2020年12月5日

コロナ禍 女性の雇用危機


ことし4月、緊急事態宣言が出された直後に職を失った女性の数は74万人。男性の2倍以上に上っていて、女性がより厳しい雇用危機に直面していることがわかります。

背景には、飲食・小売りなどの接客業や医療・福祉など、大きな影響を受けた業種で女性が比較的多く働いていることや、非正規雇用の割合が大きいことがあると見られています。

(社会部 記者 松田 伸子・ネットワーク報道部 記者 杉本 宙矢)


約6万8000人へのアンケート調査

※「解雇・雇い止め」「労働時間減少など」男性18.7%(回答3万6,403人)

※「収入5割以上減少」男性8.1%(回答1,634人)


今回、NHKは新型コロナによる雇用と暮らしへの影響を詳しく調べるため、専門家とともに約6万8,000人の雇用されている男女にアンケート調査を実施しました。その結果、女性の26.3%、約4人に1人が「解雇や雇い止め」「労働時間の減少」などに追い込まれていました。

さらに5,000人を詳しく調べたところ、15%あまりの女性は収入が5割以上減っていました

共働きやシングルマザーなど、女性の収入が家計を支えるケースが増えるなか、暮らしに深刻な影響が及んでいる実態が見えてきました。

新型コロナで収入激減 息子との生活が…


熊本市に住む50代の女性は、地元のクリニックで非常勤の看護師として働いていますが、コロナ前と比べ、給与は約3分の2になりました。

50代女性
「(先月の給与は) 8万3,000円ですね、かなり下がりました。『コロナがあるからしょうがない、ごめんね』と言われて…」

女性が勤めるクリニックでは、新型コロナの影響で受診する人が激減。勤務時問が大幅に減ったことで、給与が大きく落ち込んだのです。

女性は16年前に離婚し、重い障害のある18歳の息子をひとり親として育てています。食事やたんの吸引などの世話が必要で、急な欠動や早退にも理解のある職場でないと働けません。

息子を学校などに送り迎えするために購入した介護用の車のローンもあり、給与が減っても今の職場に頼るしかないといいます。

50代女性
「障害がある子どもがいると話したら、断られたのが4~5回あって、(今のクリニックは)ありがたい仕事場です。(給与減は)納得はいかないけれど、納得しなければいけないのかな…」

「休業手当」を受け取れない


今回の調査では、会社から休むように言われたり労働時間を減らされたりした女性たちが、「休業手当」などの補償を十分受けられていない実態も見えてきました。
休業手当が支払われていない女性は25%あまり、男性を大きく上回っていたのです。



休業の補償を受けられなかったという山口淑子さん(79)は、4年前から、業務委託でスーパーの試食販売の仕事を行い、月8万円ほどの収入を得てきました。

しかし、新型コロナ感染拡大後、仕事は激減。先月は一度も売り場に立てませんでした。

県営住宅で50代の息子と2人で暮らす山口さん。自営業の息子は体調を崩すこともあり、収入は不安定です。今は山口さんの10万円の年金が頼りです。

山口さんは会社に「休業手当」をもらえないか問い合わせましたが、契約が「業務委託」のため対象にならないことがわかりました。さらに、個人事業主も対象になる「持続化給付金」を申し込みましたが、減った収入以上に年金をもらっているという理由で受け取れなかったと言います。

山口淑子さん
「何にも援助されない状況だったのがすごく悔しい。本当にもう世の中からポンと捨てられたような感じですよね」

困難な再就職 求められる支援

※調査対象は自発的離職含む


今回の調査では、仕事を失った女性たちが再就職にも苦労していることが明らかになりました。ことし4月以降、職を失った女性の4割近くが、「再就職していない」と答えていて、男性を大きく上回っているのです。

こうしたなか、IT関連など今後ニーズが高まる業種に活路を見出そうという動きも出始めています。



長年、コールセンターや事務の派遣社員として働いてきた山本亜矢子さん(42)は、新型コロナで非正規雇用の待遇の悪さを改めて痛感し、7月、みずから退職を申し出ました。

山本亜矢子さん
「派遣と正社員の格差をすごく感じましたね。働き方をちゃんと考えていかないと」

今は「失業手当」で生活する山本さん。今後、新たな収入源にしたいと考えているのがインターネットの記事を書く仕事です。2か月かけて講習を受け、記事の書き方や写真の撮り方など、ノウハウを学びました。

初めて書いた飲食店の記事で得た報酬は3,000円あまり。今はできる仕事を増やしていくしかないと考えています。

山本亜矢子さん
「いずれはライターの仕事を増やしていけたらなと。1つでも多く自分にスキルを身に付けておけば、何かの備えになるのではないかと思っています」

共同で調査を行った専門家は、今後成長が見込まれる分野や人手不足が深刻な分野に転職できるように、国が支援すべきだと指摘しています。



労働政策研究・研修機構 周 燕飛 主任研究員
「コロナの中でも、伸びている業種もあります。例えばIT情報産業もその1つですけれども、そういった産業は、まだこれからどんどん求人が増えていくし、将来性もあって賃金も比較的高い。うまく好況業種に転換できるように、職業訓練を施してスキルを持てるようにする支援が必要になってくると思います」

新型コロナによる女性の雇用の危機は、これまでもあった問題が表面化したに過ぎません。女性活躍と言われながら、安定して働ける、また家事・育児と無理なく両立できる仕事が少ない現状をどう変えていくのか、社会全体で考えなければならないと感じました。

(2020年12月4日に「おはよう日本」で放送された特集をもとに作成)


関連番組
12月5日(土)午後9時~ (NHK総合)
(再)12月10日(木)午前0時50分~(NHK総合)
NHKスペシャル「コロナ危機 女性にいま何が」
https://www.nhk.jp/p/special/ts/2NY2QQLPM3/episode/te/JPG53JR2N6/
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