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“性暴力”を考える vol.121~

“性暴力”を考える vol.121~

同意のない性的な言動はすべて“性暴力”です。
このページでは、性をめぐる問題について 皆さんと一緒に考えたいと思っています。

「これって性暴力?」
「被害を打ち明けられたときは、どうすれば?」
「子どもへの性教育はいつから?」

あなたの思いや悩み、意見を各トピックにある「コメントはこちら」か ご意見募集ページより聞かせてください。(※)
投稿の一つひとつに、担当のディレクターや記者が目を通し、返信させていただいたり新たな取材につなげたりしていきます。
※どちらも、匿名で送っていただくことができます。ただし個別の被害相談、ご要望などにはお応えできないことがあります。
【毎週金曜日に更新中】
男性の性被害 実態調査アンケートご協力のお願い【vol.128】
“科学者”になって性を学ぼう!~子どもへの性教育~【Vol.127】
SNS相談から見えた被害事例は?【vol.126】
絵本で作る 性暴力のない未来【vol.125】
就職活動中などのセクハラ “4人に1人が経験”【vol.124】
どう考える?ネットにあふれる性的な情報【vol.123】
男性の性被害 相談を阻むものは【vol.122】
山本潤さんに聞く! 議論大詰めの “刑法改正” 【vol.121】
【過去のトピックを読む】
Vol.1~Vol.40
Vol.41~Vol.80
Vol.81~120

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クロ現+
2021年6月11日

男性のレイプ被害 HIVに感染も「被害を認識できなかった」【vol.129】

複数の男性からレイプの被害に遭い、HIVに感染したという男性が、体験談を寄せてくれました。男性は長い間、自分が被害者だと認識することができなかったといいます。その背景には、多くの男性被害者が直面する深刻な事情がありました。

(報道局政経・国際番組部ディレクター 神津善之)

男性の性被害に関するアンケートを実施しています【回答はこちらから】
サウナでレイプされHIVに感染

40代男性です。よく通っているサウナで知り合った同年代の男性から、別のいいサウナの施設があると誘われ一緒に行きました。
館内休憩所でアルコールを飲んだあと突然睡魔に襲われ、薄暗い仮眠室のようなところで横になりました。
一緒に来た男性が僕の着ていたガウンを脱がして性器をフェラチオしてきました。やめてと言っても脱力で力が入らなかったです。
周りの男性も寄ってきて、交代で私の口や肛門に、性器を入れてきました。手に握りしめていた冷たくなったタオルの感触は鮮明に覚えています。妻には絶対言えません。


みんなでプラス「“性暴力”を考える」にこの投稿を寄せてくれた、ダイスケさん(40代・仮名)です。関東地方で看護師として働き、妻と2人の子どもと暮らしています。


ダイスケさん(仮名)

ダイスケさんが被害に遭ったのは3年前。銭湯で出会った男性に連れられて行った、男性専用のサウナでの出来事でした。休憩所でアルコールを飲んだあと、急激な睡魔に襲われました。いま考えると、レイプドラックが入っていたのではないかと感じていますが、そのときは分からずに、男性に支えながら仮眠室へ向かい横になったと言います。そして眠りに落ち、気が付くと、複数の男からレイプされていたのです。



被害時の行為でHIVに感染し、いまも血液検査や薬の処方が欠かせず、3か月に1回、通院しています。(※現在はさまざまな治療薬があり、服薬することでエイズ発症を予防することが可能です)
ダイスケさんは、検査日が近づくたびに、被害のことを思い出して苦しくなると言います。

ダイスケさん(仮名)
「なんで自分がこういうことになってしまったんだろうという思いとか、悔しさとか、自分の何が悪かったんだろうという気持ちとか、そういうのが一つひとつ積み重なっていくというか。やっぱりそういうことを考えてしまうので、一つひとつ苦しいっていう感じがあります。
以前はフラッシュバックが頻回にあったり、そのフラッシュバックによって急に目が覚めて中途覚醒みたいな感じになったり、十分な睡眠や休息がとれないとか、男性の大きな声を聞いたりするとドキっとしてその瞬間手が震えはじめたりとか、そういう体の変化もありました」
体の反応に混乱「被害を認識できない」
被害によって体にも心にも大きなダメージを受けたダイスケさん。しかし、被害について当初は「レイプだと認識できなかった」と話してくれました。
もともと男性がレイプの被害に遭うということを考えたことがなかったことに加えて、被害時に自らの体が反応したことをどう理解すればいいか分からなかったからだと言います。
望まない性的な行為であったにも関わらず、性器や肛門を刺激され、ダイスケさんは勃起し射精しました。そうした体の反応によって、大きな混乱に陥り、被害と認識することができなくなったのです。

ダイスケさん(仮名)
「自分の中では非常に苦痛だったし、自尊心を傷つけられることだったので、本当につらい状況だったという認識なんですけれど、体の反応としては、快楽が得られたあとのような反応、つまり、勃起して射精しているような状況だったので、まったく自分の中でも理解できないというか、自分の気持ちが本当に性行為をやめてほしかったのか、それとも受け入れていたのか、その辺が本当に混乱して。 (被害時に)射精した瞬間、やっぱり正直言うと、気持ちいいという感じがあったので。気持ちいいと思ったんだったら、自分はそれを受け止めていたんだろうという気持ちがあった。体で感じた感覚と心で感じた痛みっていうのはすごい乖離しているので、非常に混乱したっていう感じですね」

「自分を許せなかった」と繰り返し語ったダイスケさん。被害に遭ったという認識を持てず、自らを責め続けてきました。そして、この経験を誰にも話すことができず、一人で抱え続けてきたのです。

ダイスケさんが、自らの経験を性被害だと明確に認識するようになったのは、「“性暴力”を考える」の記事がきっかけでした。



レイプの被害に遭った男性の記事を目にしたのです。さらに、専門家のインタビューで印象的な一文がありました。
「熱いものを触ったときにやけどをするのと同じように、性器を触られて勃起したり射精したりするのは、あなたの意思とはまったく関係がない。あくまでも自然な体の反応。だから、あなたがおかしいわけではないんです」
こうした情報を得たことで、体に起きたことを理解し、自分を責める気持ちも軽減されたと言います。

ダイスケさん(仮名)
「自分が受けた行為がどういうものだったか、ほかの方のエピソードを通じて理解することができて、自分は男性による性被害を受けたんだと、男性も性被害を受けることがあるんだということが、一番理解につながったというか、自分を受け止められるきっかけになったと思います。 その中で、自分が自分に対して嫌悪感を持っていた射精する行為っていうのが、生理的な反射によって起こったことで、自分の思いとは違うということが理解できて、自分をやっと許せるように思いが変わってきたという感じです」

ダイスケさんが読んだ記事はこちら【被害に遭った男性のみなさん そばにいるみなさんへ】

男性の性被害についての知識を得たことで、徐々に自らの被害について受け止められるようになったというダイスケさん。今回、その経験を語ることで、自分と同じように被害に遭った人の役に立つことができればと取材に応じてくれました。それでもまだ、家族に対しては「自分の言葉で十分に伝えられるか不安がある」として、打ち明けることができずにいます。

男性の性被害 取材を続けます
ダイスケさんへの取材を通して、同じ男性として、被害に遭ったときに起きる体の反応を想像し、その混乱の深さを思わずにはいられませんでした。そして、その混乱が、被害について声を上げることの難しさへとつながり、多くの男性の性被害が埋もれている実態があるのではないかと感じています。今後も、男性の被害の実態について取材を続けていきたいと思います。

男性の性被害に関するアンケートを実施しています【回答はこちらから】

男性の性被害について、もしよろしければあなたの体験や思いを聞かせてください。この記事に「コメントする」か、 ご意見募集ページよりお待ちしております。
※「コメントする」にいただいた声は、このページで公開させていただく可能性があります。


クロ現+
2021年6月4日

男性の性被害 実態調査アンケートご協力のお願い【vol.128】

「みんなでプラス“性暴力”を考える」では、なかなか認知されてこなかった男性の性被害について取材し、発信を続けてきました。今回、男性が受けた性被害について WEBアンケート調査を行い、より広く 被害の実態や社会的背景を捉えたいと考えています。

【アンケートはこちらから】

被害を思い出し、第三者に伝えることは たとえインターネット上で 匿名で回答できるアンケートであっても、つらい気持ちや苦しさを伴います。被害に遭ったことがある方に、直接ご協力をお願いすることを心苦しく思いながら、私たちがこのアンケート調査を実施しようと決めたのには、理由があります。

認知されにくい 男性の性被害


ことし3月に公表された国の調査によると、女性だけでなく男性も含めて約24人に1人が無理やりに性交等される被害に遭っています。しかし被害に遭った男性の約71%が、「どこにも(誰にも)相談しなかった」と回答しています。その理由として多く挙げられたのは、「自分さえがまんすれば、なんとかこのままやっていけると思った」「相談してもむだだと思った」というもの。被害が“起きていない”のではなく、“被害に遭ったことを安心して打ち明けられる環境”が不足していることがうかがえます。

そうした中、私たち「みんなでプラス“性暴力”を考える」のもとには、性被害に遭った男性や 被害に遭った男性の身近にいる方から、切実な投稿が届いています。ひとつひとつの声から浮かび上がってくるのは、国が調査している性器の挿入を伴う被害以外にも、痴漢や、“パワハラ・セクハラ”、“いじめ行為”として行われる性暴力など、様々な被害が起きていることです。さらに詳しく取材させていただいた男性たちからは、「性暴力被害は女性だけの問題と捉えられているような気がして、今まで誰にも言えなかった」という声を聞くこともあります。



被害者に “誰も頼ってはいけない”“自分が強くあらねば”と思わせてしまう社会がいいはずはありません。性別に関わらず、性暴力被害に遭った誰もが安心して声を上げ、SOSを出すことができる社会を作るためには何が必要か。私たちは皆さんのご経験や思いをお聞きし、この問題についてより広く深く伝えていくことで、社会全体に問いかけたいと考えています。そのために、まずは被害の実態を把握したいです。ご無理のない範囲で、あなたの力を貸してください。

アンケート調査に回答するには


アンケート調査にご協力いただく方法は、以下の通りです。

●回答期間:2021年6月4日(金)~20日(日)
●回答方式: こちらの WEBフォーム から 匿名でもご回答いただけます。
※メールアドレスなどご連絡先をご記入いただいた方には取材班から後日ご連絡させていただく場合があります。
※クリックするとアンケートフォームにジャンプします。

●回答のご負担への配慮
性被害当事者を対象にしたこのアンケート調査では、ご回答いただく方の負担軽減、プライバシーへの配慮が通常にもまして必要です。私たちは、なるべくご負担をおかけしないように、被害の実態を知ることと プライバシーへの配慮のバランスについて、専門家や研究者のアドバイスを受けながら注意深く検討しました。例えば、質問形式の多くは「選択式」を採用し、質問数は10問程度に絞りました。それでも、被害について思い出したり、言葉にしたりすることは少なからず負担を伴います。どうか、途中で負担を感じる場合は、無理をせず回答を中止してください。
※大変申し訳ございませんが「みんなでプラス“性暴力”を考える」では、個別に専門的な支援を提供することができません。性暴力被害の相談窓口については こちらに私たちがこれまで取材した情報をまとめてあります。ご活用いただければ幸いです。

●複数の被害に遭った方へ
今回のアンケート調査では、ご回答いただく方の負担を軽減する目的と集計上の理由から、一度のご回答につき、詳しくお聞きするのは最も衝撃をうけた被害に絞っています。複数の被害に遭った経験があり、お伝えいただけるという方は、自由記述欄にご記入いただくか、大変お手数ですが被害ごとにご回答くださいますよう、お願いします。ただ、くれぐれもご無理のないようにお願いします。

●男性以外の性自認で、性暴力被害に遭った方へ
性暴力被害は ジェンダーやセクシュアリティ、年齢に関わらず誰の身にも起こりうることです。私たちは2年前から「みんなでプラス“性暴力”を考える」のページや「クローズアップ現代+」などの番組で被害の実態を伝え、被害者・加害者・傍観者を生まないために何が必要か、皆さんと一緒に考えてきました。過去の記事はこちらから読むことができますので、もしよかったら ご覧いただけるとうれしいです。また、今回のアンケート以外にも、それぞれの記事ごとに添えられている「コメントする」というボタンや、ご意見募集ページから、匿名であなたの体験や思いをお寄せいただくことも可能です。よろしければ あなたの声を聞かせてください。
※「コメントする」にいただいた声は、公開させていただく可能性があります。

●個人情報の取り扱い・調査結果の公表について
皆さんからいただいたご意見・情報は趣旨を変えずに一部表現を修正し、個人情報を伏せた上で今後の「クローズアップ現代+」の放送や、番組の公式ツイッター、「みんなでプラス“性暴力”を考える」で紹介させていただくことがあります。 また調査結果は 改めて「みんなでプラス“性暴力”を考える」の記事でもお伝えする予定です。いずれの場合も、皆さんのメールアドレスなど個人にかかわる情報が公開されることはありません。なお個人情報保護に関する情報は、「報道・著述・学術研究分野の個人情報の保護について」をご参照ください。

クロ現+
2021年5月28日

“科学者”になって性を学ぼう!~子どもへの性教育~【Vol.127】

「科学者になったつもりで話を聞いてもらいます」
白衣姿の講師がそう語り始める性教育があります。体の仕組みなどの性の話は、恥ずかしいことではなく科学の話。そうした視点でタブーを取り払って性を学ぼうと、札幌市のNPOが行っています。
今年度から「生命(いのち)の安全教育」が教育現場に段階的に導入されていくなか、性被害を防ぐための教育に何が求められるのか。このNPOの取り組みからヒントを探ります。

(報道局社会番組部ディレクター 吉岡礼美)


性の話は“科学の話”
「赤ちゃんはどこから生まれてくるの?」
「赤ちゃんはどうやっておなかに入るの?」

子どもたちからこんなことを聞かれ、戸惑った経験はありませんか?


(NPOピーチハウス「性の健康教育 からだの科学」 子ども向けの動画より)

札幌市のNPOピーチハウスが、15年以上にわたって行っている性教育の講座「性の健康教育 からだの科学」(対象:未就学児~高校生)。子どもたちに次のように切り出します。

「皆さんは科学者になったつもりで話を聞いてもらいます」
「科学者は『うえー、気持ち悪い』とか『嫌だ、恥ずかしい』とか決して言いません。その代わり『なるほどそういうことか』と言います」


照れや恥ずかしさを取り除き、科学的な視点で正しい性の知識を学ぶ準備をしてから講座の内容に入るのです。

最初は「プライベートゾーン」の大切さ。口と胸と、両足の間にある「性器」という名前の場所は誰も勝手に見たり触ったりすることが許されない部分であることを伝えます。触られたくないときは「嫌だ」とはっきり断り、それでも触ろうとする人には「パンチをしてもいい、キックをしてもいい、ゲロをかけてもいい、何をしてもいいから逃げる」と、身を守る方法を具体的に教えます。

同時に、性器が痛んだり、何か違和感を覚えたりしたときは、恥ずかしがらずに保護者や医師に声をあげるよう伝えます。

こうして自分の体の守り方を理解したあと、性器や体の部位の名前を一つひとつ丁寧に教え、声に出して繰り返してもらいます。


(NPOピーチハウス「性の健康教育 からだの科学」 説明する講師)

次に、妊娠までの過程や仕組みをストレートに伝えます。あいまいな言葉は使いません。

「男の人のペニスを女の人のワギナ(ちつ)に入れて、精子を卵子に届けます。精子と卵子が結びつくことを受精といいます。そうして赤ちゃんができます」
「そしてこれらのことをセックスする、もしくは性行為と言います」


また「2人の大人がお互い大好きになると、多くの場合セックスをたくさんしたくなります」と説明した上で、避妊の方法を教えます。


(避妊具の使い方と廃棄のしかたを教える講師)

こちらも実際に、避妊具(コンドーム)を見せて付け方を説明。医師が手術の際に使う手袋と同じ素材でできていること、精子が避妊具の中に出ることで卵子に届かなくなることを伝えます。さらに、使用後は紙などに包んで捨てるよう廃棄のしかたも示し、マナーを守れない大人にならないよう教えます。

講座の内容は発達段階に合わせて構成されますが、言葉が話せるようになった幼児期から性器の名前や妊娠までの過程、避妊具について学びます。早い段階から正しい知識やマナーを身につけることで、子どもたちが、性暴力の加害者にも被害者にもならないようにすること、そして性において自己決定ができるようになることを目指しています。

子どもだけでなく大人も学ぶ
NPOピーチハウスは17年前、地域の保護者が集まり、学校の授業では性行為や避妊方法が取り扱われないなか、子どもに性や性暴力の正しい知識を届けたいと発足しました。子どもの性教育における第一人者、カナダのメグ・ヒックリングさんの教育法に学び、“科学的な視点”で語れば、性の話がタブー視されがちな日本でも正しい知識を伝えることができると考えました。


(NPOピーチハウス 吉裕子さん)

NPOピーチハウスのメンバーで講座の講師を務めている吉裕子(よし・ゆうこ)さんは、社会のなかで心も体も健康に生きていくためには、まずは自分の体を知ることがとても大切だといいます。

NPOピーチハウス 吉裕子さん
「感情を横に置いて考えると、体がここにあり、生命がつながれてきたことは事実です。まずは体があって、その上で社会のなかで生きていくから関係性や社会性というものが出てくる。自分の体を気持ちよく受け入れる、もしくは受け入れられない理由を自分で理解するには、自分の体のことを知ることが大切ですし、それは健康に生きることそのもので、自己肯定感と深く関わります。ですので、子どもたちにまずは“事実”として私たちの体の仕組みを伝えることがとても大切で、“科学的な視点”はその事実を捉えるためのキーワードだと考えています」


(NPOピーチハウス「性の健康教育 からだの科学」 大人のための講座)

NPOピーチハウスがこだわっているのは“大人も学ぶこと”。子どもたちが講座に参加する場合、保護者には大人向けの講座に参加してもらうようにしています。まずは大人に科学的な視点から学んでもうらことで、子どもたちが学ぶ知識と情報を理解して納得してもらうこと、共有してもらうことが欠かせないと考えているのです。子どもたちからの性の質問にどう答えたらいいか戸惑う大人も多いことから、子どもたちへの教え方や教えるタイミングについても詳しく伝えています。


(大人向けの講座の参加者に配布している資料)

さらに講座では、参加者どうしで性の話をすることを大事にしており、毎回「初めて触れた性の情報」について周りの人と話してもらう時間を設けています。

NPOピーチハウス 吉裕子さん
「大人の方が、照れや恥ずかしさがあったり、タブー視していたりということがありますので、性のことをあえて口にしてもらいたいと思っています。相手の話を聞く練習にもなりますし、自分の経験を振り返ることによって、改めて家庭で性の情報を伝えることを自分ごととして考えていただく契機にしたいと考えています。そして最初に性の情報に触れたときのことを話してもらうと、『恥ずかしいと感じた』とか『気持ちが悪かった』とか、ネガティブな感情がともなっていた人が多いことが分かります。周囲の反応や、当時の気持ちをよく記憶していることが多いため、そこから子どもたちに伝えるときの雰囲気づくりやユーモアを交える必要性を感じてほしいと思っています」

コロナ禍で始まったオンライン講座 予想外の広がり
NPOピーチハウスがこれまで行った講座は、70回以上。しかしコロナ禍で実際に子どもたちや保護者を集めることが難しくなり、中止せざるをえない事態となりました。コロナ禍でも必要な情報を届けるにはどうすればいいか。ことし3月、初めてオンラインで講座を開催することにしました。


(NPOピーチハウス「性の健康情報 からだの科学」 オンライン講座)

対面での話し合いを大切にしてきた吉さんたちにとって、オンラインは抵抗があったといいますが、思わぬ広がりが生まれました。北海道だけでなく全国からおよそ50人が参加。しかも、これまでほとんど参加する人がいなかったという男性が多く見られたのです。


(初めて参加した中野創さん)

初めて「性教育」に関する講座に参加した中野創さん。札幌市の学童保育の支援員として、小学1~6年生の子どもたちと接していますが、性の誤った情報がまん延していると強い危機感を抱いてきました。

小学校高学年の男子が2人で遊んでいる低学年の男女に対して「お前らヤってんだろ」と発言したり、「オナニー」「セックス」という発言をしたりすることがあり、意味を分かっているのか尋ねたところ「みんなエロ動画観てるよ」という言葉が返ってきたといいます。さらに、友達の下着をスマホのカメラで撮影する子もいて、注意しながらもどう教えていいのか頭を悩ませてきました。

オンラインであれば対面の講座よりもハードルが低く、参加しやすかったという中野さん。この日、子どもたちが自分の体を守るために何を教えることが必要なのか、何を教えると他者を大切にできるのか、学びました。

参加者 中野創さん
「性教育は必要だと感じていましたが、自分自身が性教育をきちんと教わったことがなく、どのような知識が必要なのか分からずにいました。自分の経験や感覚、思いや気持ちだけで対処しようとすると必ず行き詰まってしまう。性の健康情報を『科学的視点から学ぶ』というのが相当腑に落ちたところがありました。『ここまで教えるのか』と思いましたが、自分の体の名称や体の仕組みを知っておくことは自分を大切にすること、相手を思いやることにつながると思いました。周りの人にも伝えて、より正しい性教育の知識を身につけていかなければならないと感じています」

「生命の安全教育」 今年度から段階的に導入
国は今年度から、「生命(いのち)の安全教育」を教育現場で段階的に導入することにしています。

「生命の安全教育」は、子どもたちが性犯罪・性暴力の被害者にも加害者にも傍観者にもならないように行う教育で、今後実証研究を行ったあと、全国の学校で本格的に導入される予定です。先月、文部科学省と内閣府が専門家とともに作成した教材や指導資料が公表され、本格的な導入に向けて準備が進んでいます。


(「生命の安全教育教材(幼児期)」より)


(「生命の安全教育教材(小学校 高学年)」より)

新たな教材は、幼児期から大学生まで発達段階に応じて6種類作成されており、指導の手引きと合わせて指針となるものが示されています。

NPOピーチハウスの吉さんは、今回の導入を歓迎しながらも、ある課題を指摘します。学習指導要領では「妊娠の経過は取り扱わない」と明記されており、「生命の安全教育」でも、性行為などについては触れないという方針なのです。

NPOピーチハウス 吉裕子さん
「私たちが始めた当初は講座を開催するだけで多くの批判がよせられたこともありました。性の話なんてするもんじゃないと。ですので、とても大きな変化だと思います。しかし、まだ(教える内容が)限定されていることが課題だと思います。教育現場の先生方に教えるためのトレーニングをしたり、教える際にまわりの先生と情報共有をしたり、場合によっては外部との連携も必要になったりすることもあると思いますが、そういった体制づくりが今後問われていくと思います。

私たちの団体には今まさに子育て中で子どもの性の問題に直面しているメンバーもいます。教育現場の方や地域の皆さんと一緒に話し合ったり提案をしたりしながら、性教育、性の健康教育がよりよい形で広がっていくことに貢献できたらと思います」

どうしたら社会から性暴力をなくし、一人ひとりのいのちを守ることができるのか。皆さんとともに考えていけたらと思います。性教育についてのあなたの体験や考えを、この記事に「コメントする」か  ご意見募集ページより聞かせていただけたらありがたく思います。
※「コメントする」にいただいた声は、このページで公開させていただく可能性があります。


クロ現+
2021年5月21日

SNS相談から見えた被害事例は?【vol.126】

チャットで性暴力の悩みを相談できる「Cure time(キュアタイム)」。被害に遭った人たちが相談しやすい環境を作るため、年齢・性別を問わず、匿名で相談を受け付けています。内閣府は先週(12日)、これまで相談があった293件についての調査報告書をまとめました。見えてきたのは、SNS相談ならではの強みや特徴。あなたも相談してみませんか?

67日間で293件の相談 その内容は?
「性暴力を考える」でこれまでもたびたび紹介してきた、Cure time。内閣府が主導し、性暴力被害者支援などを行う団体が協力し、現在は週3日、専門の相談員がチャットで相談に応じています。(※詳細は相談現場を取材したvol.111をご覧ください)

去年10月からことし1月までに寄せられた相談は、293件。そのうち女性からの相談が238件、男性からは26件、それ以外の方からは10件、不明が19件でした。

年代別にみると、10代・20代が約6割を占めていますが、幅広い年齢層から相談があったことも分かります。



今回まとめられた報告書では、相談した人たちがどんな被害に遭ったのか、その類型も示されました。 レイプ(強制性交)55件、強制わいせつ43件、性虐待32件、画像、動画にかかわる相談(デジタル性暴力)22件となり、さまざまな性暴力の被害が相談されていることが分かります。



相談事例を詳しく見ると、コロナ禍による影響を訴える声もありました。
「外出自粛により、誰にも会えず、さびしくなり、SNSでつながった男性に裸の写真を送ってしまった」
「家族からの被害に悩んでいるが、移動ができず、どこにも避難できない」
「1人でいる時間が増え、過去の被害を思い出しつらい」

また、被害から相談するまでにどれぐらいの時間を要したかを分析したところ、72時間以内が7件にとどまる一方、10年以上前の被害についての相談が36件と最も多くなっています。



拡充が求められる 専門的なSNS相談
ことし3月に公開された、内閣府「男女間における暴力に関する調査」によると、無理やりに性交等をされる被害を受けた人の約6割は誰にも相談していません。また、相談ができたとしても、民間の専門家や専門機関に相談した人は1.4%、ワンストップ支援センターに相談した人は0.7%となっており、専門的な相談支援につながりにくいことが課題となっています。

そうした現状に対し、SNS相談は匿名性が高く相談のハードルが低いこと、電話相談よりも若年層が使いやすいことなどの強みがあり、活用に期待が寄せられています。しかし、Cure timeを利用できる日時は週3日に限られており、相談者へのアンケート調査では「いつでも相談できるようにして欲しい」という声もあがっています。

報告書は最後に「SNS相談は、性暴力被害者支援のために、必要なツールであり、十分な予算と人員を確保し、継続すべき」と述べています。

Cure time 相談はこちらから
性別や年齢を問わず、さまざまな人が利用しているSNS相談。秘密は守られますので、あなたも相談してみませんか?Cure timeはこう呼びかけています。「これって普通なの?と思うこと、イヤだったこと、困っていること、モヤモヤしていること、何でも相談して下さい」

相談受付
月・水・土曜日の17時~21時
年齢・性別を問いません。
他の人や身近な人に相談内容が漏れることはありません。
外国語でも相談できます。
https://curetime.jp/


年齢や性別にかかわらず、相談しやすい環境をつくるために、あなたは何が必要だと思いますか?下の「コメントする」か、 ご意見募集ページから お寄せください。
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クロ現+
2021年5月14日

絵本で作る 性暴力のない未来【vol.125】

いま、書店には家庭で性教育を学ぶための本が数多く並んでいます。インターネットで子どもの世界が広がり、戸惑いや焦りを感じる親も多いなか、「性教育本」の出版が相次いでいるのです。

ことし2月に出版され、注目を集めているのが「おしえて!くもくん」(東山書房)。性暴力の被害者も加害者も傍観者も作らないための“予防教育”に着目して制作された絵本です。物知りの雲“くもくん”が、空の上で子どもたちを見守りながら、性被害を防止するのに必要な知識を教えてくれるストーリー。監修したのは、警察庁の現役キャリア官僚で、慶應義塾大学教授の小笠原和美さんです。長年、警察官として性暴力被害者の支援に取り組んできた小笠原さんが絵本に込めた思いとは。

(さいたま放送局 記者 信藤敦子)


くもくんが教える“プライベートゾーン”の大切さ



(「おしえて!くもくん」より)

「おしえて!くもくん」は、空から子どもたちを見守っている雲のキャラクター「くもくん」が、公園でふざけて友達のパンツを脱がせようとする男の子を見つけて、注意するシーンから始まります。そして、一緒に遊んでいた女の子を含めた3人に、なぜパンツを脱がせることがいけないのか、水着で隠れる場所は、簡単に他人に見せたり、触らせたりしてはいけない「プライベートゾーン」であることを伝えます。


(「おしえて!くもくん」より)

そのうえで、他人のプライベートゾーンを無理やり触らないことや、触られそうになったときにはいやだと拒否すること、また第三者として目撃した場合には、助けてあげたり、大人に話したりすることを教えます。
警察官として実感した“予防教育”の重要性

(「おしえて!くもくん」監修 小笠原和美さん)

絵本を監修したのは、小笠原和美さん。福島県警警務部長や北海道警察函館方面本部長などを歴任した警察庁の現役キャリア官僚です。現在は警察庁に所属しながら、慶應義塾大学で社会安全政策やジェンダー論を教えています。警察官として様々な部署で働きながら、性暴力対策と被害者支援に携わってきた小笠原さん。様々な事件や海外での取り組みを知るなかで、性被害をなくすためには、子どもたちを加害者にも被害者にもさせない教育が必要だと実感しました。その予防教育の入り口として、まずはプライベートゾーンの知識が欠かせないと指摘します。

小笠原和美さん

「幼いころに被害に遭った人の多くは、被害を被害と認識できなかったという。もし知っていれば、抵抗や相談もできたかもしれないという声を聞き、まずは被害を被害と認識するためにプライベートゾーンの重要性を伝えることが先決だと考えた」

また小笠原さんは、多くの性被害の支援者と関わるなかでも、予防教育の重要性を実感したといいます。

小笠原和美さん

「被害後の支援はとても大事で、さらに充実させていくべきですが、PTSD治療の専門家からは、費用対効果から見ても、“予防教育”が最も効果が高いと指摘されている。予防教育により、自分が被害に遭っていると認識することで、抵抗したり、誰かに相談できたりすることにつながる。また、被害に遭ったとしても、自分が悪いわけではないとあらかじめ知っておくことは、その後の人生においても非常に重要だと考えている」



それでは、こうした予防教育は何歳から行うべきなのでしょうか?小笠原さんはあるデータを示しました。令和2年に認知された強制わいせつ事件のうち、被害者の17%が12歳以下で、そのうちの13%は男子だったそうです(警察庁の統計より)。

小笠原和美さん

「想像し難いことですが、小学校入学前の被害や、男の子の被害も発生している。つまり予防教育は、小学校に入る前の子どもたちに、男女の性別を問わず行う必要がある」
“被害者”も“加害者“も“傍観者”もなくす
この絵本のこだわりの1つが、登場人物に被害者・加害者・目撃者の三者を入れることでした。絵本ではそれぞれの立場で考えるページがあり、加害をした子のページでは、自分も同じことをされたらいやだと気づき、被害者に共感することで考えを改めます。被害を受けた子は、くもくんから「いやって大きな声で言おうね」と提案されるものの、「本当はいやだと思ったけど、言えなかった」と打ち明けます。くもくんは、「そうだね、いやって言えないときもあるよね」と寄り添い、次は「勇気を出せるといいね」と励まします。

小笠原和美さん

「実際の性被害でもすぐにいやと言えず、抵抗できないことはよくあること。いやと言えないのも普通のことなので、次は勇気を出せるといいねと、エンパワーすることを大事にした」

最後に、現場に居合わせた目撃者の女の子に対して、くもくんは「もしも、お友達がいやなことをされていたら、助けてあげてね。自分で助けるのが難しければ大人に話せばいいよ」と解決策を伝えます。すると女の子は、「大人に話せばいいのね!それならできそう!」と笑顔になります。絵本のなかでくもくんは、「子どもたちにもきっとできることはあるよ」と、常に背中を押してくれる存在として描かれているのです。

子どもに繰り返し読んでもらうために

(左:小笠原和美さん 右:サトウミユキさん)

「おしえて!くもくん」は、小笠原さんの活動を長年支えてきた友人のmasumiさんが全体の企画やストーリーを構成。グラフィックデザイナーのサトウミユキさんが、くもくんのキャラクターをデザインしました。3人でプロジェクトを結成し、約2年かけて「性暴力を予防するための絵本」を目指してきました。実際の子どもの反応を見るために、サトウさんは、当時4歳だった娘の反応を見ながら制作を進めたそうです。

サトウミユキさん

「最初に娘に読んだときの感想が『あー長かった!』だった。そこから、子どもに夢中になって読んでもらうにはどうしたらいいか、チームで何度も議論を重ねた」




サトウさんは、子どもが親しみやすいように絵本全体のトーンを、青い空を中心にした明るくやさしい色合いにすることを徹底しました。そして物語の最後には、くもくんから子どもたちに向けて「自分の体は自分のもので、ひとりひとりが大切なんだ」と伝える手紙をつけることや、子どもが好きな迷路を取り入れてクイズ形式でプライベートゾーンを守る約束を学べたりすることも、プロジェクトで話し合って決めました。大切にしたのは、子どもたちが楽しみながら何度も読んでくれる絵本にすることでした。

サトウミユキさん

「加害者の手を黒い色にしていたときもあったが、大事なことは繰り返し読んでもらうこと。子どもが怖く感じる要素は一切やめた」
「空を見上げればくもくんの存在を思い出してもらえる。そんな絵本になってくれたらうれしい」


「恥ずかしい」ではなく「大切なところだから守ろう」に

(「おしえて!くもくん」より)

“くもくん”の輪は着実に広がり始めています。今年2月の出版以降、保育園や幼稚園を卒園する際にプレゼントする園や、絵本を購入すると特典としてダウンロードできるポスターを掲示したり、指導者向けの手引きや保護者への資料を活用したりして、小学校での読み聞かせを実践しているところもあるということです。

プロジェクトのホームページに感想を寄せた都内の保育園で働く30代の女性は、勤務する保育園で、裸になってなかなか服を着ない子や、大人が見ていないところで、友達同士で面白がってお尻などを出す子などの対応に苦慮していました。しかし、この絵本と出会ってから、子どもたちに前向きな言葉がけができるようになったといいます。

30代の女性読者

「『だめだよ、恥ずかしいよ』ではなくて、『大切なところだから守ろうね』と伝えるようになった。成長とともにプライベートゾーンへの興味を持つなかで、叱るのではなく、具体的にどうすればいいのかを学ぶきっかけになった」


小笠原和美さん

「すべての子どもたちに、この絵本の読み聞かせを通じて、自分の大切な心と体の守り方、必要な知識と勇気を送り届けてほしい」


取材を終えて
私は娘が3歳のときに、プライベートゾーンについて学べる絵本「わたしのはなし」(童心社)を読み聞かせました。数日後、夫が娘のお腹をくすぐろうとすると「私のプライベートゾーンを触らないで!」と拒み、絵本の力を実感したことを覚えています。6歳になって読んだ「おしえて!くもくん」では、ページの後半にある迷路が気に入ったようです。「プライベートゾーンをさわられて『ないしょだよ』といわれたら、どうする?」の問いには、すぐに「だれかにそうだんする」を。「もし、きみがプライベートゾーンをみられたりさわられたりしたら、わるいひとはだれ?」の問いには「みたひと、さわったひと」を迷わず選んでいました。自分の体は自分だけのもので、ひとりひとりが大切。くもくんからのメッセージを、改めて繰り返し伝えていかなければと感じました。

日本では自分の体をどう守るかについて、学習指導要領に盛り込まれておらず、学校教育で学ぶ機会はほとんどありませんでした。しかし去年6月に政府が出した「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」で、子どもたちが性暴力の加害者、被害者、傍観者にならないよう、全国の学校で「生命の安全教育」を推進することになりました。「性教育」や「予防教育」についてのあなたの体験や考えを、この記事に「コメントする」か ご意見募集ページより聞かせていただけたらうれしいです。

クロ現+
2021年5月7日

就職活動中などのセクハラ “4人に1人が経験”【vol.124】

就職活動やインターンシップでセクハラを受けた経験があると回答した学生が、4人に1人に上ったことが、厚生労働省が初めて行った実態調査で分かりました。採用する側とされる側という圧倒的な立場の差があり、深刻化しやすい一方、被害者が声を上げることが難しい“就活セクハラ”。調査から見えてきた実態と相談窓口について伝えます。

“4人に1人” 明らかになった実態
この調査は、就職活動中のセクハラの実態を調べるため厚生労働省が初めて行いました。 2017年度から2019年度に大学や専門学校などを卒業し、就職活動やインターンシップをした男女1000人に調査しました。

それによりますと、就職活動中にセクハラを受けた経験があると回答したのは25.5%4人に1人に上ることが分かりました。

その内容を複数回答で聞いたところ「性的な冗談やからかい」が40.4%と最も多く、次いで「食事やデートへの執ような誘い」が27.5%などとなっています。

性的な言動に対して拒否や抵抗をしたことで内定を取り消されるなどしたケースもありました。



またセクハラの行為者について複数回答で聞いたところ「インターンシップで知り合った従業員」が32.9%、「採用面接の担当者」が25.5%などとなっています。

セクハラを受けたあと誰にも相談しないケースが目立っていて、その理由については「何をしても解決にならない」「就職活動で不利益が生じる」などが多くなっています。

厚生労働省は「就職活動中のセクハラはあってはならないもので、企業などに対策を求めていきたい」としています。

「職場のハラスメントに関する実態調査」はこちら (NHKサイトを離れます)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000165756.html



“就活セクハラ” 被害にあったら
大学のキャリアセンターや学生相談窓口、企業の採用担当者、下記の相談窓口に相談することができます。

▼総合労働相談コーナー
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html
各都道府県の労働局が設置している相談窓口で、労働問題に関する相談をワンストップで受け付けています。就活生(求職者)も利用することができます。

▼性暴力ワンストップ支援センター
各都道府県に設置された性犯罪・性暴力専門の相談機関です。産婦人科医療やカウンセリング、法律相談などの専門機関とも連携していて、必要な支援を一緒に考えてサポートしてくれます。下記の記事に相談窓口一覧があります。
あなたの地域の性暴力ワンストップ支援センター【vol.34】

今回の調査から見えてきたように「就職活動で不利益が生じる」ことなどを恐れ、多くの人が相談できず、就職活動中のセクハラの実態は埋もれています。私たちはどんな被害が起きているのか、対策のために何が必要なのか、皆さんと一緒に考えていきたいです。

あなたの経験や考えをこの記事に「コメントする」か、ご意見募集ページからお寄せください。(どちらのやり方も、匿名可です。)

クロ現+
2021年4月30日

どう考える?ネットにあふれる性的な情報【vol.123】

スマートフォンの普及が当たり前となったいま、避妊の方法やセックスについての知識をインターネットで得る若者が増えています。しかし、ネット上にあふれる性的な情報の信頼性や安全性は不確かです。さらに、性暴力の被害者が被害内容や相談窓口を検索しようとしても、検索サイトの上位に表示されるのはアダルトサイトといった実態も・・・。誰もが安心して正しい性の情報にアクセスするためには何が必要なのか。声を上げ始めた大学生の取り組みなどとともに考えます。

(NHKグローバルメディアサービス ディレクター 飛田陽子 田邊幸)


セックスを“ネット”や“SNS”で知る若者たち


日本性教育協会が1974年から6年ごとに行っている「青少年の性行動全国調査」。この調査では、中学生から大学生の男女を対象に、“セックス”や“避妊方法”について、どこから知識や情報を得ているのか質問しています。最新の調査結果(2017年)によると、“性交(セックス)”について知るための情報源として最も多く挙げられたのは男女ともに「友人や先輩」でしたが、「インターネットやアプリ、SNSなど」を挙げた人は男子大学生で49.8%、女子大学生で43.8%と半数近くを占めていました。

どうやって決まる?ネットの“検索結果”
しかし、みんなでプラス“性暴力を考える”には、インターネット上にあふれる性的な情報をめぐって、こんな声が寄せられています。

「子どものスマホの検索履歴を見たら、性暴力を娯楽のように描いた漫画を読んでいることが分かった。間違った知識や考え方が身についてしまわないか、とても心配」

「痴漢被害に遭ってどうすればいいか分からず、助けになる情報を求めて“痴漢”と検索した。でも、表示されたのはアダルトビデオや風俗店の情報ばかり…。かえって傷ついた」

確かに、「痴漢」というキーワードで検索してみると…


(2021年4月25日 大手検索エンジンで検索)

最上位に表示されたのはアダルトDVDのパッケージ写真などを含む画像。その下には、近隣にある風俗店の位置情報が並んでいました。被害に遭って悩んでいる人や、何も知識がない子どもたちが、こうした検索結果を真っ先に目にする可能性があるのです。

ネット検索の「検索結果」や「表示順」はどのようにして決まるのでしょうか。ITや情報セキュリティ分野担当の三輪 誠司(みわ せいじ)解説委員に聞きました。


(NHK解説委員 三輪誠司)

三輪解説委員

グーグルなどの大手プラットフォーム各社は、ホームページの重要性や関連性を様々な尺度で評価して、検索結果の表示順を決める独自のアルゴリズム(プログラム)を作っています。しかし、どの会社もその仕組みを公開していません。企業や個人に関わらず、ネット上に自分たちの“利益につながる情報“を掲載する側は、検索の「上位」に表示されることを望みます。 逆に、ネット上に過去の不祥事など“不利益な情報“が流れていれば、検索の「下位」に表示されることを望みます。プラットフォーム側は、そうした個々の思惑を排除し、“検索の公平性”を保つために、自社のアルゴリズムがどうなっているのか明らかにせず、無数の変更・修正を繰り返しています。そのためユーザーである私たちは、なぜその検索キーワードでその結果が表示されるのか、“厳密にはよく分からない”というのが実情です。

子どもたちが無防備に有害な情報や暴力的な情報に触れないようにするために考えられる対策は、親や大人たちがしっかりと子どものスマホやネット利用を管理することです。たとえばグーグルであれば、「セーフサーチ」という機能をオンにすると(※)、100%の精度ではありませんが、ポルノなどの露骨な表現を含むコンテンツを検索結果から除外してくれます。(※グーグル内の「検索の設定」というページから機能をオンにできます)

性暴力の被害に遭った当事者の方が情報を求めて検索する時には、調べたいキーワードの後ろに「被害」「支援」など自分のスタンスを明確にするキーワードをつけて検索すると、ポルノコンテンツや、加害者側の情報が混ざらなくなると思います。
“安心して性の情報に触れたい” 声を上げ始めた大学生たち

(4月30日 記者会見を開くSEOセックスプロジェクト)

こうしたなか、「安心して性の知識が得られるサイトが検索結果の上位に出るようにしてほしい」と、声を上げ始めた大学生たちがいます。4月30日に都内で記者会見を開いた、「SEOセックスプロジェクト」です。

SEOセックスプロジェクト・伊東勇気さん

「僕は子どもの頃、自分の体の発達について興味を持っても親にも相談できず、とても不安でした。やがて精通(初めての射精)するようになっても、インターネットにある膨大な情報の中からは、どれが正しい情報なのか分からず、自分に何が起きているのか分からなくて苦しみました」

SEOセックスプロジェクト・中島梨乃さん

「私たちは、子どもたちが初めて触れる性情報は、アダルトサイトではなく信頼できる情報が掲載されたサイトであってほしいと思っています。そして、もし性暴力の被害に遭った人がインターネットの検索を使う時は、迅速に支援の情報にたどり着くようになってほしいと考え、声を上げることにしました。不確かな性の情報によって傷つく人を、一人でも減らしたいです」
プロジェクトでは、検索エンジンを運営するIT企業や政府に提出するため、オンラインで署名活動を始めました。性的なキーワードを検索した際、公的な相談窓口の情報や、性に関する正しい情報が掲載されているページが優先して上位に表示されるよう、仕組みを整えてほしいと要望するものです。

メンバーのなかには、実際に性暴力の被害に遭った女性もいます。高校生のとき、習い事に行く道すがら 突然見知らぬ人から襲われ性交を強いられた前田かや子さん(仮名)です。前田さんは、被害の後 フラッシュバックなどPTSDの症状に苦しめられましたが、自分の身に起きたことが性暴力だとは分からず、誰にも打ち明けられぬまま、ネット検索を頼ったといいます。


(前田かや子さん・仮名)

SEOセックスプロジェクト・前田かや子さん(仮名)

「混乱しながら訳も分からず、“触られた”“やられた”‟道 襲われた“など抽象的なキーワードで検索し続けました。機械的に、様々な情報が表示こそされますが、当時私は性的なことについては全く無知で、どれが信頼していいものなのか、どこが私の悩みを聞いてくれるところなのか判断できませんでした。中にはアダルトサイトもあり、つらい中、やっとの思いで検索した時に上位に出てくるページがこういうサイトなのか、と胸に突き刺さりました。そんな思いをする人が、少しでも減ってほしいです」

SEOセックスプロジェクトは、3万件の賛同を集め、6月23日~29日の男女共同参画週間のタイミングに合わせて署名を提出することを目標にしています。

“ネットの性情報” 求められる議論
実は4月から政府は、インターネットで学校生活での悩みなどを検索すると、国の相談窓口が表示される取り組みを始めました。これは検索サイト大手の「ヤフー」と連携して始めたもので、「学校行きたくない」とか「新学期憂うつ」などと検索すると、24時間対応の相談窓口の情報が表示されます。新型コロナウイルスの影響が長期化するなか、子どもたちの学校での人間関係や、いじめの被害といった悩みの相談に応じることが目的です。

そうした学校生活での悩みと同様に、多くの若者たちがインターネットを通じて性的な情報に触れているなか、その情報の取り扱いをどう考えていくべきか。まだまだ議論が必要です。私たちは、“ネットの性情報”について取材を続けていきます。あなたの体験や考えを、この記事に「コメントする」か ご意見募集ページより聞かせていただけたらうれしいです。

クロ現+
2021年4月23日

男性の性被害 相談を阻むものは【vol.122】

ことし3月、内閣府は「男女間における暴力に関する調査」の最新報告書を公開しました。この調査は、無理やりに性交等される被害や つきまとい行為など、暴力行為の実態について把握するために平成11年度から3年おきに行われているものです。調査によると、女性だけでなく男性も含めて、約24人に1人が無理やりに性交等される被害に遭っています。しかし、被害に遭った男性の約71%が、「どこにも(誰にも)相談しなかった」と回答していました。なぜ、男性は相談することが難しいのか。福岡県のワンストップ支援センターで男性の性被害の相談に応じている浦 尚子(うら ひさこ)センター長と共に、その背景を考えます。

(NHKグローバルメディアサービス ディレクター 飛田陽子)


実態見えにくい 男性の性被害


「性暴力は、女性だけが被害に遭うもの」と思う人も珍しくないかもしれません。しかし実際には、性暴力は、性別や世代に関係なく、誰の身にも起こり得ます。内閣府はDVや性暴力などの実態を把握するため、去年11月から12月にかけて、全国の20歳以上の男女5,000人を対象に調査を行い、約69%に当たる3,438人から回答を得ました。「無理やり性交等されたことがある」と回答したのは142人。そのうち、17人が男性でした。しかし、浦さんは、調査結果に表れた被害は氷山の一角だろうと指摘します。

浦尚子さん(性暴力被害者支援センター・ふくおか センター長)
この調査では、挿入を伴う被害だけを調査しています。痴漢や、いじめとしてズボンをおろされたり自慰を強要されたりする被害も加えると、男性の性暴力被害は 実はまだまだ多いのだろうと推測されます。私たちの支援センターに相談してくれる男性たちには、被害直後は誰にも相談できず、時間が経ってようやく話すことができるようになったという人も少なくありません。


(性暴力被害者支援センター・ふくおか 浦尚子センター長)

男性被害者の約71% “相談しなかった”


調査では、無理やりに性交等される被害に遭った人たちに 被害を誰かに打ち明けたり、相談したりしたかどうかを聞いています。女性の58.4%、男性の70.6%が「どこにも(誰にも)相談しなかった」と回答していました。女性が相談しなかった理由(複数回答)として最も多かったのは「恥ずかしくて誰にも言えなかったから」の49.3%でしたが、男性が相談しなかった理由(複数回答)として最も多かったのは、「自分さえがまんすれば、なんとかこのままやっていけると思ったから」「相談してもむだだと思ったから」が共に33.3%、次いで、「世間体が悪いと思ったから」「他人を巻き込みたくなかったから」が25%でした。

浦さんは、男性の性暴力被害者は、女性の被害者以上に、自分が被害に遭ったことを受け入れることができなかったり、誰かに打ち明けても信じてもらえないと不安になったりしているのではないかと考えています。

浦尚子さん(性暴力被害者支援センター・ふくおか センター長)
“男が性被害に遭うわけがない”という社会の無理解や、“たとえ傷つく体験をしても、男は強くあらねばならない”とか“男なのに自分が弱かったせいで、被害に遭ってしまったのだ”といったジェンダーバイアスに苦しめられて、心がギリギリの状態になるまでひとりで抱え込んでしまう人が少なくありません。あるいは、勇気を出して周囲の人に打ち明けたとしても、「作り話なのではないか」と疑われたり、「あなたも気持ち良かったんでしょう?」などと からかわれたりしたという人もいます。その間にPTSDの症状などが深刻化してしまうと、回復にはさらなる時間がかかります。埋もれてしまいがちな男性被害者を孤立させないために、社会全体で“性暴力の被害に性別は関係ない”ことや“性暴力の被害者に責任はない”ことを知っていてほしいと思います。

被害に遭った男性の皆さんへ どうかひとりで悩まないで

(性暴力被害者支援センター・ふくおか HPより)

浦さんがセンター長を務めている福岡県のワンストップ支援センターでは、2016年12月からホームページに男性被害者に向けた文章を掲載し、男性被害者が悩みやすいことについてQ&Aコーナーを設けています。このごろは、福岡県外の男性たちからも“話を聞いてほしい”と電話が入るようになったといいます。(※)
※福岡県外からの相談の場合、電話相談は対応していますがその先の支援については応じられないことがあります。



(性暴力被害者支援センター・ふくおか HPより一部抜粋)

浦尚子さん(性暴力被害者支援センター・ふくおか センター長)
いま、性暴力の公的な相談窓口として各都道府県にワンストップ支援センターが置かれていますが、残念ながら、地域によっては対応が十分に追いついていないところもあり、相談や支援の受け皿を急いで増やしていく必要があると感じています。男性やLGBTQの皆さんには、被害を他人に打ちあけることに躊躇(ちゅうちょ)してしまう人も多いと思いますが、最近は電話相談だけでなく、SNSを使った相談窓口(※vol.111で紹介しています)もできました。どうか一人で悩まずに、まずは相談してみてほしいです。

男性の性被害 取材を続けます
「みんなでプラス“性暴力”を考える」では、これまでもたびたび、男性の性被害についてお伝えしてきましたが 被害の実態や、被害をなくすために必要なことについて、もっと皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。もしよければ あなたの体験や思いを聞かせてください。下の「コメントする」か、ご意見募集ページから お待ちしています。(どちらのやり方も、匿名可です。)
※「コメントする」にいただいた声は、このページで公開させていただく可能性があります。

クロ現+
2021年4月2日

山本潤さんに聞く! 議論大詰めの“刑法改正” 【vol.121】

いよいよ大詰めを迎えている法務省の「性犯罪に関する刑事法検討会」。これまでも繰り返し、このみんなでプラス「性暴力を考える」で伝えてきましたが、同意のない性行為は処罰の対象にできるのか?多くの被害者が泣き寝入りする原因ともなっている「暴行脅迫要件」はどうなるのか?検討会の委員の一人で、被害当事者で作る団体「Spring」代表理事の山本潤さんに、その行方と議論がまとまる前に伝えたい思いを聞きました。

(さいたま放送局 記者 信藤敦子)


「暴行脅迫要件」見直しを


刑法の性犯罪の規定は2017年、大幅に改正されました。強姦罪の名称は「強制性交等罪」に変更され、被害者を女性に限っていた規定も見直されました。さらに、18歳未満の子どもを監護・保護する立場の人が、その影響力に乗じてわいせつな行為をした場合は、暴行や脅迫がなくても処罰できる「監護者性交等罪」も新設されました。こうした改正は明治40年の制定以来、初めてのことでした。

しかし、この改正ではまだ被害の実態に見合わないと考えた山本さんたちが国会議員らに働きかけ、法律には施行後3年をめどに必要があれば見直しを検討する付則がつきました。こうして開かれているのが、今回の「性犯罪に関する刑事法検討会」です。山本さんは唯一の被害当事者として、17人の委員の一人に選ばれ、去年6月から始まった検討会に参加してきました。


(刑事法検討会の資料)

次なる改正に向けて、山本さんが強く訴えているのは「暴行脅迫要件」の見直しです。性行為を犯罪として処罰するには、「相手が同意していないこと」に加えて、加害者が被害者に暴行や脅迫を加えるなどして、「抵抗できない状態につけこんだ」ことが立証されなくてはなりません。3月8日に開かれた13回目の検討会では、その「暴行脅迫要件」について、大詰めの議論がなされました。


(一般社団法人Spring 代表理事・山本潤さん)

山本さんは、現状の要件では処罰できないケースがたくさんあることを検討会で繰り返し訴えてきました。

山本潤さん
「改正に慎重な人からは、たとえ暴行脅迫要件があっても、押し倒したとか、暴行とまでは言えないようなケースでも暴行ととらえて有罪にしている例もあるとよく言われるんですね。ただ、私は裁判にもたどり着かない数多くの被害の訴えを見ているので、そんな例は多くないと思っています。これまでの検討会で議論を積み重ねてきたことで、だいぶ理解されてきたとは感じています」

山本さんは、同意できる状態ではないということを示すために、暴行脅迫以外に例示を列挙する案を提案していました。具体的には、不意打ちや だま しなど、被害者が抵抗を困難な状況にすることを例示することで、被害を捕捉できないかと考えたのです。こうしたことを受け、8日の議論では、刑法に詳しい委員からも「受け皿規定」の文言を考える案が出たといいます。

山本潤さん
「国家が人を裁く刑法には、より狭く、抑制的にという“至上命題”があるので、改正には厳しい面も感じていましたが、8日の検討会で、刑法学者が暴行脅迫以外の「受け皿規定」のような文言を考えてくれたのは、涙が出るほどうれしく、希望というか、本当に実態を踏まえて考えてくださっているんだなと実感できました。議論は途中で様々な意見が出ているので、どういう形で集約されるかはまだ見えないのですが、現状では救えない被害を救おうと考えてくれるようになったことは、やはり性暴力の実態、被害の救われなさを理解してくれたのだと思って、感謝しています」

性被害の実態を調査 検討会に提出
検討会で性暴力の実態を踏まえた議論をしてもらおうと、山本さんの団体は去年アンケート調査を実施。インターネット上で約6000人もの回答が寄せられました。性暴力についての調査で、これだけの数が集まるのは画期的なことです。



研究者の分析では、▼性暴力被害者の多くが、明確な暴行や脅迫がなくても恐怖で抵抗できず、被害だと認識するまでに平均で7年半かかっていたということや、▼被害を受けたときに6歳以下だった場合、4割以上が被害の認識までに11年以上かかっていたことなどが明らかになりました。

山本潤さん
「被害の累計を踏まえた立法のための、とても重要な調査結果だと思います。検討会にも提出していて、実際に考えられていると思います。また、性暴力がとても重いトラウマになることも、ぜひ知ってほしいです。PTSDの発症率は、災害や戦争体験と比べても一番高いんです。約半数がPTSDになり、3割がうつになるほど精神的ダメージが大きく、自殺率も高いことがわかっています。それがどうして起こるのかとか、どういうダメージなのか一般の人は知らないし、ましてや当事者自身もわからないんです。なんで自分がこうなっているのか、どうして似たような人を見たら体を震え出すのか。どうしてそうなるのかわからない中で、誰も性暴力被害の実態を知らないわけです。だからこそ、勝手なことを言われるんです」

不同意性交等罪を目指して

(2018年7月 イギリス視察の様子 右端が山本さん)

実態が知られてきた今こそ、同意のない性交を性犯罪にする「不同意性交等罪」を創設できないかと、山本さんは考えています。海外では、不同意の性交を刑事罰の対象としている国が複数あります。山本さんたちはそうした国の1つ、イギリスに3年前に視察に行き、記者も同行しました。

山本潤さん
「イギリスでは、性暴力は非常にわかりにくい犯罪で、多くの人が表に出すことが難しい問題だと正しく認識されています。だからこそ被害は生まれているし、加害者が処罰されない。そういう実態が社会の中で理解されていて、被害者をシステムの中でケアをして支えているんです。そうした支援で、実際に訴えられるようになる被害者もいます。もちろん、被害を訴えることで、加害者を捕まえることもできます。捕まえた上で、事実関係は裁判で争われるわけですが、被害者支援の重要性が理解されていて、それにより性暴力をなくしていくという指針が非常に明確でした。中でも強調されていたのが、「ヴィクティム・ファースト(被害者中心主義)」。被害者を優先してすべての支援や体制を整えていくことが徹底されているので、その認識は日本にも必要だと思います」

「不同意性交等罪」について、検討会の議論がどうまとまるのか、山本さんは現段階ではわからないといいます。

山本潤さん
「元々、刑法の性犯罪の規定は「不同意」の性行為を処罰するものですが、外見では不同意だとはわからないので、殴る蹴るなどの暴行をしたとか、脅したとか、抵抗できない状態だからと、それを指標にして「同意のある性交」ではないと認定しているだけだとよく言われるんです。ただ、抵抗できない状態を表す「抗拒不能」という言葉が、日本語としてとてもハードルが高い。また、裁判の判例で、抵抗できないほどの暴行脅迫と言われてきたので、警察や検察の判断で、それは暴行じゃないとか、抵抗していないと言われてしまうことは、今もかなりあるんです。本当に不同意の性行為を罰するならば、同意できない状態である、というところをきちんと刑法の文言に入れてくれたらと、被害者としては思いますけど、刑事法という司法のシステムがある中で、どういう風に作っていくのか、バランスを持って決めないといけないことは理解しています。これまで全く考えられてこなかった「同意」について入れてほしい。これはとても希望しています」

議論は大詰め 行方は

(3月8日 仲間が見守るなか検討会に向かう山本さん)

検討会はいよいよ大詰めを迎え、そろそろまとめの段階に入ってもおかしくない時期にきています。被害当事者として山本さんが初めて委員となり、性暴力の実態を伝えてきたことで、実態を反映した改正になるか注目が集まっています。3月8日の検討会は「国際女性デー」と重なり、山本さんが向かう法務省の前には多くの女性たちが集まり、山本さんに思いを託していました。



山本さんは、ここ数年で性暴力に関する社会の認識は明らかに変わってきたと感じています。

山本潤さん
「さまざまな社会的な運動が次々に起こってきて、背中を押された気がします。私たちは「Spring」で刑法改正にコミットした活動をしていますけど、2017年秋くらいから「#MeToo運動」が、2019年3月の4件の性犯罪の無罪判決後に「フラワーデモ」が起こって、それはとても大きなことでした。性暴力はずっとタブー視されてきて、被害者がなかなか声をあげられない問題でした。私たちも4年前に議員会館に面談に行ったときは、議員から『面会に来たことは発信しないで』と言われたこともあったんです。一方で、徐々に話を聞いて理解して、動いてくれた人もいます。こうしたことから、伝われば変わってくるんだなということは、希望に感じました」

「性暴力を許している構造が日本の社会にはずっとあるんです。それは刑法が、同意のない性行為を取り締まってこなかった歴史があって、自分は捕まらないと思っている加害者が行為を繰り返しているからです。『YES』のない性行為は同意のない性行為であり、それは犯罪であり、性的暴行だときちんと理解してほしい。理解したら行動も見方もかなり変わってくると思うので、まずは知ることから始めてほしいですね」

刑法改正の検討会の議論について、どのように感じましたか?あなたの思いや意見を、下の「コメントする」か、 ご意見募集ページから お寄せください。
※「コメントする」にいただいた声は、このページで公開させていただく可能性があります。