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2021年4月23日

男性の性被害 誰にも相談できず…性暴力被害の実態【vol.122】

ことし3月、内閣府は「男女間における暴力に関する調査」の最新報告書を公開しました。この調査は、無理やりに性交等される被害や つきまとい行為など、暴力行為の実態について把握するために平成11年度から3年おきに行われているものです。調査によると、女性だけでなく男性も含めて、約24人に1人が無理やりに性交等される被害に遭っています。しかし、被害に遭った男性の約71%が、「どこにも(誰にも)相談しなかった」と回答していました。なぜ、男性は相談することが難しいのか。福岡県のワンストップ支援センターで男性の性被害の相談に応じている浦 尚子(うら ひさこ)センター長と共に、その背景を考えます。

(NHKグローバルメディアサービス ディレクター 飛田陽子)


実態見えにくい 男性の性被害


「性暴力は、女性だけが被害に遭うもの」と思う人も珍しくないかもしれません。しかし実際には、性暴力は、性別や世代に関係なく、誰の身にも起こり得ます。内閣府はDVや性暴力などの実態を把握するため、去年11月から12月にかけて、全国の20歳以上の男女5,000人を対象に調査を行い、約69%に当たる3,438人から回答を得ました。「無理やり性交等されたことがある」と回答したのは142人。そのうち、17人が男性でした。しかし、浦さんは、調査結果に表れた被害は氷山の一角だろうと指摘します。

浦尚子さん(性暴力被害者支援センター・ふくおか センター長)
この調査では、挿入を伴う被害だけを調査しています。痴漢や、いじめとしてズボンをおろされたり自慰を強要されたりする被害も加えると、男性の性暴力被害は 実はまだまだ多いのだろうと推測されます。私たちの支援センターに相談してくれる男性たちには、被害直後は誰にも相談できず、時間が経ってようやく話すことができるようになったという人も少なくありません。


(性暴力被害者支援センター・ふくおか 浦尚子センター長)

男性被害者の約71% “相談しなかった”


調査では、無理やりに性交等される被害に遭った人たちに 被害を誰かに打ち明けたり、相談したりしたかどうかを聞いています。女性の58.4%、男性の70.6%が「どこにも(誰にも)相談しなかった」と回答していました。女性が相談しなかった理由(複数回答)として最も多かったのは「恥ずかしくて誰にも言えなかったから」の49.3%でしたが、男性が相談しなかった理由(複数回答)として最も多かったのは、「自分さえがまんすれば、なんとかこのままやっていけると思ったから」「相談してもむだだと思ったから」が共に33.3%、次いで、「世間体が悪いと思ったから」「他人を巻き込みたくなかったから」が25%でした。

浦さんは、男性の性暴力被害者は、女性の被害者以上に、自分が被害に遭ったことを受け入れることができなかったり、誰かに打ち明けても信じてもらえないと不安になったりしているのではないかと考えています。

浦尚子さん(性暴力被害者支援センター・ふくおか センター長)
“男が性被害に遭うわけがない”という社会の無理解や、“たとえ傷つく体験をしても、男は強くあらねばならない”とか“男なのに自分が弱かったせいで、被害に遭ってしまったのだ”といったジェンダーバイアスに苦しめられて、心がギリギリの状態になるまでひとりで抱え込んでしまう人が少なくありません。あるいは、勇気を出して周囲の人に打ち明けたとしても、「作り話なのではないか」と疑われたり、「あなたも気持ち良かったんでしょう?」などと からかわれたりしたという人もいます。その間にPTSDの症状などが深刻化してしまうと、回復にはさらなる時間がかかります。埋もれてしまいがちな男性被害者を孤立させないために、社会全体で“性暴力の被害に性別は関係ない”ことや“性暴力の被害者に責任はない”ことを知っていてほしいと思います。

被害に遭った男性の皆さんへ どうかひとりで悩まないで

(性暴力被害者支援センター・ふくおか HPより)

浦さんがセンター長を務めている福岡県のワンストップ支援センターでは、2016年12月からホームページに男性被害者に向けた文章を掲載し、男性被害者が悩みやすいことについてQ&Aコーナーを設けています。このごろは、福岡県外の男性たちからも“話を聞いてほしい”と電話が入るようになったといいます。(※)
※福岡県外からの相談の場合、電話相談は対応していますがその先の支援については応じられないことがあります。



(性暴力被害者支援センター・ふくおか HPより一部抜粋)

浦尚子さん(性暴力被害者支援センター・ふくおか センター長)
いま、性暴力の公的な相談窓口として各都道府県にワンストップ支援センターが置かれていますが、残念ながら、地域によっては対応が十分に追いついていないところもあり、相談や支援の受け皿を急いで増やしていく必要があると感じています。男性やLGBTQの皆さんには、被害を他人に打ちあけることに躊躇(ちゅうちょ)してしまう人も多いと思いますが、最近は電話相談だけでなく、SNSを使った相談窓口(※vol.111で紹介しています)もできました。どうか一人で悩まずに、まずは相談してみてほしいです。

男性の性被害 取材を続けます
「みんなでプラス“性暴力”を考える」では、これまでもたびたび、男性の性被害についてお伝えしてきましたが 被害の実態や、被害をなくすために必要なことについて、もっと皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。もしよければ あなたの体験や思いを聞かせてください。下の「コメントする」か、ご意見募集ページから お待ちしています。(どちらのやり方も、匿名可です。)
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