クロ現+
2021年4月2日

「生理用品には課税しません!」海外ではどう実現?


日本でもアンケート調査で5人に1人の学生が経験したと答えた「#生理の貧困」
イギリスでは生理用品の無償配布や課税廃止が実現しています。
その立役者は活動当初大学生だった20代のローラ・コリトンさん。国をも動かした活動のカギとは!?
前回の記事でもご紹介した「#みんなの生理」共同代表の谷口歩実さんと保里小百合キャスターがインタビューしました。2時間にも及んだやりとりの中には、日本にとってのヒントがたくさん詰まっていました。

(報道局国際部 記者  佐藤 真莉子・松崎 浩子)



   (左:保里小百合キャスター 右上:谷口歩実さん 右下:ローラ・コリトンさん)

ローラ・コリトンさん
大学生だった2014年に、イギリスで生理用品の税金撤廃に向けたオンラインの署名活動を開始。最終的に30万人分を集めて2021年1月に税金撤廃が実現、世界的注目を集めた。

谷口歩実さん
「#みんなの生理」共同代表。生理用品の税率引き下げを求めるオンラインの署名活動を2019年から開始し、日本の「生理の貧困」の実態調査も行っている。コリトンさんの活動に影響を受けた。

保里小百合
2021年4月から「クローズアップ現代+」のキャスターを務める。
 
インターネットと生理

                 ローラ・コリトンさん

保里:今日はよろしくお願いします!コリトンさん、生理用品の税金撤廃についてネットでの署名活動を行ってからこれまで、どんな変化がありましたか?

コリトンさん(以下コリトン):イギリスでは生活必需品には税金がかけられていませんが、ぜいたく品には税金がかけられています。自家用ヘリコプターの維持費や馬肉は生活必需品とされていたのですが、驚くことに、生理用品はぜいたく品に分類され、税金がかかっていたのです。そこで、2014年から税金撤廃の署名活動を始め、今年1月にはついに税金が撤廃されました

また、イギリス社会では“生理は恥ずかしい”という固定観念が打ち破られ始め、“生理”という言葉を多くの人が口にし、議論するようになりました。以前は生理用品の広告には青い液体が使われていましたが、今では赤い液体を使いますし、生理の絵文字もあります。

保里:成功のカギはなんだったのでしょうか?

コリトン:ソーシャルメディアを使った署名活動により、これまで聞いてもらえなかった人に耳を傾けてもらう機会を得たことが大きいと思います。当初、50~100くらい集まるといいなと思って始めましたが、長いキャンペーンの結果、30万以上の署名が集まりました。威力は想像以上で、インターネットがなければ成功できなかったと思います。

それと同時に、デモをしたり、政治家やイギリスじゅうの学生と会ったりもしました。ソーシャルメディアの影響はパワフルですが、オフラインの活動と結びつくと、誰にも止められないと思っています。

批判にはどう対応?

             「#みんなの生理」共同代表 谷口歩実さん

谷口歩実さん(以下谷口):私もネットを使ってキャンペーンを行っています。一方で「携帯電話も毎日の食事も手に入るのに、生理用品はなぜ買えないというのか」といった批判にも直面します。

コリトン:生理の貧困は、お金の問題だけではありません。国際NGO、プラン・インターナショナルがイギリスで行った調査によると、10%の女子学生が毎月、生理用品がないために学校を休みます。また7割以上の女子は、生理用品が必要な時、お金があっても生理用品を買いません。スーパーの生理用品売り場にいるところを見られるのが恥ずかしいからです。生理の問題の反論にはデータを示して立証していく必要があります。

活動を始めた当初、私はひぼう中傷にあいました。殺害予告や脅迫もありました。こうした攻撃の背景には、生理の貧困が社会問題ではない個人的な問題だと言われてきたことがあると思います。普段このような問題について聞いたり、自分自身で経験したりすることがない人たちにとっては、突然問題を耳にして混乱してしまい、「そんなものは存在しない」と問題を信じないのです。そういったことが重なって、一般的な性差別や、政界で活躍する女性を否定するという現象が起きているのでしょう。このため、性差別の一例としてこの問題に取り組むことが非常に重要です。

政治と生理

                保里小百合キャスター

保里:政治を巻き込んだ運動にしていくことについてどう考えていますか?

コリトン:政治家が議会で“生理”という言葉を使ったのが大きな違いを生んだという人が多くいます。生理という新しい議題が政治的な議論の場に上り、政治家が公の場でタンポンについて話し、これまで話し合われなかった問題に真剣に取り組む姿にわくわくします。

子どものころには、限られた特別な人だけが政治家になったり、法律を変えたりできるのだと考えていました。でも、大学へ行ったとき、自分は間違っていたと気づきました。情熱を注いでいれば、誰でも法律を変えることができるのです。生理の問題も、生理をめぐる活動をする女性たちも、政治の中に位置を占めることができるのです。

保里:女性政治家の影響力はどのようなものでしたか?

コリトン:決定的な役割を果たしています。問題を議会に持ち込んでくれただけでなく、私たちのためにリサーチもしてくれて、計り知れないほど助けてくれました。政治の世界に女性議員が多ければ、政治の世界で議論される問題の幅が広がることを示しています。一方で、女性だけでなくさまざまなコミュニティーの代表が政治に参加することも重要です。

性教育と生理

谷口:確かに、幅広く議論されることが重要ですし、男性もこの問題が理解できると思います。ただ、日本では性教育は男女で分かれているので、その人が悪いわけではありませんが、生理についてよく知らない人もいます。

コリトン:イギリスの教育も同じでした。生理の話をするときは男女を分けて、女子には生理のことを教えて、男子には何を教えていたのか全くわからない状況でした。分けられたせいで、生理は秘密のことで、男子には話してはいけないと思ってしまう。だから男子は全く生理を知らずに成長するのです。例えば、男性の同僚の1人が、他の女性の同僚がお手洗いに行くときに落としたタンポンを見て、指差して「お菓子を落としたよ」と言ったんです。タンポンがどんな見た目かさえ知らなかったんです。性教育の欠如は課題でした。

また、生理中はタンポンを1つしか使わないと思っている男性もいました。ただ、彼らは純粋に知らないのであって、悪意があるわけではないのです。ネット上にはたくさんの情報がありますから、「この記事を見てください」と共有するのも、とても良い方法だと思います。彼らに学ぶ場を与えることが私の望みですし男性も学びたがっていると思っています。

友達とそういう話をするだけでも良いのです。男性も、助けが必要な人がいたら支えて、署名運動をしている人がいたら署名をし、運動にぜひ参加してください。

「生理の貧困」問題、なぜ今世界で動き広がる?

             2016年5月 国会付近で署名を呼びかける様子

保里:生理の貧困と生理のタブーを巡る問題は、日本を含め急速に広まっています。なぜだと思いますか?

コリトン:#MeToo運動といったオンラインのキャンペーンの影響があると思います。何百年もの間、無視され、抑圧されてきた女性たちの問題が、オンラインで話せるようになり無視できなくなってきました。また、話題がこれまでになく、政治の世界で注目されているからだと思います。男性の議員も真剣に受け止めていて、以前とは違って積極的に支援しているのは興味深いことです。例えば私の地元の議員は、2014年にキャンペーンを始めた当初相談した時は、関心がまったくなさそうだったのに、今ではテレビで「ずっとこのキャンペーンを支援してきた」と言っています。議員が支援を公言しているのは、この問題がどれだけ前進したかを示しています。

日本へのアドバイス

保里:ジェンダーギャップが深刻な日本で、生理の貧困を解決するのはより難しそうだと感じています。

コリトン:生理について、「月経問題」などと婉曲に言わず堂々と多くの人々、友達や家族と話すことです。また、国会議員などに手紙を書くことも、とても役立ちます。そして署名活動は私たちの生理やそれを取り巻く問題などについて考え方を変え、何世代にもわたって変えるべきとされてきた法律を変える優れた手段です。日本全国の誰でも、このコミュニティーの一員として、世の中を変えるための推進力になれるのです。そのすべては署名運動から始まります。運動に参加するみんなが、世の中を変える力となってくれます。

イギリスの成功は、多くの人々による、多くの小さな運動があったことです。これが文化を変え、生理に関する議論の内容をイギリス全土で変えていく力になったのです。絶対に成功すると思います。楽しみにしています。


<関連番組>
2021年4月6日(火)放送
クローズアップ現代+ 「生理の貧困 社会を動かす女性たち」
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4530/index.html

私たちは、これからも生理をめぐる問題、解決に向けた動きを取材していきます。記事に対する感想や意見、あなたの体験談、取材してほしい内容などを、下の「コメントする」からお寄せください。

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