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“5歳児が4歳児のパンツの中に手を・・・” 深刻な園児どうしの性暴力

※この記事では性暴力被害の実態を広く伝えるため、被害の詳細について触れています。フラッシュバックなど症状のある方はご留意ください。

目から大粒の涙をこぼす女の子の絵。これを描いたのは4歳の女の子です。通っていた認定こども園で経験したことを、母親に打ち明けました。

「男の子からパンツの中に手を入れられて触られた」

同じ園の児童から性暴力被害を受けたのです。それから1年以上、女の子は不眠や感覚過敏などに悩まされています。両親は園や警察に、事実の調査や加害した児童への指導を求めましたが、返ってきたのは思いもよらないことばでした。

(報道局 社会番組部ディレクター 村山世奈)

4歳の突然の告白 “パンツの中に手を・・・”

次女が園児どうしの性暴力被害に遭ったという美紀さん(仮名)。被害から1年以上、美紀さん自身もまともに眠れない日が続いているといいます。

被害を知ったのは、次女が4歳だった2020年12月、こども園から帰宅して着替えているときのことでした。「先生に怒られた」とつぶやく次女に美紀さんが訳を聞くと、「男の子をぐーっと押したら怒られた」と答えました。どうして押したのか尋ねた美紀さん。すると次女は「お尻を触られたの。パンツの中に手をズボーって入れられたの」と話したのです。

口調は淡々としていましたが、美紀さんは次女のジェスチャーがお尻ではなく股間を指していることに気がつきました。「誰にどこを触られたの?1回だけ?」と詳しく聞き取っていくと、次女はぽつりぽつりと衝撃的な事実を口にしていきました。

年上の男児3人から園庭で触られたこと・・・。
今回が初めてではなく過去にも複数回あったこと・・・。
「おけがはありませんか」と体を触られてなめられたり、トイレの個室についてこられて排尿を見られたり触られたりしたこと・・・。

美紀さん(仮名)が次女から聞き取った被害の内容
美紀さん

「何かで頭を強く殴られたような衝撃を受けました。数か月前にお風呂で次女の股を洗うと『痛い痛い!』といやがったことを思い出して、その時期から傷つけられていたのではないかと思ってぞっとしました」

過去に長女も園児どうしの性被害に 長引く影響

美紀さんがすぐに次女から詳しく聞き取りを行ったのは、ある後悔があったからだといいます。

実は、現在小学生の長女も、同じこども園に通っていたときに男児から性暴力に遭ったのです。当時5歳だった長女が「男の子にお尻を触られた」と打ち明けたとき、美紀さんはスカートめくりのようなものだろうと考え、園や加害男児に強く責任などを追及することはしませんでした。しかしその数年後、思春期にさしかかった長女が「実はあのとき触られたのはお尻じゃなくて前のほう・・・」と下着の上から股間部分を執ように触られていたことを訴えたのです。長女はいまもその感覚が忘れられないと言い、男性と近づくことを極度に怖がり、成長とともに症状は深刻になっていきました。登校が難しい日もあり、精神科でPTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断され治療を受けています。

そうしたなか起きた次女の被害。長女が被害を訴えたときにすぐに動けなかったことを後悔してきた美紀さんは、今度は絶対にうやむやにしないと決意しました。

複数回に及んだ被害を初めて美紀さんに打ち明けた次女。張り詰めていた糸が切れたかのように様子が変わりました。オムツは数か月前に卒業してトイレで排尿できていたにもかかわらず、突然お漏らしをしたのです。次女はみずから「オムツを履く」と言い、排尿コントロールができなくなりました。また、光や音に敏感になり、昼間でもカーテンを閉めたがったり、人混みを怖がったりするようになったのです。

美紀さん

「それまでは人見知りもなく、スーパーでは私の手を離して欲しいものの棚まで行ってしまうような子だったんです。でも、家の中でも外でも私から離れられなくなってしまって。せがまれて赤ちゃんみたいに横抱きすると、目の焦点が合っていなくて、まるでガラス玉のようでした」

性被害の疑いがあることを伝えて病院で緊急の検査を受けると、ASD(急性ストレス障害)と適応障害と診断され、その日から治療が始まりました。

被害の告白から半年後 脱毛の症状も表れた次女

園は性被害を否定 “娘さんはうそつき”

次女の告白を受け、美紀さんは夫とともにこども園の園長と副園長に対面し、起きたことを調査して次女と加害した男児に適切な対応をとるよう求めました。園はすぐに男児たちに聞き取りをしたようでしたが、副園長から返ってきたのは予期せぬことばでした。

美紀さん

「『男児たちに話を聞いても、そんなことはやっていないと言っている』とのことでした。そして、『言いづらいけれど、おたくのお子さんはうそをつく癖があるので信用できない。娘さんからは話を聞く必要は無い』と言われて絶句しました。娘がうそをつくなんてそれまで園から聞いたことがありません。被害者を“うそつき”扱いして終わらせようとしているんだと感じて、あきれると同時に絶対に許せないと怒りがわきました」

園長からも「はっきりさせないほうがいいこともありますよ」と言われ、園は「この件についてはこれ以上聞き取りをしないし、次女に対して特別な配慮も行わない」と告げたといいます。

後日、園の弁護士から届いた文書には、「真実が何か明確に認定できない」「問題を解決するためにいろんな方法で聞き出していく方法もあるが、あまり問題に触れずに普通の日常に送り出して、日常生活の中で注意しながら見ていく方法もある」などと書かれていました。

“うそ”だとして信用されなかった被害を訴える子どもの声。しかし、園児どうしの性暴力は決して特殊なケースではないと、専門家は指摘します。弁護士で保育士資格を持つ寺町東子さんに聞きました。

弁護士・保育士 寺町東子さん
弁護士・保育士 寺町東子さん

「子どもの性加害や被害を信じたくない大人が否認してしまうことは少なくありません。しかし、日本では明るみに出ていませんが、海外の調査だと3歳から8歳の年齢層の性被害の報告が一定数あります。日本でも、大人になって子宮筋腫の手術を受けたら、中から幼稚園時代に膣(ちつ)内に入れられた物が出てきたというケースがありました。大人は『まさかそんなこと』と受け入れたくない気持ちがあるため、子どもの訴えを否認したり、大したことがないように思ったりしますが、まずは子どもどうしの性暴力が存在すると認識することが出発点です」

児童相談所や警察も “園児どうしのことには介入できない”

次女が園から“うそつき”扱いされ、これ以上対応しないと言われたことに大きなショックを受けた美紀さんは、真相の究明を求めて相談機関を探しました。しかし、そこでも被害を被害と認めてもらう難しさに直面することになります。

住んでいる地域の児童相談所からは「園のなかで起きた園児どうしの性被害には介入できない。医療機関もすでに受診しているので児相の診察も不要でしょうから、何もできることは無い」と言われ、警察からも「幼児から話は聞けない。被害届を出したとしても、加害者が園児なので捜査できない」と言われました。

美紀さんが相談した機関のリスト

美紀さんがこれまでに相談したのは、自治体やNPO、ワンストップ支援センター、法テラス、弁護士など40か所以上にのぼります。なかには、園に対して「もっと話し合いをすべき」と電話してくれた機関もありました。しかし、多くは園児どうしであることを理由に介入を拒む返事でした。

次女の訴えが無視されたまま時間だけが過ぎていくことに美紀さんは焦りを募らせ、何も行動しなかった日は「きょうは何もできなかった」と自分を責めて眠れなくなるといいます。友人に相談しても「男児の親に恨まれるから動くのはやめたほうがいいよ」「あなたの怒りを共有されても困る」などと返され、一緒に悩んでくれる身近な人が誰もいない状況が続いています。

現在5歳の次女はこども園を退園し、一日の大半を家で過ごしています。心療内科に通院していますが、1年以上たったいまも感覚過敏や過食、男性を怖がる症状があり、また夜は怖がって眠れないため昼夜逆転の不規則な生活を送っています。転園先も見つからないままです。

絵を描くことが好きだった次女。暗い色を使うことが多くなり、かつてこども園で作ったサンタクロースの作品を真っ黒に塗りつぶしたり、泣き顔の絵を描いたりするようになりました。

美紀さんは、園児どうしであっても性暴力が心にのこす傷の深さを軽視しないでほしいと訴えます。

美紀さん

「なぜ園は次女のことばを信じてくれないのでしょうか。なぜ自治体や警察は園に介入してくれないのでしょうか。これでは、子どもが園内で傷つけられても泣き寝入りするしかないということですよね。性被害の苦しみは大人であっても子どもであっても変わりません。この先、次女が成長して行為の意味を理解したらもっと苦しむかもしれません。簡単に被害者を切り捨てないでほしいです」

園児どうしの性暴力 周りの大人がすべきことは

どうすれば園児どうしの性暴力を防いだり、見過ごされないようにしたりすることができるのか。

弁護士の寺町東子さんは、園内で起きる性暴力に対して、園や保護者が備えておくべき3つのポイントがあるといいます。①日常的な予防 ②ビデオカメラの設置 ③実際に被害の訴えがあった場合の対応です。

弁護士・保育士 寺町東子さん

「①日常的な予防は、性教育ですね。他人に見せたり触らせたりしないプライベートゾーンを教えます。でも、単にプライベートゾーンを教えるだけでは不十分で、「自分の体は自分のものだから、いやなことは『いや』と言っていいんだよ。あなたの『いや』は尊重されるし、ほかの人の『いや』も守ろうね」という双方向のコミュニケーションができるようになることが大切です。最近は、子ども向けに書かれた本もたくさんあるのでおすすめです。

②ビデオカメラの設置は、車にドライブレコーダーを付けるのと同じで、子どもから何か訴えがあったときに映像で確認できるようにしておくためです。子どもは、目の前で起きた情景はクリアに頭に残っていても、時間的感覚の発達が遅いため「いつ?」に答えることが苦手です。子どもから訴えがあったときにビデオでさかのぼって、「ここで取り囲まれて何かされているね」「このときに別室に連れて行かれているね」と確認できます。

実際にビデオカメラを設置している園からは、「事故につながりそうなヒヤリハットが起きたときの振り返り・改善にも使えるし、保護者からクレームがきたときにも映像を見せて安心してもらえた」と好意的な声が多いです。園にビデオカメラがあることが当たり前になってほしいですし、保護者には園を選ぶ基準にしてもらいたいです。

③実際に被害の訴えがあったときは、関係する子どもの話を録画や録音しながら、できるだけ誘導せずに❶誰が、❷誰に、❸どこで、❹何をしたのか、❺前後に何をしていたときか を聞き取ります。子どもの記憶は変容しやすいので何度も根掘り葉掘り聞かない、「いつ」という日時にこだわりすぎないことが大事です。この証言の録画と、園に設置しているカメラの映像をもとに、児童相談所に相談するのがいいでしょう。児童相談所は、刑事責任年齢未満の児童が法に触れる行為をした場合に、指導・援助・治療する機能も有しています」

「指導・援助・治療する機能を有する」という児童相談所。しかし、美紀さんは児童相談所に相談しても、「園内のことには介入できない」と言われました。この点について寺町さんは。

弁護士・保育士 寺町東子さん

「残念ながら、この児童相談所はある視点が足りていません。加害をした子どもは家庭内などで虐待を受けているおそれがあるという視点に立てば、これは児童相談所の管轄です。年齢にふさわしくない性的問題行動が見られる場合、なんらかのインプットを模倣している可能性が高い。加害した子もそこで救い出されてケアされなければ、また加害を繰り返すかもしれないし、その子自身の将来も心配です。何も起きていないとシャットアウトしてしまう園や児童相談所は、子どもの福祉の実現を担っているという自覚が足りないと思います」

取材を通して

私の母は保育士をしています。多くの子どもの命を預かる仕事です。園児どうしの性暴力に直面した先生たちは動揺して対応が分からなかったのかもしれませんが、どんな事情があっても被害を訴える子を“うそつき”扱いすることは許されません。美紀さんの長女が被害から数年たち思春期にさしかかって苦しみを訴えたように、幼いときの性被害は長く被害者を苦しめます。園も含め周りの大人たちが被害を訴える子の心身のケアと、加害したかもしれない子の背景にあるものの解決に力を合わせて取り組むべきではないでしょうか。

今回美紀さんの取材をしているあいだにも、ほかの方から、子どもが幼稚園で被害に遭ったという声が寄せられました。保育士歴30年の母も、園児がほかの子の性器を触ろうとしているところや、押し倒した子に覆いかぶさって腰を振っているのを見つけて対応したことがあるといいます。子どもどうしの性暴力は存在しています。私たち大人がそこから目を背けてはいけません。

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