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20代男性もホームレスに 求められる“再出発まで寄り添う支援”

「女性がホームレスになったら大騒ぎ。これまで男性のホームレスを放置してきたツケが回ってきてる」「男女問わず、若い子たちも炊き出しに並んでいます」―――
家を失う女性たちの現状や支援策について取材してきた今回の連載記事。公開後、家賃の重い負担に苦しめられているのは女性だけではないという声を多くいただきました。
炊き出しに以前は見られなかった女性の姿が増えるような状況下で、多くの男性も追い詰められています。今回は、大阪でホームレス支援をおこなっている団体の活動を通じて、家を失ってしまった男性たちの窮状と、求められる支援のかたちについて考えます。

(クローズアップ現代+ ディレクター  中嶋梓 大里和也)

取材で見えてきた男性たちの窮状

大阪市北区に事務所を構える「Homedoor」。大阪を中心にホームレス支援をおこなっている認定NPO法人です。コロナ禍が長引く中で相談者が増え続け、コロナ前の1.5倍に達しているといいます。その中でも多いのが、20~30代の男性たちの姿です。

この日も、20代の男性がやってきました。飲食店で働いていましたが、コロナ禍で失業し、家賃が払えず家も失いました。その後、スーツケースを片手にネットカフェを転々とする中で、このNPOのことを知り、やってきたといいます。

相談に訪れた20代男性

「こういう状態にあることを友人にも知られたくなくて、誰にも相談できずにいました。ネットカフェを転々とするお金も尽きた時、これ以上生きていくのがしんどくて、いっそのこと犯罪者になって刑務所にでも入ろうかと考えてしまうほど、思い詰めていました」

家を失ってしばらくたっていた彼ですが、服装は普通のオシャレな若者そのものでした。NPOの相談員によると、特に若者の場合は、家を失っていても身だしなみに気を遣う傾向があり、さらにスマートフォンだけは解約せずに使用し続けている人が多いため、ぱっと見ではホームレス状態であることがわからないといいます。

続いて取材したのは、このNPOが月に1~2度おこなっている“夜回り”です。路上や公園を回ってホームレスの方々にお弁当を配布しながら、公的な支援制度やHomedoorの活動について紹介してまわっています。

出会ったのは、やはり一見するとホームレス状態だとはわからない若年男性たちでした。 事情を聞くと、借金の返済が重くのしかかり、家賃が払えず知人の家に身を寄せる人や、新型コロナの影響で仕事をなくしネットカフェを転々としている人、介護をきっかけに離職してそのまま生活が立ち行かなくなった人など、事情は様々。誰もが、安心できる住まいを失い精神的にも肉体的にも極限まで追い詰められていました。

10年前にこの団体を立ち上げ、ホームレス支援に取り組み続けてきた川口加奈さんは、こうした窮状の背景には男性ならではの特徴があるといいます。

「Homedoor」理事長 川口加奈さん

「男性の場合、最後まで自分でなんとかしようと思って追い詰められてしまう人が多いように感じています。全てを失い、どうしようもなくなってからしか「助けて」と声をあげられない。どこまでも自助を求められてきた社会の中で、“誰にも頼ってはいけない”という強い意識が、支援に結びつくスピードの遅れになっているのでは。
また、女性の場合、社会的に“女性が路上に出るのは危ない”という意識が(十分ではないものの)あるので、公の相談窓口も女性向けのものが多く設けられていますが、男性の場合は特段設けられているわけではありません。そのため、男性たちはどこに支援を求めていいかもわかりづらいところがあります」

再出発までしっかり寄り添う支援のかたち

家を失ってしまった人たちを助けるにはどうすれば良いのか。このNPOがその方法を模索する中でたどり着いたのが、相談者を生活保護などの支援制度に繋げるだけでなく、家と仕事の確保までサポートし、再出発までしっかり寄り添う支援のかたちです。

そのためにも重要なのが、相談に訪れた当事者に対する詳細な聞き取りです。なぜ家を失ってしまったのか、今後どのように生活を立て直していきたいかなどを、1時間ほどじっくり会話する中で一緒に考えていきます。

そして、家を失ってしまった人の緊急避難場所として、2018年には18部屋の個室シェルターを整備しました。部屋に空きがあれば相談に訪れたその日から利用可能で、宿泊も原則無料です。ここに滞在している間に行政の支援制度に繋げ、なるべく早く自分の家を借りられるよう、スタッフたちがサポートします。

    個室は8~10平米ほどで、シャワールームも完備している

“働く”を支えることで、ホームレス状態からの脱出を後押し

さらに、この団体が力を入れているのが“就労支援”です。ホームレス状態からの脱却には「仕事」「住まい」「貯金」の3つを同時に得ることが必要で、そのハードルの高さこそが路上脱出の壁になっていると分析。そこで、住まいと同時に仕事も提供することで、貯金をしながら段階的に社会への復帰を図れるのではないかと考えたのです。

そのアイデアのもとおこなっているのが“HUBchari”(ハブチャリ)の取り組みです。この団体が運営しているシェアサイクルの名称で、支援している人から「自転車修理だったら自分にもできる」という声があがり、サービスを開始しました。まちなかに複数あるポートのどこで借りてどこで返却しても良く、ポートは自治体や企業の協力をあおぎ、空きスペースを提供してもらうことで増やしています。ここでホームレス状態にある人たちに、自転車のメンテナンスや貸出、台数調整業務、バッテリー交換などをお願いすることで、就労の機会を提供しています。

    ポート数は現時点で300ポートを超えているとのこと

その他にも、障害などがある場合は簡単な内職を紹介したり、障害者向けの就労支援施設につなげることで、仕事の獲得とその先の路上脱出を目指します。こうした、再出発までしっかり寄り添うかたちの支援がなぜ大事なのか。「Homedoor」理事長の川口さんに聞きました。

「Homedoor」理事長 川口加奈さん

「働くことは、単純にお金を得るだけじゃなくて、いろんな人とのコミュニケーションの機会だったり、その人の自己有用感というか、自分が社会から必要とされていることを感じられる貴重な体験でもあると思うので、就労を軸にサポート態勢を考えていきたいかなというのはありますね。

また、「ホームレス支援」とひと言にいってますけれども、ホームレス状態に陥らない社会というのは、挑戦と失敗が許容される社会につながるものだと考えています。どれだけ挑戦してどれだけ失敗してもホームレス状態にならないという、その最低限の部分が保障されているっていう状態は、より多くの人が「もっと頑張ってみよう、挑戦してみよう」「新しいことをやってみよう」みたいな、そういう機会が誘発されるような社会にもつながるんじゃないかなと思っていますので、ホームレス支援の“その先”みたいなところに私たち自身がつなげていけるよう、尽力しないといけないなと思っています」

川口さんの言う「挑戦と失敗が許容される社会」を実現するためにも、こうした“再出発まで寄り添うかたちの支援”が全国に広がっていく必要があると感じました。

「Homedoor」
https://www.homedoor.org
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