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役所の窓口は行きづらい?女性が行政につながるために東京・豊島区が始めた支援とは

どうしたら生活に困った若年女性たちが、行政の支援につながれるのか。
東京・豊島区では、コロナ禍で生活に困窮する女性が増えている中、区の窓口に相談に来るのが男性ばかりである状況に危機感を抱き、10代から20代の女性が相談しやすい環境を整えるためのプロジェクトを始めました。
ポイントは「予防的アプローチ」と「心地よい居場所づくり」。豊島区の先進的な取り組みを取材しました。

(クローズアップ現代+ ディレクター 荒川あずさ)

“すずらんスマイルプロジェクト” 始動

    毎週1回集まり、話し合うプロジェクトメンバー

今年1月、東京・豊島区で、生きづらさを感じる10代から20代の若い女性を支援する「すずらんスマイルプロジェクト」が立ち上がりました。メンバーは、子ども若者課、自立促進担当課、障害福祉課などの17部署から参加した20代~50代の25人。女性や子どもの支援をする都内の複数のNPOと意見交換やイベントの連携をしながら、生理用品を無償配布したり、相談窓口を開設したりしています。

ちなみに、すずらんの花言葉は「再び幸せが訪れる」「純粋」「希望」など。そして北海道でも育つほど寒さに強く、群生し、毎年美しい花を咲かせることから、“若い女性が仲間を増やしつつ希望を持って生きられるように”という願いを込めて、「すずらんスマイルプロジェクト」と名付けたそうです。

プロジェクトが立ち上がったきっかけは、困窮した女性たちが、行政の支援につながれていないのではないかという、区の職員たちのジレンマでした。

小澤さおりさん(豊島区 子ども若者課 課長)

「コロナ禍で困窮した女性が多いと、報道や地元で活動するNPOから話を聞く一方で、区の生活保護の窓口にやってくるのは男性ばかりでした。困っている女性はいるはずなのに、行政にきちんとつながれていないのではないかと思いました」

目指すは“予防的アプローチ”

    ちらしのデザインも堅苦しくならないように工夫

現在、プロジェクトが力を入れているのが情報発信です。いまある行政の制度に、いかにつながってもらうかを『ちらしチーム』『ホームページチーム』に分かれ、話し合っています。「どこに何の相談をしていいのかわかりにくい」「堅苦しくて相談しにくい」というイメージを払拭(ふっしょく)しようと、デザインや、使用する言葉の一つ一つを、改めて検討しているのです。

例えば『ちらしチーム』では、これまで「精神保健福祉相談」と表記していたものを、分かりやすく「こころの相談」に。「婦人相談員」を「女性の相談員」と表記した方がいいのではないかなど、どこまで分かりやすく親しみやすい表現に落とし込めるかを議論し、ちらしに反映させています。

『ホームページチーム』では、「行政の窓口に行くのは緊張する」という女性の意見をもとに、そのハードルを下げるための取り組みを始めました。相談する女性の目線になって、窓口への行き方、まずはどんなことを話せばいいのか、そもそもどのような雰囲気なのかなど一つ一つ記事にして書いていくことで、不安を取り除きたいと考えています。

小澤さおりさん(豊島区 子ども若者課 課長)

「目指すのは、“予防的アプローチ”です。問題が重篤化しないうちに相談窓口を頼ってもらえれば、救うことができるはずです。少しでも早く支援につながっていただくためには、まずは相談のハードルを下げること。より親しみやすい情報発信をできればと思っています」

まずは“心地よい居場所”作りから

    参加費は無料。様々な生理用品の無料配布なども行っている

豊島区は、若い女性が安心して集まれる居場所を作り、そこから支援につなげようという取り組みも始めています。若者や家族連れで賑わうショッピングモール内で、9月から月2回、カフェの一角を貸し切り、「ぴこカフェ」という名前で出張相談会を行っているのです。

    占い師が無料で、手相やタロットで占いをしてくれる

ぴこカフェでは、若い女性が興味のある占い師を呼ぶことも。占い師に自分について話すことで気持ちがほぐれ、気づけば今抱えている悩みを打ち明けて、すっきりした顔で帰る参加者もいるそうです。

運営するのは、豊島区から委託された「ピッコラーレ」。想定しない妊娠で悩む若い女性たちの相談に乗り支援をする「にんしんSOS」という取り組みを行っているNPOです。

妊娠や性にまつわる相談はもちろん、家族のこと、友だちのこと、生活のことなど何でも気軽に話せる場所を目指しています。

松下清美さん(ピッコラーレ 理事)

「コロナ禍で、誰かと会って話す機会が減っています。
だからこそ、通りすがりの昔の井戸端会議のような感じでごちゃごちゃ話しているうちに、『あっ!私こんなことで悩んでたんだ』と気づいてもらったり、『今は少し愚痴をこぼしたいだけ』だとしても、ちゃんと受け止めてくれる場所があると知ってもらうことが大切だと思うんです。
『こんなこと相談していいのか?』と悩むと思いますが、“困る一歩手前で話せる場所”を提供したいです。すごく困っている人だけではなく誰もが、『この場が心地いいな』と少しほぐれて帰ってもらえるような場所にしていきたいと思っています」

ぴこカフェがはじまって3か月。現在のところ、行政につなげるほどの相談は来ていないと言いますが、ふらっと立ち寄って話していく女性もいれば、友達と話しに来る女性、よく訪れるけれどもあまり話さず黙ったままの女性など、さまざまな客がやってくるようになったそうです。

私も取材でぴこカフェに伺いましたが、豊島区が目指す「多くの女性たちが安らげて、何かあったときに頼れる場所」になっているのではないかと感じました。

こういった“一歩手前で話せる場所”が増えることで、相談のハードルがわずかでも下がり、支援につながれる女性がひとりでも増えることを願います。