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親に対する気持ち 中高生の4人に1人が「わからない」…アンケートから聞こえてきた子どもたちの声は?

東日本大震災から10年。親を亡くした子どもたちを支援してきた「あしなが育英会」がおこなったアンケートからは、今なお、日常の中で親を思いながら過ごす子どもたちの姿が浮かび上がりました。 その心の内は、悲しみだけではなく、愛情や寂しさ、罪悪感など、多様で複雑な気持ちが息づいています。
アンケートを子どもの年齢で分けて分析すると、震災の受け止めや死の受容について、どんな傾向や違いが見えるのでしょうか? あしなが育英会・東北レインボーハウス所長の西田正弘さんと、グリーフケア(心のケア)の研究者・髙橋聡美さんに聞きました。

(仙台放送局 ディレクター 岡部綾子)

《前回の対談(1)を読む》

西田正弘さん
一般財団法人あしなが育英会が設置した「東北レインボーハウス」の所長 兼 心のケア事業部長

阪神・淡路大震災では、親を亡くした子どもたちの支援を経験。 東日本大震災後は、宮城県仙台市・石巻市、岩手県陸前高田市の3か所に設置された子どもたちの支援の拠点「東北レインボーハウス」で所長をつとめる。 遺児や保護者の10年の歩みに耳を傾け、社会に伝えたいと、現在、インタビューの取り組みも進めている。
髙橋聡美さん
前 防衛医科大学校 精神看護学教授

グリーフやトラウマに関する研究者で、遺族サポート、災害時のメンタルヘルス、自殺予防等についての講演活動をおこなう。 2011年は仙台の大学に在籍し、東日本大震災を経験した。 東北レインボーハウスと連携して震災遺児・遺族のグリーフケアに尽力。 今回のアンケートでは監修を担当した。

震災発生時の年齢による差

あしなが育英会では、年齢や社会的立場による違いを明らかにするため、中高生と18歳以上でアンケートを区分して分析しました。 すると、何歳で震災を経験したかによって、気持ちや受け止めに、違いが見えてきたと言います。
(中高生…回答数94、平均年齢15.7歳  18歳以上…回答数216、平均年齢23.1歳)

髙橋聡美さん:
「親を思い出したときの気持ち」で、18歳以上の約半分が「懐かしい」で、中高生の「懐かしい」は3割くらいなんだけれども、今の中高生って、10年前は3歳から8歳なんだよね。そうすると「懐かしい」と思えるような親との思い出がそもそもなかったりとか…。
あと「罪悪感」も18歳以上の子が高いんだけれども(18歳以上13.1%、中高生5.4%)、これはやっぱり(当時)8歳までの子どもと8歳以上で、ある程度自分でいろんなことができて、誰かの手助けになれる年齢で親を亡くしていると、あのときあれができたかもしれないとか。いろいろな罪悪感を抱くのは、震災に遭ったときの年齢と強く相関するのかなって思う。
地震から津波までのタイムラグがあって「あのときに何とかできたんじゃないか」みたいなところがあるから。

西田正弘さん:
1回連絡取ってると「大丈夫だ」と確認していて、そのあとのお別れだからね。

髙橋:
そこが突然起きた交通事故とか水難事故とまた違っていて、“逃げてくれさえすれば逃れられた”という思いがある。逃げる場所すらなかった地域もあるけど。
あと、罪悪感とかって、もしかしたら自分の中で勝手にわき出るものじゃなくて、周りの人からあれこれ言われて二次的に起きてくる感情ってことも考えられるかな。 「あなたがあのときこうしておけばよかったのにね」なんてポロって言っちゃうと、「そうだよね」ってその罪悪感が強まっちゃったりとか。そういう周りの人の声かけによっての、ネガティブな感情が出てくるのかなって思いました。

親に対する気持ち 中高生の4人に1人が「わからない」

――年齢別で見ると、中高生の4人に1人(25.5%)が、「亡くなった親に対する気持ち」を「わからない」と回答しているのが気になりました。

髙橋:
(現在の中高生は)当時8歳未満だった子どもだから、それこそ親との思い出がなかったりとか、そのときを覚えていないとか、その経験自体を理解できていなかったりとか… 小さすぎて何が起きたのか理解ができなくて、まだわからないままで止まっている感じがする。

西田:
「かわいそう」「後悔」「感謝」などの中で「わからない」ということなので、ひょっとしたら選択肢の中に当てはまるものがなかったのかな。 それで、他に言葉にする選択肢として「わからない」を選んだのかな。無理に言葉にしてしまうとそれが残ってしまう部分もあるし、気持ちを言葉にする微妙さみたいなものがあるような気がするんだけど。どう表現していいかわからないという。

髙橋:
複雑なんだ…難しいですね、気持ちって。

――「死」って、小学校1~2年生だとまだわからないこともありますよね

髙橋:
亡くなったら生き返ってこないという不可逆的なものだとか、「死」を理解できるのは大体10歳くらいと言われている。 アンケートに答えた中高生の平均年齢が15.7歳だから、当時は5.7歳。「死」に関しての理解がまだ乏しい年齢だった。
歳を重ねるごとに、「そういうことだったんだ」「お父さん戻ってこないんだ」とか、だんだん理解していく。大人たちは、亡くした瞬間から「死」が何かをわかってるから理解するんだけれども、子どもたちは経験したときに死を理解できていなかったら、年齢増すごとにそれを理解していかなきゃならない。大人のグリーフと子どものグリーフは違う。「わからない」というのも、それが影響しているのかな。

グリーフ…死別・喪失体験に伴って起きる愛惜や悲しみなどのさまざまな感情のこと

――震災と、死を理解するまでの間にタイムラグがあったと。そういう子どもたちのグリーフとの向き合いは、どのように進んでいくんですか?

西田:
本当に丁寧に触れる時間がないとそれは進まないでしょうね。例えば、誕生日にお父さんが好きだったものを家族と一緒に食べて、「こんな人だったよね」って話す機会があるとか、お墓参りするときにいろいろ話したり聞いたりするとか。喜怒哀楽の場に丁寧に触れることでしか、グリーフを感じている自分にも気がつかない。自分の中にそういう気持ちがあるっていうのも自覚できない可能性があるんじゃないかなと思います。だから、お墓参りや命日のたびに、誰とどんなふうに過ごすか、どんなコミュニケーションとるかは、すごく大事だと思うんですけどね。
地域のつながりが強いと、周りの人が「お父さんこんな感じだったよね」とか、「お父さんに似てきたね」「お母さんに似てきたね」っていうようなやりとりが、ごく自然にその地域でされる。

髙橋:
亡くなった人を知る機会も、グリーフワークを助ける1つのことだから、見聞きすること自体はすごく大切なことかなと。子どもってどんどん記憶が薄れていって声も忘れちゃったとか、いろんなこと忘れていっちゃうから。

グリーフワーク…死別・喪失による悲しみなどの感情から立ち直る心のプロセス

西田:
親を亡くすときは、どのように亡くなったかに焦点が当たるところが大きいんだけど、10年経って成長すると「どんな人だったんだろう」とか、生きざまを少しずつ知りたくなる。そのときに(親の)友達などがいろいろ教えてくれるのはありがたいんだけど、それが子どものタイミングと合うかどうか。子どもにとっては、いきなりいろいろ言われるよりも「どうだったの?」って聞いてみたいタイミングで教えてくれるとありがたいのではないかと思う。

中高生の2人に1人 18歳以上の4人に1人が「誰とも話さない」

――親について話したり聞いたりすることも大事なグリーフワークとのことですが、亡くなった親について、中高生の2人に1人(50.0%)、18歳以上の4人に1人(25.2%)が「誰とも話さない」と答えています。

西田:
やっぱり良い聞き手がいるかによってそれが変わってくる。 子どもたちの今の生活は、学校に行って、「はい、何番ね」って評価されるコミュニケーションがある意味、前提になっている。評価せずに、「ああ、そういう気持ちなんだね」って、アドバイスもせずにきちんと受け取ってくれる相手がいるかいないか。
日常生活の中で、評価されるベクトルが結構強いんじゃないかと考えると、何も言わずに「そういう気持ちなんだね」って良い聞き手を得るのは、ひょっとしたら意外に難しいと、子ども自身も思っているのかもしれない。

髙橋:
家族の中でも気持ちにギャップがあったりすると、自分の気持ちを出せなくなったり…。親子だからわかり合えるわけではないから。家族だからわかり合えるって勘違いするんだけど、家族でも違うじゃない?

西田:
違う、違う。いろんな事情がからまってるしね。
今年の3月11日に陸前高田のレインボーハウスに来た親子がいたんですが、息子が18歳で、震災発生時は8歳。当時のことをやっとこのとき初めてお互いに話して、「え、そんなこと感じてたの?」と、僕を目の前にしてふたりで話し始めたことがあった。お父さんは行方不明のまま。親子でどう話していいんだろうって、きっかけさえつかめなかったと。もう生きのびるので精いっぱいで。ふたりで、僕の目の前で話し始めて、そのまま1時間とかすぐ過ぎちゃったんだけどね。

髙橋:
そういう場がないと話が出ないっていうのはあるのかもしれない。

西田:
近過ぎると、いろいろな面で触れ方がわからない。本当に大きな痛みに触れちゃうんじゃないかって。だから、三人称みたいに遠くない、理解してくれそうな人がいると、近過ぎず離れ過ぎずっていう人がいると、やりやすいんだけど。

髙橋:
自分がしっかりしなきゃっていうのもやっぱりあるじゃない。(片方の親が亡くなって)ひとり親になると、子ども自身がお母さんを支えなきゃとか。子どもらしくある時間や場所みたいなところがなくなる。もう精神的に早く成熟しないといけないみたいな。

西田:
そうそう。子どもでいられなくなっちゃうんだよね。
中高生の自由記述の中で、「甘え方がわからないときがある」というのがあった。子どもでいられなくなっちゃうから甘えられないんでしょうね。我慢して。

髙橋:
近しい人ほど傷つけ合うかもしれないっていうようなことがあるから、お話ししにくいっていうのはあるかもね。やっぱり話せるような場所につながるといいなと思いますね。

次回の対談では、アンケートの結果を受けて、社会は何ができるのか。いま必要なつながりや支援について考えていきます。

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