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「家賃が払えない」ホームレスの炊き出しに並ぶ女性たち

新型コロナの感染拡大が落ち着きつつある一方で、最近ある異変が起きています。

路上生活者、いわゆるホームレスの支援を行う団体によると、公園での炊き出しの会場にいま、かつてないほど多くの女性が並ぶ姿が見られるようになったといいます。中には寒空の下、子ども連れで並ぶ人も・・・。

「この先家賃が支払えないかもしれない」

取材を進めると、多くの女性が住まいを失う不安を口にしました。いったい何が起きているのでしょうか。

(クローズアップ現代+ ディレクター 山浦彬仁 大里和也 荒川あずさ)

「女性がどっと増えた」炊き出し現場の異変

11月12日土曜日。日が暮れて、肌寒くなった夕方5時、炊き出し会場である池袋の公園に向かうと、食料を求める人たちが長蛇の列をつくっていました。その数なんと450人以上にのぼります。

この場所で20年前から炊き出しを行っているNPOによれば、この人数は過去最多。中でも目を引くのが“女性たちの姿”だといいます。

    「TENOHASI」代表理事・清野賢司さん 東池袋中央公園で月2回(第2・第4土曜)炊き出しを行う
「TENOHASI」代表理事・清野賢司さん

「緊急事態宣言が解除されて落ち着くかと思ったら、きょうはこの20年で史上最高の人数。しかも開催する度に人数は右肩上がりに増えるばかり…。はっきり言って“津波級”です。

以前は列に並ぶ人の多くは路上生活者ばかりで、女性は並びにくかったけど、この夏以降、女性がどっと増えた。しかも寒い夜に子連れもいる。これは異常事態。

相談の多くは暮らす所はあるけれど食べるのに困る、この先の家賃が支払えないという人ばかりでした。これはコロナ後に起きた大きな変化ですね」

「このままでは家を失う」追い詰められる女性

なぜ女性が増えているのか。寒そうに手をこすりながら列に並んでいた60代の女性に話を聞きました。

60代女性

「少しでも食費を切り詰めたくて来たんだけど、もう寒くて寒くて…。まさかこんなに並ぶなんて思わなかった」

30代で無職の息子と2人で暮らしている彼女。2年前に内縁の夫と別れて家を失い、その後しばらく息子と2人でネットカフェで暮らしていたといいます。

そして3か月前に民間のシェルターに移り住み、非正規雇用の介護の仕事をしながら必死の思いで30万円を貯金。ようやく都内のアパートを借りることができたのだそうです。

しかし、緊急事態宣言の長期化で、非正規雇用で働いている介護助手の仕事は時給を200円も下げられ、月の手取りは13万円に激減。6万5千円の家賃や光熱費など月々の支払いを引くと、手元にはほとんど残りません。

再び家を失う恐怖から、せめて食費だけでも浮かせたいと、この日初めて炊き出しに参加したといいます。

60代女性(息子と二人暮らし)

「今は何とか家賃を払えているけど、介護の仕事が来年2月までの契約なんです。来年4月には家の更新料も払わないといけない。今より安い家賃の所へ引っ越そうとしましたが、敷金礼金、引っ越し費用はない…」

    炊き出しで渡されたビニール袋にはロールパンが入っていた

1時間ほど並び、ようやく食料を受け取った女性。炊き出し会場ではNPOによる相談会も行われており、家賃について相談してみるつもりだったそうですが、そこにも行列ができているのを見て、この日は諦めて帰っていきました。

年金の支払いは後回しに・・・

新宿の食料品配布の現場でも、家賃の支払いに苦しむ女性と出会いました。

ハローワークの冊子を持った40代の独身女性。ホテル清掃のパートを軸に、アルバイトなどを掛け持ちしながら生活してきましたが、やはりコロナの影響で半分の仕事を失ったと言います。

月々の家賃は6万円。貯金を取り崩しながら、なんとか家賃を工面し生活しているそうです。

食料品配布にやってきたのは、食費を節約するため。国民年金は、最近支払えなくなったそうです。

40代 独身女性

「今、2万円のアパートに引っ越すか検討してます。ただ、事故物件じゃないかと不安はありますが・・・」

とにかく家賃が負担だという女性。部屋の広さは、8畳から3畳に。セキュリティなど不安な面は多々あるものの、できるだけすぐに引っ越ししたいと物件を探しているそうです。

最後に頼ったのは生活保護

去年夏ごろから食料品配布に通い、今回が7回目だという50代の独身女性に会いました。

これまでは整骨院でパートタイムで働きながら、将来的な独立に備えてフリーで往診もしていたそうです

しかし、コロナの影響により、フリーの往診依頼がなくなり、さらにパートのシフトも激減したといいます。

女性が住んでいるのは、風呂なしのアパートですが、家賃5万3000円。毎月の家賃を工面するためには、食費を削るしかなかったといと言います。

50代 独身女性

「去年の夏ごろから、とにかく生活がギリギリで、友人の家でご飯を食べたり、たくさんの人に支えてもらいながら生活してきました」

コロナ禍が長期化する中、このままでは家賃が払えなくなると、昨年末に思い切って行政の窓口に相談。今年1月から生活保護を受給し始めました。

現在は生活保護の受給によって家賃の支出はなくなりましたが、就活のためにできるだけお金を貯めたいと考え、食料品配布に来ていると話してくれました。

    今回はフルーツが多く、うれしいと話していた

女性たちを追い詰めるのは 収入の半分を占める“家賃”

今回、現場で話を聞かせてくれた女性たちは皆、収入の割には高額の家賃について頭を悩ませていました。月の収入の半分以上を家賃に費やすという人も少なくありませんでした。

解決は簡単ではなく、「家賃が安いアパートに引っ越したいけど、敷金・礼金が払えないので引っ越せない」「今の年収では保証会社の審査を通らないので、今の家に居続けるしかない」などという切実な声も聞かれました。

家を失うわけにはいかないとギリギリで生活していた女性たちが、ある日、本当に家賃が払えなくなれば、突然ホームレスになるおそれもあります。

そのリスクを避けるにはどうすればいいのでしょうかー。まずはみなさんがどういった現状にあるのか、少しでも多くの声を集めたいと考えています。

女性のための相談窓口

「生活が苦しい」「DVや性暴力を受けた」など、悩みを抱える女性を支援してくれる相談窓口を、国やNPOなどが設置しています。助けになる情報をまとめたサイトや、主な相談窓口をご紹介します。
https://www.nhk.or.jp/gendai/comment/0020/topic030.html