ハナと親友たち 『ファースト・デイ わたしはハナ』より)

    Q: ご自身が友達に助けられたりした経験は?

    井手上さん
    友達に助けられたことは何度もあります。学校生活では友達といることが多いじゃないですか。わたしの大親友が一人いて、その子だけはわたしを見捨てないでくれていたんですよ、ずっと。「この子だったら、打ち明けても大丈夫な気がする」っていう子が一人でもいると、やっぱり、そこに逃げ込むっていう言い方はあれかもしれないけど、頼りたくなるんだなって。そこもすごく共感しました。ジェンダーのことだけじゃなく、誰でも悩みを持っているものだし。逃げられるところがあるというのを見つけたハナもすごいし、共感しました。

    Q:今回、声優 初挑戦でしたが、いかがでしたか?

    井手上さん
    一番最初にご指導いただいたとき、本当にうまくできなくて、正直泣きそうだったんですよ。いろんなお仕事をしてきた中で、声のお仕事は初めてで。今までのお仕事は自分の中では、うまくできていたなって感じでしたけど、この声のお仕事は初めて詰まったというか、自分の中ですごい高い壁だなと感じて。普通のお芝居とは違って、その声で人の感情とかを表現する。声だけで感情を表現するというのが思った以上に難しくて。でも、自分だから演じれるハナというのが絶対にあるから、それだけはこの作品に残したい。そういう思いはありますね。

    Q: このドラマを見る人に、どんなことを感じてほしいですか?

    井手上さん
    日本って、ちょっと昔ながらの風潮だったりを大事にする国じゃないですか。「男らしさ、女らしさ」や「男はロマンだ」みたいな感じから、なかなか抜けきれていなくて。わたしみたいな人たちが増えている時代で、新しく(昔ながらの風潮を)進化させていいものも、たくさんあるんじゃないかなって思うんですよね。

    このドラマはすごくリアルな作品になっています。きっと、性別の壁にぶち当たった当事者だけでなく、当事者以外の人たちにも何か感じるものだったり、心動かされるものが、この作品には詰まっていると思います。その主人公ハナを演じることができるというのはすごく光栄ですし、本当にいろんな人にこの作品を見てほしいです。特に今の時代だからこそ、伝えられることが たくさんこの作品には詰まっています。

    第1回「新学期はドキドキ…」のストーリーは

    (第1回 『新学期はドキドキ…』より)

    女の子として生きる決意をしたハナ。新しい友だちもでき、中学校生活は順調にスタートしたものの、学校側との約束で「だれでもトイレ」を使わなくてはならなかったり、“友だちに秘密を知られたら…”など不安もいっぱい…。ある日、ハナの”過去”を知る幼なじみと出くわします。どうする、ハナ!

    【放送予定】
    海外ドラマ 『ファースト・デイ わたしはハナ!』 (全4回)夜7:25~
    [Eテレ]
    6月 4日(金) 第1回 「新学期はドキドキ…」
    6月11日(金) 第2回 「信じてもいい?」
    6月18日(金) 第3回 「気分はサイアク」
    6月25日(金) 第4回 「わたしらしく」

    みなさんは、自分や大切な人が、ハナのように体の性に違和感を感じて悩んでいたら、どうしますか? この記事を読んで、また、『ファースト・デイ わたしはハナ!』を見て、どう思いましたか? あなたの感想や考えを下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。


    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2021年5月31日

    Vol.18 らじらー!× u&i 「男らしさ 女らしさのモヤモヤ みなさんの声」

    5月8日(土)、Hey!Say!Jumpの八乙女光(やおとめひかる)さんと伊野尾慧(いのおけい)さんがMCを務める『らじらー!サタデー』(ラジオ第1)に、歌手のきゃりーぱみゅぱみゅさんがゲスト出演!きゃりーさんは多様性について考える子ども番組『u&i』(Eテレ)で、伊野尾さんと一緒にサルの妖精の声を担当しています。5月12日、19日の『u&i 男らしく、女らしくがいいの?』の放送を前に、八乙女さん、伊野尾さん、きゃりーさんが、「男らしさ、女らしさのモヤモヤ」について語り合いながら、リスナーのみなさんから寄せられたご意見を紹介しました。



    服装や“見た目”の決めつけ
    伊野尾
    「男なんだからめそめそするな」、「女の子はおしとやかに」とか言われた経験、みなさんあると思います。そんなときに、「男らしさ、女らしさ、なんだろう」ってモヤモヤしたエピソードを投稿してもらいました。

    八乙女
    キャリーさんは「女の子らしくしなさい」とか言われたことはありますか?

    きゃりー
    私はファッションでけっこう言われたことがあって。もちろんワンピースなども好きなんですけど、メンズ服のダボダボのデニムとかをはいたりとか、髪もいま金髪なんですけど。「女の子なんだから、黒髪とかスカートはきなよ」と言われたことがある。まあ、そう言われることも分かる。でも、自分の個性として、「私はこれが好きだからこう着ている」と思ったりします。

    伊野尾
    そうですよね。最近、制服なんか女性はスカートだけでなくてパンツも増えてきたりして。逆に男性でもスカートをはきたい人もいると思うから、男性のスカートも用意してほしいと思う。女性のパンツスタイルはけっこう多く取り上げられているけど、その逆もあるんじゃないかなと思いますけどね。

    八乙女
    自由度は広げてほしいですよね。

    リスナーのみなさんからも、服装や“見た目”について、いろいろなモヤモヤが寄せられました。

    なぜ男子のスカートはだめ?   

    かえる丸・15歳・女性・石川

    私が住む県では今年から高校の制服は女子でもズボンをはいていいことになりました。確かにこれはいいことですが、なんで男子がスカートをはくのは許可されていないのかと思います。制服も自由になってほしい。

    女性の就活はパンツスーツよりスカート?  

    ぜんでん・23歳・女性

    就活中のことです。面接の練習にパンツスーツで参加したら講師の方に「女の子は肌が見えているほうが柔らかい印象に見えるから、スカートのほうがいいよ」と言われました。「じゃあパンツスーツしか選べない男の子は不利なんですか?」と思ったけれど、聞くことはできませんでした。

    容姿で男女を判断されてしまう

    いちごのかき氷・16歳・女性・大阪

    中学生の妹が髪をばっさり切ってから、服装もあってか「僕ちゃん」と呼ばれたり、女子トイレに並んでいると「間違ってない?」と声をかけられることが増えたそうです。それを初めて聞いたときはすごく不快な気分になりました。やっぱり容姿で判断してしまうのかな? 「男と女の区別をつけない呼び方」も必要と思います。

    無意識の固定観念

    ともろう・40代・女性・奈良

    3人の子どもを育てている母です。なるべく「男の子だから」「女の子だから」という言葉を使わないようにしていたつもりですが、次女が5歳のときに「○○くんは男の子なのにピンクのズボンはいている。変じゃない?」と言ってきたことがあり、「あなただって青や水色好きでしょ?男の子がピンク好きだって変じゃないよ」と諭しました。でも、振り返ると、自分が妊娠して赤ちゃんの性別が分かった時点で、「女の子はピンク」「男の子は水色っぼい色」で準備しました。普段ジェンダーを意識してなくても、なんとなく頭に固定観念はあるんだなあと感じた出来事でした。

    昔はランドセルも赤と黒の2色だったことを考えると選択の幅は広がっているし、こうしてアイドルがジェンダーを語ってくれることを考えると、確実に時代は前に進んでいると思っています。

    なぜ女性だけ 脱毛?

    茶碗・女性・千葉

    男性は毛が生えていても良しとされているのに女性にはあまりそれが許されていないような空気が気になります。男性にそる・そらないの選択肢があるなら、女性にも同じように選択の自由があっていいはずです。しかし現状はそれが許されていないように感じるのは、「女性は美しくあるべき」という女性に対する差別的な思想が根底にあるからなのかなと思います。動画サイトによく流れる「ムダ毛の処理を怠っていると彼氏に嫌われちゃう」という広告にも、規定された美への圧力を感じモヤモヤします。

    日本も見た目に関してとやかくいう人がいなくなり、一人ひとりがもっと自分らしくいられるような生きやすい国になってほしいと切実に思います。

    できること・やりたいことは性別と関係ない
    八乙女
    「こうだから女の子」って決まっているわけではないし。「自分らしさ」って無限大にあるので、一つにカテゴリーされると、「あれ?」ってなりますよね。

    伊野尾
    ピアノは女性のほうが多く弾いているイメージがあるよね。小学生の頃にピアノをやっている男の子って、僕が小学生の頃だったからかもしれないけど、「え、なんで男の子なのにピアノ?」ってところがちょっとあった。でも、それが意外と子どもの頃だけだったり。逆に、高校生、大学生とかで男性の人がピアノ弾けると…

    きゃりー
    めっちゃかっこいいですよね。

    伊野尾
    そんなに縛られなくていいのかなと思いますよね。「男の子だから」「女の子だから」と余計なひとことがヤモヤするポイントかもね。

    “男だから…”は負担

    さっぱりコーラ・男性・北海道

    男だからといって重いものを持たされたり、肉体的な仕事を求められることがあります。しかし力がそんなにない自分にとってはそれは負担だったりします。

    同じ人間です

    ひかもも・22歳・女性・静岡

    重い荷物を運ぶときに、「女の子だから男の子に任せればいいよ」と言ってくれる方がいます。でも、それが通ってしまうと、男性は女性の分まで肉体労働をしなければいけないことになり、それがすごい複雑な気持ちで、「同じ人間なんだから私にも運ばせて!!」と私は意地を張ることが多いです。男性の方、いつも気づかってくれてありがとう。

    “女子っぽい字”って?

    ゆいか・17歳・女性・熊本

    私は周りの女の子よりも少し字が下手。バランスが悪く、きれいに書けません。学校で宿題を名無しで提出する人がいるため、先生が字を確認して「この字は男っぽいな」「この字は女子っぽいな」とか言います。私はそう言われるのが小学生の頃から嫌でした。女の子=字が上手というイメージを持つことをやめてほしい!

    男の人も泣くのに…

    き抹茶 18歳・女性・福岡

    中学生のとき、バレーボール部の男の顧問の先生に怒られて泣いたら、「すぐに女子は泣く、メンタルが弱い」とさんざん言われました。「男の人も泣くのになあ」と、すごくモヤモヤしました。

    女性は昇進しない?

    アネモネ・40代・女性

    会社の昇進試験の勉強をしていたら男性の先輩に、女子は試験に受かっても昇進しないのになんでそんなに頑張るの?と言われました。

    気にせずにやり通す

    眠れない一匹狼・26歳・女性・埼玉

    学校でチアではなく応援団に立候補したり「男の子がやることをなんでやるの?」と親に言われたり、クラスの女子たらし」と呼ばれることが多かったです。気にせずやり通しました。

    「あなたらしくあること」が力になる   

    マッチョパフェ・24歳・男・熊本

    僕は、昔から体育より家庭科が好きで得意でした。そのせいで「男なんだから、将来 仕事場で自慢できることをやれ!」や、「男のくせに女々しい(笑)」と言われたりしました。でも今回のコロナでマスク不足の際、ばかにされてきた服飾スキルでマスクを大量につくり、人の役に立てました。

    「らしさ」で悩んでいる方、大丈夫です。あなたが「あなたらしくあること」がいつかあなたの力になります。 あなたのすてきな個性を捨てないでください。

    小学校の教育現場は…

    (伊野尾慧さんとシッチャカ、きゃりーぱみゅぱみゅさんとメッチャカ)

    『u&i 』は、小学生のふたりの子どもが妖精のシッチャカ(声:伊野尾慧)とメッチャカ(声:きゃりーぱみゅぱみゅ)といっしょに、無意識の固定観念について本音をぶつけ合い、悩みながら、多様性について理解を深めていく番組です。アレルギーをもっていたり、一つのことに集中しやすかったり、周りとちょっと違ったように見える子どもたちについて、「あの子は変だから」と決めつけずに、その子の抱えている問題としっかり向き合い、どうしたら互いに助け合えるかを考えています。『u&i』は、小学校の授業の教材として使っていただけるように、NHK for Schoolのサイトでも見ることができます。


    (『u&i』男らしく、女らしくがいいの?)

    『男らしく、女らしくがいいの?』を実際に授業で使った札幌市幌北小学校の安井政樹先生と電話をつないで4人で話しました。

    伊野尾
    安井先生、こんばんは。私ときゃりーさんは番組の立ち上げときに少しお話もさせていただいたんですよね。今の小学校でも「男の子だから、女だから」という空気感とかはあるんですか?

    安井先生
    いや、だいぶなくなってきていると思います。出席番号も男女別じゃないんですよ、もう。朝礼などで並ぶときも、男の子、女の子はまざって並んでいるので、だいぶそういう雰囲気はなくなってきていると思います。(※安井先生の小学校の場合) 

    伊野尾
    僕らが小学生の頃は、男子は組み体操をやって、女子はダンスとかあったりしたじゃないですか。そういうのもなくなっている?

    安井先生
    そうですね。(うちの学校は)先生たちも男女平等を意識しているので、男の子、女の子で分けて教育することがないように気をつけているとこですね。

    きゃりー 八乙女
    へえー。いい学校ですね。

    伊野尾
    時代とともに変わってきているんだね。


    他の学校の先生からも声が届きました。子どもたちに「性別にとらわれない考え方」をもってもらいたいと、さまざまな工夫をされています。

    「男女」のくくりをしない教育を   

    みい・26歳・女性・千葉

    小学校の教師をしています。新学期に教科書を運んだりするときは男の子に頼むのではなく男女関係なく「運ぶのを手伝ってくれる人いるかな?」と聞いています。6年という歳月は子どもたちの価値観を大きく変える時期なので、私たちが男女というくくりにはまらずに接することを心がけています。

    固定観念にとらわれない環境づくり   

    毎週のらじらー!は心のよりどころ・50代・女性・神奈川

    小学校に勤務しています。学校では「らしさ」「男だから女だから」のような発言は先生たちはもちろん、子供たちの間でも「それはおかしい」といえる雰囲気づくりに努めています。色の決めつけはしていません。例えば、図工で絵を描いてそれを台紙に貼る場合、各々好きな色を選んでもらっています。すると、子どもたちは自分の思いで台紙を選ぶことができ、選ぶ色には男女差がないことにも気づきます。

    運動会の徒競走も男女で分けません。保護者の方から「男の子と走るのはかわいそう」と言われることがありますが、小学生の時期は(体力に)性差はなく、女の子でも速いので、男女を分ける必要はないのです。まずは、固定観念にとらわれない環境づくりからではないかと思います。親御さんのほうが、まだまだ「男だから」「女だから」にとらわれている気がします。「男らしさ」「女らしさ」という言葉が「自分らしさ」に置き換わるといいですね。

    悩み続けるなかで “自分らしさ” を見つける
    きゃりー
    もったいないですよね。自分の可能性を封じ込めてしまったら。

    伊野尾
    男だから、女だからというので自分の可能性に蓋をしちゃうのはもったいない。やりたいこと、したいことをやるべきだよね

    八乙女
    (男らしさ、女らしさの問題は)大人でもものすごい悩むから、子どもが悩むことは当たり前だよね。でも、いっぱい悩んで悩んで、そこから「自分らしさ」というものを見つけていくんだと思いますね。


    自分自身がモヤモヤした理由を突き詰める中で、モヤモヤ解消のヒントや、「自分らしさ」を互いに認め合うための手がかりを見つけ出している人も少なくないようです。

    「家事を手伝う」という表現がなくなれば

    ほいっぷ・女性・鳥取

    最近 大学で、「父親の子育て」について いろんな本を読んで勉強しています。「父親が家事を手伝う」という表現はまだまだ残っていて、母親は家事や育児をするのは当たり前みたいな雰囲気があります。この「手伝う」という表現をする風潮がなくなればいいのに…といつも思います。

    男性も女性も 仕事と家庭の両立しやすい社会に 

    抹茶大好き・女性

    女性の社会進出は増えていますが、仕事をしていたとしても子どもが生まれたときに休職して世話をするのは母親です。私は2年後に医師になりますが、幸せな家庭を築きたいという思いと共に、医師としてのスキルを身につけ、沢山の命を救いたいという思いもあり、仕事と家庭の両立をどうすればいいか悩んでいます。

    こうした悩みは男性よりも女性がもつことが多く、男性で育休を取る人もほとんどいません。男女平等というなら、女性の負担をもう少し減らせる制度が導入され認知され、男性も女性も仕事と家庭の両立をしやすい社会になってくれればと思います。

    違和感を持つことは大事な一歩

    めいか・20代・女性・宮城

    私がモヤモヤを感じたのは職業体験で児童館へ行った時でした。全日を通して、男子は子どもたちと鬼ごっこなどの運動、女子は裏で掲示物の作成を指示されました。見かねた男子が担当者に話してくれて、結局 私たちも運動の方にまわることができました。ですが、個人の得意不得意は関係なく、「男子は運動」「女子は細かい作業」と決められていたことへのモヤモヤは残ったままでした。

    この出来事から6年、私は今大学で共生に関する勉強をしています。ジェンダーについても勉強する中で、あのとき感じていたモヤモヤは間違っていなかったと分かりました。子どもの頃から無意識のうちに「男らしさ女らしさ」がすりこまれているのであたりまえのことと済ませてしまいがちですが、違和感を持つことは大事な一歩だったのかもしれないです。

    一人一人の意識や自覚が大切

    いのふく・40代・女性・熊本

    長男が通っていた中学校では、4年前にスカートをはくのに抵抗がある女子生徒のためにブレザータイプも用意されました。長男の学年では2名の女子がブレザーを着用しました。2年後に娘が入学した時、一部の生徒の間でブレザーを着用する女子生徒に偏見の目を持つ生徒がいるみたい…と言っていました。学校が性別に縛られずに制服の選択肢を与えていても、一部とはいえ、偏見の目を向けてしまう生徒がいることは残念でなりません。

    みんな違ってみんな良い、個人が尊重された世の中になっていくには一人一人の意識や自覚が大事なんだなということを痛感しております。またu&iの新作も楽しみにしています。

    『らじらー!』と『u & i』では、「男らしさ、女らしさのモヤモヤ」について、考えていきます。

    あなたが“モヤモヤ”の中から見つけ出した「モヤモヤ解消」や「自分らしく生きる」ためのヒントはありますか? この記事を読んでどう思いましたか?「下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。


    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2021年4月23日

    Vol.17 “性”について語ろう④ 性のあり方って?

    “性”について考える『からだとこころの話』4本目は、性の多様性について。人間の性は男性と女性の2つだけではなく、実にさまざまです。好きになる相手が異性だけとも限りません。

     

    性のあり方って?

    女性を好きな女性。
    男性を好きな男性。
    男性も女性も、好きな人。
    自分の「性」に違和感をもつ人。
    ある調査では、LGBTなどの人は「10人に1人」という結果も。
    「性のあり方」は人の数だけあるんです。

    (監修:防衛医科大学校 教授 西岡笑子、慶應義塾大学大学院 特任准教授 本田由佳)


    私たちひとりひとりの中に、いくつもの「性」があります。体の性(身体的性)、心の性(性自認)、表現する性(性別表現)、好きになる性(性的指向)。そして、その濃淡もひとりひとり異なります。例えば、体と心が女性で、表現する性(服装や言葉づかい)が男性、好きになる対象は男性という人もいます。体は男性で心が女性、表現する性は男性でも女性でもなく、恋愛感情をもたないという人もいます。性のあり方は、人それぞれです。

    「性の多様性」は社会の活力(防衛医科大学校 教授 西岡笑子さん)

    現在、「性」を男性か女性かといった“性別二元論”ではなく、連続するもの、「性のグラデーション」ととらえ直すことが提案されています。それぞれの「性」の要素の濃淡はひとりひとり違います。それは「セクシュアリティの個性」です。人口の数だけ「性」があります。

    性的マイノリティがいるから性は多様なのではなく、すべての人ひとりひとりが異なる性を持っていて、「誰もが多様な性の構成員」です。人間という種の中の「性の多様性」は社会の活力になります。「性」について悩みを抱えている人も、そうでない人も、ぜひ、そのことを覚えておいていただきたいと思います。

    #BeyondGenderのホームページには、あらゆる世代の方々から、自分の性のあり方について疑問やお悩みの声が寄せられます。

    「僕は、体は女性。相手が男でも女でもそれ以外でも好きになります」(10代)

    「20年以上前からパートナーと暮らしていますが、お互い、ゲイとカミングアウトせずに生活しています」(60代)

    「“男の子”を押しつけられるようにして育てられましたが、ストレスからか、小学生のときから女性化乳房に…。親・親族への恐怖心から、女性らしくいたくても、それができません」(30代)


    性のあり方はひとそれぞれ。むりやり型にはめるのでなく、誰もがありのままの自分でいられる社会に、居心地のいい社会になるために、皆さんのご意見をお聞かせてください。これからも取材を続けます。

    あなたは、あなた自身がもつ、さまざまな「性」について、どう感じますか?「性は個性」と社会で広く受けとめられるようになるために、私たちひとりひとりは何ができると思いますか? 動画や記事への感想やご意見を、下の「コメントする」か、、下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。


    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2021年4月23日

    Vol.16 “性”について語ろう③ 男らしさ・女らしさに縛られてない?

    “性”について考える『からだとこころの話』3本目は、性別をめぐる固定観念についてです。知らず知らずのうちに、“思い込み”や“決めつけ”をしていませんか。

     
    『男らしさ・女らしさに縛られてない?』

    男性は、積極的、社交的で、「外で仕事」?
    女性は、やさしくて器用で、「家事育児」?

    いま、共働き世帯は専業主婦世帯より多いんです。
    役割・生き方は人それぞれ。
    みんなが、自分らしく。

    (監修:防衛医科大学校 教授 西岡笑子、慶應義塾大学大学院 特任准教授 本田由佳)


    NHKが3月末に全国の18歳以上を対象に行った世論調査*で、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方について、賛成か反対かを尋ねたところ、「反対」「どちらかといえば反対」を合わせた『反対』は5割近くを占めた一方、「賛成」「どちらかといえば賛成」を合わせた『賛成』も4割に上りました。



    男女別では、回答に差はありませんでした。年代別にみると『反対』と答えた人は、60代までは5割以上~6割前後で多数を占め、『賛成』を大きく上回りました。これに対し、70歳以上は、『賛成』が5割を超えて、『反対』を大きく上回っていました。


    【*NHK世論調査…期間:2021年3月26日~28日、方法:電話法(固定・携帯RDD)、対象:全国の18歳以上2,890人、回答数(率):1,508人(52.2%)】

    では、実際に、夫が外で働き、妻が家庭を守っている世帯はどれくらいあるのでしょうか。国の調査によると、1990年代半ばから2019年まで「共働き世帯」(雇用者の共働き世帯)の数は、「専業主婦世帯」(男性雇用者と無業の妻からなる世帯)より増え続けていて、今では2倍以上です。



    多くの人の“思い込み”と実態に大きなギャップがあることが分かります。

    「性別への“思い込み”にとらわれないことが、自分自身の、そして、周りの人たちの可能性を広げることにもつながります。」

    防衛医科大学校医学教育学部教授の西岡笑子さんは、公立中学校2年生に向けた「ジェンダーフリーについて考える」授業でそう伝えています。看護学生の実習の一環で行っているこの授業。まず、中学生に髪の長い子どもの写真を見せて、「女の子・男の子どちらと思う?」と尋ねます。「女の子」と答える生徒がほとんどですが、写真の子どもは実はウイッグ・ドネーションのために髪を伸ばしている男の子。さらに、職業でも、男性のキャビンアテンダントもいれば、女性の医者もいるなどの実態を伝えることで、社会がつくり出した性別をめぐる固定観念が、いかに自分たちの思考や行動の幅を狭めてしまっているか、“気づき”を促しています。

    “性別の思い込み”にとらわれないために(防衛医科大学校教授 西岡笑子さん)

    まず、自分の中にある“思い込み”に気づくことが重要です。そのためにも周りと話すことをおすすめします。人の話を聞く中で、自分の意見と同じ・違うなどと考えながら、おのずと自分の身の回りのことを振り返り、自身の考えが整理されていきます。

    自分の中にある “思い込み”に気づき、その“思い込み”から自分を解放することで「一人の人間」として生きやすくなり、そして周りの人たちのことも尊重できるようになります。そういう人が増え続けることが多様性と包容力のある社会につながっていくと思います。

    「男だから」「女だから」ではなく、「あなただから」「自分だから」という考え方を身に着けたいですね。

    あなたは、性別をめぐる固定観念について、どう思いますか? そうした“思い込み”にとらわれないために、ご自身が気をつけたり、心がけたりしていることはありますか? 動画や記事への感想やご意見などを、下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。


    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2021年4月23日

    Vol.15 “性”について語ろう② 相手の気持ちも大切に

    性教育動画『からだとこころの話』2本目は、「性的同意」です。「性的同意」とは、セックスはもちろん、手をつなぐ、ハグやキスなど、すべての性的な行為をするときに、それをお互いが積極的に望んでいるか、気持ちを確認することです。知らず知らずのうちに、大切な相手の心と体、自分自身の心と体を傷つけないためにも、「性的同意」は必ず必要です。

    あなたが大切に思っている相手やパートナーといっしょに考えてみませんか。

     
    『相手の気持ちも大切に』

    「好きだから一緒にいたい。ふれたい」って自然な気持ち。
    でも、待って。ふれる前に、相手の気持ちを言葉でしっかり確認しよう。

    「イヤ」と言われたら、もちろんダメ。
    返事がないのも、ダメ。
    その場の雰囲気で相手の気持ちを判断するのもダメ。

    “YES”は「いいよ」と言われたときだけ。
    心と体、どちらも大切にしよう。 

    (監修:防衛医科大学校 教授 西岡笑子、慶應義塾大学大学院 特任准教授 本田由佳)

    性的同意をとるとき、どんなことに気をつければいいか。ジェンダー平等や多様性など、人権の尊重に基づいた「包括的性教育」の普及に取り組んでいる防衛医科大学校医学教育部教授の西岡笑子さんに聞きました。

    性的同意のポイント(防衛医科大学西岡笑子教授)

    ●2人が対等な関係であることが大前提
    上司と部下、教師と生徒、先輩と後輩のように社会的地位の上下関係や力関係がある場合、地位や力が弱いほうは、その後の関係性を考えて「NO」と言いづらいという実態があります。

    ●相手が「NO」と言える環境が不可欠
    相手が泥酔していたり、寝ていたりしたら、同意はとれません。相手が恐怖を感じている場合は、言葉が出なかったり、動けなくなったりすることもあります。

    ●1つの行為への同意は他の行為への同意ではない
    相手が2人だけでお酒を飲むことに、2人で個室で過ごすことに同意していたとしても、それはキスやセックスに同意したいうことにはなりません。必ず、その都度、言葉で確認することが大切です。

    積極的な同意のない、強引で一方的な性的行為はすべて性暴力です。

    西岡さんは、「本来、好きな相手とふれあったり、性行為をすることは、お互いを豊かにしてくれるはず。でも、どちらかの気持ちが少しでももやもやしたり、嫌な気持ちになったりするのは、同意が尊重されていないことに原因があることが少なくない」といいます。

    内閣府の調査*では、およそ24人に1人、そのうち女性のおよそ14人に1人は「無理やりに性交等をされた」被害経験があります。加害者は「交際相手・元交際相手」が28.9%で最も多く、次いで「配偶者」(16.2%)、「元配偶者」(10.6%)、「職場・アルバイト先の関係者」(8.5%)など顔見知りがほとんどで、「まったく知らない人」は12.0%です。また、加害者が親族や交際相手以外だった人に加害者の立場について聞いたところ、職場やアルバイト先の上司や先輩、学校・大学の教職員や先輩など、自分よりも社会的な地位が「上位だった」が55.3%に上りました。(*内閣府2021年3月『男女間における暴力に関する調査』)

    さらに被害にあったときの状況について、「相手から不意をつかれ、突然に襲いかかられた」が26.8%と最も多く、次いで「相手から、『何もしない』『変なことはしない』『乱暴しないなどとだまされた」、「相手との関係性(関係が壊れる、仕事への影響等)から拒否できなかった」がそれぞれ23.2%となっています。



    “イヤよイヤよも好きのうち”ではありません。相手が何も言わなければ、それは“NO”です。
    同意のない性行為はすべて性暴力です。

    あなたは、パートナーと「性的同意」をどのように確認していますか? 自分や相手が気持ちを伝えやすくするために、心がけていることはありますか? 動画や記事への感想やご意見を、下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。

    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2021年4月23日

    Vol.14 “性”について語ろう① プライベートゾーンって?

    ”性”と聞くと、身がまえてしまう人も少なくないかもしれません。でも ”性”について考えることは、子どもを、大切な人を、あなた自身を性被害から守るために、そして、誰もが「体」と「心」の健康と幸せを守るために欠かせないものです。

    #BeyondGenderでは、子どもも大人もいっしょに性教育を考える動画『からだとこころの話』4本を、放送やインターネットで発信しています。それぞれの内容を連載でお伝えします。

    1本目は「プライベート ゾーンって?」。
    親子で“性”について、語り始めるきっかけにしてみませんか。

     
    『プライベート ゾーンって?』

    「プライベート ゾーン」は、あなただけの特別で大切な体の一部。
    自分のを誰かに見せない、さわらせない。
    誰かのを勝手に見ない、さわらない。
    自分はイヤなのに「見せて・さわらせて」と言われたら、はっきり「イヤ!」と言おう。
    そして、安心できる人に話そう。

    (監修:防衛医科大学校 教授 西岡笑子、慶應義塾大学大学院 特任准教授 本田由佳)

    2009年にユネスコが発表した「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」をご存知でしょうか。世界の「性教育」に大きな影響を与えている国際的な指針です。このガイダンスに基づいて、アメリカやヨーロッパ各国、アジアでも中国や韓国などで、5~8歳からプライベートゾーンや性器の大切さについて教えています。

    最近、日本でも、保育園、幼稚園、小学校低学年などで、子どもたちがプライベートゾーンについて学ぶチャンスが増えています。また、関連する絵本やネット動画なども目にするようになりました。

    家庭で、親子で、「プライベートゾーン」について、いつ、どのようなタイミングで話したらいいのでしょうか。ジェンダー平等や性の多様性などを含め、人権の尊重に基づいた包括的な性教育の普及に取り組んでいる防衛医科大学校 医学教育部教授の西岡笑子さんに聞きました。

    「プライベートゾーン」を話すときのポイント(防衛医科大学校 教授 西岡笑子さん)

    「個人差はあると思いますが、子どもが2~3歳になった頃から、入浴時に『性器は、自分で洗うよ』と、声かけを始めてみてはいかがでしょう。お父さん、お母さんが自分の性器や胸を洗ってみせるという方法もあると思います。

    自分の体は自分で洗うことを、子どもたちに生活習慣として身につけさせることは大切です。子どもたちにとって『体は自分のもの」ということを実感する「体(からだ)感(観)」のもとになるからです。

    さらに、『プライベートゾーンを大切にできる人は、自分を大切にできる人。そしてプライベートゾーンを大切にできる人は、友だちやまわりの人を大切にできる人なんだよ』と伝えていただけたらと思います。」   

    プライベートゾーンは、体を守るためだけのものでなく、自分自身を、そして周りの人たちのことを大切に思う気持ちを育むことにもつながるんですね。お父さんが娘さんに、お母さんが息子さんに伝える場合、絵本などを使って言葉や図で補いながら話してみるのもいいそうです。

    内閣府の調査*で、「無理やりに性交等された被害経験がある」という人は24人に1人。そのうち、未成年で被害にあった経験をもつ人は49.2%とほぼ半数に上ります。そのうち、「小学校入学前」は8.5%、「小学生のとき」は11.3%です。男性も女性も被害にあっています。(*内閣府2021年3月「男女間における暴力に関する調査」)



    性別を問わず、子どもも大人も“性”について一緒に考えていくことが大切です。

    あなたは プライベートゾーンや“性”について、子どもや周りの人と話したりしますか? 話しやすくするために工夫したり、心がけたりしていることはありますか? 動画や記事への感想やご意見を、下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。

    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2021年3月30日

    Vol.13 陣痛見守るモニターも アメリカのフェムテック最前線

    女性特有の体の悩みを最新技術で解決しようというフェムテック。アメリカでは次々と新しい製品やサービスが生まれ、市場は拡大を続けています。その中で注目を集めるサービスの一つが陣痛モニターです。妊娠中にお腹に貼り付けるだけで、自宅にいながら子宮の動きや胎児の心拍をスマホで確認することができると言います。どんなサービスなのか、アメリカの最新事情を取材しました。

    (政経・国際番組ディレクター 宣英理)


    家にいながらお腹の赤ちゃんを見守る
    新しいフェムテックが次々と生まれているアメリカ・シリコンバレー。ここに拠点を置くスタートアップ企業、ブルームライフは、妊婦の悩みを解決するフェムテックで、今世界的に注目を集めています。

    この会社が2年前に開発したのが、小型の陣痛モニターです。
    お腹に貼り付け、子宮の動きと、妊婦と胎児の心拍を計測できます。


    (陣痛モニター)

    妊娠後期になると、ときどき子宮収縮が起きますが、それが出産につながる陣痛なのか、多くの場合妊婦自身にはわからず、病院に行くのが遅れて、胎児に危険が及ぶこともあります。

    このモニターを使うと、スマホで子宮収縮の頻度を確認でき、それが規則的になると陣痛が始まった可能性があると、いち早くわかると言います。


    (青い線の波形が子宮の動きを示し、濃い青の部分が子宮収縮を表しているという。その上に表示される数字は子宮収縮の長さ。)

    Bloomlife エリック・ディー代表
    「女性たちが自宅にいながら、自分の体に何が起きているか分かる初めての装置です。これによって、妊娠中もより安心して過ごすことができます。」

    働く女性の妊娠支える
    このモニターを特に支持しているのが、働く女性です。



    オリール・パーキンスさん。去年、妊娠中にこのモニターを活用していました。

    看護師として1日12時間以上働いてきたパーキンスさん。14年前、予定日より3か月早い早産を経験しました。そのとき生まれた長男は、体重が1500グラム。集中治療室で5週間治療を受けなければなりませんでした。

    オリール・パーキンスさん
    「私のせいだと自分を責めました。私が仕事をしていたのがいけなかったのだろうか、と。」

    アメリカでは、妊婦の10人に1人、年間38万人が早産しています。早産で生まれた子どもは、病気や障害のリスクが高まります。医療コストもかかり、社会全体の問題として捉えられています。

    パーキンスさんは去年、妊娠中にこのモニターを知りました。利用料が月額20ドルと手ごろだったこともあり、「少しでも安心して過ごせるなら」と使い始めました。

    すると、出産予定の2か月前、異変に気づきました。

    オリール・パーキンスさん
    「波形を見て驚きました。陣痛が始まっていることを示していたのです。病院に駆けつけ、医師に画面を見せると、急を要することがすぐに伝わったんです。」

    パーキンスさんは、病院で子宮収縮を抑える薬を投与され、なんとか早産を回避することができました。その後、娘のアメリアちゃんを無事出産しました。


    (パーキンスさんと娘のアメリアちゃん)

    オリール・パーキンスさん
    「私たちの命を救ってくれました。これなしに妊娠生活を送ることはもう想像できません。」

    開発のきっかけは妻の流産
    このモニターを開発したエリック・ディーさん。開発の背景には自身のつらい経験がありました。

    妻が、一人目が生まれるまでに3回流産を経験したのです。ディーさんはその過程で、妊婦健診で病院に行かなければ、胎児の状態がわからないなど、数十年前と変わらない周産期医療のあり方に問題意識を持ったと言います。


    (開発したBloomlife エリック・ディー代表)

    Bloomlife エリック・ディー代表
    「これほどイノベーションが起きていない医療分野は他にありません。近年、出産年齢の上昇などにより、出産に関わるリスクは高まり続けています。これは解決すべき課題だと思いました。」

    ビッグデータの活用で広がる可能性
    このモニターを使った妊婦はこれまでに1万2000人以上。ディーさんは今、集まったビッグデータの活用にも取り組んでいます。



    蓄積された100万時間以上の妊婦と胎児の記録をデータベース化。これをその他の医療データと組み合わせ、AIで解析することで、胎児の異常や突然死、早産などの兆候を早期発見できないか、欧州の研究機関などと共同研究しているのです。

    この会社には今、モニターの世界的な普及を期待する投資家や、新たな治療法の発見を期待する大手製薬会社などから、提携や投資の依頼が相次いでいます。これまでに集まった投資は、1400万ドルを超えました。

    Bloomlife エリック・ディー代表
    「彼らは、こうした医学的データには非常に価値があるということを知っています。投資家などが、女性の健康が巨大な未開拓市場だと気づいたことが、資金の流入につながっているのです。」

    アメリカのフェムテック、最新トレンドは
    アメリカには他にも、妊娠しやすい日を教えてくれるウェアラブル端末、妊娠可能期間や閉経時期の目安を教えてくれるホルモン検査キットなど、新たなフェムテックが次々と生まれています。現地の事情に詳しいデロイトトーマツベンチャーサポートのセントジョン美樹さんに、市場拡大の背景や今後の可能性について聞きました。


    (デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社 マネジャー セントジョン美樹さん)

    セントジョン美樹さん
    「アメリカでは、人口の約半数が39歳以下のミレニアル世代です。デジタルネイティブの世代でもあるため、自分の体についてデータで把握したいという傾向が強く、今後、フェムテックやスマートウォッチなどの普及によって、女性の体についての膨大なデータが蓄積されていくとみられます。妊婦や胎児に関するものだけでなく、女性ホルモンの値や月経周期などのビッグデータも集まっており、それを認知症などの病気の早期発見や治療に役立てようという研究が活発化しています。」

    これまで、ベンチャーキャピタルの投資家は中高年の男性がほとんどで、女性の健康に関する商品開発には関心が薄く、投資が集まらない状況が続いてきましたが、潜在的な市場の大きさや可能性が明らかになったことで、一気に投資が増え、大手企業との連携も活発化していると言います。今後の注目ポイントは。

    セントジョン美樹さん
    「フェムテックは当初、生理周期を記録するアプリなど、「生理」に関するものから始まり、次に、「妊娠・出産・授乳」に関するものへと広がってきました。最近ホットになっているのが、「更年期」に関するもの。これまではタブーとされがちでしたが、更年期症状を抱えながら仕事や育児をする女性が増える中でニーズが高まっていて、将来の更年期症状のタイプを予測し、最適な治療法を紹介してくれるというサービスや、更年期特有のほてり対策用のウェアラブル端末などが登場しています。

    また、健康経営や福利厚生の一環で、妊活などをサポートするフェムテックを社員に提供する動きも活発化しています。優秀な人材に選んでもらうためには、こうした取り組みが欠かせないと考える企業が増えているのです。 」

    フェムテックはまだ黎明期で、中にはエビデンスが薄いものもあるため気をつけて活用した方がいいと指摘する専門家もいますが、これが広がることで女性たちが我慢していたことを話しやすくなるなど、社会に良い変化が生まれて欲しいと感じます。フェムテックによって、女性の暮らしはどう変わっていくのか、今後も海外の動きに注目したいと思います。

    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2021年3月12日

    Vol.12 紗倉まな×NHK “あったらいいな こんな性教育”

    2月26日放送の「不可避研究中」では、AV女優の紗倉まなさんと20-40代のNHK職員6人をオンラインでつなぎ、「性教育」について議論しました。紗倉さんは、小説家や情報番組のコメンテーターとしても活躍していて、「高齢者の性」を描いたり、性的同意(性行為の同意)の大切さなどについて発言したりと、さまざまな視点から「性」について積極的に発信しています。

    なかなか誰かに話しいくい「性」の話。本音をさらけ出すことで見えてきたのは、性についてオープンに語りあえる社会の必要性、そして人と人とのコミュニケーションの大切さでした。

    「性」を堂々と語りにくい…
    紗倉まなさん(以下、紗倉さん)
    早速ですが、皆さんはこれまでどんな性教育を受けた記憶がありますか?

    秋山
    僕の中で記憶に残っているのは、保健体育の先生が教室にやってきて、手に持っていた鉄の棒を教壇の上にドンって置いて、「いいか、こうやってつけるんだ」とコンドームをそこに装着し始めたんです。

    (一同)
    えー!



    秋山
    コンドームのつけ方って大事なことだから、強烈に印象には残ったけど。

    紗倉
    衝撃的ではあるけど、保健体育の授業としては実践的でありがたいような。

    三日市
    紗倉さん、例えば「コンドームしないでセックスしたい」って、パートナーが言ってきた場合に、何か言ったりしますか。

    紗倉
    言います。でも、言えるようになったのも、けっこう大人になってからなんです。断りきれない人も多いとよく聞きます。雰囲気が作られている中で手元にコンドームがなくて、いざセックスしようとしたときに、「コンドームつけて」➡「ないんだけど」➡「じゃあ買いに行こうか」➡萎(な)える、みたいな。ちゃんと言ったほうがいいけど、ムードを壊したくなくて配慮しちゃうっていうのも、問題としてはあるのかな。

    立野
    それこそ学校で、そこだけは教えておいてほしいですよね。「拒む権利があなたにはあります。お互いの体を大事にしましょう」って。



    三日市
    でも本音って、そういう雰囲気の中で言いづらい可能性もある。また、「嫌」と言っているのに、「嫌よ嫌よも(好きのうち)」みたいな感じで相手に誤解されてしまう可能性も。

    髙田
    AVのお仕事でも「嫌よ嫌よも…」でなし崩しOKしちゃうような演技が求められることはけっこうあるんですか?

    紗倉
    よくあります。そういう演出がひとり歩きしちゃうんじゃないかというのは、女性の立場からすると本当に悩みどころで。

    (一同)
    うーん。

    紗倉
    そのようなAVに影響を受けて、嫌がっている女性を見ても、「実は好きなんだけど嫌よっていうポーズをしているだけなんだ」と誤解されちゃったら困るなと思います。それが「ふり」なのか本音なのかは本当に個人差があるところで、そこを自分に都合のいいように解釈して進んではいけないのだとは思います。

    リカD
    「嫌よ嫌よ」は、多くの場合「嫌」を意味すると思いますけどね。

    紗倉
    そうですよね。本当に嫌なときって、「嫌」としか言えないし、体もやっぱり、こわばったり硬くなるじゃないですか。

    (男性陣)
     やっぱり。そっか…。

    三日市
    「自分がこれをしたら相手はどう思うか・・・」。目の前にいる人の気持ちに想像をはせるのって大事ですね。

    リカD
    自分の身を守る知識をつけるのも大事なことですよね。もちろん体を守る術を知らないからって嫌なことをされてもいい理由には絶対にならないけど、コンドーム以外にも選択肢があって、使うかどうかを選択するのは個人によるけど知識をつけるのは大事だと思う。

    紗倉
    私、3年ぐらい前から子宮にミレーナ(子宮内避妊システム)っていうのを入れているんですけど、そういう避妊具やピルに関して全然教わった記憶がないし、実際教わっていないから、「コンドームしか選択肢がない、それがダメならもうダメ」みたいになってしまうのはすごく分かる。

    リカD
    性的同意について海外の事例とか、過去に髙田さん取材していましたよね。どうですか。

    髙田
    日本を訪れている外国人50人ぐらいに、性的同意について取材したことがあります。海外では恋愛関係のつきあい方って、(上下でなく対等な)パートナーシップが基本なので、「『イエス』『ノー』ってはっきりと言うよ」という人がほとんどでした。しかも、すごいと思ったのは、テレビカメラを構えて質問しても、カップルの男女がハキハキと話すんですよ。

    紗倉
    おおーっ。

    髙田
    そのカップルの片方は「私は昔から家庭でもそういう話をするし、今のパートナーとも、ちゃんと『イエス』『ノー』を確かめています」って。そうしたら、隣にいたパートナーも「そうだよね。それで断られることもあるし、僕が断ることもあるよ」と言っていました。

    (一同)
    へえー。

    髙田
    家族連れの人にも、「性的同意の話で取材しています」と伝えたところ、お父さんが娘さんに「何か意見ある?」と話を振って、娘さん自身もお父さんの前で意見を言っていました。

    紗倉
    ええー。

    髙田
    その子、13歳ぐらいだったんですけど、「今ボーイフレンドとつき合い始めて…」みたいなことを恥ずかしがらずに話していて。「性」が人生の中で特別なこととして浮いているのではなくて、人権として自分の意志をちゃんと伝えることの一部なのだなと感じました。

    紗倉
    セックスについてどう考えているかって、日本の中であんまり堂々と言える環境や機会もないような気がして。どこで海外との差が出てしまうのかなと、すごく感じます。隠すこととか、秘めることが美徳みたいなイメージじゃないですか、日本って。

    性教育 日本と海外でどこが違う?
    リカD
    日本の性教育と海外の性教育について、調べてみました。日本では中学1年生で成長に伴い男女の体がどのように成熟していくか、ヒトの受精卵がどう胎内で成長するかを学ぶんですが、教科書ではその前提となる性行為については触れていません。避妊方法もほとんど教えていないようなんです。

    (一同)
    そうなんだ。

    リカD
    (中学校の)学習指導要領(文部科学省が定めている教育課程の基準)に1998年から「妊娠の経過は取り扱わないものとする」という文言が含まれていて、いわゆる「歯止め規定」と呼ばれているそうなんです。

    髙田
    海外の場合、「性教育」の授業はもっと幅広い内容を教えているように思います。

    リカD
    そのとおりで、ユネスコ=国連教育科学文化機関が包括的性教育の枠組みを示した「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」というものがあります。セックスや避妊、ジェンダーの平等など“性の権利”を基本的人権の一部と捉えています。これが2009年に公開されて以来、ヨーロッパ各国や台湾などアジアでも、このガイダンスを踏まえて性教育の方針を出しているそうですよ。

    丸山
    ユネスコのガイドラインの話を聞くと、人権・文化・家族とか、性教育の捉え方がすごく広い。「それって性教育とどう関係しているの?」と聞かれても答えられないと思うくらい、「性教育」という漢字3文字が表している幅が、今まで僕らが受けてきた日本の性教育だとすごく狭いのかなって感じますね。

    紗倉
    根本的にコミュニケーション不足がたたっている部分もあるのかと思う。オープンに話したり相談しづらいがために、独学でインターネットなどでいろいろと(誤った情報も含めて)詰め込んで、それをそのまま実践して、相手を傷つけてしまうこともありますよね。 正しい性の知識を知りたくても知ることができないというのは、寂しいことだなと思います。知りたくなくて避けてきたわけじゃなくて、なかなか知る機会がない。そこはどうにかして補いたいところだし、気後れしたり恥ずかしがったりすることもなく話せる環境や、相談できる場があれば、理想的なのかなと思いました。

    ジェンダーロールにとらわれがち…
    リカD
    ユネスコのガイドラインにはジェンダーについての記載もあると説明しましたが、みなさんジェンダーロール(性的役割)について思うことはありますか?

    秋山
    セックスのときに「男はこうしなきゃいけない、女はこうしなきゃいけない」みたいなのにすごく縛られている感じはしますよね。

    紗倉
    確かに、役割分担みたいな。

    立野
    以前ジェンダーに関する番組を作ったときに、街中の人に、「男だから・女だからこうしろって言われて嫌な経験ありますか」とひたすら聞く取材をしました。たくさん出てくるんですよね。「女なんだから家事をしなさい」、「男なんだから泣くな」みたいな。「それが性行為のときにも起こっているな」とリンクしています、今。

    丸山
    それはすごく感じますよ。リードしないといけなさそうな気がするのと、そのタイミングって聞くことじゃなさそうな気がするっていうか。空気感やムードとか、「男が主導で進めていかなければダサい」みたいなことに、もしかしたら男側はとらわれているかも。

    秋山
    めちゃめちゃとらわれている。

    丸山
    よくも悪くも「男性側がリードすべし」を前提とされているイメージがあります。

    紗倉
    そうですよね、そこの負担、男性側は大きい気がしますよね。「今日はしたい・したくない」という、「イエス・ノー」に関してもそうですし、「こんなシチュエーションがいいな」という意見交換もそうですし、全体的なコミュニケーションって希薄なまま進むことが多いと感じやすいというか。

    秋山
    女性側はどうですかね。「台本にのっとってやられると冷める」とか、そういうことはない?

    立野
    でも、合意に関しては、絶対に台本どおりに聞いたほうがいいんじゃないですか。

    髙田
    私、その質問も海外の20代半ばの男の子たちに街頭インタビューで聞いたことがあります。「そういうことをすると日本だと『冷める』って言われるんですけど、どうですか?」って。そしたら「お互いの意志のほうが大切だから冷めても聞きます」って堂々と。

    秋山
    「する・しない」の同意はもちろん必要だけど、そのあとの詳細については?

    髙田
    詳細についてもたぶん同じことじゃない?それって秋山君が言わないと伝わらないじゃん。「僕はこうしたいんだけど」って。

    (一同)
    確かに、確かに(笑)。

    秋山
    あー、そっか。恥ずかしがらずに相談する。

    リカD
    「恥ずかしい」とか「聞けない」みたいなのも、ジェンダーロールに縛られがちな自分がいるからなのかもしれませんね。

    家庭で「性教育」すべき?
    紗倉
    自分の次の世代の子どもたちにはどういったことを学んでほしいか、どんな風に引き継いでいったらいいかということも、課題だと思いました。やっぱり、大人が恥ずかしがるっていうのがよくないんですかね。

    三日市
    さっきの海外の方たちの話を聞いていると、日本の社会にあるような空気感とは違うコミュニケーションがあるのだろうなっていうのは分かるじゃないですか。

    髙田
    うんうん。

    三日市
    そもそも性教育って学校だけで教えるもの?すごく大事なことだから、親が子どもにしつけとか教育をすることがあるんだったら、性についても親が教える責任もあるのではないかと思ったりします。その反面、親子でオープンに性の話をするメンタルを僕自身が持ち合わせていないのは課題ですけど。



    三日市
    逆に性教育を、例えば「生理が始まるからやりましょう」という場当たり的なことじゃなくて、もう少し幼い頃から、はっきり教えずとも何が起こって自分が生まれたかということも含めて、当たり前のように家の中でしゃべることのできるような社会が日本にもあるといいんじゃないかなって思います。

    紗倉
    学校で教えることが難しいっていう点ももちろんあると同時に、ずっと「こうのとりに運んできてもらった話」をされるよりも、家の中でも堂々と自分の性やセクシュアリティについての話ができたり、相談できたり教えてもらったりっていう環境が自然と整うことも大事ですよね。

    三日市
    それが当たり前の環境になっていれば、たぶんカップルになったときも、「私こういうのが好きなのよ」とか、「きょう私は攻められたいの」とか「きょう、俺は攻めるよ」とか言いやすい感じにはなっているんだろうな。

    丸山
    そういえば僕、親から受けた性教育を今思い出しました。中学生のときに2つだけ教えてもらったなと思うことがあって、1個は、「体にいいから毎日牛乳を飲みなさい」もう1個が「コンドームをつけなさい」っていう話。

    紗倉
    牛乳とコンドーム。

    丸山
    中学生のときに、母がサランラップの芯をボンッと目の前に置いて、「こうやってつけるんだよ、将来必要になるから覚えておきな」と。

    紗倉
    ええーっ。

    秋山
    “サランラップ母さん” かっこいい。僕の場合は家庭内で性の話をしないっていう環境で育っているから、親と性についてオープンに話す環境をつくるということには、違和感をまだ感じています。そういう意味で学校が、家庭とはワンクッション距離を置いたところで、オープンに話せる場をつくる可能性はあるんじゃないかなって思いました。

    髙田
    いろんな事情で学べない場合もあるから、男女平等や性的同意とかもちゃんとできる社会の実現のためには、やっぱり学校の義務教育の範囲内で、ある程度やったほうがいいとも思います。

    リカD
    義務教育でも学びつつ、家庭でも必要なことは教えつつですね。 だいぶ盛り上がりましたけれども、そろそろお時間です。

    紗倉
    道徳とか歴史とか、性教育っていろんなジャンルの要素が含まれているカテゴリーだなってすごく感じたので、これ、ひと言でまとめるのは難しいですね。



    秋山
    でも、それぐらい根深いし広いですよね。保健体育だけには収まらない。

    紗倉
    広いです。「地理1」とか「地理2」とかあるじゃないですか。「道徳編/モラル編」とか、「避妊編」とか、ほんと、たくさん章立てしてほしいですね。

    リカD
    いろいろな側面を含んだ包括的な性教育、日本でも取り入れたいですね。

    紗倉
    というわけで、これを持ちまして本日の会議、終了にしたいと思います。皆様、本日はご参加いただきありがとうございました。

    (一同)
    ありがとうございました。

    番組を企画・制作して…
    今回の議論を通して、年代や性別は違っていても、みんな「性」に関して何かしら抱えているのだなと感じました。自分の体と向き合って、好きな人やパートナーができて、結婚して、親になって…それぞれのステージで悩むことはあると思います。誰にでも関わる「性」のこと。命を育むこと、大切な人を傷つけない・自分の身を守るために必要な知識、心や体の悩み。どこか切り離されているようで密接につながっているとも感じます。

    4月から「生命(いのち)の安全教育」という、性にまつわる具体的なリスクを教えるための新しい教育が段階的に導入されます。今回の議論のように「タブー視せず、向き合ってみる」という機会が増えたら、どんな社会に変わるでしょうか。今後も取材を続けていきたいと思います。

    (2021年2月26日放送『不可避研究中 #性の教科書・理想の目次』担当 リカD/川田莉加)


    あなたは、キスやセックスをするときに「男だから・女だから、こうしないといけない」と感じたことはありますか?これまでにどんな性教育を受けてきましたか?それについてどう思いますか?下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。


    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2021年3月5日

    Vol.11 ジェンダーをこえて考えよう みなさんの声②

    ジェンダーについてご意見をお寄せいただき、ありがとうございます。10~20代のみなさんから多くの声が届いています。その中から、性別や性的役割が押しつけられることへの違和感、そして“生きづらさ”の解消・解決の手がかりを紹介します。
    “性別”への違和感…
    “結婚こそが幸せ”ではない

    10代・女性・福井

    私は高校生で大学への進学を考えています。将来的には自分の就きたい職に就いて、定年まで働きたいです。ですが、中学生の時から父に「おまえは女の子やからな~どうせ結婚して家庭を持つんやから大学で勉強せんでもいいしな~」や「いい旦那さんと結婚して幸せな家庭を持ってくれればそれでいい」と言われました。もちろん親孝行はしたいです。それでも「女の子=結婚」という考え方、そして結婚こそが幸せだという考え方は間違っていると思います。来年、私は生徒会長に立候補するつもりです。そこでの公約として、女子が上に立ちやすい活動を考えています。

    人間は 男性と女性だけではない

    20代・性別/男女以外

    自分がLGBTQ当事者になって、日本のジェンダーへの意識、特に『男性と女性』だけのくくりの性的役割の意識の根深さに、がく然としています。そもそもなぜ「人間は男性と女性だけ」と思っていて、なぜ「同性は好きにならない」と思っているのか。先入観だけで生きてきたのではないか。

    自分の性自認について、こんなに悩んで考えることがない社会が一刻も早く来てほしいです。 "男性"と"女性"だけを過剰に求めないでほしいです。相談することや打ち明けることすら勇気のいる社会で生きていくのはつらいです。

    女子学生限定の会社説明会に疑問

    20代・女性・福島

    現在、就職活動中です。女子学生限定の会社説明会などがあり、人事の方は、「うちの会社は育休が取りやすい」などと話します。しかし、女性(女性に限らず)は、出産や育児をすることになれば、会社が育休を取りやすい雰囲気だろうとそうでなかろうと取得しなければいけない、と思います。

    育休や急な早退などの時に、心の中で「申し訳ない」と思う必要がない環境を会社でつくることが大切なのであって、そのためには女子学生だけに話すのではなく、性別関係なくすべての学生に話すことで理解が深まると思います。育休を取得する男性が多くなっている現代で、女性だけなどと性別を限定して話す必要があるのか疑問に思います。会社がどのような意図でそのような説明会を開催しているのか知りたいです。

    自分らしくいたい

    10代・性別/男女以外・東京

    トランスジェンダー*のFTM**ですが、学校では「足を閉じなさい」、「『僕』と言うのはやめなさい」、「女らしくしなさい」と言われます。制服もズボンにしたかったけど、スカートを履かされました。いつも恥さらしを受けてるみたいで、すごく嫌です。家でも「行動や口調を女らしく」とかいろいろ言われます。モヤモヤして、とても嫌です。

    僕は、メンズ服を着たり、口調も「僕」とか「俺」にしたいんです。遊ぶ時も、「男子と二人きりはダメ」って言われますが、僕は二人きりでも平気。逆に女子が少し苦手なので、女子と二人きりは苦手です。 男になりたいといつも思います。「男・女」と分けないで自分らしくしたいです。
    *トランスジェンダー…心と体の性が一致しない人
    **FTM(Female to Male)…体は女性で、本人が認識する性「性自認」が男性。体が男性で、性自認が女性の場合はMTF(Male to Female)


    体は女性、心は中性 親に打ち明けられない

    10代・性別/男女以外

    今、ジェンダーレスが広まり、多くの学校で女子のズボンが認められてきています。すごくいい取り組みと思いつつ、それで満足していいと思えません。男子のスカートは?女子のズボンよりも認められていないですよね。僕としてはそこが気になります。

    僕は、体は女で心は中性。(相手が)男でも女でもそれ以外でも好きになります。打ち明けた友達は気にせずに接してくれます。普段スカートを履いて学校生活を送っています。まだ親にはっきりと打ち明けられていません。そこがずっとモヤモヤしています。

    心は女性、体は男性 社会に出たら居場所がない

    10代・男性

    私は心が女性で、体が男性です。高校生の頃、ジェンダーについて悩み、とてもしんどく生きていました。当時、それを打ち明けた友達がいて、今もその友達とは仲良くしています。 ですが、やっぱり親というのは、男として生きてほしいのか、「自分は女だ」と言っても、どうしても認めてくれません。

    洋服屋とかに行くと、レディースの服の方に目が移るし、「あの服かわいいな」と思いながら、いつも前を通り過ぎています。髪の長い女性を見ても、「あんなふうに伸ばしたい」と思います。自分はどうして女の子に生まれなかったのかな、と心が苦しいです。「私」という言葉を使うだけで、「〇〇さんは、『俺』とか『僕』とか使わないの?」と聞かれ、答えにも困ります。それって個人それぞれだと思います。 そして、もう一つ、高校生の頃は、居場所があったのに、社会人になったら居場所がないと気がつきました。

    男性のような格好いいものになりたい

    10代・女性・香川

    私の好きなゲームに、ピーコックというキャラクターがいて、女の子なのに男性のような服装をして、男性のような言動をとっています。私自身のジェンダーがどうなっているのかはよく知りません。多分異性愛者の女性で間違いないです。でも、ピーコックを見つけたとき、なぜか「私を見ていてくれた人がいたんだ」と涙があふれました。

    このキャラクターのファンたちのツイッター投稿を見ていると共通点があります。みんな、女性でありながら「格好いいものへの憧れ」が強いのではないかと思いました。それは「格好いい男性と恋愛をしたい」というものではなく、自分が男性を含めた「格好いいものになりたい」という憧れなのだと思います。

    性別の悩み 親世代に受け入れられない

    10代・女性・神奈川

    漫画やアニメなどで自分の性別について悩んでいる人たちの話をよく見るので、そういった知識や考えを理解している人は私の高校では多いと思います。一方で私たちの親の世代はまだ受け入れられていないようで、ズボンを履いている女子生徒を変わった子と判断したり、自分の子供は同性愛者になってほしくないと考えているようです。

    男性への圧倒的・無条件な信頼に疑問

    10代・女性・愛媛

    書類に家族の名前を書くことになったときに必ず、先に父(男性)の名前から書くこと、未成年のことで書類に親・保護者の名前を求められたときも、母ではなく父(男性)の名前を書くことが当たり前になっていることにずっと違和感を感じています。何かを新しく作ったり、契約したり、買ったりするときに必要な書類にも、女性が自分の名前を書こうとしても「ご主人様の名前でお願いします」という要求の言葉を目の当たりにします。

    日常生活に必要な物事に出向くことを求められるのは、仕事中の男性に比べて、大部分は女性だと思います(これも違和感ですが)。なのに、その場にいない男性への圧倒的な無条件な信頼の大きさに疑問や不安が募ります。

    “生きづらさ”を解消するために…
    「こうあるべき」から「こうでもいい」へ

    10代・女性・山形

    「これって、おかしくない?」とジェンダー問題を問いかけても、「それが当たり前なんだから仕方ないよ」と、変化することをあきらめたような返事ばかり来ます。考えてすぐに大きな変化が生まれるわけでもなければ、深く考えたこともないことを聞かれたら「仕方ない」にたどり着くかもしれません。私は何より、ジェンダーへの関心が薄いことが日本の弱点だと思います。もっと皆が男女のあり方を考えて、「こうであるべき」という視点から、「こうでもいいし、こうでもいいよね」といったように、肯定的に考えられたらいいなと思います。

    ジェンダーにとらわれない価値観 広げるアクションを

    20代・女性・東京

    「女性の活躍推進」が謳(うた)われるとき、想定されているのは『結婚し、子どもを産み育てる女性』という、ジェンダーにならったロールモデルばかりであることに強い違和感をもっています。 「結婚して子どもを産まない女性は社会に必要ない」と暗に言っているかのようです。今は父権的な慣習から抜け出すための最初の数歩であり、市民も社会も、より高い視座を持つ準備ができていないのかもしれません。

    確かに子どもを産むのは生物学的な女性に特有の機能ですが、それを望まない・できない「女性」もいることを忘れてはならないでしょう。今後、ジェンダーやロールモデルにとらわれない価値観がもっと広がっていくためにどんなアクションが必要かを、自分自身も考え続けたいと思っています。

    性を強要せず、個人を尊重する

    20代・東京

    私の見た目は女性です。しかしふたを開けると、ホルモンバランスの障害で妊娠出産は難しいと診断されている身体です。男性ホルモンが女性の平均以上 分泌されているためと伺いました。世間は女性に妊娠出産を求めます。それに応えられず、ホルモン値だけを見るなら男性的ですらある私は何者か、と自問自答した時期があります。

    しかし、考えたところで私は私です。容(い)れ物こそ女性であれ、私が私らしくいられれば世間に呼応せずともそれで良い。個人は個人、性別は個性のひとつでしかない。 男性にも女性にも、性を持たない方に対しても、性を強要されず、求められない社会であってほしい。「性別」という要求にすんなり応えられる人間はそう多くない。まずはそれぞれが「個人」をきちんと尊敬し、尊重し、向き合えるようになってくれれば、多くの方が抱える生きづらさを少しだけ和らげられるんじゃないかと期待しています。

    学校でLGBTQについて学ぶ機会を

    10代・東京

    僕の場合、学校で「キモい」「意味わからない」「〇〇ってLGBTなんだってw」「どうせ気分でしょw」とさんざんばかにされます。いちばんつらいのが信用してた友人にカミングアウトした次の日に「〇〇はジェンダーレスってヤツなんだって」と、悪気がないのは分かるんですが、ばらまかれてしまった。まだまだ学校で取り扱ってもらえないので、肩身が狭いです。学校教育の必修でLGBTQについてもっと学ぶ機会がほしい。そうすれば少しでもこのような問題を防ぐことができると思います。

    カテゴリー化しなければ、排除されない

    10代・東京

    私はXジェンダー*でアセクシュアル**と自認しています。自分は男でも女でもないですし、恋愛をしません。仲の良い人との関係に、「恋人」や「友達」というような区別や名前はいるのか疑問に思います。人間という上で大きな共通点があるのにも関わらず、体が男だから女だから、肌の色が違うから、容姿が良くないから、などという理由で人々を区別するのはどうかと思います。

    カテゴリー化という概念が、差別という概念を生み出すのであれば、区別しなければ排除される人間もいない。なぜそんな簡単なことができないのか。そもそも性を自認せずとも、誰もが自分らしく、自分の生きやすい生き方で生きていける社会になってほしい。人は誰でも1人きりだけど、だからこそ唯一無二の自分を探したいです。
    *Xジェンダー…自分を男でも女でもないと感じる人
    **アセクシュアル…誰かに恋愛感情をもったり 性的魅力を感じたりしない人、無性愛者


    自分の特権に気づき、違いを認める

    20代・女性・静岡

    森会長の会見を見て感じたのが、他人が何を言っても、本人が自分で自主的に意識的に気づいたり学んだり変わるという思いがなければ、本質的な変化は期待できないということ。しかし、特権を持っている人が、その特権に気づくことはとても難しい。男性優位な社会で生きてきて、差別的な発言や行動が許されてきたような人に関しては、より難しいのだと思う。もちろんあのような発言は許されるべきではないが、そのような発言を許してきた社会を変えていかなければ根本的な解決にはならないと感じる。

    もっと多くの人が問題意識を持ち、自分が持つ特権に気づき、それを自分のためではなく他人のために使い、違いが認められ、尊重され、個性が輝く社会になってほしいと強く願っている。自分の力はちっぽけかもしれないが、RBG*のように、どんな困難にもめげずに、明るい未来を信じて、自分の信念を強く持って、戦い続けたいと思う。
    *RBG…2020年に亡くなるまで、アメリカ連邦最高裁の判事を務めたルース・ベイダー・ギンズバーグ。男女平等やマイノリティーの権利などの概念を一般に浸透させた。

    自分のアイデンティティに名前をつけない

    20代・性別/男女以外

    私は、世間一般ではXジェンダーのパンセクシュアル*というアイデンティティに分類されるのかもしれません。 社会では、アイデンティティに特定のイメージが付きます。「Xジェンダーはこういう人である」というような。それは「男らしさ、女らしさ」といったところからも見て取れます。でもそれが窮屈です。自分で主体性を持って自認するアイデンティティのはずが、いつの間にか社会で表象されるアイデンティティによって自分がコントロールされてしまうから。

    だから私は自分のアイデンティティに名前を与えるのをやめました。そうしたら、しがらみから解放されました。自由になりました。特定のアイデンティティに勝手にイメージを結びつけて、他人を、そして自分を縛るのはやめませんか。もっと自由で、多様でいいのではないですか?
    *パンセクシュアル…男女ふくめ、あらゆる性の人に性的魅力を感じる人

    ニュース番組で使う色やイラストに注意を

    10代・女性

    NHKや他の放送局のニュース番組で、男女別のグラフが表示されるとき、男性が青系統、女性が赤系統の色で表現されることがしばしばある。色によって、無意識のうちにステレオタイプの男女像を、より強化しているように見える。強い違和感と反感を覚える。このような色分けは、時代遅れだと思う。ニュースで使うイラストにも注意を払ってほしい。

    性の多様性を学ぶ

    10代・性別/男女以外・奈良

    父さんには「女のくせに口答えをするな」と言われたり、先生には「どうして女のお前がリーダー的な行動を取るんだ」とどなられたり。母にはこう教え込まれました。「女が露出の多い服を着ていたら、胸が大きければ性被害にあっても仕方がない」「女の人はたくさんの男性とつき合って、その中でいい人を見つけて、結婚して子どもを産んで幸せになるものだよ」。 生まれたときに割り当てられた性別が女であったことで、どうしてこんなに苦しまなければならないのか、生き方まで決まってしまうのか。そんなモヤモヤを中学生のときから抱えていました。

    大学生になって性の多様性を学びました。性のあり方は男女2択だけではなく、他人に強要されるものではない。「自分らしく生きていけばいい」という考えに出会えました。

    1年に1つ、“生きづらさ”に目を向け、解消

    10代・性別/男女以外・静岡

    正装と呼ばれるような服は、現代ではメンズかレディースという2つの選択肢しかないに等しく、どちらにもしっかり当てはまらない不定性の自分はどの服を着れば良いのか、自分の着たいものを選べば礼儀がなっていないとばかにされないかなど相当な量の心のエネルギーを奪われます。

    ジェンダーレスな正装がもっとたくさん流通して一般的になれば、オープンキャンパスや面接などの場へ向けた準備につらさや不安などの暗いイメージが先行せず、自分の未来への明るいイメージを持つことができたろうと思います。それは不安が先行してしまう現状と比べ物にならないほどの生きる意欲になると思います。

    生きづらいことを完全になくすのはとても難しいとは思いますが、1年に1つ、生きづらさを解消していけ、10年後には10個解消できます。 少しずつでも、まずはどんなネックになること、つらいことがあるのかに目を向け、改善への歩みを進めることのできる優しい世の中であってほしいと思います。 いつか1人残らず楽しくて心地いい生活ができるように…。


    “性別・性的役割の押しつけ”について、10~20代のみなさんが抱いている違和感や“生きづらさ”について、あなはたどう思いますか? どうすれば解消・解決されると考えますか?下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。


    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2021年2月22日

    Vol.10 “性”を語りやすい社会に

    「どうしたら子どもはできるの?」

    もし 子どもから こう聞かれたら、あなたはどう答えますか?

    ネットで検索すればさまざまな性の情報に触れることができる時代。
    子どもたちが間違った知識から、誰かを傷つけてしまうかもしれません。

    しかし、「性の話はタブー」「話すのは恥ずかしい…」と感じている人も多いのではないでしょうか。性の正しい知識について、子どもから大人まで誰もが気軽に学び、語りあえるきっかけをつくろうと、さまざまなツールの開発・制作に取り組む若者を取材しました。

    (NHK名古屋 ディレクター 大間千奈美)


    “親しみやすい”性教育を
    東京都内で性教育に関するワークショップが開かれました。学校や家庭でもなかなか教わらない性の話を詳しく知りたいと、10代から40代まで幅広い年代の人が参加。講義が始まると思いきや、参加者が始めたのは、なんとボードゲームでした。


    ワークショップで性教育ボードゲームをする参加者

    「初めての生理/射精。処理方法がわからない…」
    「セックスという言葉を耳にした。インターネットで調べたら変な動画が出てきた」

    誰もが思い当たるようなできごとの数々…。

    ゲームを通して 子どもが直面する性の課題を体験してもらい、そのときどきに必要な、正しい知識を学ぶ仕掛けです。

    このゲームを制作した鶴田七瀬さんです。親しみやすい性教育を広めようと取り組む団体を2年前、23歳のときに起業しました。


    性知識を学ぶツールを開発する ソウレッジ代表 鶴田七瀬さん(25)

    鶴田七瀬さん
    「性教育とは『人生の中でこういうフェーズがあって、あなたにはこういう知識が必要なんですよ』みたいなことを一緒に歩んでいくような教育だと思います。日常に性教育を取り入れることをすごく大切にしています。」

    海外で目にした「性知識」の伝え方
    鶴田さんが性教育と向き合うようになったのは、大学生のとき。親友から性暴力の被害にあっていると打ち明けられたことがきっかけでした。


    大学時代の鶴田さん

    鶴田七瀬さん
    「どうしたらいいか わからなかったから、話を聞くことしかできなくて。何を言ったらよくて何を言っちゃいけないのかが わからず、提案もサポートもできなくて、もどかしい気持ちになりました。そして、知識が必要なんだというところにたどり着きました。」

    性について学ぼうと、ユネスコが作成した『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』をはじめ、性教育に関する本や記事を読みはじめた鶴田さん。調べていくうちに、海外では幼少期から性教育を行っている国があると知ります。実際にどのように行われているのか、自分の目で確かめるために、1年近く、デンマークやオランダ、フィンランドなどに留学しました。


    留学中フィンランドの小学校で授業に参加した鶴田さん

    そこで、学校や家庭で誰もが当たり前のように性について話し合う様子を目にします。

    オランダでは、小学校の教育に性について学ぶ“性教育月間”があり、子どもたちは図書館などで性について、自分自身で本や資料を使って調べる習慣がありました。

    イギリスでは幼児向けの動画を通して、性教育が行われていました。水着で隠れる部分は「プライベートゾーン」といい、大切なところだから人に触らせてはいけないということをポップな動画で伝えていました。

    特に印象的だったのは、その伝え方です。幼少期より、「あなたは大切」と伝えることから性教育が始まり、「その大切なあなたをどうやったら守ることができるのか?」という視点で、性の知識を深めていくのです。

    鶴田七瀬さん
    「『自分の体があまり大切じゃない』という感覚を持っていたら、自分の体を守ろうとは思えないからだと思います。そこで、まず自分の体を大切にすることを伝え、それから相手の体や気持ちを尊重することを伝えていました。それを見て、性教育は『人生の中で必要なことを考える教育』だと思いました。」

    日常で「性知識」を学べるように
    自分や相手の体が大切であることを含め、性の正しい知識を、誰もが日々の暮らしのなかで身近に学べる環境を作りたいと思った鶴田さん。帰国後、まず始めに作ったのは「性教育トイレットペーパー」です。


    性教育トイレットペーパー

    トイレットペーパーに書かれているのは、性に関するさまざまな情報です。性別にも「自分らしさ」があり、さまざまなセクシュアリティがあるということ。「性暴力」とは、同意なしに性的な行為を無理やりすること。また、相手を傷つけないために気持ちを確認することが欠かせないという「性的同意」の話などを、わかりやすい言葉で盛り込んでいます。

    開発資金をクラウドファンディングで募ると500人以上が賛同。一般向けに販売を開始し、子どもに食事や居場所を提供する 子ども食堂などには無料で配布したところ、親世代から大きな反響がありました。

    「子どもにきちんと性教育をしてあげたいと思いながらもキッカケがなかったのですが、性教育トイレットペーパーが背中を押してくれました」

    「こんなにわかりやすい教材が、私の子どもの頃にあったら良かったのに」


    「性の悩み」を気軽に話せる環境づくり
    知識を得るだけでなく、悩みを気軽に話せるようしたいと、鶴田さんが次に制作を手がけたのが、冒頭で紹介した性教育ボードゲーム。自分の経験を話すための工夫も盛り込まれています。


    『性の課題を学ぶボードゲーム』

    たとえば「通勤中の満員電車で痴漢にあった」というマスにはクイズも掲載しています。

    問題 日本では痴漢にあったことがある人は何%いるのか?

    答え 女性の70%、男性の32%が電車やバス、道路などの公共空間で 何らかのハラスメント被害を経験していると言われており、 痴漢被害にあった人の約半数が「我慢した」と答えています。

    (#WeToo Japan調査より)


    ボードゲームは、保護者や教員向けにネットで販売を始めています。また、鶴田さんは性教育のワークショップでも活用しています。この日のワークショップ。参加者のひとりの駒が「痴漢にあった」というマスに止まり、自身の体験を話し始めると、ほかの参加者たちも堰(せき)を切ったように語り出しました。


    性について自身の経験を語り合う参加者

    「痴漢にあったときに、親に全然話せなかったし、相談できなかった」

    「私は痴漢にあったときに、母親から『なんで大声を出さなかったの?』と聞かれたその ひと言で二度と相談しなくなりました」


    「知識を得るだけでなく、性の悩みを安心して話すきっかけになる」と、子育て中の親や養護教諭などにも好評です。


    ワークショップで参加者と話す鶴田さん

    鶴田七瀬さん
    「話しても大丈夫と感じさせる環境を大人側がつくっていくことが重要。日常生活の中に性教育を取り入れることによって、もっと話しやすい環境、安心して相談できる場所ができるのではないかと思っています。」

    取材して…
    国の調査(「男女間における暴力に関する調査 報告書」内閣府男女共同参画局 平成30年3月)では男女あわせて20人に1人が「無理やりに性交等された被害経験がある」と回答していますが、そのうち女性の約6割、男性の約4割は、誰にも相談していないという実態があります。

    鶴田さんの取り組みは被害が起きてからではなく、起きる前に私たちが知っておくべき情報を伝え、悩みを相談できる環境をつくることにつながっていると感じました。性被害から自分や大切な人を守るために、性の話をタブー視せず、日頃からしっかり向き合うことが何よりも大切だと強く思いました。

    あなたが 子どもの時に知っておきたかった性の知識はありますか? 子どもたちに伝えたい、伝えておいたほうがいいと思う 性の知識はありますか? 下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。


    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2021年2月16日

    Vol.9 “わきまえる”の波紋

    東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森会長が、みずからの女性蔑視と取れる発言の責任を取って辞任する考えを明らかにしました。

    「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」という発言に加え、「組織委員会にも女性がいるが、みんなわきまえている」という発言に対しても、SNSを中心に大きな議論が起きました。広がる波紋を取材すると、スポーツ界だけでなく、私たちの社会、組織のありように対する疑問の声が聞こえてきました。

    (「おはよう日本」取材班)

    #わきまえない女 声を上げる人たち


    「わきまえない女、ここにいます」
    「わきまえろと言われても声を上げ続けるのが私たちのやり方です」


    森会長の発言以降、「わきまえない女」というキーワードをつけた投稿が、SNSで相次いでいます。

    特に多くの賛同を集めているのが、家庭に居場所がなかったり、性搾取を受けたりしている10代の女性に衣食住を提供する活動をしている仁藤夢乃(にとうゆめの)さんの投稿です。青少年の支援について話し合う行政の会議に参加した際、出席者のほとんどが男性で、議論が既定路線で進む様子にショックを受けたとつづっていました。

    『初めて行政の会議の委員になったとき、長年委員をしていた男性たちが、事前に決められた方向性やゴールに向けて誘導的な発言をするだけで、そのためのアリバイづくりみたいになっている会議に驚きショックだった。現状を変えるため、たくさん発言した。これからもそうしていく』


    (一般社団法人Colabo(コラボ)代表 仁藤夢乃さん)

    仁藤夢乃さん
    「“もとから考えられている路線と違うことを言うなよ”という空気を感じながら、言うことは言うようにしています。女性差別とか、性搾取とか、多くの女性が困っている問題が放置されてきたのも、男社会で男性たちが権力を握って決めてきたから。現状を変えるためにも、多くの女性がはっきりと発言をして議論の場、決定の場に入っていくことが重要だと思っています。おとなしくしていることが『わきまえる』ことになってしまうという日本社会の現状が、女性差別の深刻な状況をあらわしていると思います。」

    わきまえたこと、ある?


    街の人に聞くと、男女を問わず、“わきまえた” 経験があるといいます。

    20代 女性
    「前の会社だと男社会という感じだったので、強気な『こうした方がいいのではないですか』という発言はしづらかった。」

    18歳 男性
    「部活とかだったら、年代が3世代で後輩先輩の差があるので、先輩に意見するときは自分の感情をちょっと抑えてというのが “わきまえた”経験かな。」

    70代 男性
    「男の人は出世しなきゃいけないところがあるじゃない。男の人だけでないかもしれないけど。みんな中央に向いている。」

    “わきまえる”リスク 企業トップも・・・
    こうした中、“わきまえる”ことについて危機感をにじませる意見を投稿した人がいます。

    「これは私たち日本が育んできた文化・社会でもあります。私としては猛省する」

    投稿したのは、国内最大級のフリマアプリ、メルカリの代表取締役・CEOの山田進太郎さん。“わきまえる”ことで多様な意見が出づらくなったら、企業は生き残れないといいます。


    (メルカリ代表取締役・CEOの山田進太郎さん)

    山田進太郎さん
    「サービスが広がるほど、年齢、性別、外国人など、さまざまな方々の多様なニーズに対応するためには、社内で多様な声があるということがすごく重要。“わきまえる”というのは明確なマイナスがあると思う。」

    山田さんはいま、社内で萎縮せずに意見を言える環境作りを模索しています。

    山田進太郎さん
    「誰も意見を言ってくれなっちゃったら、(自分が)どんどん“裸の王様”になってしまって、いくら気をつけていても(周りが自分に意見を)言いにくいことなどあると思います。だから、まずは みずから自覚することが大切。言い方もそうですし、“言える文化”というか、言い続けることで“言える文化”にしていくしかない。

    私には子どもがいますが、今のこの社会、世界のまま、子どもたちに残せないと感じています。今回の件をきっかけにして、いろいろな人がダイバーシティを考えることが重要だと思います。 」

    取材して感じたこと
    そもそも「わきまえる」とは、「ものの道理を十分に知る」という意味で、必ずしも「黙ったほうがいい」というわけではないはず。しかし、改めて自分の経験を振り返ると、「リーダーは男性の方がいいだろう」など性別を理由に、プロジェクトの代表を決める場で、やってみたい意志があったものの立候補しなかったことがあったのを思い出し、反省しました。

    今回の発言をきっかけにして、知らず知らずのうちに「言っても仕方がない」と思っていた問題に対して、きちんと声を発していく社会にどうすれば変えていけるのか、考え続けていきたいと思います。

    みなさんから寄せられる声をもとに取材を続けます。ご意見をお待ちしています。

    あなたは、職場、学校、家庭などで、性別によって役割や仕事を固定されたり、格差を感じたりしたことがありますか?そのような格差をなくすためにどうすればいいと思いますか?
    ご自身のエピソードや周りで見聞きした経験でもかまいません。
    下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。

    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2021年2月15日

    Vol.8 予期せぬ妊娠 命つなぐ マタニティホーム

    去年11月、神戸市の元女子大生が、就職活動中に羽田空港のトイレで出産し、赤ちゃんの遺体を遺棄したとして、逮捕される事件がありました。生後間もない赤ちゃんが母親に遺棄され、亡くなるケースはあとを絶たず、おととしまでの16年間に全国で156件に上ります。

    予期せぬ妊娠に悩む女性たちに支援が届いていれば、命を救えたかもしれない…。焦りが募るなか、去年12月、妊娠で追いつめられた女性たちの生活を支える滞在型の支援施設、マタニティホーム(妊婦の家)が神戸市に開設されたと聞き、取材しました。

    全国でも珍しいこの取り組み。そこから見えてきたのは、誰にも頼ることができず、孤立に追い込まれる母子の実態でした。

    (神戸放送局 記者 井上幸子、おはよう日本 ディレクター 朝隈芽生)


    妊娠で追いつめられた女性に “ぬくもりある居場所”を

    (マタニティホーム Musubi室内 撮影:小さないのちのドア)

    神戸市内の住宅街にある「マタニティホーム Musubi」。寄付で運営され、滞在費は無料。助産師や保健師などのスタッフが24時間常駐し、妊婦たちの体と心のケアから、病院や行政へのつきそい、さらに出産後に体調が落ち着くまで、さまざまなサポートをしています。

    入居する女性たちそれぞれに個室が準備されていますが、昼、晩の食事は、スタッフを含め、みんなでテーブルを囲みます。入居者からのリクエストに応えたメニューや手作りのケーキが並ぶこともあります。時には入居者同士が連れ立って日用品の買い物に行くなど、和やかな雰囲気に包まれていました。

    入居者専用のセキュリティ対策の施された出入り口があって、外部の人は入れないようにするなど、プライバシーも守られています。産まれてきた赤ちゃんのためのおもちゃや絵本なども備えられていて、女性たちが少しでも安心して出産を迎えられるよう、さまざまな工夫や配慮がされているように感じました。


    (一般社団法人「小さないのちのドア」代表 永原郁子さん<右>)

    この施設を運営するのは、神戸市の団体「小さないのちのドア」です。代表を務める助産師の永原郁子さん。永原さんたちは3年前から予期せぬ妊娠に不安を抱える女性たちの相談を受けつけてきました。これまでに電話やSNSで寄せられた相談は1万3000件に上ります。

    『陣痛が来ています。でも誰にも相談できない』
    『たった今、ひとりで出産しました』
    『赤ちゃんをどうしたらいいかわかりません』


    家族にも打ち明けられないまま、ネットカフェや知人の家を転々としている、金銭的に余裕がなくて病院に行くことができない、母子手帳も持っていないという女性も少なくありません。特に、去年の春以降、新型コロナウイルスの感染拡大と比例するように相談は増えました。1回目の緊急事態宣言が出された時期には、小学生を含め、10代からの相談が急増。また、コロナで会社が倒産して仕事と住む場所を失い、生活費を稼ぐために援助交際や風俗業に入らざるを得ず、妊娠してしまったという女性も少なくありませんでした。


    (「小さないのちのドア」にSNSで届いた相談)

    助けを求めるせっぱ詰まった声の先で、小さな命が危機にさらされている…。それを痛感した永原さんは、相談を受けるだけでは命を守りきることができないと、マタニティホームの開設に踏み切りました。


    (「小さないのちのドア」代表 永原郁子さん)

    永原郁子さん
    「話を聞くだけではもうどうにもならない。『住むところがない』『食べていない』と言われたら、電話ではもうどうにもならないですから。『信頼してもいいですか』と伸ばされてきた細い手をそっとつながないと、すっと引っ込められてしまう。だからこそ、ここから先は別のところに引き継ぎます、とは言えません。相談から生活支援、そして産後の自立支援まで一貫して行えるマタニティホームのような受け皿が必要なんです。」

    “産んでも育てられない…” 

    (ハルカさん(仮名)・18歳)

    去年12月、マタニティホームが開設された数日後には、中国地方や九州などから女性が入居し、5部屋ある個室のうち、4部屋は埋まりました。私たちは入居者の女性の一人に話を聞くことができました。

    出産を間近に控えた18歳のハルカさん(仮名)。去年10月、体に違和感を覚えて病院に行くと、すでに妊娠7か月と診断されました。中絶が許される期間をすでに過ぎていたため、医師から「産むしかない」と告げられました。仕事のストレスで体調を崩しただけだろうと思っていて、妊娠は想像もしていなかったといいます。

    パニックになったハルカさんを見て、病院が「小さないのちのドア」につないでくれたといいます。

    ハルカさん
    「(病院は)このまま私がひとりで帰ったら自殺してしまうのではと思ったのかもしれません。いますぐ『小さないのちのドア』に相談に行きなさいと言われました。妊娠のことを親にも友達にも言えず、どうしようと思っていましたが、永原さんたちと話すことで落ち着くことができました。」

    ハルカさんは子どもの父親についても言葉少なに語ってくれました。「つきあっている人ではない…」。妊娠のことを伝えても人ごとのような反応が返ってきたため、出産やこれからについて協力を得ることはできないと思ったそうです。

    赤ちゃんもお母さんも守りたい
    出産予定日が2か月後に迫る中、生まれてくる赤ちゃんを誰がどう育てていくか、ハルカさんは永原さんたちと繰り返し相談しました。妊娠によって高校を卒業してから働いていた会社を辞めざるを得ず、収入はありません。永原さんや保健師らの仲介で、家族に妊娠を伝えることはできましたが、サポートを得るのは難しく、1人で育てていくことに大きな不安を感じていました。

    悩んだ末、ハルカさんは「特別養子縁組」で新しい家庭に子どもを育ててもらうことを決断しました。特別養子縁組は、さまざまな事情から実の親と暮らせない子どもを救うために、育ての親と法律上の親子関係が認められる制度です。

    ハルカさん
    「まだ自分も若いし、育てる自信がないから。中途半端な状態で、ひとりで育てるよりは託した方が赤ちゃんも幸せになると思う」


    (ハルカさんと永原さん)

    しかし、出産予定日が近づくにつれ、ハルカさんの気持ちは揺れていました。ハルカさんのこうした様子を見て、永原さんは優しく語りかけました。

    永原郁子さん
    「赤ちゃんの幸せのために新しいお母さんに託すんだから。すばらしい選択をしたんだって思えばいいからね。胸張って生きていったらいいからね。」

    その後、ハルカさんは元気な男の子を出産。そしてまもなく赤ちゃんと別れ、ホームを去っていきました。その時、赤ちゃんにメッセージを残しました。

    『私にとって、宝物が増えました。元気に生まれてきてくれてありがとう。』

    赤ちゃんは今、新しい家庭で元気に育っています。

    安心して産むことのできる場所があり、頼れる人がいれば、赤ちゃんの命も、お母さんのその後の人生も守ることができると、永原さんは確信しています。



    永原郁子さん
    「命がつながることができて、うれしいです。お母さんたちはここに来られるときは、涙を流し、つらい顔をしている。でも、ここで安心して出産して、笑顔に変わって出ていくことができる。そんな場所にしたいです。」

    永原さんたちは、今後、お母さんたちの就労支援まで広げ、母子それぞれが安定して暮らせるようにサポートしていくということです。

    孤立の原因は、相手の男性や周囲の心ない態度
    予期せぬ妊娠に苦しむ女性たちを取材していて、強く思うのが、相手の男性の姿が見えないということです。ハルカさんのように、ひと事のような対応をされ、協力を得られないケースだけでなく、妊娠を伝えたとたんに連絡が取れなくなってしまうことも多いといいます。

    相手の男性の無責任さに加えて、周りからの心ない言葉が、女性たちを孤立に追いこんでしまうと永原さんは感じています。

    永原郁子さん
    「妊娠したのは自業自得だとか、非難するような言葉が女性たちに向けられることがあります。『育てられないなら中絶しろ』とか、『風俗で妊娠しても女性の責任』というような風潮もあります。でも、女性は一人で妊娠したわけではありません。風俗で働かざるを得ない状況に追い込まれてしまった背景があるかもしれません。

    相手の男性も周りの人たちも、そういうことをしっかり認識して、責任ある行動をとってほしい。女性を責めるのではなく寄り添って、どうすれば女性も赤ちゃんも救うことができるのか、一緒に悩み考えてほしい。

    また、親から虐待を受けた経験があるなど、身近に頼れる人がいないというケースも少なくありません。妊娠が支援と出会うきっかけになるような、みんなで女性たちをあたたかく支えられる社会であってほしい。 」

    マタニティホームを取材して…
    「自分が救われたように、誰かの救いにつながるのであれば」と 今回、匿名を条件に話をしてくれた入居者の女性たち。中には、ネットカフェなどを転々としたあとに ようやくホームにたどり着き、疲れ切ってしばらく眠り続けていた人もいました。初めのうちは、心を開いてもよいのだろうかと警戒する様子の人もいました。しかし、手作りの食事をみんなで囲み、悩みを打ち明ける中で、自ら命をつなぐ決断をし、さらに表情も穏やかになっていったのが印象的でした。

    今回の取材を通して、予期せぬ妊娠で孤立してしまった女性たちの生活を支える取り組みが全国に広がる必要があると強く思うと同時に、予期せぬ妊娠を防ぐための性教育、そして、妊娠で悩む女性たちを孤立させない社会をつくることが早急に求められていると痛感しました。これからも取材を続けます。

    ●一般社団法人 小さないのちのドア (24時間 対応)
    ホームページ https://door.or.jp/  (※NHKホームページを離れます)
    電話     078-743-2403
    メール    inochi@door.or.jp 

    もし、あなたが、あなたのパートナーや大切な人が予期せぬ妊娠をして悩んでいたら、どうしますか?どうしたら救われる・救うことができると思いますか?みなさんのご意見や記事への感想などを下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。

    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2021年1月15日

    Vol.7 脱コルセット “女らしさ”という束縛から脱却する女性たち

    いま “脱コルセット”が若い女性たちの間に広がっています。 コルセットは体を締めつける道具のことですが、“脱コルセット” という言葉は、化粧や髪型など『女性はこうあるべき』という固定概念や、それを押しつける社会に抵抗する意味で使われています。

    大学生のArataさんは、かつて1時間かけていた化粧をやめ、髪を刈り上げています。きっかけは交際していた男性からの ある“ひと言” でした。去年”脱コル”した20歳のヒナさんの動機は、日頃から無意識な発言をする父親への反発でした。社会でつくり出されたイメージから脱却しようとする動きが高まるなか、”コルセット” を押しつけるような広告をやめた企業もあります。
    “脱コル” の背景に何があるのか、取材しました。

    (制作局 第2制作ユニット ディレクター 篠塚 茉莉花)

    若い女性たちに静かに広がる“脱コル”
    「脱コルセット」または「脱コル」が最近SNSを中心に若い女性たちの間で静かに広まっています。コルセットとは体を締め付ける道具。この場合、女性を束縛するものの象徴として使われ、SNSで「脱コル」と検索すると「化粧をやめた」「脱毛をやめた」「“女性らしい”髪型をやめた」といった投稿が出てきます。

    NHKが専用ソフトで調べたところ、「脱コル」という言葉での投稿数はことし(2020年)夏から急激に増えていて、今も毎日のように投稿されています。


    (NHKが専用ソフトで調べた「脱コル」投稿数の推移)

    脱コルを実践する大学生 Arataさんの思い
    大学生のArataさん(24)は脱コルを実践する女性の1人。ことしの春、脱コルに踏み出しました。左の写真は脱コルを知る前、右は脱コルを実践している今の姿です。


    (脱コル前と現在のArataさん)

    Arataさんは脱コルでいろいろなことをやめたと言います。例えば、それまで足が痛くても無理して履いていたヒールの高い靴。化粧道具も今はクローゼットの奥にしまわれています。


    (クローゼットの奥にしまわれた化粧道具)

    以前は念入りに化粧をし、常に人にどう見られるかを意識していました。

    Arataさん
    「リップガッツリ…。ヘアセットが結構時間かかってて、多分1時間くらいはかかっていましたね。」


    (髪を刈り上げるArataさん)

    今、髪は自分で刈り上げています。脱コルは実践者によってさまざまな捉え方がありますが、Arataさんにとっての脱コルは、女性だからやるべきと思っていた、自分を束縛することからの脱却です。

    Arataさん
    「私自身の脱コルは、社会的な女性らしさからの脱却です。しんどくなくて、無理をしてなくて、何かのために自分を変えていない状態かなって思います。」

    きっかけは、髪を短くした時に交際していた男性から言われた言葉。女性を自分の付属品のように捉えていると感じました。

    Arataさん
    「『俺に恥をかかせたいのか』っていうふうに言われて、どういうことって思って。(彼は)もともと私の女らしいイメージがあって、それが崩れたから怒り始めて、私らしくあることじゃなく、女らしくあることを求められているのかもしれないって思い始めて。(だから私は)人からの評価を気にしない。自分は自分で自分らしく生きていく。」

    7月、Arataさんは、毛の処理をやめた自分の腕の写真をSNSに投稿。すると「5,400いいね」と、多くの共感を集めました。しかし「女性には毛が生えない」というイメージを主張する人もいて、大きな溝を感じたと言います。


    (ArataさんがSNSに投稿した自分の腕の写真)

    Arataさん
    「まさにこれです。『女もどき』。生えてたら女じゃないっていう。みんなの描くイメージの中の女性って、毛が絶対生えてなくて…これは私おかしいと思ってて、生えてても女ですよ、変わらないですよって。」

    脱コル実践者が相次ぐ背景は?
    脱コルは、美の規範が厳しい韓国や日本で実践する女性が相次いでいます。その背景には何があるのでしょうか。フェミニズム理論の専門家で、女性性の規範について研究している東京大学大学院の清水晶子教授は、社会に蔓延する「女性はこうあるべき」という固定観念への「違和感」がSNSで広まっていると指摘します。


    (フェミニズム理論の研究者 東京大学大学院 清水晶子教授)

    東京大学大学院 清水晶子教授
    「女性に常にまず何よりも美しさっていうものを求める限りは、私たちの社会が女性に、まず賞品(男性の付属品)であることっていうのを求めています。その『男性に価値を与えるようなプライズ(賞品)になりなさい』という要請を拒絶することは、家父長制に対して抵抗するということでもあります。」

    脱コルは「女らしさ」を押しつけてくる父親への抵抗
    この夏から脱コルを始めたヒナさん(仮名・20歳)は、社会が女性に求めるイメージは、「家庭」で押しつけられると話します。脱コルの動機は、父親への反発。日頃から、女性を従属的に見る父が嫌でたまりませんでした。


    (夏から脱コルを始めたヒナさん (仮名))

    例えば父親は、テレビで企業で働く女性のインタビューを見ると「女なんて能力もないくせに管理職になるのはおかしい」といった発言をすると言います。

    ヒナさん
    「父は、結婚して出産して子育てをするのが、女性の役割であるっていうのを信じてやまないので、私はそれが受け入れられないなって思って。」

    父が無意識に発する言葉に苦しめられているヒナさん。就職活動を控え、社会からも「女らしさ」を押しつけられるのではと不安を募らせています。

    社会が要求する「女らしさ」に従わないと…
    脱コルについて注意しなければならないことは、脱コルは女らしさをやめて男らしくしようとしているわけでは決してない、ということです。Arataさんもヒナさんも社会や周囲の人から押しつけられる「女らしさ」から脱却するために脱コルしている今の状態が、上のような姿なのです。また、脱コルは女性たちの話なのですが、イメージの押しつけについては、男性も苦しめられているという声があります。例えば、「体毛がないと男らしくない」とか「筋肉がないのは頼りない」といった固定観念です。

    ただ、フェミニズム理論の研究者である東京大学の清水晶子教授によると、「女性の場合は、社会のイメージに従わないとこうむる不利益が大きい。職場などで『礼儀に欠ける』『協調性がない』『分をわきまえない』というマイナス評価を受ける」と話していました。

    そうした「社会のイメージ」は広告などのメディアから押しつけられているという指摘もあります。ネットの広告で、脱毛しないと「汚らしい」とか、肥満体型だと「女として見られない」といったセリフがあります。


    (“コンプレックス広告”)

    人のコンプレックスを過剰にあおる広告は「コンプレックス広告」と言われ、女性たちを苦しめています。

    「コンプレックス広告」がつらい

    (コンプレックス広告に悩む大学生のアキさん)

    「コンプレックス広告」を見る度に「つらくなる」という大学生のアキさん。元々、中学時代から体毛について悩んできました。脇の処理をしないといじめられるのではと、恐怖さえ抱いていたと言います。脱毛サロンに行きたいと母に泣いて頼みこみ、高校に入ってから脇の医療脱毛を受けたこともありました。

    しかし今年の夏、アキさんも脱コルを始めました。SNSでArataさんの腕の毛についての投稿を見て、固定概念が崩れたことがきっかけでした。それでも、脱毛の広告を目にするたびに、やはり処理をしなくてはいけないのではないかと、不安でたまらなくなると言います。

    アキさん
    「目に入る広告、脱毛しなきゃみたいな、体毛を恥ずかしいよっていう…なんでここまで厳しく女だからって、こんな広告ばっかり目にしなきゃいけないんだって。しんどいですね。」

    コンプレックス広告をなくしたい Arataさんの活動
    脱コルを実践中のArataさんは、インターネットでコンプレックス広告に抗議する署名活動に取り組んでいます。同様の署名活動をする全国の仲間と協力して、広告主の企業やネット企業本社などへの働きかけを行っています。


    (仲間の署名サイト)

    Arataさん
    「これから多分企業の反応も少しずつ増えるんじゃないかな。」

    企業が変わる コルセットを押しつけない広告を
    「女性はこうあるべき」というイメージを押しつける広告が問われ始める中、渋谷の街にこの夏、斬新なポスターが出現しました。キャッチコピーは、「ムダかどうかは自分で決める」。この広告を出したのは老舗の刃物メーカ-。使い捨てカミソリのシェアは国内トップです。


    (刃物メーカーの広告)

    自社の商品を一見否定するようにも見える広告を企画した齊藤淳一さんは、企業のブランドイメージを上げ、若者にささるメッセージは何か探ろうと、雑誌で20代のアーティストの対談を企画しました。


    (ラッパー あっこゴリラ)

    対談の中で、脇の毛を生やした姿を見せるラッパー、あっこゴリラさんが口にした言葉「人はそれぞれ違う もっと選択肢を」が、広告のヒントになりました。


    (刃物メーカー広報宣伝部 齊藤淳一さん)

    刃物メーカー広報宣伝部 齊藤淳一さん
    「体毛に対する社会の圧力とか見えないプレッシャーみたいなものは、若者を中心にすごく感じています。」

    そこでことし6月、「ムダかどうかは自分で決める」というキャッチコピーの新しい広告案をプレゼン。意外にも反対はありませんでした。


    (齊藤さんの上司 上保大輔さん)

    齊藤さんの上司 上保大輔さん
    「最初に聞いた時はさすがにカミソリメーカーなのでちょっと戸惑いもあったんですけど、メッセージを出すのもメーカーの責任だと思いました。」

    そして、コンプレックス広告に反対するArataさんと仲間たちの署名活動の盛り上がりを受けて、この夏の公開に踏み切りました。

    刃物メーカー広報宣伝部 齊藤淳一さん
    「『私って周りの視線を気にしてこういうことをしていたのかもしれない』という気づきとか議論とか起きたらうれしいなって感じています。」


    取材して…
    脱コルについてはいろいろな考え方・立場があり、取り組み方も本当に人それぞれでした。ですが、脱コルは多くの人にとって、今の状態が社会から押しつけられた「女らしさ」のイメージによるものではないかを問い直す、あるいは他人にイメージを押しつけていないか振り返るきっかけになっているように感じました。Arataさんの発信でアキさんが脱コルを始めたように、そうした大きな変化につながるのではないかと感じました。また、女性や男性は「こうあるべき」という固定観念は、雑誌やテレビなど「メディア」そのものも責任が大きいと痛感しました。無自覚にそうした表現を行っていないか―私自身、メディアの責任を意識して放送を出していきたいと思います。

    “脱コルセット” や “コンプレックス広告”について、あなたはどう思いますか?
    記事への感想やご意見などを下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。


    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2020年12月25日

    Vol.6  ジェンダーをこえて考えよう みなさんの声①

    社会的・文化的に作られた性差「ジェンダー」や、“思い込み”から生まれる偏見「ジェンダー・バイアス」について、みなさんからさまざまな声が寄せられています。日ごろから感じている疑問や”モヤモヤ”、どうすれば解決できるのか…。
    あなたも一緒に、ジェンダーをこえて考えてみませんか。

    ジェンダーについての “モヤモヤ”…


    “男のくせに” “女々しい” とは…

    「男のくせに」「女々しい」という表現があります。前者は『男』が『女』より優れている、上であるなどというのがあり、後者は『男』が下の存在である『女』のような真似(まね)をしているから言われるというのもあります。 その非対称性を無視して語られているのを見たりするといつもモヤモヤします。

    夫に暴行されていた妻を助けた女子プロレスラーを「男前」と評して、後輩を殴った力士(の親方)が「女々しい」と報道されたことがあったそうです。 このように、女の人がいいことをしたときに「男前」とほめられたのに対し、男の人が悪いことをしたときに「女々しい」などと非難されたのを見たときもモヤモヤしました。 なぜ性別を持ち出すのかなと思います。

    10代・女性

      



    なぜ女性だけに防犯ブザー?

    交通事業に関わる社員です。職場で女性社員のみ、防犯ブザーが配布されています。有事の際に必要とのことですが、このご時世、男性社員が被害に遭わないとは限りません。 防犯上必要との理由ならば、男女問わず配布すべきであり、どちらか片方に配布というのは、男性・女性双方に対する差別ではないでしょうか。

    男性・愛知

      



    人材の半数を活用・育成しきれていないのは損失

    ジェンダーの問題は、「○○するのが当たり前」という思考停止が原因ではないでしょうか。男性は稼いで当たり前、養えない男性は結婚するに値しない、など。

    男女差別は文化の問題でもありますが、経済に与える影響を考えたときに、人口が少なくなっていく日本では男性だけが働いて稼いでも生産性は上がりませんし、教育分野で男女平等に育てている日本でいよいよ社会に還元するという段階で、人材の半数を占める女性を活用・育成しきれていないのは相当な損失だと思います。女性が能力伸長をあきらめて、ケア労働にばかり回る社会では、どれだけ男性が頑張っても、男女同等に活躍する国がある限りは、その国に人材活用の分野で差がつけられるのは仕方がないことかと思います。

    20代・女性・東京

      



    ジェンダー問題を語れない空気がある

    ジェンダー問題を語ろうとしても、できる人とできない人がいる。そうした問題を、空気を乱すもののように見ている人がいることが現状ではないだろうか。当然のようにセクハラもあるし、性的マイノリティへの理解はもっと根深いといえると思う。

    20代・男性・宮城

      



    日頃から「おかしい」と感じていること

    選択的夫婦別姓が未だに実現していないのはおかしい。名前を知らない誰かのことを呼ぶときに、 「おばあさん」「おじいさん」 「おばさん」「おじさん」 「おねえさん」「おにいさん」 など、血縁に基づいた、性別を断定する呼び名ばかりなのが不便。 新しい言葉が欲しい。緊急避妊ピルが薬局で売られるかどうかについて、日本産婦人科医会の男性が「どんな時も薬局で買えるようにするのはおかしい」と反対を表明しているのはおかしい。

    日頃から「おかしい」と感じていること、もっとこうなればいいなと思うこと、知りたいと思うことがたくさんある。     

    30代・女性・愛知

      



    異性愛が前提の番組にギモン

    私が常々思うことは異性愛中心主義の根深さです。恋愛、結婚するのが当たり前。そして、それが異性であることが前提の番組作り、会話の進め方が多いです。ジェンダー、セクシュアリティーは多様だとはいうが、それは口で言うだけで、その考えを実際に取り込んで会話を進めている番組は少ないと思います。

    ぜひ、恋愛、結婚、異性愛であることが前提という風潮に疑問を持つような番組を作ってほしいです。         

    20代・女性・東京

      



    男性も悩んでいます

    男性も悩みや生き方で悩んでいます。 男性であっても、その性がつらい人々の多様さにも焦点を当ててほしいと思います。 ちなみに私は男でいることが嫌になり、今年から自宅では女性のファッションを身に付けています。性欲は男性の性器、女性との性交にあり、複雑です。 女性になりたい、そして女性が好きです。

    50代・男性・東京

      



    “女らしさ”は“男性のため”!?

    人が自分を都合の良いように扱うために、“女性らしさ”を使われていたことに幼い頃から傷ついてきました。私にしか割り振られないものは、家事、お客様の接待。いずれ結婚した女性がするからというのです。結婚や出産は誰しも望んでいるわけじゃないし、女性の仕事が家事労働ということにも納得がいきませんでした。ジェンダー規範が嫌で、「女性でなくていい!女性らしさに当てはまらない私は女性じゃない!」と長きにわたり、“女性よりのXジェンダー”を自認してきました。

    「女らしくしなさい」には、おとなしく従順で「男性のために役立て」と言われている気さえします。「女性らしさ」と言われているものが必要にされるときは、会社などの組織の中で、男性の目がある時です。同性といるとき、女らしさなんか気にもとめません。自分を魅力的に見せたい場合ならまだしも、そうでない時さえ、マナーとして男性を立てる必要が出てきたり、身だしなみをきちんとしたり。女性らしくしていないと社会人失格のような扱いさえ受けます。自立した人間同士なのに、いびつな形だと思います。

    20代・女性・栃木

      

    ジェンダー・バイアスをなくすためには?


    職業や立場で縛ることをやめよう

    看護師の男性です。「女性はまめでやさしいから介護看護職向きだけど、男は雑で荒っぽい」という潜在的な性別観を、患者家族はもちろん同僚の姿勢に感じ、悩まされることが結構あります。逆に“らしさの呪縛”を解くために、男が化粧したり、女が大股を広げたりすることであらがうことにも違和感を覚えます。

    少なくとも、職業や立場で縛るのをまずやめないと。社会構造だけでなく、心理的精神的構造に性別固定的観念がくみこまれているので、変えられるところから変えないと。

    40代・男性・鹿児島

      



    「そういう人もいる」と認めていくことが大切

    先日、男性のタレントさんがテレビで、お肌のケアに気をつかったり、化粧品にこだわったりしていると話しているのを聞いて、両親が「男がメイクなんて、気持ち悪い」と言いました。生きてきた“時代”の考えが無意識的に働いただけで、悪意はなかったのだと思います。

    でも、「気持ち悪い」「男なのに」「女なのに」そういう言葉ひとつひとつに傷つけられ、好きなことを好きにできない方々はまだまだたくさんいるかもしれないと思うと、とてもつらくなります。 好きなことを好きなだけできない、周りの人間に認めてもらえないのは、誰にとっても苦しくてつらいものだということは、少し想像すれば分かることではないでしょうか。

    例え理解できないことであったとしても、「そういう人もいるんだな」と認めていくことで、みんなが息苦しくない世の中になっていくのではないかなと私は思います。もっともっと良い時代に向かっていきますように。

    20代・女性・愛知

      



    性別が “星座くらいの存在感”になってほしい

    「性別が生き方・人生に影響してはならない」と考えています。性別は何かしら与えられてしまうもの。せめて「星座」くらいの存在感になってほしい。蟹座の人は獅子座の人より偉い、なんて誰も思いませんよね。性別も本当はそんなモンです。性別によって相手を縛ったり、自分を縛ったりするのはおかしなこと。自由と寛容の社会にしていきましょう。人はみんな同じ「人」です。

    30代・女性・神奈川

      



    少数派がいることを見える化

    身長150センチ台の男性です。背の低い男もいろいろ苦しんでいます。身長が低いことを笑われることは当然、既成の靴や服がほぼ無いなど日常的につらい思いをしています。何もしなければ、多数派に圧されるのは当然です。

    少数派が居ることを見える化して、差別しないだけでなく、可能な範囲で少しだけ手をさしのべることの大切さを意識することが大切なのではないでしょうか?

    50代・男性・愛知

      



    知ることが理解につながる

    日本では「~らしさ」を大事にしている風習があるので、つらい思いをされてきた人もいると思います。ですが、知ることから、理解につながると思っています。勇気のいることだと思いますが、これから理解者は増えるはずです。 

    60代・女性・埼玉

      



    賛成・反対 いろいろな意見を聞く

    男性だからカッコよくあってほしい。女性だからかわいくあってほしい。と思うのは普通だと思う。でも、それを他人に押しつけるのは違う。「トランスジェンダーだから変」とか「性同一性障害だから変」とか、そんなわけないのに。障害があってもなくても、それぞれ1人の人であることを忘れてはいけない。

    自分は人それぞれで百人百色ってことでいいと思う。でも、みんなそう思っているわけじゃないからSNSや学校、職場で嫌な思いをする人が出てしまう。だから、もしよかったら一方的にこれは良いことだと報道しないで、いろんな意見を聞かせてほしい。「そう思わない」っていう人の意見も聞いて、自分なりの考えをまとめたい。特に田舎は意見の交流会みたいなことがないから、テレビを通して沢山の違う意見の人の話を聞いてみたい。

    10代・女性・岩手

      


    こらからも、みなさまから寄せられた「声」をさまざまなカタチで紹介させていただきます。

    あなたは、“男らしさ” “女らしさ”など、社会的・文化的につくられた「ジェンダー」について、どう思いますか?『みなさんの声』への感想やご意見などもお聞かせください。下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。

    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2020年12月18日

    Vol.5 「私たちはなぜミスコンがしんどいのか」

    “女子アナウンサーへの登竜門”とも言われてきた「ミスコンテスト」。かつては企業がスポンサーとなって運営資金を援助するなど、大学祭の一大イベントでしたが、いま、そのありかたを見直す動きが生まれています。取材を通して見えてきたのは、自分の意志に関係なく比較や評価をされ続けることに対して、若者たちに広がる “しんどい” という思いでした。

    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201118/k10012718071000.html

    従来のミスコンを変えようと奮闘する学生たちの取り組みについて、以下の番組で伝えます。
    <放送予定>
    12月22日(火)【総合】午後4:50
    シブ5時「“ミスコン”が変わる? 学生たちの挑戦」

    あなたは大学の「ミス・ミスターコンテスト」について、どう思いますか。あなたの身近にも “ミスコン”はありませんか。 記事への感想やご意見などを下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。

    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2020年12月18日

    Vol.4 更年期対策にピル代負担まで⁉︎ 変わる企業の“健康経営”

    働く女性の健康を守る制度 必要なのは生理休暇だけじゃないんです


    生理・不妊・更年期など女性特有の体の悩み。
    これまで周りに言えずに、一人抱え込んでいたという女性も少なくないと思います。

    「会議中に急に体がほてって、汗が止まらなくなった」
    「生理前には気分が落ち込み、ちょっとした仕事のミスでも自分を責めてしまう」
    「不妊治療中、『明日病院に来て下さい』と言われても、急に仕事は休めない」


    働く女性が増えるいま、企業にとっても「女性の健康」は健康経営を進める上で大きな課題となっています。更年期症状への対策や、低用量ピルの費用負担まで!? “健康経営”の最前線を取材しました。

    (首都圏局ディレクター 柳田理央子)

    “生理休暇”という名前を廃止
    IT企業のサイバーエージェントは、“生理休暇”という名前を無くしました。女性社員が取得する全ての休暇を「エフ休」(エフ=FemaleのF)という名前に統一。さらに、生理だけでなく、つわり、婦人科疾患、更年期症状など女性特有の体調不良の際に使えるように、有休の特別休暇を月に1日追加しました。もちろん、これも「エフ休」という名前なので、どんな理由で休むのかは、上司や同僚にはわかりません。休む理由の言いづらさをなくすことで、取得しやすいように配慮しています。


    (エフ休の取得画面 他の人には取得理由はわかりません)

    会社負担で婦人科受診 さらにピルの処方まで
    生理日を管理するアプリなどを運営しているエムティーアイでは、今年2月から、女性社員の婦人科受診を支援する福利厚生制度を始めました。提携する婦人科を受診する費用、そして低用量ピルの費用も、会社が負担するというものです。


    (社員の吉崎美帆さん)

    「生理痛はあるけど、我慢できないほどではないし・・・」と病院に行くのをためらう女性も少なくないと思います。この制度を利用している社員の吉崎美帆さんもその一人。生理痛やPMS(月経前症候群)の症状を感じていたものの、市販の薬を飲んでやり過ごしていたそうです。しかし、制度についての社内説明会で、婦人科医から、女性の体の仕組みや生理前後に起こる変化などについて聞いたことで、気持ちが変わったと言います。

    吉崎さん
    「これまで生理前後の症状で困ってはいたものの、我慢できないほどではなく、改善するための行動が取れていませんでしたが、まずは支援制度を通じて婦人科を受診してみようと前向きに考えるきっかけとなりました」

    医師の診察を受け、処方されたのは低容量ピル。低容量ピルとは、エストロゲンとプロゲステロンという2種類の女性ホルモンが配合された錠剤で、排卵を抑えるため、生理が軽くなったり、ほとんどなくなったりします。


    (低容量ピル)

    吉崎さんは、オンラインで継続的に診療を受け、薬を処方してもらっています。わざわざ会社を休んだり、早退したりしなくても、勤務時間内にオンライン診療を受けることができるため、とても手軽。前日の夜に予約して、次の日の仕事の合間に受けることもあるそう。ピルは郵送で自宅に届きます。


    (オンライン診療の画面)

    この制度を利用して、ピルの服薬を開始した女性社員にアンケートをとったところ、飲む前は「横になって休息したくなるほど仕事への支障をきたす」と答えていた人が53.8%いましたが、飲むようになって15.4%まで減ったそうです。

    会社としては全ての女性社員にピルの服用を推奨している訳ではないと言います。あくまでも一番の目的は、「かかりつけの婦人科をもってほしい」ということ。生理痛やPMSなどの症状を気軽に相談できる環境をつくり、低用量ピルについても正しく理解してもらった上で、必要であれば服用することで、つらい症状の改善を目指しているということです。女性自身、毎月のことで我慢するのが当たり前になっていた生理について、会社が「ちょっと考えてみてはどうですか?」と、機会を与えてくれているんですね。

    吉崎さん
    「福利厚生制度になったことをきっかけに、将来を見据えて自身の健康と体の状態に向き合うことができました。今後も低用量ピルの服薬を継続し、定期的に婦人科受診することで、自身の体調に目を配っていきたいと思います。」


    女性が元気に働けないことは企業にとってもマイナス
    婦人科疾患を抱える女性が仕事を休んだり、仕事の効率が下がったりすることによって失われる生産性損失は、年間5兆円近くになるという調査があります。(働く女性の健康増進調査 2016年)

    企業に対して、健康経営の取り組みで関心が高いものを聞いた調査では、「40~50代男性のメタボ、健康意識対策」を抜いて、「女性特有の健康問題対策」が最も上位に。(健康経営に関する実務者連絡会 参加者アンケート)

    経済産業省などが選定する「健康経営銘柄」の要件にも「女性の健康保持・増進に向けた取り込み」が追加されるなど、企業にとって、女性の健康への取り組みは待ったなしとなっています。

    逆に言うと、女性の体に理解のない企業は、生き残れない社会になってきているのかも・・・?

    “健康経営”で育休・産休からの復職率100%
    「健康経営」という言葉が一般的になるずっと以前から、社員が健康に働ける環境づくりに力を入れてきた企業があります。ロート製薬では、2002年から全社員を対象にした体力測定を開始、2004年には社員の健康増進を専任に行う部署を作るなど、取り組みを進めてきました。


    (全社員が参加する毎年恒例の体力測定)

    2014年には「チーフヘルスオフィサー・最高健康責任者」を設置。今年6月からチーフヘルスオフィサーを務める力石正子さんに、なぜそこまで健康経営に力を入れているのか伺うと、思わぬお答えが。


    (チーフヘルスオフィサーの力石正子さん)

    力石正子さん
    「健康経営に力を入れ始めたという意識はなくて、入社したときから毎朝、ラジオ体操が当たり前で、職場対抗のスポーツ大会でめちゃくちゃ熱くなって応援し合うというのを、すごく楽しんでやってきていました。最近、健康経営という言葉が流行っていますが、私たちの会社では、特に健康経営に力を入れようとやっていたというよりは、本当に会社の風土です。」

    現在、この会社の社員は6割が女性。育休からの復職率はなんと100%だそう!女性社員の健康を意識した制度づくりを続けてきました。例えば、健康診断。多くの企業で行っているのは、メタボ健診など男性の生活習慣病予防のための検査で、婦人科疾患を予防するための検査は、ほとんどないのが現状です。この会社では、乳がん検診・子宮がん検診を無料にしています。


    (乳がん検診も無料で)

    さらに、通常の血液検査ではわからない“隠れ貧血”を調べるための検査を取り入れました。内臓に貯蔵されている鉄の量を量る、フェリチン検査というもの。疲れやすさなどにもつながる“隠れ貧血”は女性に多く、この数値が低く、明らかな鉄欠乏の状態にある女性は20~40代の4割以上にのぼるとされています。


    (「隠れ貧血」を調べるフェリチン検査)

    “働き盛り” 40代以降の女性をサポートするために
    今、女性社員の平均年齢はちょうど40歳。責任のある仕事を任されたり、管理職になったりする世代です。でも、この時期に重なるのが更年期。女性ホルモン(エストロゲン)が一気に減少し、様々な更年期症状が出てきます。一方、男性のホルモン分泌は現役世代の内はほぼ一定で、減少も女性に比べるとなだらかです。


    (女性ホルモンは40代後半から激減)

    会社では、社内のイントラサイトで、更年期症状に備えるための検査を提供しています。エストロゲンと似た働きをするエクオールという物質を作れる体質かどうか、尿検査で調べるキットです。エクオールを作れる人は日本人の2人に1人とされています。


    (エクオールが作れる体質か検査するキット)


    (社員の八巻佳奈さん)

    この検査を受けたという八巻佳奈さん。現在40歳で、今年、営業企画推進部の管理職となりました。更年期にどんな症状が出るのか、どう備えたらいいのかわからず、不安を抱いていました。


    (八巻さんのエクオール検査の結果)

    検査の結果、八巻さんはエクオールを作れる体質だとわかりました。会社では、エクオールを作れない体質の人に向けて、サプリメントを紹介。さらに、専門の医師を招いて、更年期についてのセミナーも開いています。八巻さんも、このセミナーを受講。人によって症状が異なること、そのメカニズム、症状に応じてホルモン補充療法など様々な治療があると知ることができたと言います。


    (八巻佳奈さん)

    八巻さん
    「正しく知って、備えるっていうことがとても大事だなと感じました。私もそうですが、女性は、仕事のことも考えなくてはいけないし、家族のことも考えないといけないし、ついつい自分の健康を後回しにしてしまう。会社が、検査やセミナーなどの機会を作ってくれたということもあるので、会社も元気にいきいき働くことを応援してくれていると感じることができたのが、すごく心強かったです。」


    「女性活躍」に本当に必要なものとは?
    「女性活躍推進」という言葉が声高に叫ばれるようになって久しいですが、私は1人の女性としてこの言葉にどうしてもモヤモヤしてしまいます。自分の体を犠牲にして、「男性並」に働くことが、本当に女性の活躍なのでしょうか?そんなモヤモヤを抱える私に、力石さんがこんな言葉をかけてくれました。

    力石さん
    「女性の力って素晴らしいものがあって、別に男性に劣っているところなんて全くありません。ただ、体のメンテナンスは、男性とは違うところがあるので、それさえしっかりメンテナンスできれば、もっともっと輝く女性が増えると思います。女性ばかりを特別に保護するつもりはないけれど、違う性があることを認め合って、それぞれに合ったケアが必要だということを、オープンにしていくことは大切だと思います。」



    どうにもできない体の不調があるときには、無理せず休んだり仕事をセーブできたり、それが当たり前の社会になればいいですよね。でも、ただ「休みたい」だけではないのです。少なくとも私は、どうしてもやり遂げたいプロジェクトがあったり、がむしゃらに頑張りたい時期があったりします。女性の健康を守るための制度があったり、男性社員も含めて学ぶ機会があったり、会社が体のことを一緒に考えて、背中を押してくれていると思えたら、自分の力を最大限発揮して、いきいきと働くことができると思います。そんな企業が少しでも増えればいいなと、1人の働く女性として、強く思った取材でした。

    あなたは女性ならではの“体の悩み”についてどう思いますか?“体の違い”がある中で、皆が生きやすい社会・職場にするには、何が必要だと思いますか? 記事への感想やご意見などを下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。


    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2020年12月11日

    Vol.3 AMH検査で“卵子の残り数”がわかる!? 産みどき考えるヒントに

    わずかな血をとって送るだけで自分の卵子の残り数がわかる。そんなフェムテックがいま注目を集めています。年齢とともに減っていく卵子が、卵巣内にどれぐらい残っているかを示すAMHというホルモンの値を調べる検査キットで妊娠のタイムリミットを知る手がかりの一つになるというのです。 これまで病院でしかできなかった検査が、約2万円で自宅でできるというこのキット。働く女性の人生設計にどう役立てられるのか、利用の際の注意点もあわせて、取材しました。

    (ディレクター 浅岡理紗 宣英理)

    “妊娠のタイムリミットの目安がわかる”
    働く女性を悩ませる“産みどき”。11月に放送したクローズアップ現代プラス『女性の体の新常識 フェムテックで社会が変わる』のディレクターは全員30代女性ということもあって、取材中も話題に上りました。「長期のプロジェクトに関わることもあるし、出産のタイミングがわからない」「子どもが欲しいと思ったとき自分は産めるのか不安だけど、病院に行く時間もない」・・・
    こうした悩みに応えようと、去年7月に発売されたのが、このAMH検査キットです。



    男性の精子が毎日新しく作られるのと対照的に、女性の卵子は胎児の頃に一生分が作られます。出生時には約200万個の卵子(原始卵胞)を持っていますが、月経時に排出されたり、自然に消えたりして減っていき、30代で残っているのは2~3万個です。私も初めて知ったとき、ちょっと“ガツン”と来ました・・・

    卵子の数を知る手がかりになるのがAMHというホルモンの値です。この値が高ければ多くの卵子が残っている、低ければ数が少なくなっていることを示すため「妊娠可能な期間」の目安になります。


    (提供 浅田レディースクリニック)

    AMHの値は一般的に年齢とともに下がっていき、2以下では不妊治療が効果的に行えなくなる可能性があるといいます。しかし個人差が大きいため、自分の値は検査しなければわかりません。AMH検査はこれまでも病院では受けられましたが、産婦人科の受診はハードルが高いという人も多いため、自宅で受けられる検査キットが作られました。

    どうする? 仕事と産みどき
    検査キットを利用することにした夫婦を取材しました。ことし入籍した渡部英里菜さん(32)と夫の光樹さん(40)。光樹さんは早く子どもが欲しいと思っていますが、英里菜さんは正社員として転職したばかり。まだ慣れない中、出産で職場を離れることに不安を感じています。一方、同世代の友人たちが不妊治療を始めたこともあり、妊娠のタイムリミットが気になっているといいます。



    英里菜さん
    「漠然とあと2~3年たったら子どもを、と思っているんですが、そのときに不妊だとわかったら手遅れにならないか、怖いですね。家でできるなら、ちょっと調べてみようと思いました。」
    光樹さん
    「女性は卵子の数が年齢とともに減っていくなんて、全然知らなかったです。男女ともに30代前半は仕事のやりがいが出てくる時期なのに、反比例するように体の問題が出てくるなんて、女性は本当に大変・・・、せめて応援したいと思いました。」



    指先に針を刺し、にじみ出た血液を容器に入れて送ると、10日前後で結果をスマートフォンで確認できます。

    32歳の英里菜さんのAMHの値は・・・

    英里菜さん
    「あー、やばい! 実年齢より高い・・・」

    妊娠や不妊治療を急がねばならない値ではなかったものの、渡部さん夫婦は結果に少し戸惑っているように見えました。ふたりは、1年後には妊活を始めようかと話し合ったそうです。

    英里菜さん
    「やってよかったです。仕事ばかり優先するのではなく、そろそろシフトチェンジも考えなければいけないのかな。判断基準として、知ることができるのは、助けになります。」
    光樹さん
    「自宅で検査に立ち会い、結果を共有できたことで、男性も一緒に考えるべきことだと感じました。漠然としていたものがハッキリしたことで、ライフプランを真剣に考えるきっかけになりました。次は病院で自分の精子の状態も調べてみたいです。」


    不妊治療による離職を防ぎたい


    検査キットを提供しているのは、不妊治療に関する情報共有を行うウェブサイトの運営会社です。開発のきっかけは、利用者に「もっと早く治療を始めればよかった」という声が多かったことでした。

    F treatment代表 服部恵子さん
    「不妊治療との両立の難しさから仕事を辞めたり、子どもを諦めたりした人を数多く見てきて、社会にとっても大きな損失だと思いました。少しでも早く自分の体の状態を知る人が増えれば、離職も減らせるのではないかと、産婦人科の先生と意気投合したんです。生き方は人それぞれですが、自分の体を知った上で人生の選択をしていただけたらと思います。」



    11月に発表された調査では、不妊治療をしている女性の83%が「仕事との両立が困難」だと答えています。 産婦人科医の浅田義正さんも、同じ問題意識から検査キットの商品化に協力したと言います。



    浅田レディースクリニック 浅田義正医師
    「不妊治療を始める年齢が年々上がり、40代が主流になっていますが、病院で初めてAMHを測って、結果にがく然とする人が少なくありません。卵子が少なくなってから不妊治療を始めると、期間や費用がよりかかります。自宅で手軽にできれば、検査のハードルが下がると期待しています。」

    検査キットの開発で最も難しかったのが精度です。医療機関での採血と違い、自宅で個人が採取できる量には限りがあり、わずか0.1mlからAMHの値を正しく測定する技術を確立するのに苦労したと言います。値段は2万円弱と高価ですがこれまでに約1200人が利用しました。

    AMH検査には注意点も
    ただ浅田医師によると、検査結果を受け止める上で注意点もあると言います。

    • AMHの値は、あくまでも卵子の“残り数”の目安であり、“質や老化”を反映するものではありません。AMHの値が低い人でも、年齢が若ければ卵子の質が良く、妊娠できることもあるため、数値だけに振り回されて絶望する必要はありません。


    • AMHの値が高いからと安心するのも危険です。不妊には卵子の残り数以外にさまざまな要因があり、別の不妊の要因を見落としてしまうリスクもあります。
      ※値が年齢の水準より大幅に高いと「多膿疱性卵巣症候群」、大幅に低いと「早発閉経」などの病気の可能性も。

    妊娠を考える人は、この検査をきっかけに早めに産婦人科医を受診してほしいと、浅田医師は強調していました。

    身近になるAMH検査 人生を変えることも
    こうした検査キットは、海外でも次々と登場しています。カリフォルニアのスタートアップ、Modern Fertilityは、AMHなど9種類のホルモンを調べることで、卵子の残り数や閉経の予想時期、卵子凍結や体外受精の適性などがわかるという検査キットを発売。検査結果をどう読み解くのか、産婦人科医などがアドバイスしてくれる仕組みや、利用者同士で情報交換ができるコミュニティも提供しています。キットはスーパーの店頭でも販売され、身近なものになってきています。

    アメリカのフェムテック事情に詳しい
    デロイトトーマツベンチャーサポート・セントジョン美樹さん

    「アメリカでは今、ジェンダー平等が政治的にも経済的にも重要なテーマとなっています。女性が人生を豊かにしていくために、まずは自分の体を知り、いろいろな選択肢をデザインする。フェムテックは、そうした個人の人生設計とエンパワーメントのみならず、それを支える寛容な社会への変革に大きな役割を果たすと期待されています。」

    この番組の40代女性プロデューサーも、かつて取材の一環でAMH検査を受けたことがあるそうです。当時30代半ばでしたが、40代半ばの水準という極めて低い値が出て、ショックを受けたと言います。それまで「あと1本番組を出せたら・・・」と出産を先延ばしにしてきましたが、この結果を受けて異動希望を出し、一時期、妊活を優先しながら働くことを決めました。
    その後 授かったお子さんは今は8歳になり、「あのとき検査を受けていなければ、娘はいなかったかもしれない・・・」と、AMH検査が人生の分岐点になったと感じているそうです。



     これまで見えなかった“体の中の状態”を知る手がかりとなるフェムテック。「いつかは産みたい、でもいつ?」、そんな悩みを抱える女性が後悔のない選択をする上で、手助けになるかもしれないと思いました。

    あなたは女性ならではの“体の悩み”についてどう思いますか?“体の違い”がある中で、皆が生きやすい社会・職場にするには、何が必要だと思いますか? 記事への感想やご意見などを下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。


    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2020年11月21日

    Vol.2 次々登場“フェムテック” 生理用ショーツに更年期対策も

    女性の“生きづらさ”をテクノロジーで解決! 
    「ん、漏れてる?…あ、ヤバイ!」 仕事中、ふと股間を伝う違和感にドキッとしてしまうこと、ありますよね。

    私も仕事に没頭しすぎて、気づいたら経血漏れでイスが大惨事という経験が・・・その後はイスにじっと張り付いて、同僚たちが帰るのをひたすら待ちました。夜、静まりかえったオフィスで座面の赤いシミを拭いていたら、涙がこぼれてしまって・・・。

    ところがそんな私の日常に最近、革命が起きました。それが「ナプキンの要らない生理用ショーツ」です。半信半疑でしたが、試してみると本当に1日経っても漏れがなくて、まさに目からウロコ。小6以来の悩みの一つがあっさりと解消されたのです。

    「生理」「更年期」など女性特有の様々な悩みを、新たなアイデアや科学技術を用いて解決する・・・こうした商品を「フェムテック」と言います。(Female(女性)とTechnology(技術)をかけ合わせた造語です。)

    社会の中で生きる女性たちを応援してくれそう!と期待高まる「フェムテック」、その最前線をお伝えします。 (関連記事「AMH検査で“卵子の残り数”がわかる!?」

    (クローズアップ現代プラス 浅岡理紗ディレクター)


    スタートアップが続々登場 “フェムテック”
    いま世界中で、フェムテックの新たなアイテムが続々と登場しています。 2020年7月、そうした製品を取りそろえた生活雑貨店が東京・港区にオープンしたので、行ってきました。


    ■冒頭で紹介した、ナプキンが要らない生理用ショーツ
    何層にも重ねた特殊な生地が経血を吸収し、表にしみ出すのも防ぎます。国内外のメーカーからデザインも性能もさまざまなショーツが登場していて、自分にあった商品を選べます。



    ■妊娠しやすいタイミングを教えてくれる機器(アメリカ製)
    白くて丸いデバイスを膣の中に入れると、おりものの成分を測定し、妊娠しやすいタイミングを教えてくれます。妊活中の女性のニーズから誕生しました。



    ■尿漏れを防ぐトレーニンググッズ(イギリス製)
    更年期の女性に多い「尿漏れ」の悩み解消のための製品。楕円形のボールを膣の中に入れてキュッと閉めると、連動したスマートフォンの画面でボールがポーンと跳ね上がります。排尿コントロールに大切な骨盤底筋を、キュッ、ポーン、キュッ、ポーンと、ゲーム感覚で鍛えることが出来ます。


    「生理」「妊娠」「更年期」といった女性特有の悩みを、テクノロジーで真っ向から解決していこうというフェムテック。それは、これまでタブーとして見過ごされてきたこれらの課題を明るみに引き出し、具体的な問題解決はもちろん、人々の意識までも変化させて、社会に革新をもたらそうとしています。


    (店のプロデューサー 小尾奈央子さん)

    小尾さん
    「女性の社会進出が進み、こうした(女性特有の)悩みが社会全体で解決すべきことになってきています。もうタブーではない!タブーのままではいけないのです。お店にはカップルで来店される人もいます。男性も、生理のことを女性に聞いてはいけないという概念があったかと思いますが、こうしたフェムテック製品を一緒に手に取ることで、話してもいい、共有していい話題なんだと認識する方もいます。」

    体の悩みと深く関わる女性ホルモン
    フェムテックが解決をめざす女性ならではの体の悩みと深く関わっているのが性ホルモンです。女性ホルモンの分泌量は10代で急上昇し、毎月の生理のたびに変動、そして40代から急降下します。その動きに伴って、生理痛や更年期症状などさまざまな不調が起きます。そのジェットコースターのような変動は、現役世代の間はホルモン分泌がほぼ一定の男性とは対照的です。


    (女性と男性のホルモンの変化)

    「漏れない生理用ショーツ」 オンナの実体験にビジネスチャンスあり!
    女性たちに立ちはだかる課題を新ビジネスの舞台ととらえフェムテックを生み出しているのは、一体どんな人たちなのでしょう。私の悩みを解消してくれた「生理用ショーツ」を開発した企業を東京・渋谷区に訪ねました。


    (中央の左が山本未奈子さん、右が髙橋くみさん)

    社員30人はすべて女性。「女性の輝く社会」をコンセプトに、化粧品など様々な商品開発を行っています。

    この会社を率いる、山本未奈子さんと髙橋くみさん。
    働く女性として、二人も「生理」の悩みを切実に感じてきました。


    (山本さん)

    山本さん
    「会議が長引いて仕事に入り込んでしまうと、トイレに行くタイミングを忘れてしまうんです。 会社の椅子が白いのもあって結構シミに・・・。私もよく漏れてしまってアッ!ということがあります。」

    2人がショーツ開発を始めたのは3年前。アメリカで「ナプキンの要らない生理用ショーツ」を目にしたのがきっかけでした。「これこそ働く女性が求めている商品だ」と確信し、日本人のニーズに合わせた商品を自分たちで開発すると決意します。 製造を依頼したのは山陰地方にある小さな縫製工場です。


    (縫製工場)

    もともと高齢者向けの尿漏れパンツを得意とし、布に水分を吸収させる豊富なノウハウを持っていました。でも工場側は、「生理用ショーツ」という思いもよらない依頼に、最初は戸惑ったそうです。

    縫製工場社員
    「難しいと、一旦はお断りしたんです。どうしても女性の生活を変えたいということを何度も口説かれて、気持ちが動いたといいますか、やってみようという気持ちになりました。」

    難しかったのは、吸水量の大幅UPでした。通常の尿漏れパンツでは、吸水量は多くても50ml程度ですが、今回のショーツは120mlの性能を持たせました。それは、生理2日目の経血量の3倍にあたります。

    吸水体は、性質の異なる5枚の特殊な布を組み合わせたもので、身体からずれないように、縫い付け方も工夫されています。2年半をかけて、漏れを防ぐ工夫を結集したショーツが出来上がりました。


    (募ったクラウドファンディング)

    実は、 山本さんと髙橋さんはショーツ開発の過程で、ネット上から投資を募るクラウドファンディングを行ったのですが、1か月で9000人以上が参加し、なんと1億円以上の資金が寄せられました。商品への期待の高さがうかがえますよね。

    このファンドに参加し、ショーツを使い始めた女性に話を聞きました。

    洗濯は基本的に手洗いをしていて、しっかりキレイにしたいときには、そのあと他の衣類と一緒に洗濯機にかけているそうです。使い心地を聞いたところ・・・

    女性
    「普通に生活して歩いたり動いたりしても漏れないし、寝ている時も漏れないので驚きました。仕事で外を歩き回ることも多く、そんなときはトイレに行けず困っていました。これでもっと活動的になれると思う。」

    女性たちが感じてきた“生きづらさ”を背景に、次々と生まれているフェムテック。それは社会全体に地殻変動を起こしてくれるのではないかと感じました。

    私たちは今後もこのテーマについて取材を続けていきます。

    次回紹介するフェムテックは、女性の体の中の「目に見えないアレ」を手軽に知ることで、「人生設計がもっと立てやすくなる」という内容です。

    あなたは女性ならではの“体の悩み”についてどう思いますか?“体の違い”がある中で、皆が生きやすい社会・職場にするには、何が必要だと思いますか? 記事への感想やご意見などを下の「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。



    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。

    #Beyond Gender
    2020年11月12日

    Vol.1 “有毒な男らしさ”を考える

    いまSNS上で「#有毒な男らしさ」という言葉が飛び交っています。

    「面倒なことは女に押しつける、“有毒な男らしさ”」
    「間違えても謝らないという態度、“有毒な男らしさ”」

    (英語で Toxic masculinity “有害な男らしさ”とも訳されています)

    周りに悪影響を与える「有毒な男らしさ」をコロナ禍で実感する人が増えたといわれます。はたして、その〝解毒剤〟はあるのか。理想の有名人夫婦ランキング“常連”の佐々木健介さん、北斗晶さん夫妻と考えます。 

    (おはよう日本 取材班)

    “自分が稼がねば” 男らしさに苦しめられた男性
    街なかで現役世代の男性に聞いてみると…

    「こういうご時世で給料面でも厳しい。これ以上下がると自分が情けなくなってしまう。家に帰って相談事をするのは…、弱い人間だと思われたくない」(40代 会社員)

    「“男が女性より頑張っている、勝ってないといけない…”そういうのが まだ残っている」(40代 会社員)

    『自分の稼ぎで家族を養わねば…』コロナの影響が続く中、そんな思いに追いつめられた男性がいます。松山市内で居酒屋を営む清水裕一(しみず ゆういち)さん(43歳)。


    (居酒屋オーナー 清水裕一さん)

    元々はサラリーマンでしたが、子どもが生まれた後に一念発起。9年前に独立しました。「働く姿を家族に見せたい」との思いからでした。

    清水さん
    「“男らしさ”のひとつではありますけど、やっぱり“一国一城”じゃないですが、何か一旗揚げて“ちょっとやったよ”という爪痕を残す。」


    (清水さんと家族)

    ところが新型コロナの影響で、2か月間、営業は休止。5月の売り上げは去年の2割以下に。助成金の申請書類の作成など、自宅での作業に追われた清水さん。これまで店が休みの日以外は、ほとんど顔をあわすことのなかった子どもたちと一緒に過ごす時間が増えました。
    仕事への不安や、慣れない子どもの世話。誰にも相談できないまま、日に日にストレスがたまっていきました。さらに看護師の妻が、コロナ禍においても毎日仕事に行く姿に自分のふがいなさも感じました。そして いつしか子どもたちに、強くあたるようになったといいます。

    清水さん
    「ふだんは怒らないんですけど、子どものことまで かまっていられない。余裕がなかった。『早く(勉強)やれって言っているでしょ!』と、よく怒っていました。」

    妻の恵(めぐみ)さんは、傷ついた娘からこっそり報告を受けたそうです。


    (妻 恵さん)

    妻 恵さん
    「(娘から)『パパには言わないでほしいんだけどね』という感じで。『パパと3人は楽しいけど、ちょっとしたことですぐ怒る』って。主人に、客観的に知っておいてほしいと思ったので、『どう思う?』みたいに尋ねたら、『あー、そうかもしれない』という感じでした。」

    清水さん
    「言われてハッとしました。反省しました。昔、女性経営者の方に、“いちばん邪魔なのは男のプライド。1円にもならない男のプライド”と言われたことがあって、『何を言っているんだ、この人は』と思っていたんですけど、てきめん そういう部分なんだろうな。わかっているけど、変えられなかった。」


    佐々木健介さん&北斗晶さんの家庭は?

    (理想の有名人夫婦ランキング常連 北斗晶さん・佐々木健介さん)

    佐々木健介さん
    「僕も若かったときは、『俺は男だ!』といばっていましたけど、今は年をとって丸くなった。いいオッサン。洗い物でもなんでも率先してやります。」

    北斗晶さん
    「そうですね。いいオッサンになりました。(笑)」

    健介さん
    「『男だから、やらなきゃいけない!』『家族のために』と思いがちな男性もいるかもしれませんが、たいへんなのは男だけでなく、女性も家事のことなどでたいへん。お互いが分かり合えないといけないですよね。」

    北斗さん
    「男性が思っているほど、妻のほうは『男だからやらなきゃ!』『男だからやって!』とそこまで強くは思っていないと思う。共に暮らしながら(妻は)『お互いに頑張らなきゃいけない』と思っているでしょうけど、それを口に出して言わないと、(夫にとっては)プレッシャーになってしまうのかもしれないですね。」

    コロナで露呈!?“有毒な男らしさ”

    (大正大学 心理社会学部 准教授 田中俊之さん)

    ジェンダーの問題を男性の視点から研究する「男性学」が専門の田中俊之(たなか としゆき)さん(大正大学 心理社会学部 准教授)は、コロナの影響で生活スタイルが変わる中、“有毒な男らしさ”があらわになったと指摘します。「男は仕事」という社会の代表的な価値観が、通勤不要や収入減などで一気にぐらつく中、変化に対応できずに過去の価値観にしばられ、毒をばらまいている男性が少なくないそうです。

    田中俊之さん(大正大学 心理社会学部 准教授)
    「“有毒な男らしさ”からなかなか抜け出せない男性には、2つの共通する傾向があります。
    1つ目は、“さびついた有能感”です。高度成長期以降は残業、休日出勤、転勤などをいとわない、全てを仕事に捧げられる人が“有能”とされていました。でも、それは妻が専業主婦だった時代のこと。
    今は、出産後も働く女性が増えているし、独身で自分の家計を支えている人も、男女問わず、少なくありません。「24時間 働ける男が“男らしい”」というのは通用しないのに、今もさびついた“有能感”を持ち続けている人がいます。

    2つ目の傾向は、“強すぎる支配欲”
    仕事だと自分で計画を立てて、成果を出して…というように、自分でコントロールできていると有能感を得やすい。でも、家庭ではそううまくはいきません。
    あす朝早いから子どもを早く寝かせようと計画を立てても、子どもはなかなか寝つかない。そうなるとコントロールできずにイライラして、家族に悪影響を及ぼしてしまうことがあるんです。」

    ゴリラに学ぶ“令和の男らしさ”
    ゴリラ研究の世界的な権威で、「男らしさ」についての書籍を出版している霊長類学者の山極壽一(やまぎわ じゅいち)さん。コロナ後の新しい“男らしさ”のヒントは、霊長類にあるといいます。


    (霊長類学者 山極壽一さん)

    まず、山極さんが「旧来の男性中心の社会に似ている」と指摘するのがチンパンジー。チンパンジーは、オスどうしの中で厳格に序列を決めています。食べ物は上の者から順に食べることで、無用な争いは起きません。しかし、ひとたびリーダーの力が衰えたと察したとたん、部下どうしが組んで下克上を起こすこともあるそうです。


    (力の衰えた“リーダー”<左奥1頭>に対し 徒党を組むオスのチンパンジー<右手前2頭>)

    山極さん
    「チンパンジーは1頭では他のオスと戦えない。複数のオスによってたかって攻撃されると負けてしまう。複数でいれば、1頭よりも大きく見せられる。常に自分の味方をしてくれる仲間を求めながら、その関係の維持を図っているわけです。人間の男の悪いところは、徒党を組むことを覚えてしまったということ。ここはチンパンジーに似ている。」

    一方、これからの“男らしさ”のヒントになると山極さんが提示するのが、ゴリラです。オスどうしで群れるチンパンジーと違って、ゴリラは家族と過ごすことが多いといいます。


    (弱いものに合わせる オスのゴリラ)

    ゴリラは、子どもが1歳を過ぎた頃から、父親が積極的に子育てをします。子どもと一緒に遊び、見守るのは父親の役割。さらに、ゴリラどうしでケンカが起きたとき、年少者やメスなど、力が弱い側の味方になって仲裁します。大きな体を、自分のためではなく、弱いもののために使うのです。

    山極さん
    「ゴリラのオスは泰然自若としていて、メスや子どもの時間にたやすく合わせることができる。待つ姿勢ですね。それを、われわれ男性は学ばなくちゃいけない。(人間の)男は“自己実現”とか“自分の主張を出して前に進む”ということが求められているが、本当はそうではなくて、世の中は、力の強いものが自分の力を落として、力の弱い者に合わせることによって、いろんな時間やいろんな空間がつくられているんです。」

    健介さん&北斗さん “令和の男らしさ”とは…
    健介さん
    「ゴリラの家族、我が家みたいです。僕も、子どもが小さいころから子育てをやってきたので。まさか、(ゴリラ)自分じゃないかなと(笑)。」

    北斗さん
    「本当に。リビングで寝転んで、子どもが遊んでいるのを うれしそうに見ている健介みたい。」

    どうしたら、ゴリラのような“男らしさ”に近づくことができるのか。田中さんは、家庭を“社会”のひとつと捉え、その最大の利益を見つけることが大切といいます。

    田中俊之さん(大正大学 心理社会学部 准教授)
    「これまでは、日本語で“社会”というと“企業社会”、そこに正社員として参入する人が“社会人”と捉えられてきた。でもコロナの影響などで、家庭や地域で過ごす人が増える中、考えなくてはならないのは、家庭や地域も“ひとつの社会”であり、それぞれルールが違うということ。会社は利潤を追求するので『もうかるか、もうからないか』の基準が大事。家庭もひとつの社会。妻、子ども、家族にとって、それぞれの視点に立った時の『最大の利益は何か』を考えられるといいと思います。」

    健介さん
    「自分自身は結婚した当初、料理など手伝わなかったんです。“男はこうでいいのかな”と思っていたんですけど、間違っていた。すごく(妻から)怒られて、あ、こういうものなんだというのを勉強しました。」

    北斗さん
    「家庭を大切にする男のほうが“強い男”という気がします。“男らしさ”は優しさ。強くなければ優しくなれないし、優しくなれなければ強くもなれない。人にきちんと謝ることができたり、その場を収められたりする人のほうが男らしいと思います。」

    “有毒な男らしさ”を捨てるには まず相談
    “有毒な男らしさ”を捨てるためには、自分で抱え込まずに周りに相談することが大切だと、田中さんはいいます。でも、自分から相談するのは苦手だったり、“相談してもうまくいかないのでは…”と心配したりしてしまう人もいるのではないでしょうか。田中さんからのアドバイスは、「相談の目的を 相手と共有すること」です。



    田中俊之さん(大正大学 心理社会学部 准教授)
    「悩みを相談するときにあらかじめ相談する相手に、何を自分が求めているかを言ってしまう。単純に悩みを聞いてほしいのか。話すことに対する評価がほしいのか。解決策を提示してほしいのか。男だからって弱音をはいちゃいけないことはありません。ぜひ周りに相談してほしいと思います。」

    一方、相手が悩みを打ち明けやすいようにするために、周りはどうしたらいいのでしょうか。


    (スウェーデンの首都 ストックホルム)

    世界で、いち早く男女平等を推進してきたスウェーデンには、自治体などが主導して設立した、男性のための相談機関、「男性危機センター」があります。専門のカウンセラーが常駐していて、コロナ禍の今はオンラインで相談に乗っています。


    (「男性危機センター」オンラインで相談にのるカウンセラー ウルフ・カルバートさん)

    カウンセラーのカルバートさんは、「相談したがらない」男性に心の扉を開かせるためには、男性が引け目を感じるような言葉を避け、過去に相談した人が立ち直った具体的な事例を示すことで、孤独にさせないことだといいます。

    カルバートさん
    「男性たちは内心、自分が世界でただ一人、男らしくないと思いこんでいます。私は『そうではありません、男性にはよくあることです』と伝えます。すると、ほとんどの男性は、自分は変な人間ではないと安心するのです。」



    一度心を開きさえすれば、解決に向けて途端に前向きになるのも、男性なのだとか。

    カルバートさん
    「心を開いた男性たちは、自分自身を変えたいと強く思っています。それは、非常に強いモチベーションであり、私たちも深いコアの部分に入り込みやすくなります。大切なのは、自分が周りからどんな人間に見られているのか、どんな態度を取っているのか、鏡に映すようにはっきりと示してあげることです。男性たちはショックを受けるかもしれませんが、そうすることが重要なのです。」

    健介さん
    「相談しやすい空気があれば、ありがたいですね。男は口下手な人が多いですし、“自分は何を言っていいんだろ”“言ったら恥ずかしいのでは…”と思ってしまうけど、(周りの)心遣いがあったら、しゃべりやすい空気になると思います。」

    北斗さん
    「『強く見せなくてもいいんだよ』と男性に言ってあげたい。仕事が激減したら、もし結婚していたら、相手とともに働けばいい。妻が仕事に出ていたら、家事をしてくれればいい。夫が仕事だったら、私(妻)がやればいいし。もっとお互い気軽に考えられる世の中になってほしいですね。」



    あなたは“有毒な男らしさ”について、どう思いますか。“有害な男らしさ”をなくすために、何が必要だと考えますか。記事への感想やご意見などを下の「コメントする」か、ご意見募集ページから お寄せください。

    ※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。