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コロナが私から奪ったもの 格差や貧困が広がる社会で
仕事を失った。お金がない。生活が苦しい。生きる希望すらない―。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、多くの人が大切なものを奪われました。
格差や貧困がますます広がる中で、この苦しみは自己責任と言えるのでしょうか。
どんな支援が求められているのか、社会の仕組みや制度はどうあるべきなのか。
この苦境を少しでも改善するための取材を継続的に行っていきます。


Topic18 コロナ禍の孤立を防げ  東京・江戸川区の挑戦 2021.2.26公開
Topic17 職業訓練/ハロートレーニングへの疑問に答えます! 2021.2.19公開
Topic16 コロナ禍の生きる支援・相談窓口 2021.2.12公開
Topic15 「生きづらさを話したい」と思ったら・・・自殺に関する相談窓口・支援団体 2021.2.9公開
Topic14 命の支援 途切れさせないために オンライン討論/後編 2021.2.2公開
Topic13 命の支援 途切れさせないために オンライン討論/前編 2021.2.1公開
Topic12 軽症だったのに…30代以下の若者にも広がる“コロナ後遺症” 2021.1.29公開
Topic11 職業訓練の情報まとめ&生活に関する支援・相談窓口一覧 2021.1.27公開
Topic10 パート従業員のストライキ 2021.1.26公開
Topic09 新型コロナד若い世代” 100人の本音とは 2021.1.25公開
Topic08 コロナ禍で広がる“パパ活”の実態 2021.1.21公開
Topic07 子どもに「普通の生活」をさせてあげたいのに 2021.1.8公開
Topic06 ひとり親家庭を「無料の弁当」で支えたい 2020.12.22公開
Topic05 “休業手当ゼロ” あなたはどうする?2020.12.18公開
Topic04 NHKスペシャル「コロナ危機 女性にいま何が」データ集 2020.12.05公開
Topic03 コロナ禍 女性の雇用危機 2020.12.05公開
Topic02 生活苦など 女性の悩みを相談できる窓口 2020.12.01公開
Topic01 コロナ禍 “夜の世界”に向かう学生たち 2020.11.30公開

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2021年2月26日
コロナ禍の孤立を防げ  東京・江戸川区の挑戦
2月9日のクローズアップ現代プラスで、コロナ禍で相次ぐ心中について放送しました。放送後、番組には多くの声が寄せられました。
「コロナによる環境の変化で、対面で人と会うのが悪いことと思ってしまい、親や兄弟とも会えなくなった」(40代女性)
「グループホームで生活しているが、両親と再会することができない」(40代男性)
ご意見・ご感想、ありがとうございます。
新型コロナウイルスの影響で、人と会わずに過ごすことが増えたという方も多いかと思います。
どうすれば、人との接触が少なくなったコロナ禍でも、家族の孤立を防げるのか。
江戸川区の孤立を防ぐ活動からそのヒントを探ります。

(クローズアップ現代プラス ディレクター 藤原和樹)

生きづらさを感じたら…あなたの話を聞いてくれるところがあります。
相談窓口をこちらにまとめました

全国が注目 孤立を防ぐ「なごみの家」  ところが…


東京 江戸川区にある「なごみの家 松江北」

去年12月、私は孤立を防ぐ取り組みを取材するため、東京・江戸川区を訪ねていました。
新小岩駅からバスで20分、住宅街の一角に「なごみの家 松江北」があります。マンションの1階を改装して作られた施設。近くには、行列ができるほどの八百屋さんもあり、人通りが多い場所を意識した立地でした。

「なごみの家」は、区が運営する住民の相談所です。どこに相談していいかわからないことでも、ここに相談すれば、役所の担当の課につないでくれます。また、住民の憩いのスペースでもあり、悩みがなくても、思い思いの時間を過ごせると人気の場所です。
開館日は、月曜日を除く週6日。土日も開館しているのは、役所だけでは対応できない住民の困りごとを拾っていこうという意図があるからです。新型コロナの流行前、多い時には、1日40人~50人が訪れ、孤立を防ぐ取り組みとして、国や自殺防止のNPOなど全国的に注目を集めてきました。
しかし、いま、これまでのやり方が通用しない事態に直面していました。

コロナ禍で「これまでのやり方が通用しない」


「なごみの家 松江北」所長 小嶋亮平さん

「すみません。熱を測らせてもらってもいいですか。手洗いもお願いします」

私が中に入ろうとしたところ、所長の小嶋亮平さんから呼び止められました。
去年の感染拡大以降、感染対策を徹底してきた「なごみの家」。去年4月下旬から5月中旬には、感染対策のため、施設を閉鎖しました。再開後、訪問者には、体温の測定と手洗いなど感染対策を徹底。今も利用時間は60分、利用人数も一度に最大5人と制限しています。
この日、訪ねたのは昼の1時過ぎ。しかし、所内を見渡しても利用者の姿は見当たりません。
「なごみの家」に何が起きているのか?小嶋所長に取材の意図を説明し、その疑問を伝えたところ、悔しさをにじませながら答えてくれました。

「なごみの家 松江北」所長 小嶋亮平さん
「コロナの影響は大きいです。(去年の)緊急事態宣言解除後、再開しましたが、人数は戻っていません。元々利用していた方になぜ来られないのか、聞いて回ったんですが、みんな(感染が)怖いと。自分の命が心配という人もいましたし、『おじいちゃん、おばあちゃんにうつしたらだめだから』という方もいました。自主的に外出自粛されている方が多い地域だと思います」

「なごみの家」の開設から5年。「今まで振り返らずに、突っ走ってきた」という小嶋所長。新型コロナウイルスの猛威にさらされたのは、地域の住民やボランティアと信頼関係を築き、ようやく軌道に乗ってきた矢先のことでした。

“制度のはざま”にいる家族


新型コロナが流行する前の「なごみの家」(写真提供:なごみの家 松江北)

人口約70万の江戸川区。「なごみの家」は5年前に小嶋さんが所長を務める松江北を含む区内3か所に設置したことから始まり、現在は9か所にまで増えています。子どもからお年寄りまで利用しやすいよう、健康のための体操教室や、子ども食堂などを開いてきました。

所長の小嶋さんは、コミュニティソーシャルワーカーと呼ばれる肩書をもっています。コミュニティソーシャルワーカーとは、孤独死や引きこもり、ゴミ屋敷問題といった、既存の法制度では行政が支援することが難しい“制度のはざま”にいる住民に包括的に対応する専門職で、もともとイギリスで広まった考え方です。日本では、2004年に大阪府が導入したことを皮切りに、徐々に全国に広がりつつあります。

小嶋さんは、「なごみの家」を拠点に、さまざまな機関や住民のネットワークを構築してきました。例えば、定期的に開かれる地域支援会議には、医師会や介護事業者、自治会などのメンバーが参加し、地域の課題を話し合います。顔が見える関係を作っておくことで、いざ問題が起きたときの連携に生かされるのです。

住民もネットワークの一員です。「難しいのは、本当に困っている人とつながること」だという小嶋さん。そこで鍵となるのが、住民の“気づき”です。なごみの家を通じて、何でも話せる関係になることで、地域の異変に気づいたら教えてほしいと利用者に伝えています。
これまでに住民の話から、家の外までゴミが溢れてしまう、いわゆる“ゴミ屋敷問題”を解決したほか、子どもの泣き声がするという話を聞いたときには子ども家庭支援センターと連携し、虐待の解決につなげてきました。


新型コロナの感染拡大後、利用者は大幅に減った

コロナ禍で、施設の利用者が減っていることは、住民の居場所が失われただけでなく、こうした異変に気づく機会が失われてしまうのではないか。小嶋さんは、強い危機感を抱いてました。

小嶋亮平さん
「住民の方が外に出歩くことも減っていて、問題を把握することが非常に難しい。不要不急の外出は自粛ということで、つながりは希薄になりました。これまでやっていたような地域住民の方に情報を寄せてもらうお願いもやりづらくなっています」


コロナ禍で起きた孤独死


孤独死があったマンションの一室

新型コロナの影響が続く中、小嶋さんの恐れていた事態が起こりました。
去年12月「なごみの家」を訪れた柳橋百合子さんが、同じマンションに暮らしている70代の女性が孤独死していたことを話してくれたのです。
女性は病気で亡くなり、死後2か月は経過していたとみられています。

柳橋さんはその孤独死の発見に立ち会ったそうです。マンションには約180世帯が暮らしており、その4分の1が「1人暮らし」、4分の1が「高齢の夫婦」でした。それぞれの数は年々増えていました。柳橋さんはマンションの住民たちと4年前、「たすけあい委員会」を立ち上げ、孤立しやすい世帯の見守り活動をしてきました。しかし、感染リスクを避けるため、この1年間は十分な活動ができていなかったと言います。
柳橋さんは、後悔を語りました。

柳橋百合子さん
「せっかく立ち上げた『たすけあい委員会』があるのに、何もできなかったと本当に悔やまれる部分があるんです。9月、10月、11月とコロナの関係で委員会を休んでいたんです。マンションの中でやるイベントを3つぐらい計画してたんですが、それも全部中止になっています。委員会そのものの参加率も減っていますし、その間に今回のことがあったので、なおのこと悔やまれて。」


ケアマネージャー(左)を交え、柳橋さん(中央)と相談する小嶋さん(右)

所長の小嶋さんは、柳橋さんからの相談にのり、コロナ禍でもできる孤立を防ぐ取り組みを模索したいと考えていました。
この日の話し合いには、地区のケアマネジャーも参加。これまで中心となって見守り活動を引っ張ってきた柳橋さん。「コロナ禍で活動にどうすれば関心をもってもらえるか、わからない」と悩みを吐露していました。
住民同士の呼びかけだけでは、活動を知らない人から不信に思われるかも知れないと不安もありました。

そこで、小嶋さんは、「なごみの家」としての情報提供などサポートをしていきたいと伝えました。その申し出に、柳橋さんは少し前向きになったように見えました。


柳橋さんが実施する住民へのアンケート

2週間後、再び行われた話し合い。
小嶋さんは、柳橋さんが作成したアンケートの相談にのっていました。マンションの住民に、「定期的に連絡をとる人はいるか?」「定期的に安否確認の電話をしてほしいか?」「親族に鍵を預けているか」、そして「たすけあい委員会に協力してもらえるか」を聞くことで、柳橋さんは今後の活動に生かしたいと考えていました。
アンケートの用紙の冒頭には、孤独死が起きたことも記し、住民に問題意識を伝えます。

柳橋百合子さん
「待ってるんじゃだめなのかも知れないと思って。お節介だけどこっちから何かアタックしなきゃだめかな。もうお節介おばさんで良いかなと思いました」

いつでも声をあげてもらえるように


「なごみの家」のチラシをポスティング

今年1月、小嶋さんは動き出していました。会えない中でも、気にかけていた住民に定期的に電話をかけ安否確認をします。
さらに「なごみの家」でチラシを作り、これまで見守り支援の対象になっていた各世帯に、配布することにしたのです。「なごみの家 松江北は“なんでも相談”を行っています」と書かれたチラシ。悩みがあれば相談先があることを知っておいてほしいという思いが込められています。
また、住民の家に足を運ぶことで、外側から異変がないか確かめます。気を配るのは、郵便受けに手紙などがたまっていないか、洗濯物が干しっぱなしになっていないか、などほんのささいな変化です。

チラシを見た人から、早速連絡がありました。足の痛みを訴えており、小嶋さんは短時間の面談をすることにしました。一人暮らしの82歳の女性。コロナ禍で、親しい友人にも会えず、誰にも相談できないでいました。

女性
「猛烈に(足が)痛いわけ。夜中も寝られないぐらい。このお薬を飲んで、それを信じて、今それを飲んでいるんだけど、まだ効果はない」
小嶋さん
「私は専門的に健康のことは分からないので、1回うちの保健師から電話をさせましょうか」
女性
「うん、お願い」

面談時間は感染対策を意識して、10分あまり。小嶋さんはすぐになごみの家に戻ると、常駐の保健師にすぐに相談し、電話をかけてもらうことになりました。

保健師のアドバイスによって、女性は、専門の病院を受診することになりました。
心にとどめておいてくれる。そのことを思うだけで、支えになっていると女性は話しました。

女性
「言葉を掛けてもらえればそれで十分。何かしてくれというよりも、ちょっと気に掛けていただける、その気持ちだけでありがたい。彼らも一生懸命やっていて忙しいしね。
声を掛けてくれる、心にとどめておいてくれる、それだけでありがたい」


常駐の保健師による電話相談

なごみの家は、本来の姿に戻れるのか、見通しは立っていません。
その中でも、できることをやり、住民に一人ではないと伝え続ける。コロナ禍の支援の模索は今も続いています。

「なごみの家 松江北」所長 小嶋亮平さん
「ほっとかない。そのままにしない。あそこのあの人に話せばなにかしら動いてくれる。 動いてくれると思ってもらうことが、大事だと思っています。今回は駄目だったけど、これだったらやってもらえるんじゃないかと。まったくアクションを起こさない、返答しないだったら、もう本当に信頼も何もないと思うので、まずは動ける人間だと理解していただきたいです」



生きづらさを感じたら…あなたの話を聞いてくれるところがあります。
相談窓口をこちらにまとめました

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2021年2月19日
職業訓練/ハロートレーニングへの疑問に答えます!
新型コロナウイルスの感染拡大による雇用への影響が深刻化する中、2021年1月27日放送の番組では、再就職やキャリアアップにつながる知識や技能を原則無料で学べる公的な制度である「職業訓練/ハロートレーニング」を取り上げました。
放送に先立ち、番組ホームページなどで職業訓練の体験談や疑問・質問などを呼びかけたところ、60通を越える投稿がありました。番組内でご紹介できなかったいくつかの疑問や質問、その他取材を通してよく聞かれた問いに対し、スタジオゲストのジャーナリスト・日向咲嗣さんにお答えいただきました。

ジャーナリスト・日向咲嗣さん
失業・転職の当事者を取材した一連の執筆活動が評価され、2018年の「貧困ジャーナリズム賞」受賞。著書に「失業保険150%トコトン活用術」「58歳からのハローワーク200%活用術」など多数。


【番組に届いた職業訓練についての疑問・質問】
Q1:そもそも、職業訓練をどうすれば利用できるのか?条件や試験などはあるのか?

職業訓練は誰でも受講できます最寄りのハローワークで申し込みます。

受講開始日に退職する予定でしたら、在職中でも申し込みできます。また在職者向けの訓練(有料)もあります。

試験は、3~6カ月の短期コースは書類選考のみ。1年以上の長期コースや一部若年者向けコースで学科試験(国語と数学)が行われることがあります。

訓練を受けながら雇用保険から失業手当をもらえるのは、ハローワークから「受講指示」※を出してもらった人に限ります。

職業訓練を受けたいと思った人は、とりあえず、最寄りのハローワークの職業訓練窓口で相談してみてください。

※受講指示とは、職業訓練が必要と安定所長が判断したことを示すお墨付き。失業手当をもらえない求職者支援訓練の場合は「支援指示」が「職業訓練受講給付金」の要件になります。

Q2:「受講したい訓練があるのに、年齢制限で受けられない」「コロナで雇用の危機に直面しているのは40~50代が多いのではないか?職業訓練は35歳以下を対象にした制度なのか?」

番組で紹介した東京都のIT人材育成事業のコースは35歳以下を対象にしたものですが、若年者向け長期コース(おおむね30歳または35歳未満)をのぞいて、一般的な離職者向けの3か月~6カ月の職業訓練コースは、年齢制限はありません

Q3:「番組で紹介されていた取り組みは、財政に余裕のある東京など大都市圏だけのもので、自分のいる地方では、選択肢が限られていたように思う」「それぞれの地域でどういう訓練が行われているのか、詳しく知りたい」

厚生労働省 ハローワークインターネットサービス
(「仕事をお探しの方」>「ハロートレーニングコース情報検索」をクリックしてください。ハロートレーニングの訓練コースが検索できます) https://www.hellowork.mhlw.go.jp/index.html

ここにお住まいの地域と、訓練の募集期間(開始日と締切日)だけ入れて検索してみてください。たとえば、青森県で今年2/1~3/31に募集している訓練を検索しますと、47件ヒットします。

地方では、建築関係やものづくり関係のコースが目立ちます。歴史と伝統のある訓練校の長期コース(1年以上)がいまも健在です。それ以外でも、IT技術者を養成するコースパソコン事務関係のコースも随時開設されています。

また、介護福祉士、保育士、美容師など国家資格者を養成する民間専門学校の2年コースが職業訓練として認定されているケースもあり、それらは、例年、4月開講のみで、1月~3月までしか募集していません。

これら2年コースは、年齢制限を設けている地方もありますが、最近は40代以上でも、介護福祉士や保育士のコースも門戸を開く自治体もあります。10代~20代の若者と一緒に机を並べて2年間勉強して資格を取得して就職できたという40代以上の人もいます。その場合、学費無料で2年間失業手当を延長して支給されますので、その間の生活も心配ありません。ただし、定員は少なく、狭き門になる場合が多いです。

雇用保険から失業手当を受給できる人は、原則として「公共職業訓練」しか応募できませんが、「公共職業訓練」に志望コースがなければ、失業手当の受給資格のない人向けの「求職者支援制度」(失業手当の受給資格のない人向け)でも応募可能です。
逆に、失業手当の受給資格のない人は原則「求職者支援制度」しか応募できませんが、 「求職者支援制度」に志望コースがなければ「公共職業訓練」でも応募可能です。

また、検索時点では、専用サイトにデータ登録漏れのコースもありますので、最寄りのハローワークで相談してみると、より志望にあったコースを見つけることができます。


Q4:「人気の高い訓練を受けたが、未だに再就職できていない」「企業は『実務経験』を重視する。職業訓練を受けても『実務経験』はないので再就職に結びつかない」「職業訓練の受講生で、再就職できた人とできない人の違いは?」

訓練コースを選ぶときには、科目のイメージのみで判断せずに、あらかじめ各コース(委託訓練の場合は同種の訓練)における過去の就職率を調べて、その数字も判断材料のひとつとすべきです。

また、職業訓練が就職にストレートに結びつくかというと、年齢が高くなるほど難しいのは、確かにまぎれもない現実です。これは、長らく終身雇用を前提として社内で人材を育てていく日本型の人事制度の弊害です。しかし人手不足が年々深刻化するなかで、未経験者を採用するよりも、訓練を受けた人を採用して、育てていこうという企業もあると聞いています。

職業訓練の効果は、すぐに目に見えて出てくるわけではないので、直接就職に結びつかないように思えますが、訓練によって身につけたことは、いずれは必ず役に立ちますので、長い目でみれば効果はあると思います。

訓練を受けても、就職がなかなか決まらない人の傾向としては、やはり就職のノウハウをおろそかに考えていることだと思います。求人探し、応募する企業の絞り込み、応募書類の見直し、あるいは面接技術の習得といった就職ノウハウは、この20年で飛躍的に進歩しています。

就職氷河期よりも前に社会に出た中高年のなかには、そういうノウハウをおろそかに考えたり、あるいは氷河期世代でも、その点の重要性をあまり認識していなかったりすると、なかなか思うように実力が発揮できないケースはあると、ハローワークの現場の人からは聞いています。

そういった就職ノウハウについても、訓練校のカリキュラムに盛り込まれていたり、あるいはハローワーク及びその関連機関でセミナーを随時実施していたりしますので、そういう機会を活用することもお勧めします。

Q5:「番組で、職業訓練を受ければ、失業手当の給付が延長されると言っていたが、自分は延長はできないと言われた。必ずしも延長されない場合があるのか?」

所定給付日数(もらえる失業手当の日数)の原則3分の2にあたる日数(90日なら60日。最長150日)の支給を受け終わるまでに訓練を開始(訓練校に入校)しないと、訓練の途中で失業手当が切れても、その後は延長給付されません。この点は、訓練申し込み時にハローワークで「受講指示」(職業訓練が必要と公共職業安定所長が判断したことを示すお墨付き)が出ているかどうかを確認してください。受講指示が出ていれば、必ず延長給付になります。事前に確認したい場合は、申し込み時に「何日残っていれば、延長給付されますか?」と質問してみてください。

Q6:「就職率が良い訓練コースで定員割れが起きているという実状に驚いた」「就職先に想定されている職種の労働環境のイメージが良くないからでは?」

当然、労働環境のイメージが良くない業種ほど定員割れが起きます。実際にそうではない職場や職種もありますので、それは自分の眼で事前に訓練校を見学して、見極めるべきではないでしょうか。

一方で、労働環境が良くない職種も確かにありますので、その点は、訓練校とハローワークが就職をあっせんする以上は、責任をもって改善指導するのが大きな課題になっていると思います。

Q7:(求職者支援訓練の制度について番組では)「給付金が10万円では少ないとか、受給の条件が厳しいと問題提起されていたが、月10万円は妥当では?」「自分で働けるだけの力が欲しいのであれば、相応の自己負担も必要では?」

求職者支援制度は、雇用保険制度の網からこぼれ落ちる人があまりにも多いことから、創設された制度ですので、学費がかからないのはもちろんのこと、その間の生活が維持できるものでなければ、この制度の目的を果たせません

そのことからしますと、給付金が10万円というのは生活を維持するには困難な額であり、せっかく制度をつくっても、明日の生活に困っている人にとっては無意味な制度となり、あまり活用されないことになってしまいます。

また、訓練受講の給付金支給の要件が厳しい点については、「なんでもいいから訓練受けたらお金がもらえる」というモラルハザードを防止する主旨でそうなっています。

しかし、雇用保険制度からこぼれ落ちた人のなかには、引きこもりの生活を続けてきた人や過労死寸前の長時間勤務によって、著しく心身のバランスを崩してしまい、通常の生活を送るのが困難な人がいます。あるいは親族の介護に多くの時間を費やさねばならない人や、ひとり親家庭で、子育てとのバランスをとる必要がある人など、実にさまざまな境遇の人がいます。

そういう困難な状況に直面している人でも訓練を気軽に受けて生活を立て直せるようにするためには、給付金支給の要件は緩和すべきです。これを厳しくしすぎると、多くの人が使えない制度になってしまいます。

本来、まず雇用保険に誰もが加入でき、失業手当を受給しやすくするのが先決なのですが、いまだにそれが進んでいません。持続可能性があり、多様性豊かな社会を維持していくためには、困ったときには、誰でも、その人にあったサポートが受けられるような制度設計にするのが望ましいと思います。

※取材班補足
2月12日に厚生労働省は、求職者支援制度の要件緩和を発表しました。
主な内容は
●特例措置の導入(9月末までの時限措置)
・収入要件を現状の月8万円以下から月12万円以下に拡大
・仕事のため訓練を欠席することを「やむを得ない理由」と認める出席要件の緩和
●職業訓練の期間や内容の多様化・柔軟化
・短期間の訓練コースやオンライン訓練の設定を促進
●「コロナ対応ステップアップ相談窓口」(仮称)の設置
・コロナによる失業や休業中の方への職業訓練の情報提供や訓練成果を踏まえた就職支援を行う窓口の設置。詳しくは以下のHPを参照。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000204414_00011.html

【番組に届いた職業訓練についての疑問・質問】

投稿を寄せてくださった方の中には、実際に職業訓練を受講することで、生活を大きく変えることができたという方もいました。

今年29歳になる男性は、専門学校を卒業後、正社員として入社した会社で、長時間労働やサービス残業、人間関係に苦しみ退職。派遣でコールセンターのクレーム処理やアルバイトなどをしていました。
しかし、低賃金・長時間労働に加え、人間扱いされない職場環境に嫌気がさし、実家のある九州に里帰り。職業訓練を受講することにしました。
ハローワークで相談して、国の運営するポリテクセンターで、溶接の技術などを学ぶ金属加工科のコースを選択。1番の理由は就職率の高さだったものの、最初は「仕事がキツいのではないか」など、あまり良いイメージを持っていなかったといいます。
しかし、実際に訓練を始めてみると「もともと好きだったガンダムのプラモデルでも作っているような面白さ」を感じ、半年間の訓練修了後は、訓練校が紹介する何社かの中から訓練校の卒業生がいる従業員100人ほどの会社に就職
入社当初はあまり高くないと感じていた給与も、年2回の賞与があり、労働時間の管理もしっかりしているため、親元を離れ、ひとり暮らしをする余裕が生まれるようになったといいます。
何より、ちょうど熟練の先輩たちが退職の時期を迎えており、若い人が大切にされる雰囲気があるため、じっくり溶接技術を磨き、資格を取るなど自信を得ることができ、将来への希望を感じるといいます。

もちろん、それまでの労働環境や本人の進路についての希望には違いがあり、職業訓練が誰にとっても雇用の問題を解決する『魔法の杖』ではありません。しかし、雇用全体の先行きが見えない現在のような状況だからこそ、職業訓練/ハロートレーニングのキャッチフレーズどおり『急がば学べ』を実現できる選択肢の1つとして視野に入れてみてはいかがでしょうか。

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#職業訓練
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2021年2月12日
コロナ禍の生きる支援・相談窓口
新型コロナウイルスの影響が長期化する中、経済状況の悪化や雇用、人間関係などさまざまな要因で精神的に不安定になるなど、追いつめられてみずから命を絶つ人が相次いでいます。悩みを相談したい場合の窓口や生活を支える制度などの情報をまとめました。

2月28日(日)の『おはよう日本』(NHK総合・朝7時~)ではNPOや行政、大学、医療機関などが連携して独自の“生きる支援”に乗り出した秋田県の取り組みを放送しました。

NHKプラス 見逃し配信はこちら ☟ (配信期限:3月7日(日)朝7時40分まで)
https://plus.nhk.jp/watch/st/g1_2021022810301?playlist_id=30ef6a51-2fc4-4820-8945-f7bc0410dcfb
 

「生きるのがつらい」など悩みを相談したい場合の情報サイト
<国が設置する情報サイト>
※相談窓口のリンクをクリックすると、NHKサイトから離れます。
厚生労働省「まもろうよ こころ」
https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/
「こころの健康電話相談」「いのちの電話」18歳までの子どもを対象とした「チャイルドライン」などの電話番号や対応時間などの情報、LINEなどのSNSやオンラインチャットでの相談窓口や、どこに相談したらいいか分からない場合のための「支援情報検索サイト」などの情報が掲載されています。
<NHKがまとめた情報サイト>
NHK福祉情報総合サイト ハートネット 自殺に関する相談窓口・支援団体
https://www.nhk.or.jp/heart-net/topics/7/
NHKが運営する、福祉情報を掲載するポータルサイトです。ページの中ほどに、支援団体や相談窓口に関する情報がまとめてあります。都道府県・政令指定都市別の相談窓口などお住まいの地域の相談窓口を探す場合は「自殺総合対策推進センター|いのち支える相談窓口一覧」のリンクをクリックしてください。
<秋田県が設置する情報サイト>
※相談窓口のリンクをクリックすると、NHKサイトから離れます。
秋田県「ふきのとうホットライン~心の健康相談窓口一覧~」
https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/1375
2月28日(日)放送の『おはよう日本』でも紹介したNPO法人「蜘蛛の糸」のLINE相談窓口(秋田県在住の39歳以下の方が対象です)を含む、秋田県内のさまざまな相談窓口の情報が掲載されています。

新たに設置された電話相談窓口

※相談窓口のリンクをクリックすると、NHKサイトから離れます。
「#いのちSOS」
https://www.lifelink.or.jp/inochisos/
電話:0120-061-338
毎日 正午~午後10時
新型コロナウイルスの影響が続く中、自殺を防ぐための電話相談がつながりにくくなっているため、NPO法人「ライフリンク」など自殺防止に取り組む全国11の支援団体が連携して2021年2月6日から受け付けを始めた新たな電話相談窓口です。

生活支援についての情報サイト

新型コロナウイルス対策で生活や雇用を支える制度についての情報をまとめたウェブサイトをご紹介します。
<国が設置する情報サイト>
※相談窓口のリンクをクリックすると、NHKサイトから離れます。
厚生労働省「くらしや仕事の情報」
https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kurashiyashigoto.html
「低所得のひとり親世帯への臨時特別給付金」「緊急小口資金・総合支援資金」「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」「雇用調整助成金」などの制度の情報が掲載されています。
<NHKがまとめた情報サイト>
NHK 新型コロナウイルス特設サイト
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/
NHK 新型コロナウイルス特設サイト「緊急事態宣言 暮らしはどうなる」
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/emergency_2021/living_index.html

NHKが運営するサイトです。新型コロナウイルスに関連した疑問や不安に応えるさまざまな情報を掲載しています。

NHK福祉情報総合サイト ハートネット 新型コロナウイルスに関する相談窓口・支援団体
https://www.nhk.or.jp/heart-net/topics/25/
NHKが運営する、福祉情報を掲載するポータルサイトです。ページの中ほどに、支援団体や相談窓口に関する情報がまとめてあります。

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●「休業手当」に関する記事を読む
・Topic10 パート従業員のストライキ
・Topic05 “休業手当ゼロ”あなたはどうする?
●コロナと若い世代について考える
・Topic09 新型コロナד若い世代” 100人の本音
・Topic08 コロナ禍で広がる“パパ活”の実態
・Topic01 コロナ禍 “夜の世界”に向かう学生たち
●ひとり親家庭の実態を知る
・Topic07 子どもに「普通の生活をさせてあげたいのに」
●女性の危機をデータで知る
・Topic04 NHKスペシャル「コロナ危機 女性にいま何が」データ集
・Topic03 コロナ禍 女性の雇用危機
●解決策を考える
・Topic02 生活苦など 女性の悩みを相談できる窓口

・Topic06 ひとり親家庭を「無料の弁当」で支えたい


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#相談窓口
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2021年2月9日
「生きづらさを話したい」と思ったら・・・自殺に関する相談窓口・支援団体をまとめました
コロナ禍のいま「生きるのがつらい」「誰かに話がしたい」という相談が支援団体などに相次いでいます。家族の悩み、自分の悩み、あなたの話を聞いてくれるところがあります。
番組で取材した相談機関をまとめました。

※各相談窓口のウェブサイトへアクセスする際、NHKサイトを離れます

公的機関の相談窓口
公的機関の相談窓口



● 最寄りの保健所を探す 保健所管轄区域案内 - 厚生労働省

民間の相談窓口など
民間で運営する相談窓口など

● いのちと暮らしの相談ナビ http://lifelink-db.org/

● 生きづらびっと https://yorisoi-chat.jp/

● よりそいホットライン https://www.since2011.net/yorisoi/
電話
フリーダイヤル 0120-279-338
(岩手県・宮城県・福島県からのフリーダイヤル:0120-279-226)

※携帯電話・PHS・公衆電話からもつながります。
※電話がかかりにくいことがあります。


FAX
0120-773-776
(岩手県、宮城県、福島県からは、0120-375-727)


インターネット
※インターネットでの相談も受け付けています  お悩みクラウドMoyatter
※チャット・メールで専門のスタッフが情報提供を行っています  困りごと情報提供

● いのちの電話 http://www.inochinodenwa.org/
電話
ナビダイヤル:0570-783-556 IP電話からは 03-6634-2556
(午前10時から午後10時まで)

※携帯電話・PHS・公衆電話からもつながります。

フリーダイヤル0120-783-556
≪毎日フリーダイヤル≫
毎日午後4時から午後9時まで、フリーダイヤル「自殺予防いのちの電話」を実施。
コロナ禍の中で様々な困難や苦悩にあって、おひとりで苦しんでいる方のための電話です。そのお気持ちをお聴きかせください。
(※10日のフリーダイヤルはいつも通り実施)

≪毎月10日フリーダイヤル≫
毎月10日は、午前8時から翌日午前8時までフリーダイヤル(無料)の電話相談を受け付けています。
※IP電話でのご利用は03-6634-7830(有料)におかけください。

インターネット
インターネットでの相談も行っています。
ホームページでは 全国各地の「いのちの電話」の直通番号と受付時間一覧を掲載しています。

● 東京自殺防止センター http://www.befrienders-jpn.org/
電話
東京:03-5286-9090
年中無休 午後8時から深夜2時30分まで
- 月曜は午後10時30分から深夜2時30分まで
- 火曜は午後5時から深夜2時30分まで

※ホームページでは、東京以外の常設電話相談窓口・受付時間の一覧も掲載しています。

● いのちSOS https://www.lifelink.or.jp/inochisos/
電話
フリーダイヤル 0120-061-338
毎日 正午から午後10時まで
(※今後24時間相談に応じることができるように準備を進める予定)

子どものための相談窓口
子どものための相談窓口

● チャイルドライン http://childline.or.jp/index.html
電話
- 携帯電話(スマートフォン)、公衆電話からも無料です。公衆電話からかけるときは、最初に硬貨を入れて下さい。通話が終わると硬貨は戻ってきます。
- 音声通話契約をしていないスマートフォンや、050で始まるIP電話、LINEやSkypeなどのインターネット電話からはかけられません。
- 12月29日~1月3日はお休みです。一部の都道府県では時間を延長して受けています。

インターネット
- 「チャイルドライン」の受け手と1対1のチャットで話すことができます。
- 木曜・金曜・第3土曜 午後4時から午後9時まで
- 詳しくは、ホームページをご確認ください。

● 24時間子供SOSダイヤル https://www.mext.go.jp/ijime/detail/dial.htm


家族や大切な人を自殺で亡くした方へ
家族や大切な人を自殺で亡くした方へ

● 特定非営利活動法人 全国自死遺族総合支援センター<グリーフサポートリンク>
https://www.izoku-center.or.jp/index.html
FAX・メールによる自死遺族のわかちあいと相談
FAX:03-6908-3795
メール:wakachiai@izoku-center.or.jp

生活に困っている方へ
◇仕事がない/住まいがない/お金がない・借金を抱えているなど生活に困っている方
◇残業代が出ない/休みがない/解雇されたなど「働くこと」に関して悩んでいる方

こちらのページも参考にしてください。
● テーマ別情報・窓口「貧困」 (ハートネット福祉情報総合サイトへ)

自殺対策に対する総合サイトなど
● NPO法人 自殺対策支援センター ライフリンク
https://www.lifelink.or.jp/
自殺へと追いつめられることのない、生き心地のよい社会の実現を目指して活動しています。自殺の実態を解明し、今後の具体的な対策へとつなげるために、多くの自死遺族の方と一緒になって進めてきた「“1000人の声なき声”に耳を傾ける調査」の報告などを見ることができます。

● 自殺総合対策推進センター
http://jssc.ncnp.go.jp/index.php
厚生労働省の関係組織です。自殺対策基本法の理念と趣旨に基づき、学際的な観点から関係者が連携して自殺対策に取り組むためのエビデンスの提供や、民間団体を含めた地域の自殺対策を支援しています。

● 厚生労働省 自殺対策ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/index.html
国の自殺対策に関する取り組み、調査研究、統計資料などがまとめられています。


関連番組
2021年2月9日(火)放送
クローズアップ現代プラス「最愛の家族に何が? コロナ禍の心中」
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4514/index.html

<あわせて読みたい>
●最近公開された記事
・Topic13 命の支援 途切れさせないために オンライン討論/前編
・Topic14 命の支援 途切れさせないために オンライン討論/後編
・Topic12 軽症だったのに…30代以下の若者にも広がる“コロナ後遺症”

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#相談窓口
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2021年2月2日
命の支援 途切れさせないために オンライン討論/後編
新型コロナウイルスの感染拡大によって、居場所のない子どもたちや、生きづらさを抱える人たちへの支援が届きにくくなっています。2月2日放送のクローズアップ現代+「緊急事態宣言 命の支援を途切れさせないために」では、若年女性や生活困窮者、ひきこもりの人など様々な分野で支援活動をしているNPOや専門家たちがオンラインで集まり、いま必要な対策について意見を交わしました。(前編の記事はこちら)
議論からは「行政の窓口が分野ごとに縦割りで、必要な支援が届きづらい原因のひとつになっている」といった構造的な問題も見えてきました。 苦しむ人たちを支援するために、行政や社会がどのように体制を整えていけばいいのでしょうか。<クローズアップ現代プラス 取材班>


「悩みを抱えている方へ」相談先はこちら  ※厚生労働省HPへ(NHKサイトを離れます)



(左上:橘ジュンさん 左下:鈴木和樹さん 右上:勝部麗子さん 右下:戒能民江さん)

橘ジュンさん
若年女性支援を行うNPO法人「BONDプロジェクト」代表
戒能民江さん
お茶の水女子大学名誉教授
国の「婦人保護事業等の課題に関する検討会」で座長を務めた
鈴木和樹さん
生活困窮者の自立支援活動を行うNPO法人「POPOLO」事務局長
勝部麗子さん
豊中市社会福祉協議会・福祉推進室長
「断らない福祉」を理念に子どもから高齢者まで支援を行ってきた
制度のはざまで苦しむ女性たち
BONDプロジェクト 橘ジュンさん
社会全体で困っている女の子たちを支える仕組みが、どうやったらできるようになるんでしょうか?

POPOLO 鈴木和樹さん
まず、制度が整っていないですよね。

BONDプロジェクト 橘ジュンさん
ないですよね。全部、制度のはざまにこぼれ落ちている女の子たちなので、いろんなところから。

お茶の水女子大学 戒能民江さん
女性支援は、本来だったら支援までたどりついた女性たちを行政が断らない、しかも全国どこでも行われていなければならないのです。

しかし、相談する場所がどこにあるかもわからない。各都道府県と一部の市区町村には、相談に応じてくれる婦人相談員がいますが、全国で1500人余りしかいません。しかも大都市圏に集中しています。

また若年女性は、親権者の保護のもとにあるかどうかということで、児童相談所と婦人相談所のどちらの管轄なのかという問題が出てきます。行き場がないのが若年女性です。しかしコロナ禍の今、若年女性に対する暴力や性被害などが横行しています。さらに、いろんな問題も同時に抱えていて、いろんな人が、いろんな手を差し出し、支援を一緒にやっていかないとだめなんだということを典型的に示しているのも若年女性ではないかと思います。

始まった「断らない相談支援」
豊中市社会福祉協議会 勝部麗子さん
縦割りによって支援の窓口がないということで、「うちではないですね」と断られ、支援の輪から外れてしまう人たちがいたと思うんです。やっと、制度のはざまの問題をみんなが考え始めた状況で、この4月から国は、断らない相談支援体制を作ることになりました。

今年4月に施行される改正社会福祉法。国は、市町村が制度・分野ごとの縦割りを越えて、どんな相談も最初の窓口で丸ごと受け止める、包括的な支援を行う体制を整えようとしています。
この国の事業に先駆け、神奈川県座間市では、「断らない相談支援」の窓口を設け、家賃の滞納から暴力、子育て、介護など、あらゆる相談に対応する体制を整えました。市だけでは対応できない課題は、NPOや民間企業と連携しており、今では連携先は100を超えています。


(仕事を失った外国人男性に対し、座間市の担当者と民間企業やNPOが一緒に対応)

豊中市社会福祉協議会 勝部麗子さん
高齢者の問題を聞いていても、その背景には、経済的なこともあれば家族の問題、いろんな課題がある人たちがいます。また、DVを受けた女性の問題の背後には、実は子どもがリストカットしているなどの状況があるかもしれません。そういう風に考え始めていかないと、いつまでたっても自分のところの問題だけしか見ないという考え方ではだめですよ、というのがこの制度です。

今までは、制度に当てはまるか、当てはまらないかというのが福祉だったのですが、制度にぴったり当てはまる人たちばかりではないのです。確かに、「あなたは制度に当てはまらないですよ」と言うことは正しいことかもしれないですが、そこには優しさがないのです。それでは人は救えません。
そうではなくて、制度からこぼれ落ちる人たちを見つけ、その人たちを助けられる仕組みを新しく作っていくということが求められるのです。そして、それぞれのところでつながった人の手を絶対に離さない、そういう人たちと伴走する体制をいかに作っていくかが大事です。

本当に待ったなしの人たちがたくさんいるというこの機に、行政と民間がもうちょっとスクラムをしっかり組めるように大きく転換してほしいというのが願いですし、今、その最高のチャンスにしたいなと思っています。

「助けて」という声を受け止められる社会に


POPOLO 鈴木和樹さん
仕組みを作ることには僕も大賛成で、BONDの橘さんも外に出るし、アウトリーチするし、僕だって路上生活の人を見て回るし、そういったところは民間のほうが速いので、行政にはそういう動きを見たら反応していただけるといいのかなというところは感じます。

一つの団体だけでやろうとすると耐えきれなくなるので、行政とNPO、NPO同士が、地域を越えてつながる意識を持たなきゃいけないと思います。立場を越えて、困っている方をどう応援していくか、そのために、お互いのノウハウや支援の考え方を受け入れていくのが必要だと感じています。「助けて」という社会をどう作っていくか、考えていきたいと思います。

BONDプロジェクト 橘ジュンさん
支援者同士でいろいろ情報共有したり、悩みを話すという時間がとれないのも現場の状況だったりするのですが、これからそうした時間を増やしていきながら、社会資源を持っている方たちとつながって、支援できればいいのかなと思いました。

豊中市社会福祉協議会 勝部麗子さん
今回コロナでわかったことは、誰もが困難に陥る可能性があるということだと思うんです。女性だけでなく、困ったら、誰でも助けてもらえる、そして助けよう、助け合おうという体制を作ること。目の前の困っている人は、明日の自分かもしれないという意識を持つことが大事かなと思っています。 そして私としては、せっかく悩みを打ち明けてくれたとき、その人の思いをまずはしっかり受け止める、「正しさではなく優しさ」を追求していきたいと思います。

お茶の水女子大学 戒能民江さん
どんな人でも支援することにしていかなければ、命をみずから絶ってしまう人がなくならないという状況を正確に認識しなければいけません。そのなかで使命感をもって活動している民間団体の存在を、行政も市民もきちんと捉えて、もっと民間団体が活動しやすいように、担い手を確保するとか財政上の問題とか、社会がもっとバックアップしていく。そして何より他人ごとと思わないということです。誰かが、奇特な人がやっているということでは全然なくて、自分がその社会の一員だということを、深く考えなければいけません。

(収録:2021年1月27日)

<オンライン討論に参加した皆さんの活動はこちら> ※NHKサイトを離れます
■NPO法人BONDプロジェクト
■NPO法人POPOLO
■豊中市社会福祉協議会

<あわせて読みたい>
●若い世代に特に関係すること
・Topic09 新型コロナד若い世代” 100人の本音
・Topic08 コロナ禍で広がる“パパ活”の実態
・Topic01 コロナ禍 “夜の世界”に向かう学生たち
●解決策を考える
・Topic02 生活苦など 女性の悩みを相談できる窓口

・Topic06 ひとり親家庭を「無料の弁当」で支えたい


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#新型コロナウイルス#女性
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2021年2月1日
命の支援 途切れさせないために オンライン討論/前編
コロナ禍のいま、女性の自殺が深刻化しています。ここ10年ほど減少傾向にあった自殺者数。去年は、男性が減少している一方、女性は増えています。中でも増加率が高いのが10代~20代で、去年1月から11月までの自殺者数は前の年の1.3倍となっています。 一体何が起きているのか。支援団体を取材すると、新型コロナの感染拡大、さらには緊急事態宣言下で支援が行き届きにくくなり、女性たちがますます孤立を深めている実態が明らかになってきました。

「悩みを抱えている方へ」相談先はこちら  ※厚生労働省HPへ(NHKサイトを離れます)

2月2日(火)のクローズアップ現代+(NHK総合・夜10時~)では、「緊急事態宣言 命の支援を途切れさせないために」とし、私たちの社会に何が求められているのか、徹底的に考えます。
番組では、若年女性の支援に加え、生活困窮者やひきこもりなど、様々な分野の最前線で活動する専門家とともに、オンライン討論を行いました。活動する分野や地域を超えた連携、行政の役割、行政と民間の協働など、議論の様子を、放送には入りきらなかった内容も含め、2回に分けて公開します。まずは前編です。

(クローズアップ現代+取材班)

緊急事態宣言下 活動が制限される支援の現場

(右上:橘ジュンさん 右下:鈴木和樹さん 左下:勝部麗子さん 左上:戒能民江さん)

議論に参加したのは、若年女性支援を行うNPO法人BONDプロジェクト代表・橘ジュンさん、国の「婦人保護事業等の課題に関する検討会」で座長を務めたお茶の水女子大学名誉教授・戒能民江さん、生活困窮者の自立支援活動を行うNPO法人POPOLOの事務局長・鈴木和樹さん、「断らない福祉」を理念に子どもから高齢者まで支援を行ってきた豊中市社会福祉協議会の福祉推進室長・勝部麗子さんです。

NPO法人BONDプロジェクト 橘ジュンさん
私たちは東京を拠点に、10代20代の生きづらさを抱えている女の子たちの支援をしているのですが、今回、コロナ禍で全国から相談は来ているものの、直接女の子に会いに行って支援者さんにつなぐことができない状況になっていて、とても大変です。東京から私たちが動いて、そこの場所に行くのはやはりリスクが高いと思いますし、「あなたたち東京の人に会ったら、私たちが2週間自宅待機しないといけないから会えない」って言われたこともあります。対面のほうがいろんなことが分かるんです。雰囲気、においでお風呂に入っていないとか、車中泊の子だったらそういうことも分かるので、悩ましいです。


NPO法人POPOLO 鈴木和樹さん
職員自身が今まで夜回りをしていましたが、私たちもこれまでやってきたアウトリーチの部分がかなり制限されてきています。一方で、コロナ禍で相談件数が圧倒的に多くなっています。そうすると、今までは専門領域の「スーパーマン」と言われるような人たちが自分たちだけで何とかしてきたわけですが、そこには限界があるなと感じています。

若年女性支援 横の連携をどう作っていくか
橘さんや鈴木さんは、自分たちが直接支援できない県外の相談者に対し、その地域の支援団体につなぐことで支援を行えないか、模索を始めています。そのなかで課題も見えてきました。

NPO法人BONDプロジェクト 橘ジュンさん
支援者同士が連携・情報共有するのは難しいというのが実感としてあります。顔見知りで、何度もそういう女の子のことをお願いしているような信頼関係を作れている方には、「すみません、今回もいろいろとご迷惑をかけるかもしれないのですが女の子のことで付き合ってください」とお願いできるのですが、名刺を交換したぐらいの方には、私たちの現場の状況や、あるいはもっと話さないと実態がつかめない子のことは、なかなか伝えられません。容易にいろんな人につなぐことが怖くなっちゃって、自分たちが知っている人しか頼れない状況がずっと続いているのが現実なんですね。

実は、NPO自体も縦割りで活動していることが多いのが実情です。女性支援といっても、生活困窮や虐待、DV、就労、障害など支援内容は多岐にわたりますが、それぞれの分野ごとに法律や行政の支援体制、予算が決められています。NPOもそれぞれの分野ごとで支援を行っており、違う分野のNPOとはつながりが薄いことが多いと言います。

どうしたらNPO同士、連携をとりながら支援を行っていけるのか。すでに連携を始めている鈴木さんは、大事なポイントがあると指摘しました。

NPO法人POPOLO 鈴木和樹さん
一つ目に、団体それぞれの理念の違いですね。相手の団体から相談者を受け入れたとき、その方がすでに受けている支援で前向きになっているのであれば、私たちと方針が違っていても、相手の団体の方針に私たちは従う。だんだんと、私たちのほうに心を許してくれるようになったときに私たちの活動方針の中で支援をしていくのがいいかなと思ってやっていますが、自分たちの普段の方法と勝手が違うので、非常に戸惑うところとか、これで本当にいいんだろうかという葛藤はあります。でも前向きに考えると、自分たちのやり方に固執していたなかで、「ああ、こんなやり方もあるんだ」という発見にもなりますので、非常にいい機会かなと思っています。

二つ目の連携の難しさは、相手の団体とお話しするとき、相談ケースを共有する上でどうしても本人の同意が必要になるので、最初の段階は情報が小出しになるんですね。私たちに言っていることと、その団体に言っていることが違う可能性が一般的にありますので、そこの整合性をとるために、話すにも守秘義務の問題があるので、本人の許可を取らなければ共有もできないので、本人の同意を毎回取っているんです。そこの部分でわずらわしさと、大変さ、難しいなと思っています。本人からすれば、この団体には言ったけど、この団体には言いたくないというのもあるでしょうし、そうすると僕らとしては、事実として知らないので、知らないで接してしまうというリスクもありますし、言っちゃいけない言葉を本人から聞いていないのに言ってしまうとか、そうした部分はあるかなと思います。

コロナ禍で今まで相談に来なかった若い女性の相談が増えたというのが、豊中市社会福祉協議会の勝部麗子さん。NPOに相談者をつなげていく上で大切にしていることがあると言います。

豊中市社会福祉協議会 勝部麗子さん
これまで社会福祉協議会の存在を知らなかっただろうなと思うような人たちなどが1万人以上相談に来られていて、そういう方たちのなかには、これまでなかなか出会えなかった飲食店で働いている女性たちもいらっしゃるんです。しかし、女性相談の窓口やNPOにつなぎたいから「住民票は?」という話から入ると、「もういいわ、そんな、深く調べるなら、やめておくわ」とか、「ややこしいんだったらやめておくわ、もういいわ」ってよく言うんです。何が「もういいわ」っていう話なのかいろいろ考えたときに、難しいことを考えながら関わると「どうでもいいや」みたいな話になってしまうので、私たちは、まずは食料の支援、居住の支援ができるような、今日からすぐ泊まれるところを持っているとか、そういうNPOの方たちにつなげていっているんです。私たちも、そういうNPOとぜひ連携してしっかりサポートしていける、そういうネットワークを築きたいと思います。
行政の制度 いかに機能させるか

(オンライン討論の様子)

一方、行政は各都道府県の婦人相談所と、一部の市区町村が窓口となって相談を受け付けています。DV被害などで保護が必要な場合、婦人保護施設と呼ばれる公的シェルターに入所することになります。橘さんたちNPOは、アウトリーチによって保護した女性を公的シェルターにつないでいますが、戒能さんはここにも課題があると指摘します。

お茶の水女子大学 戒能民江さん
若年女性は暴力の問題もそうですし、いまコロナ禍で援助交際なども広がっているんじゃないでしょうか。そういうときに、本当にそこに行くまでに一生懸命止めているのが、橘さんたち民間の支援団体です。でも、それをみんな丸投げしちゃっていていいんだろうかということを本当に強く感じます。 NPOがキャッチアップして、保護して安全を守っているけれども、支援はそれでは終わらないわけです。その次があるわけです。そこが一番、NPOの方は苦労していて、次がないんですよね。だけども、中長期的に女性を支援するための婦人保護施設が、ほぼすべての都道府県にあります。じっくり時間をかけて被害から回復し、次のステップをどうしていこうかということを、一緒に支援しながら考えていける施設があるんですが、そこが利用されていません。ハードルが高すぎるんですね。

戒能さんが指摘するハードルの高さ。婦人保護施設に入所する場合、「携帯やスマホが使えない」「自由に外出できない」「仕事や学校に行けない」など、厳格なルールを設けている施設が少なくありません。そのため、婦人保護施設に入所することを拒否する人が多いと指摘されており、婦人保護施設は定員の2割程度しか埋まっていないのが実情です。

お茶の水女子大学 戒能民江さん
こういうコロナ禍でニーズも高まり、そうせざるを得ない状況をこの社会は示しているわけですから、婦人保護施設の運用を柔軟にしていくことも、新しい仕組みや制度を議論する一つ前の段階として、できることの一つではないかと痛感しています。


議論の後半では、制度の狭間に置かれた若い女性を支援するために、行政、そして社会がどのように体制を整えていけばいいのかについて話し合いました。オンライン討論後編は、あす2日(火)にこのページで公開します。

(収録:2021年1月27日)

後編につづく↓
命の支援 途切れさせないために オンライン討論/後編

<オンライン討論に参加した皆さんの活動はこちら> ※NHKサイトを離れます
■NPO法人BONDプロジェクト
■NPO法人POPOLO
■豊中市社会福祉協議会

<あわせて読みたい>
●若い世代に特に関係すること
・Topic09 新型コロナד若い世代” 100人の本音
・Topic08 コロナ禍で広がる“パパ活”の実態
・Topic01 コロナ禍 “夜の世界”に向かう学生たち
●解決策を考える
・Topic02 生活苦など 女性の悩みを相談できる窓口

・Topic06 ひとり親家庭を「無料の弁当」で支えたい


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#新型コロナウイルス#女性
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2021年1月29日
軽症だったのに…30代以下の若者にも広がる“コロナ後遺症”

緊急事態宣言が出された1月、東京都の新型コロナ感染者の半数以上を占めているのが10代から30代の若い世代です。「高齢者に比べて重症化する割合が低い」とも言われる若い世代ですが、感染後に思わぬ症状に悩まされている人たちがいます。
東京・渋谷区にある診療所には、コロナの“後遺症”とされる、けん怠感・息苦しさ・味覚障害などの症状に悩む若い患者の受診が相次いでいます。
取材を進めると、後遺症が長期にわたり、生活に大きな影響を受ける人の存在が浮かび上がってきました。

(首都圏情報ネタドリ!取材班)

発症3か月後に襲った“脱毛”の後遺症


去年9月に新型コロナに感染した関東地方に住む20代の女性です。職場で集団感染が発生し、みずからも感染。無症状のまま自宅で静養し、回復しました。その後も普段通りの生活を送っていましたが、感染から3か月経った頃、突然の脱毛症状に襲われました。



20代の女性
「毎日、排水溝の髪の毛を取らないと詰まっちゃうぐらいなので、もう衝撃でした。なにこれ?って」

多いときには30本以上抜けることもあり、周囲からも抜け毛を指摘されるようになりました。悩んだ末、生まれて初めて育毛剤を購入しました。

20代の女性
「育毛剤を買うっていうのも、この年齢で抵抗があったけれども。いつまで続くんだろうというのと、治るのかな?っていう不安は残ります」

後遺症が原因で「うつ」に 休職に追い込まれた20代男性


後遺症によって、仕事に大きな影響が出たという20代の男性もいます。去年4月から新入社員として都内の人材派遣会社で働き始めましたが、7月に新型コロナに感染しました。回復後は職場に復帰したものの、けん怠感息苦しさなどの後遺症に悩まされるようになります。始めたばかりの仕事を頑張りたいと、上司と相談してテレワークと出勤を組み合わせながら仕事を続けましたが、徐々に体が耐えられなくなっていきました。

(後遺症について上司とやりとりしたメール)

20代男性
「メール1件を送ったらちょっと休憩とか、仕事を1時間すると結構きつくなっちゃって体が言うことをきいてくれない。気持ちはあるけれども体がついていかない」

いつになったら思い切り仕事ができるようになるのか?先の見えない不安に襲われるようになり、満足に睡眠が取れない日々が続くようになりました。
11月に心療内科を受診し、うつ状態であると診断を受け、ドクターストップ。休職を余儀なくされました。

(心療内科の診断書)

20代男性
「実際に自分がうつになるなんて思ってもいなかったのでびっくりというか、ショックというか。申し訳ない気持ちでいっぱいでしたね。会社に対してもそうですし」

これまでの生活が一変してしまったというこの男性。同世代の若者に新型コロナの怖さを知ってほしいといいます。



20代男性
「先の見えない迷路みたいな感じでコロナになってしまうとすごい人生が狂ってしまいますし、予定していたことがすべて壊れちゃうので、できるだけ外に行く機会を控えてコロナにならないようにしてほしいなと強く思います」

患者の約半数が若い世代 コロナ後遺症クリニック

新型コロナの後遺症とみられる症状の診断を行っている東京・渋谷区にある診療所です。 いま、回復した後も長期間続く症状に悩まされ診察に訪れる若い人があとを絶ちません。

院長の平畑光一医師がこれまでに診てきた患者は700人以上。新型コロナから回復した後もけん怠感や息苦しさ、脱毛や味覚症状を訴える人が相次いでいるといいます。
詳しく分析した475人のうち約半数が10代から30代の若い世代でした。



平畑 光一医師
「あんまり特別なことではなくて、実は多くの方が後遺症にかかっています。コロナそのものよりも後遺症のほうが若者は気をつけないといけないと思います。怖いことが起きているなというのが僕の実感としてあります」

関連番組
2021年1月15日(金)放送
首都圏情報 ネタドリ!「「感染拡大が止まらない “若い世代”に何が?」」
https://www.nhk.jp/p/netadori/ts/QL8GZ2L5VX/episode/te/6XJ4Q193WW/

<あわせて読みたい>
●若い世代に特に関係すること
・Topic09 新型コロナד若い世代” 100人の本音
・Topic08 コロナ禍で広がる“パパ活”の実態
・Topic01 コロナ禍 “夜の世界”に向かう学生たち
●ひとり親家庭の実態を知る
・Topic07 子どもに「普通の生活をさせてあげたいのに」
●女性の危機をデータで知る
・Topic04 NHKスペシャル「コロナ危機 女性にいま何が」データ集
・Topic03 コロナ禍 女性の雇用危機
●解決策を考える
・Topic02 生活苦など 女性の悩みを相談できる窓口

・Topic06 ひとり親家庭を「無料の弁当」で支えたい


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#新型コロナウイルス#若者#後遺症
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2021年1月27日
職業訓練の情報まとめ&生活に関する支援・相談窓口一覧

職業訓練(ハロートレーニング)についての情報サイト

再就職に必要な職業スキルを無料で学ぶことができる、「職業訓練(ハロートレーニング)」についての情報をまとめたサイトをご紹介します。
<国が設置する情報サイト>
※各相談窓口のリンクをクリックすると、NHKサイトから離れます。
厚生労働省「ハロートレーニング 特設サイト」
https://www.mhlw.go.jp/hellotraining/
ハロートレーニング(公的職業訓練の愛称)の制度全体について解説したサイトです。ハロートレーニングには、番組で紹介したもの以外に、在職者や障害者の方を対象にした制度などもあります。

厚生労働省 ハローワークインターネットサービス
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/index.html
「仕事をお探しの方」>「ハロートレーニングコース情報検索」をクリックしてください。ハロートレーニングの訓練コースが検索できます。

厚生労働省 「ハロートレーニングQ&A」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/0000169449.pdf
ハロートレーニングについて、よくある質問をまとめてあります。

政府インターネットTV「ハロートレーニング(動画)」
https://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg14993.html?c=23
2017年公開のハロートレーニングについての動画です。

厚生労働省 「求職者支援訓練Q&A」
https://www.mhlw.go.jp/content/000660358.pdf
ハロートレーニングのなかで、雇用保険(失業保険)を受給できない求職者を主な対象とする「求職者支援訓練」について、よくある質問をまとめてあります。雇用保険を受給している求職者を主な対象とする「公共職業訓練」の訓練コースを、雇用保険を受給できない求職者が受講できる場合もあります。条件など詳細については、ハローワークにご相談ください。

厚生労働省「ハローワークの所在案内」
https://www.mhlw.go.jp/kyujin/hwmap.html
ハロートレーニングについて相談できる、お近くのハローワークが検索できます。

悩みを相談できる窓口

「生活が苦しい」「支援制度が知りたい」・・・など、悩みを相談できる窓口を、国やNPOなどが設置しています。その他、助けになる情報をまとめたサイトや、主な相談窓口をご紹介します。
<国が設置する情報サイト>
※各相談窓口のリンクをクリックすると、NHKサイトから離れます。
厚生労働省「まもろうよ こころ」
https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/
厚生労働省が運営するホームページです。SNSでの相談サイト、電話での相談窓口がまとめてあります。
<NPOなどの支援団体>
※各相談窓口のリンクをクリックすると、NHKサイトから離れます。
全国労働組合総連合
TEL:0120-378-060
http://www.zenroren.gr.jp/jp/
新型コロナウイルスに関連した労働相談に取り組んでいる団体です。電話やメールで相談ができます。

POSSE
TEL:03-6699-9359
http://www.npoposse.jp/
主に若者の「働くこと」に関する様々な問題に取り組むNPOです。電話やメールで労働相談ができます。

新型コロナ災害緊急アクション
https://corona-kinkyu-action.com/
新型コロナ感染拡大により影響を受け、生活が困窮した人などに対して支援を行っている団体のネットワークです。フォームによる相談受付があるほか、大人食堂や生活相談会の情報が随時更新されています。また、相談・支援を行っている団体や公的支援の情報が得られる窓口へのリンクが張ってあります。

よりそいホットライン
TEL:0120-279-338
https://www.since2011.net/yorisoi/
誰でも利用できる、悩み相談窓口です。どんなひとの悩みにもよりそって、一緒に解決する方法を探してくれます。
<NHKの支援まとめサイト>
NHK 新型コロナ特設サイト「緊急事態宣言 暮らしはどうなる」
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/emergency_2021/living_index.html
NHKが運営するサイトです。新型コロナウイルスに関連した疑問や不安に応えるさまざまな情報を掲載しています。

NHK福祉情報総合サイト ハートネット 新型コロナウイルスに関する相談窓口・支援団体
https://www.nhk.or.jp/heart-net/topics/25/
NHKの番組「ハートネットTV」が運営するサイトです。ホーム画面の中盤に、テーマ別に情報がまとめてあります。ご自身の悩みに近いテーマのアイコンを、クリックしてください。

関連番組
2021年1月27日(水)放送
クローズアップ現代プラス「“コロナ失業” 職業訓練は雇用を救えるか?」
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4509/index.html

<あわせて読みたい>
●「休業手当」に関する記事を読む
・Topic10 パート従業員のストライキ
・Topic05 “休業手当ゼロ”あなたはどうする?
●コロナと若い世代について考える
・Topic09 新型コロナד若い世代” 100人の本音
・Topic08 コロナ禍で広がる“パパ活”の実態
・Topic01 コロナ禍 “夜の世界”に向かう学生たち
●ひとり親家庭の実態を知る
・Topic07 子どもに「普通の生活をさせてあげたいのに」
●女性の危機をデータで知る
・Topic04 NHKスペシャル「コロナ危機 女性にいま何が」データ集
・Topic03 コロナ禍 女性の雇用危機
●解決策を考える
・Topic02 生活苦など 女性の悩みを相談できる窓口

・Topic06 ひとり親家庭を「無料の弁当」で支えたい


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#新型コロナウイルス#職業訓練#相談窓口
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2021年1月26日
パート従業員のストライキ

「これまでも不公平だな、おかしいなと思うことはありましたが飲み込んで、店のために働いていきました。それなのに…」
去年4月、新型コロナの感染拡大に伴って店が休業するとパート従業員の彼女には「休業手当」がほとんど支払われませんでした社員には全額支払われていたといいます。
「社員はうちに生活の基盤があるから守らないといけない」
会社からそう説明された時、彼女の中の何かが変わりました。
「おかしいことはおかしいと言おう」
労働組合に加入して2回に渡ってストライキを決行。今も全国の同じような思いをしている女性たちとつながり、声をあげ続けています。

(社会部 記者 松田 伸子)

コロナ前から抱えていたモヤモヤ


首都圏のベッドタウンに住む主婦のあきさん(35歳・仮名)
大手外食チェーンのカフェで2年前からパート従業員として働いています。
職場は店長以外の全員がパートとアルバイトです。商品の管理や発注からクレーム対応まであきさんのような比較的、長く働いているパートがこなしています。
店長が休みの日には実質的な店長を任されることもありますが時給は1,120円。ほかのアルバイト時給1,100円とほぼ同じです。

あきさん(仮名)(35歳)
「シフトに入るパートの数はコロナの影響が出る前から人件費削減のために減らされていました。休憩すら取れないくらい忙しいし、残業することもありました。正社員の店長とほぼ同じ仕事をしているのにおかしいなとは思っていましたが、仕事が好きだったし、店長に嫌われたらシフトに入れなくなるので言えませんでした」

欠かせない生活費が・・・


新型コロナの感染拡大で初めて緊急事態宣言が出された去年4月。店は休業し3日しかパートに入ることができませんでした。それまでは週4日働いて月に10万円の収入があったあきさん。店からは6割が補償される可能性があると聞いていましたが、4月の給与明細をみてみると休業手当として補償されたのはわずか1万5,000円あまり。働いた日の時給と合わせて給与は3万円しかありませんでした。

夫が単身赴任のため、あきさんは未就学の子ども2人の面倒をみながら働いています。家計はぎりぎりでパートの収入は欠かせない生活費でした。

あきさん(仮名)(35歳)
「どう考えても少なすぎると思いました。店長に聞いても詳しい説明はしてもらえず、なんとか補償してもらえないかと考えるようになりました」

休業手当「5月は0です」募る不信感

この時、店は5月いっぱい休業することが決まっていました。
5月の給与は?休業手当はどうなるの?

それまでは店長の顔色をうかがって聞く勇気がありませんでしたが、背に腹は代えられないと思い切って聞くことに。携帯電話には店長とのショートメッセージのやりとりが残されています。



あきさんが「5月分の補償はゼロになりますか?」と聞くと、店長は「5月はゼロです」と返信してきました。その一文だけでほかに説明はなかったそうです。この時は「有給(休暇)を全部使いたいです。よろしくお願いします」と返して収入を確保するのが精一杯でした。

しかし時がたつにつれ会社に対する不信感が増していきました。なぜ休業の補償がされないのか。理由をきちんと説明してほしい。

労働組合に加入 会社との団体交渉へ

それまで業務に関する問い合わせは店長にする以外に方法がありませんでした。知る人もいない本社にパートの自分が説明を求めてもきっと相手にされないだろう。そう考えたあきさんは去年6月、パートと学生アルバイトの4人で個人加入できる労働組合に入り、休業手当の支払いを求めて会社と交渉することにしたのです。

あきさん(仮名)(35歳)
「辞めさせられたりシフトを減らされたりするかもしれない。そもそも会社にたてついていいのか。いろんな気持ちがありましたが、それしか声をあげる手段が考えられなかったんです」

労働組合に加入 会社との団体交渉へ


初めて臨んだ団体交渉。そこで実は休業手当が正社員には全額支払われていたことを知りました。あきさんが働く大手外食チェーンは正社員が約600人、パートやアルバイトが約7,800人。なぜ店を共に支える私たちにはほとんど支払われないのか。疑問をぶつけると会社はこう答えました。

会社
「社員はうち(会社)に生活の基盤があるから守る必要がある」

会社は「そもそも支払いの義務は無い」とも主張しました。法律では休業手当について「会社の都合で」従業員を休ませた場合に支払わなければならないと規定されています。しかし今回の休業は、緊急事態宣言によって店が入る商業施設が閉まったからで会社の都合ではないというのです。国は支払い義務の有無にかかわらず雇用調整助成金を活用して支払うよう促していますが、その考えもないようでした。

あきさん(仮名)(35歳)
「店の中心となって働いてきたという自負がありました。それなのに私たちのことをなんだと思っているのか、結局は使い捨てなのか。悲しくて悔しくて涙が出ました」

ストライキに出るも…


去年9月3日。あきさんはパート仲間と2人で東京・霞が関にある厚生労働省の記者会見室にいました。休業手当の支払いを求めてストライキをする。その発表のためです。

あきさん(仮名)(35歳)
「まさか自分がストライキや、記者会見をするなんて想像もできませんでした。でも会社がこのまま逃げるのは許せない。私たちの決意をわかってもらいたい。おかしいことはおかしいと言おうと、コロナ禍で思うようになったんです」

本社に通告してこの日からストライキが始まりました。シフトはストライキとは関係なく組まれていましたが、出勤しませんでした。すると店長から電話がかかってきました。

店長
「きょうはお休みですか?」

会社はストライキが行われていることを店の誰にも知らせていなかったのです。ストの期間、あきさんたち2人は欠員扱いとなり店は通常通り営業しました。結局会社の対応は変わらないまま、ストライキはあっけなく終わりました。

あきらめから「もう一度」


一緒にストライキをしたパート仲間は、これ以上嫌な思いをしたくないと店を辞めていきました。あきさんも年内いっぱいでパートを辞める決意をし、労働組合にも伝えました。

交渉をしている間に国は休業支援金という新たな制度をつくり、休業手当が支払われない労働者に支給を始めていました。しかし対象となるのは中小企業に雇用されている人で、大企業で働くあきさんはこれも活用できませんでした。そうして失意の中で働いていた時、1本の電話がかかってきました。

パート従業員の女性
「団体交渉はその後どうなっていますか?私にはできないけれど応援しているので頑張ってください」

状況は何も変わってはいないけれど、やってよかったと思えたそうです。

あきさんは昨年末、今度はたった一人で2回目のストライキを行いました。そして正社員と非正規社員の待遇の違いが法律に違反しているとして、労働委員会に調停の申し立てをしています。会社はNHKの取材に対し「弁護士に任せているのでコメントできない」としています
声をあげることは後ろめたいことではない


あきさん(仮名)(35歳)
「理想論かもしれませんが、雇う側と雇われる側は対等であるべきです。声をあげることは悪いことでも後ろめたいことでもない。全国にいる非正規雇用の人たちの中にはおかしいと思いながらも、いろんな事情で声をあげられない人がたくさんいる。私が声をあげ続ければ、1人でも2人でも一緒に行動してくれる人が出てくるかもしれない」。

活動がきっかけとなって非正規雇用で働く全国の子育て中の女性たちとつながりができたというあきさん。厚生労働省や国会議員に直接窮状を訴える活動も始めました。これからもパートとして働きながら声をあげ続けていくつもりだそうです。

今月、再び緊急事態宣言が各地に出され、飲食店などでは休業を余儀なくされる労働者が相次いでいます。

<あわせて読みたい>
●「休業手当」に関する記事を読む
・Topic05 “休業手当ゼロ”あなたはどうする?
●コロナによる厳しい実態を知る
・Topic07 子どもに「普通の生活をさせてあげたいのに」
・Topic08 コロナ禍で広がる“パパ活”の実態
●女性の危機をデータで知る
・Topic04 NHKスペシャル「コロナ危機 女性にいま何が」データ集
・Topic03 コロナ禍 女性の雇用危機
●解決策を考える
・Topic02 生活苦など 女性の悩みを相談できる窓口

・Topic06 ひとり親家庭を「無料の弁当」で支えたい


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#新型コロナウイルス#女性
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2021年1月25日
新型コロナד若い世代” 100人の本音とは
(首都圏情報ネタドリ!「感染拡大が止まらない “若い世代”に何が?」 データ集)

2021年1月15日に放送の首都圏情報ネタドリ!
では、新型コロナウイルスの感染者の半数以上を占める(東京都)30代以下の“若い世代”に注目しました。感染拡大が止まらない中、若い世代は新型コロナに対して、どのような意識を持っているのか。
番組ディレクターが、30代以下の100人に話を聞き、若い世代の本音や行動を調べてきました。番組で取り上げたデータやグラフをまとめてご紹介します。

(首都圏情報ネタドリ!取材班)

東京都の感染者の半数以上が、30代以下の“若い世代”


政府は1月7日、新規感染者の増加に歯止めがかからない東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県を対象に、新型コロナウイルス対策で2回目となる「緊急事態宣言」を出しました。その後、1週間の都内の感染者を年代別に見ると、30代以下が56%と半数以上を占めており、この傾向は去年9月から続いています
そもそも若い世代は新型コロナに対し、どれほどの危機意識を持っているのでしょうか。
100人中60人が「前回の緊急事態宣言時よりもコロナが怖くない」


私たちは、渋谷、池袋、吉祥寺、秋葉原の都内4か所で、外出している30代以下の男女100人を対象に、感染対策を徹底の上、聞き取り調査を行いました。

まず聞いたのは、「新型コロナへの意識」についてです。
感染をどれくらい恐れているか「怖い」「怖くない」「どちらでもない」の3択から選んでもらったところ、「怖い」と答えた人が48人と最も多く、約半数にのぼりました。

しかし、去年出された1回目の緊急事態宣言のときと比較すると、100人中60人「前回の緊急事態宣言の時よりもコロナが怖くない」と回答しています。

その理由として、専門学校に通う20代男性は「若い人は重症化しづらい。前よりもコロナのことが分かってきたから大丈夫な気がする」、会社員の20代女性は「前回は会社でテレワークの指示が出たが、今は普段通り働いている。職場内でも危機感が薄れている」と話していました。

100人中82人が「会食をした」


続いて、政府の分科会でも感染対策の急所と指摘されている「会食」についてです。
ここ1か月で「家族以外の人と外で食事をしたかどうか」を聞いたところ、82人が「会食した」と回答しました。

これについて、大学生の20代女性は「週3回から4回のペースで友達と食事をしている。特に年末年始は、普段なかなか会えない友達と飲み会をするなど、会食の回数が増えた」、会社員の30代男性は「飲み会には行っていないが、職場のメンバーで頻繁にランチをしている」と話していました。

一方、「一度も会食していない」と回答したのは、18人でした。
会社員の20代男性は「会社の忘年会も行っていない。食事は、自炊やテイクアウトで済ませている」、大学生の20代男性は「大学の集まりも全てキャンセルとなった」と話していました。

1か月の会食回数 平均「6.3回」


次に、「会食をした」と答えた人に、この1か月の会食の回数を聞いたところ、最も多かったのは「10回以上」と答えた人で、19人にのぼりました。中には「50回以上」と話す人もいました。

この結果を平均すると、会食をした人は、1か月で「約6.3回」していたことになります。

さらに、会食時は「最大何人で集まっていたのか」を聞き、回答結果を平均すると「4.8人」となりました。GoToイートの時に呼び掛けられていた「4人以下」と答えた人は、56人でした。

若い世代が最も不安を感じている場所は「職場・学校」


最後の質問は「もしあなたが感染していたら、原因は何だと思いますか?」です。若い世代が、感染のリスクを最も感じている場所を聞いてみました。

最も多かったのは、通勤・通学を含めた「職場・学校」で、59人でした。
その理由として、スポーツジムに勤務する20代男性は「色々な人と関わらざるを得ないし、テレワークもできない」、大学生の20代男性は「通学のため、ほぼ毎日満員電車に乗っている。マスクをしていない人もいてリスクを感じる」、キャバクラ店に勤務する20代女性は「マスクをせずにお客さんと対面する仕事。年末年始は忙しかった」と話していました。

一方で、「会食」と答えた人は、12人。カラオケやパチンコなど「遊び」と答えた人も同じく12人という結果となりました。



これについて、日本感染症学会理事長・舘田一博さんは、番組内で以下のように話しました。

日本感染症学会理事長 舘田 一博さん
「これまでの解析で、子どもたちが学校の中で感染を広げるリスクは思ったより高くない、子どもたちは家に帰ってお父さんお母さんから感染を受けるケースが多いということが分かっています。また、職場の感染が、なんとなく危険だと思うかもしれませんが、仕事中はおそらくマスクをしながら、そして静かに仕事に集中しているから、職場や学校での感染のリスクというのはそれほど高くない。一方で、休み時間とかお昼のとき、あるいは終わったあとの飲み会のリスクが高い。すなわち、やっぱり大事なのは会食の場所というのが明らかになっています

30代以下、100人の聞き取り調査では、ほとんどの人が「コロナに感染するのが怖い」と感じていたものの、会食を重ねるなど「油断」や「慣れ」が生じている実態も垣間見えてきました。どうすれば若い世代の感染拡大を抑えることができるのか、今後も取材を続けていきます。

<あわせて読みたい>
●若者についての記事を読む
・Topic01 コロナ禍“夜の世界”に向かう学生たち
●コロナによる厳しい実態を知る
・Topic07 子どもに「普通の生活をさせてあげたいのに」
・Topic08 コロナ禍で広がる“パパ活”の実態
●女性の危機をデータで知る
・Topic04 NHKスペシャル「コロナ危機 女性にいま何が」データ集
・Topic03 コロナ禍 女性の雇用危機
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#若者#新型コロナウイルス
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2021年1月21日
コロナ禍で広がる“パパ活”の実態

コロナ禍で、経済的に困窮する女性たちが深刻な危機に陥っています。なかでも心配されるのが、いわゆる“パパ活”に足を踏み入れる女性たちです。男性と一緒に食事などをすることで、金を提供してもらうことをいいますが、トラブルの温床といわれ、違法な“個人売春”につながるケースも少なくありません。家族の暮らしを守るため「パパ活」という道を選んだ女性を取材しました。

(制作局 第2制作ユニット<社会> ディレクター 中島 聡)


2人の子を育てる母親が“パパ活”に


「パパ活」をしているという女性に話を聞くため、閑静な住宅街のとある駅で待ち合わせをしていました。現れたのは、2人の未就学児を育てているというまりこさん(仮名)(30代)です。
ベビーカーに男の子を乗せていました。子どもは歩くことを覚えたばかりという年ごろで、公園に立ち寄ると楽しそうに縦横無尽に歩き回り、まりこさんが追いかける様子は、ほほえましく、こちらも自然と笑みがこぼれてしまいます。
「下の子は目を離すとどこに行っちゃうかわからないので大変です」。取材の際に一緒だったのは下のお子さんで、上のお子さんは幼稚園に行っているとのことでした。

夫から生活費がもらえない ストレスで暴言も


まりこさんは専業主婦で自営業の夫と子どもたちの4人暮らし。「パパ活」というと、こちらの勝手な先入観で10代や20代がお小遣い稼ぎで行っているイメージを持っていたので、子を持つ母親ということに正直、驚きました。
コロナによって夫の収入が激減し、十分な生活費をもらえなくなったというまりこさん。夫に何度も相談しましたが、取り合ってもらえず、そればかりか日を重ねるごとに暴言が飛ぶようになったといいます。

まりこさん(仮名)(30代)
『主婦で収入がないのに偉そうなこと言うな』とか、『俺は外で頑張っているのに、何もしてないでずるい』とか言われます。主人に言っても(生活費を)もらえないので、家族の食費と、おむつとか、自分の貯金から出しています。収入の激減と主人からの暴言が増えたことで、もうほんとに精神的に壊れる寸前です。なるべく暴言を吐かれないように、毎日すごく気を使って生きている感じです」

誰にも相談できない 生活費を補うために“パパ活”


まりこさんの実家も経済的に余裕があるわけではなく、むしろ、金銭の援助を必要とするぐらいだといいます。周囲に相談できる相手もおらず、経済的にも精神的にも追い詰められる毎日。仕事を始めようにも、手がかかる未就学児を保育園に預けなければならず、保育料のことや働く時間が制限されることを考えると、簡単には見つけることができません。そんなとき、生活費を補うために始めたのが「パパ活」でした

まりこさん(仮名)(30代)
「インターネットで『パパ活』というのはどういうものかというのを調べて。『パパ活』をやっている女性がブログやツイッターをやったりしているので、どんなふうに始めたらいいのかわらにもすがる思いでした

無料で交際アプリに登録 食事だけでなく体の関係も


まりこさんはパパ活専用の交際アプリに3つ登録しました。男性は登録するのにお金がかかる一方で、女性は無料。顔写真なども必ずしも掲載する必要がないため、登録することへの抵抗は少なかったそうです。アプリを通じてメッセージのやりとりをし、これまでに10人以上の男性と食事を繰り返してきました。

まりこさん(仮名)(30代)
「子どもが幼稚園に行っている間に男性を会っています。『パパ活』をするとき、下の子は保育園に預けます。食事代やお茶代は男性が払ってくれます」

しかし、男性とは食事だけでは終わりませんでした。次第に体の関係を求められるようになり、抵抗感はあったものの、数万円の援助を得られることから断り切れなくなりました

まりこさん(仮名)(30代)
「これから子どもにどんどんお金がかかってくるので。お茶だけとかでお金を頂くっていうよりも、やっぱりもっと、やっぱり欲しい、お金が欲しい・・・」

大きすぎるリスク 性暴力の被害も


まりこさんは、男性とはメッセージのやりとりをした上で、安全だと思える人と会うことにしていました。しかし、それでも性暴力の被害にあうこともあったといいます。

まりこさん(仮名)(30代)
「やっぱり豹変する人は豹変しましたね。行為のときに、電気がついている状態で、動画とか写真を撮られそうになったり。無理やりその行為を強要してこられたり、避妊を協力してくれなかったり、血が出てきたときもありました。すごく痛くて怖かったんですけど、怖いっていうのも言えなくて。逃げるに逃げられなかった。何でこんなことしなきゃいけないんだろうと悲しくなりました」

誰も守ってくれない、危険と隣合わせの「パパ活」。それでも、やめることはできないといいます。結婚を機に仕事を辞めてしまったというまりこさん。夫との離婚も検討していますが、子どもたちとのこれからの生活のことを考えると踏み出せずにいるのです。

まりこさん(仮名)(30代)
「私一人で子育てをしてこの先ずっとやってくっていう自信が、やっぱりまだちょっとないので。今はもう続けないと。それしか方法が分からないですね。高級なブランド品が欲しいとか、海外旅行に行きたいとか、そういうんじゃなくて、ほんとに普通にお金の心配をしないで暮らしたいだけなんです」

「女性の自己責任では?」という声 解決するには?


しかし、取材中や放送後から一部では、働きたくても条件に合う仕事が見つからないのは彼女たちの自己責任ではないかという声も聞かれました。女性たちが苦境に陥っている大きな要因の一つが、社会の構造的な問題にあります。
たとえば、長引くコロナ禍で、非正規の労働者は解雇されるなどして減少していますが、そのうち約7割が女性です。
内閣府の「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会」で座長を務めている白波瀬佐和子(しらはせ・さわこ)さんも、おざなりにされてきた格差の問題が表面化していると指摘しています。

白波瀬 佐和子さん(東京大学大学院 教授 / 内閣府「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会」座長)
「日本の労働市場というのは、男女間でものすごく格差があるというのはずっと言われているんですけれど、結局、1960年代以降の男女間の格差という構造を今まで解決されないままできました。そのつけが弱い立場の人たちに回されています」

さらに、白波瀬さんは国など公的機関が困窮者へ積極的にアプローチし、まりこさんのように、実質1人で子育てをしているような人も含めて、より弱い立場の人たちを支援することが欠かせないと話しています。

白波瀬 佐和子さん(東京大学大学院 教授 / 内閣府「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会」座長)
「コロナ禍というのは「密室化」がどんどん進むので、DVとか性暴力について重点的に介入を含めて対策を進めることや、日本は母子家庭の貧困率が非常に高いので、母子家庭に集中的に支援を提供することが重要です」

中には、まさに今、経済的にも精神的にも追い詰められている女性たちも少なくありません。国やNPOなどでは、金銭的な悩みだけでなく、DVや心の不安などに対してさまざまな相談窓口が設けられています。まずは問い合わせてみてください。

<相談窓口はこちらから>

生活苦など 女性の悩みを相談できる窓口
国やNPOが設置している相談窓口や、NHKのまとめサイトを紹介しています。 https://www.nhk.or.jp/gendai/comment/0020/topic002.html


関連番組
クローズアップ現代プラス「“パパ活”の闇 コロナ禍で追い詰められる女性たち」
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4489/index.html

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●女性の危機をデータで知る
・Topic04 NHKスペシャル「コロナ危機 女性にいま何が」データ集
・Topic03 コロナ禍 女性の雇用危機
●解決策を考える
・Topic05 “休業手当ゼロ”あなたはどうする?

・Topic06 ひとり親家庭を「無料の弁当」で支えたい


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#パパ活#新型コロナウイルス#女性
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2021年1月8日
子どもに「普通の生活」をさせてあげたいのに

コロナ禍で、ひとり親家庭の生活が厳しさを増しています。
NHKと専門家が実施したアンケート調査では、新型コロナウイルスで雇用に影響を受けたシングルマザーのうち、「食費を切り詰めている」人は30.6%、「公共料金の未払いや滞納をしている」人も10.8%に上ることが明らかになりました。(NHK×JILPT共同調査 LINEリサーチにて実施 回答148人)
関西地方のある家族を取材すると、経済的な苦しさが母親としての自尊心まで奪っていくことや、子どもたちの未来にも暗い影を落とし始めている現実が見えてきました。さらに、国の支援策である緊急小口資金の課題も明らかになってきました。
ひとり親家庭にいま何が起きているのか。4人の娘と母親で暮らす家族の声を聞きました。(杉田さんの家族の状況については、2020年12月5日(土)に放送したNHKスペシャル「コロナ危機 女性にいま何が」でもお伝えしました)

(報道局 社会番組部 ディレクター 中村 幸代)


新型コロナで内定取り消し まさか自分が“貧困”に・・・


関西地方で暮らす、40代のシングルマザー、杉田彩子さん(仮名)は、高校生と中学生、幼稚園児2人のあわせて4人の娘を1人で育てています。「声を上げたくても上げられない人たちがいる。この声が少しでも国や社会に届けば」と取材に応じてくれました。

杉田さんは、2019年秋に離婚。元夫からは自宅を譲り受け、残りの住宅ローンを支払ってもらう代わりに、養育費は受け取っていません。離婚後、四女が幼稚園に入るまでは貯金を切り崩して生活し、2020年4月から食品加工会社で働くことが決まっていました。ところが、新型コロナの影響で会社の経営が悪化し、内定が取り消しとなったのです。

杉田彩子さん(仮名)(40代)
普通に生活していけると思っていたのが、全て崩れた。こんなに生活が変わるなんて、思ってもない事態。これまで貧困世帯の話をテレビで見ていたら『かわいそうやな、何かできたらな』と思っていたのが、自分に切り替わった」

食費を切り詰めても赤字 一食でも多く子どもたちに


その後も仕事は見つからず、いまは児童手当や児童扶養手当など、合わせて月に約14万円の手当を頼りに、生計を立てています。どれだけ生活を切り詰めても、子どもたちの食費や教育費で、家計は毎月赤字が続いているといいます。

朝7時。子どもたちを起こし、台所で朝ごはんの準備をする杉田さん。勢いよくパンを食べる子どもたちの隣で、杉田さんは子どもたちのパンの“耳”だけを食べていました。

杉田彩子さん(仮名)(40代)
「一食分でもこの子たちに回ると思ったら、この子たちに回してあげたいから。野菜やお肉は見切り品を買っているし、食費はとにかく切り詰めているけど、それでもキツキツ。毎日お金どうしよう、明日は何食べさそうって、そればっかり考えている

仕事が見つからない コロナ禍とシングルマザーの“二重の壁”


杉田さんは、半年以上仕事探しを続け、これまで30件以上の求人に応募してきましたが、面接までたどり着けたのは、10数件程度だといいます。毎日の幼稚園の送り迎えがあるため、働けるのは朝9時~夕方5時までに限られます。街で求人票を見つけると、片っ端から電話をかけているという杉田さん。この日も、スーパーで「シフト要相談」と記された飲食店の求人票を見つけると、電話を2件かけました。しかし、時間帯の希望を伝えると、「夜8時までは働いてもらいたい」と、すぐに断られてしまいました。杉田さんは力なく電話を切り、肩を落としました。

杉田彩子さん(仮名)(40代)
「全滅かな…。こういうのが多い。面接まで行けても『お子さんが熱出したらどうしますか』って聞かれて、それも落ちる原因かもしれない。もうね、心が折れていく

杉田さんは、専門的な資格が不要で、シフトの融通も比較的利きやすいと、飲食・サービス業の求人を中心に探していますが、コロナ禍でこの業界の求人は、大幅に落ち込んでいます。

新規求人「宿泊・飲食サービス業」-34.7%(前年同月比)
(厚生労働省 一般職業紹介状況 令和2年11月分より)


NHKと専門家の調査では、2020年4月以降に職を失った女性全体のうち、2020年11月1日時点で4割近くが、「再就職していない」ことも明らかになりました。(NHK×JILPT 共同調査 LINEリサーチにて実施 回答552 人)

家計を支えるのは 高校生の長女


杉田さんの仕事が見つからない中、高校生の長女は少しでも家計の助けになるようにと、 夏ごろからアルバイトの掛け持ちを始めました。週4日働き、多いときには月に約5万円を家計にいれています。

いまの状況について、長女はどのような思いを抱いているのか。話を聞きました。

長女(高校生)
「一番動けるのは私ですし、高校もお金がかかっている分、頑張らなあかんなって。バイト疲れみたいなのはあるんですけど、それで弱音吐いてもいいことないので、家でも明るい方がいいかなと。家族が一番大切です。自分はなんかもう普通に生活できたらいいです

勉強にかける時間は以前より短くなり、友達の誘いも断らざるをえないときもあるといいますが、それでも「我慢は全然していない」と、長女は気丈に話しました。

進路の選択にも影響が・・・


高校受験を控える中学生の次女も、家計のことを気にかけた進路を考え始めていました。

次女(中学生)
「全日制の公立高校に行きたいけど、無理であれば、夜間の定時制高校か通信制高校にしようと思っています。夜間の授業やったらお昼働けるし、ちょっとは足しになるかなと思って」

高校進学に必要な、奨学金をもらうための応募作文には「妹が幼いので、なるべく早く就職してお給料をもらい、家庭を少しでも支えたい。就職につながりやすいように、高校では資格が取れる検定試験をたくさん受けたい」とつづっていました。

杉田彩子さん(仮名)(40代)
「いっぱい“就職”って言葉が書いてあるから…。普通だったら、楽しい学校生活を送りたいって思うところを、中学生から“仕事”のことを考えさせていることが申し訳ない」

“階層”をはい上がれない


杉田さん自身も、シングルマザーの家庭で兄と2人で育ちました。母親は、3つの仕事を掛け持ちして、朝から晩まで働いていたといいます。それでも家計は苦しく、高校に進学させてもらえたのは「男性」という理由から兄だけでした。人生の選択肢が狭まることでの苦労を知っている分、「子どもたちに自分と同じ思いはさせたくない」と杉田さんは考えています。しかしコロナ禍で、はい上がることは一層難しくなっているといいます。

杉田彩子さん(仮名)(40代)
「母親と“同じ道をたどってるな”と思うときがある。テレビとか見てたら『シングルマザーにも手厚く』とか『女性でも進出できるように』というけど、それが届いているのは、ほんまに上の一部の人やと思う。マンションで言ったら、“低層階”の人は、エレベーターのボタン押しても、上には上がれない。1個ずつでも“階層”を上げようと、ずっとボタン連打しても、どうにもなれへん状況」

「緊急小口資金」が借りられない


実は杉田さんは、去年5月から4回にわたり、新型コロナの影響で収入が減った人が、最大20万円を借りられる「緊急小口資金」の申請をしようと窓口に相談していました。新型コロナの影響で決まっていた仕事が取り消しになったため、貸付を受けられると思ったのです。ところが担当者からは、「感染拡大以前に働いていた実績がなく、“収入が減った”わけではない」と申請の対象外だと言われ続けました。

1人10万円の給付金や、ひとり親世帯向けの臨時特別給付金で赤字をなんとか補填してきたものの、それらも使い果たし、水道代の支払いが滞るまでに追い込まれる事態となっていました。
再び行政の窓口へ


杉田さんは生活保護には頼らず、自力で頑張りたいと思っています。去年11月、「これ以上子どもたちに負担はかけられない」と、一縷の望みを託して、再び「緊急小口資金」の申請窓口に向かいました。

厳しい生活状況を必死に訴えましたが、やはり返ってきたのは「収入が減っていないため、審査が通るのは難しい」という言葉でした。

杉田彩子さん(仮名)(40代)
「なんのための緊急小口資金なのか。最後の頼みの綱だと思って、藁をもすがる思いで来ているのに…」

子どもたちに迷惑をかけたくない


「おっきいプレゼント、ほしい」。
クリスマスが近づく中、5歳の三女が、無邪気におもちゃのキッチンセットをねだりました。「いい子にしていたらサンタさんが来るよ」と、子どもたちの前では明るく振舞っていた杉田さんでしたが、1人になると、子どもたちに対する思いを、涙ながらに声を震わせて語り始めました。

杉田彩子さん(仮名)(40代)
「もう、これ以上子どもたちに迷惑かけたくない。子どもに頼っているこの生活が、親として情けない。働きに行けて、普通に生活させてあげたいけど、思うようにいかへんのがすごくつらい…」

コロナ禍、杉田さんは母親としての“自尊心”までもが奪われていくと感じていました。

緊急小口資金 運用の課題


撮影が終わった後日、杉田さんから電話がかかってきました。「緊急小口資金」の窓口の担当者から、「娘さんの収入がコロナ前後で一時期的でも減っていれば、貸付が可能になる」と言われたといいます。制度として「世帯主以外であっても、同じ世帯の人の収入が新型コロナの影響で減少していれば、貸付の対象になる」ということでした。

杉田さんが窓口に問い合わせて5回目、ようやく貸付の審査が通りました。しかし、公的支援に対しての疑問は残ったままだと話します。

杉田彩子さん(仮名)(40代)
「最初に相談したときから、娘の収入が減ったことついて説明していたのに、そんな説明は受けず『該当しない』と言われ続けていた。なぜ最初から対応してくれなかったのか

なぜこのようなことが起きたのか、私は改めて厚生労働省に問い合わせました。厚生労働省の担当者からは、以下のとおり回答がありました。

厚生労働省 担当者
「放送の反響も大きく、今回の事態については真摯に受け止めている。1人1人の相談ケースにきめ細かく対応して支援が行き届くように、いま全国の相談窓口に向けて、どのようなケースの場合には、どのように対応をすればよいかをQ&A形式で記した問答集※を作り直している

※緊急小口資金等の運用に関する問答集。誰でも閲覧可能で、申請者自身もルールを確認することができます。

新型コロナによって生活が困窮する人たちを救うために設けられた「緊急小口資金」。感染拡大がさらに深刻化する今だからこそ、困っている人たちに、支援の手がきちんと行き届くためにどうしていくべきか、考え続ける必要があるのではないでしょうか。

子どもたちの“未来”が奪われないよう‥


去年12月、国はひとり親世帯への追加給付を決めました。杉田さんは、なんとか年を越すことはできたものの、春には次女が高校生、三女が小学生になり、入学のための準備で出費もかさみ不安な日々が続いています。NPO団体に、食料支援を求めるようにもなりました。

コロナによって奪われた“普通”の生活。子どもたちの“未来”が奪われないようにするために、どのような支援が求められるのか。これからも彼女たちの声に耳を傾け、取材を続けていきたいと思います。

<緊急小口資金に関する相談>
 ▼厚生労働省 生活支援特設ホームページ
 ※リンクをクリックするとNHKサイトを離れます。
 https://corona-support.mhlw.go.jp/
▼厚生労働省 緊急小口資金等の特例貸付の運用に関する問答集(令和2年12月28日時点)
※リンクをクリックするとNHKサイトを離れます。
生活者向けの支援に関する情報
https://minna-tunagaru.jp/mhlw/covid19/life/
→このページの「緊急小口資金 Q&A」をご覧ください
<関連番組>
 ▼2020年12月5日(土)放送 NHKスペシャル「コロナ危機 女性にいま何が」
 https://www.nhk.or.jp/special/plus/videos/20201211/index.html


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#新型コロナウイルス#女性#格差
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2020年12月22日
ひとり親家庭を「無料の弁当」で支えたい

いま、ひとり親家庭の経済的な困窮が深刻さを増しています。政府は12月、生活実態が厳しいひとり親世帯への支援策として、子ども1人あたり最大5万円の給付金を追加で支給する方針を固めました。

こうした中、さまざまな事情を抱えたひとり親を対象に、無料で弁当を届ける支援を行う男性がいます。この取り組みは、SNSなどを通じてスポーツ選手や有名人などの間で共感が広がり、瞬く間に知られるようになりました。どんな思いで始めたのか、男性を訪ねました。

(報道局 映像センター取材グループ 菅原 紀子)


六本木のイタリア料理店の経営者が自転車で…


東京・目黒区の住宅街を走り抜ける1台の自転車。運転している男性が向かった先は、あるマンションの一室です。インターホンを鳴らして中から出てきたのは、母親と小学生くらいの男の子。男性は2つの弁当を親子に手渡しました。母親から「ありがとうございます。いつも頼りにさせてもらっています」と感謝の言葉を告げられると、男性は再び自転車にまたがり、次の配達先へと走り出しました。

この弁当を配達しているのは、六本木のイタリア料理店を経営する笹 裕輝(ささ・ゆうき)さんです。ことし4月から新型コロナウイルスの影響で経済的に厳しくなっているひとり親家庭を支援しようと弁当を無料で届ける活動をしています。

生活の厳しいひとり親家庭を支えたい
 

緊急事態宣言が出された4月、笹さんの店も休業をよぎなくされました。店の売り上げが大幅に落ち込みましたが、持続化給付金などの支援制度でなんとかしのいできました。

そんな中、知り合いのシングルマザーの家庭の生活が厳しいという話を耳にして「この状況で何かできることはないか」と始めたのが、ひとり親家庭に無料で弁当を届けることでした。

まず行ったのは、店の近所で困っていると聞いたひとり親家庭に弁当を届けることです。弁当はスタッフ5人で手分けして作り、子どもが安心して食べられるようにと、無添加の調味料を使って栄養バランスのよいメニューを考えました。配達は、コストをかけずに済むよう自転車で行いました。

その後、取り組みを知ったひとり親家庭から「私の家にも弁当配達をしてほしい」という声が多く寄せられたため、5月にクラウドファンディングなどで寄付を募ったところ、合計4,000万円を越える支援金が集まりました。ひとり親家庭で育ったというスポーツ選手や有名人の間で共感の輪が広がったからです。さらに、共感してくれた同業者たちの支援を得ながら、配達エリアを都内12区にまで拡大して、11月下旬までに3万8,000個の弁当を届けてきました。

背景には自らも母子家庭で育った境遇が…

(弁当支援をしていた母親から届いた手紙)


笹さんがこの取り組みを始めたのは、笹さん自身が母子家庭で育ったからです。3歳のころに両親が離婚し、母親がひとりで家計を支えながら姉と自分を育てる姿を見てきました。

母親は、昼は美容院で、夜はスナックで忙しく働いていました。母親と話ができたのは、夜の仕事に向かう前、夕食の支度をする1時間足らずの時間だけでした。笹さんはいつもさみしさを感じていたといいます。

無料で弁当支援を行う 笹 裕輝さん
「母ともっと一緒に過ごす時間があればいいのに、といつも感じていました。弁当を届けることで、経済的な支えになるだけでなく、食事を作るために使っていた時間を、子どもと会話をする時間に使ってもらえたらいいと思いました」

弁当支援に救われた母と子


笹さんが弁当支援を始めた直後から、頻繁に訪問してきた家庭があります。20代の女性と娘の2人暮らしの家庭です。女性は、去年の秋ごろから事情があって夫と別居するようになり、生まれたばかりの娘と2人で暮らすようになりました。

ことし4月からは飲食業の仕事に就く予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で内定を取り消されました。貯金を取り崩す不安な生活を送る中、SNSで偶然弁当支援のことを知り、配達を希望したといいます。

支援を受けた結果、食費を大幅に抑えられ、買い物のために子どもを連れて外出する頻度も少なくできたといいます。

1人で子どもを育てる女性
「頂いたお弁当のお米をみじん切りにして、おかゆにして娘に食べさせました。あまったご飯は次の日の朝食にも使うなど、食費を節約することができました。子どもと買い物に外に出れば感染リスクがあるので、弁当を届けてもらえてとても助かりました」

さらに、女性は弁当を届けてくれる配達員とも顔見知りになり、言葉を交わすようになりました。子どもと2人、家に閉じこもりがちの女性にとって、配達の時間は孤立感を和らげてくれる貴重な機会になったといいます。

1人で子どもを育てる女性
「コロナで誰とも会えない状況の中で、娘と2人きりで過ごす生活は気持ちが落ち込むことも多かったです。そんな中で、配達員のお兄さんからお弁当を受け取るときには、『ありがとうございます!』と笑顔になることができました」

国の支援のはざまで苦しむ人にも弁当が届くように
  

女性が笹さんの弁当支援を頼りにしているのには、もうひとつ大きな理由があります。現在、女性は夫と離婚調停を行っていますが、緊急事態宣言の間、調停は延期されました。いまも調停が立て込んでいるという理由から次の期日がなかなか決まらず、別居から1年がたったいまでも離婚が成立していません。

そのため、女性はひとりで子育てをしていますが、ひとり親世帯を対象とした「臨時特別給付金」や「児童扶養手当」など行政の支援を受け取ることができていないといいます。
 
1人で子どもを育てる女性
「まさかひとり親世帯を対象とした支援が受けられないとは思いませんでした。無料のお弁当の支援はうちのような家庭でも受けられたので、とても助かりました」

笹さんは、弁当支援を続ける中で、この女性のように制度のはざまで苦しむ親が多くいることをはじめて知りました。コロナ禍の混乱の中で、人知れず苦しんでいる人がいるのであれば、なんとか力になりたい。笹さんは、離婚調停中であっても別居中であっても、わけへだてなく、ひとりで子育てをしている親に弁当配達を行っていきたいと考えています。

無料で弁当支援を行う 笹 裕輝さん
「妊娠中だが支援してもらえませんかとか、別居中でも頼めますかとか、これまでに多くの相談がありました。困っているひとり親を助けたいという思いでやっているので、行政の支援が受けられない人にも、しっかりと届けていきたいです」

今後はよりきめ細かい支援へ


多くの家庭に弁当を無料で届けてきた笹さんはいま、支援を一歩先に進めたいと考えています。ただ広く弁当を配るだけでなく、より支援が必要な家庭に深く関わり、自立のための後押しをすることが大切だと感じたからです。

都内12区への配達は今月中旬でいったん終了することにし、配達エリアを新宿区と品川区の2区に絞り、あらかじめサポート期間や目標を定めた上での配達を新たに始めています。

無料で弁当支援を行う 笹 裕輝さん
「今後はこれまで以上に、ひと家庭ごとにきめ細かなサポートを続けて行きたいです。それぞれの目標に向かってがんばるひとり親のサポートが弁当を通じてできれば嬉しいです」

民間だけでは限界が… 求められる行政の支援

弁当支援を始めとした「現物給付」の対策は各地で広がっています。東京・世田谷区では11月下旬以降、ひとり親世帯などへの支援策として1世帯につき米10キロを配りました。しかし、地域による支援の格差が広がらないようにするにはどうするかが今後の課題です。

さらに、今回の取材を通じて、「法律上のひとり親世帯」に限らず、広く「ひとりで子育てをしている親」への支援が急務だと感じました。行政にはより柔軟な対策が求められています。

<笹 裕輝さんの弁当支援情報サイト>

hottokenine(ホットケナイン)
※リンクをクリックするとNHKサイトを離れます。
https://hottokenine.jp/
笹さんが行う弁当支援のホームページです。弁当支援の相談方法や支援金募集などについて書かれています。



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#新型コロナウイルス#女性
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2020年12月18日
“休業手当ゼロ” あなたはどうする?

12月5日(土)に放送したNHKスペシャル『コロナ危機 女性にいま何が』には、多くの反響が寄せられました。その中には、「どうすればよいのか、解決策を知りたい」という声が少なくありません。苦境を乗り越えるヒントを探るため、労働問題に取り組むNPOを取材しました。

(報道局 政経・国際番組部 ディレクター 市野 凜)


「休業手当が支払われない」女性たちの悲鳴


労働問題に取り組むNPO法人「POSSE」(東京・世田谷区)には、非正規雇用の女性たちからの相談がかつてないほど寄せられています。11月末までに対応した新型コロナウイルス関連の労働相談3,400件超のうち、およそ6割が女性からだといいます。

中でも多いのが「休業手当」に関する相談です。緊急事態宣言による休業や、長引く営業自粛によるシフト減・・・。「休業手当をもらえない」という女性の声は1,100件を超えています。

NPOに寄せられた相談(IT関係、40代女性)
「人事から『アルバイトだから』と言われ、休業手当が支払われない」

NPOに寄せられた相談(ホテルのレストラン配膳、30代女性)
「1日4時間、週5日勤務だったが、一日限りの雇用を継続していたため、社会保険も未加入。そのため、休業手当の対象にはならないと言われた」

百貨店販売員 洋子さん(仮名)の場合


都内の百貨店の食品売り場で、派遣社員として働いていた洋子さん(仮名・48歳)も、休業手当が支払われなかった一人です。

4月、緊急事態宣言によって百貨店が一斉休業。しかし、派遣会社からは休業期間中の給料の補償はなく、「有給休暇を使ってほしい」と言われました。

法律では、会社の都合で従業員を休ませた場合、休業手当を支払う必要があります。国は今回、休業手当の支払いを促すため、「雇用調整助成金」の制度を拡充。会社が支払った実績に応じて、最大で全額を助成するとしています。

しかし洋子さんの派遣会社は、「国の自粛要請による休業で、会社の都合ではないため、支払う義務はない」としていました。

洋子さん(仮名)(48歳)
「派遣社員は“使い捨て”のように扱われるんだと怒りを感じました。販売派遣は女性が多いので、困っているのは私だけじゃないはずです」

「声が震えた」会社との団体交渉


洋子さんは、個人で加盟できる労働組合を通じて、雇用主の派遣会社に休業手当の支払いを求めることにしました。

「雇用調整助成金の制度を使ってほしい」という洋子さんの訴えに対して、当初、派遣会社は「国からの助成金が入るまでの資金繰りができない」と説明していました。

しかし、3回にわたる交渉の末、洋子さんは賃金の10割にあたる休業手当を受け取ることができました。さらに会社は、洋子さん同様に休業によって働けなくなっていた他の派遣社員に対しても、6割の休業手当を支払うことを約束しました。

洋子さん(仮名)(48歳)
「労働組合に入るのも初めてだったし、会社とこんなふうに交渉できるなんて知らなかったので、とても緊張しました。交渉の時、最初はうまく“怒り”を表現することができなくて声が震えたのですが、だんだん、自分の意見を言うことに慣れていきました。我慢せずに声を上げた意味があったと思いました」


会社と交渉した女性のほとんどが休業手当を受給


NPO法人「POSSE」では、これまで労働相談を寄せた女性たちの追跡調査を行っています。11月に聞き取りを行った女性60人のうち、洋子さんのように休業手当を求めて会社と交渉したのは12人でした。そのうち11人が、10割の休業手当を勝ち取っています(残り1人は12月17日時点で交渉中)。

NPO法人POSSE 青木 耕太郎さん
「コロナ感染症は、誰が悪いわけでもなく、経営者にも労働者にも責任はないという言い方がよくされますが、コロナ禍でも、労働者を使用する者としての責任がなくなるわけではありません。非正規雇用だからといって休業手当を支払わないことは、法的にも道義的にも許されません。労働者としての権利をしっかり行使すれば、会社も好き放題はできないということを、多くの人に知ってほしいです」

声を上げられない女性も・・・「日々を生きるのに精一杯だった」


一方、追跡調査では、「声を上げたくても上げられなかった」という人が少なくないことも分かりました。都内の大手ラーメンチェーン店でアルバイトをしていた香織さん(仮名・45歳)はこう話します。

香織さん(仮名)(45歳)
「最初は休業手当を払わない会社に腹がたっていたのですが、不条理なことが次々に起こって、だんだん感覚が麻痺してしまいました。本当は会社にいっぱい文句を言いたいけれど、1日1日を生きるのに必死で、怒るためのエネルギーと時間がないのです」

アルバイトとして週に30時間勤務し、20万円あまりの収入を得ていた香織さん。
新型コロナの影響で店の売上げは半減。アルバイトのシフトが減らされ、週に4時間しか働けない時期が続きました。しかし、会社から、休業手当についての説明はなかったといいます。

香織さん(仮名)(45歳)
「店長から営業時間の変更やシフト表がSNSで送られてくるだけで、シフトがなくなった分の給料がどうなるのかという説明は全くなかったです。ニュースで聞く『休業手当』をアルバイトの自分ももらえるものなのか、わかりませんでした」

「シフトに入れてもらえなくなると困るから」飲み込んだ声


自分は休業手当の対象になるのか、NPO法人「POSSE」に問い合わせた香織さん。パートやアルバイトでシフトを減らされた場合でも、休業手当を受ける権利があるとアドバイスを受け、会社に問い合せることにしました。

しかし、「パートやアルバイトに休業手当を支払う余裕はない。まずは会社経営を立て直すことが先決だ」と言われたといいます。

香織さん(仮名)(45歳)
「私たちは組織の末端の末端かもしれないけど、私たちがいないと会社は回っていなかったはず。それなのに、“いなかったもの”のようにされたことがショックでした」

「雇用調整助成金の制度を非正規雇用の自分たちにも使ってほしい」。そう会社に訴えようと、同僚に声をかけた香織さん。しかし、同じ店で働く11人の同僚たちの中で、一緒に声をあげようと言う人はひとりもいませんでした。

香織さん(仮名)(45歳)
「『うちの会社、おかしいよね』『どうしようもないよね』という話にはなるのですが、その先にはなかなか進めませんでした。私たちはパート・アルバイトですから、会社にもの申すと職場に居づらくなるのではないか、数少ないシフトでさえ入れてもらえなくなるのではないかという怖さがあるのです。しかも私の会社は海外事業部もあるような大企業。ひとりで声を上げても大きな組織に潰されるだけだと思い、諦めるほかありませんでした」

結局、10月末にラーメン店は閉店に追い込まれました。休業手当をもらうことができないまま、香織さんはいま、スーパーのレジ打ちの仕事で生活をやりくりしています。

まずは相談してつながって


労働問題に取り組むNPOでは、香織さんのように休業手当の支払いを求めることをためらう人が多いことについて、こう話しています。

NPO法人POSSE 青木 耕太郎さん
「目の前の暮らしに精一杯で、働くことを優先しなければならないという女性が多いです。ただ、問題を放置して休業手当をもらえないままだと、生活が苦しい状態が続いてしまいます。すると余裕を持って次の仕事を探すことができず、これまでより労働条件の悪い仕事や、より不安定な仕事に就いてしまう、悪循環に陥ってしまいがちです」

そして、すぐには声を上げられないとしても、労働問題に取り組む支援機関などに相談して、同じ境遇の仲間とつながってほしいといいます。

NPO法人POSSE 青木 耕太郎さん
「同じ職場、同じ会社、または同じような働き方ならば、あなたと同じ問題を抱えている人が必ずいます。一人よりも複数人の方が勇気を出しやすく、一緒に声を上げやすいですし、会社も『これはまずい』と思いやすいです。実際、会社の枠を超えて業界全体で待遇改善ができた例もありました。少しでも何かおかしいと思ったら、深刻な事態になる前にぜひ相談をしてください」

「会社ににらまれるとシフトに入れなくなる…」
「今日を生きることに精一杯で、一歩踏み出すことができない…」
新型コロナによって明らかになった不安定な女性の雇用の実態。
仕事や暮らしに関する相談先を下記にまとめました。

<仕事や暮らしに関する相談は>
▼コロナ災害を乗り越える いのちとくらしを守る なんでも電話相談会
日時   12月19日(土)10時~22時
電話番号 0120-157930(通話無料)

▼NPO法人POSSE
電話番号 03-6699-9359(労働相談)
電話番号 03-6693-6313(生活相談)
<NPOによる調査全文は>
▼「女性の働き方・生活へのコロナ影響調査」報告書<中間報告>
NPO法人POSSE・総合サポートユニオン
※リンクをクリックするとNHKサイトを離れます。
http://www.npoposse.jp/archives/2325


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#新型コロナウイルス#女性
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2020年12月5日
NHKスペシャル「コロナ危機 女性にいま何が」 データ集
2020年12月5日放送のNHKスペシャルでは、新型コロナウイルスの感染拡大によって、女性たちの雇用や生活がより厳しい状況に追い込まれている現状をお伝えしました。番組で取り上げたデータやグラフをまとめてご紹介します。

(NHKスペシャル取材班)

再放送のお知らせ
12月10日(木)午前0時50分~(NHK総合)
NHKスペシャル「コロナ危機 女性にいま何が」
https://www.nhk.jp/p/special/ts/2NY2QQLPM3/episode/te/JPG53JR2N6/

女性の雇用がより深刻


日本経済に深刻な打撃を与えている新型コロナウイルス。特に大きな影響を受けているのが女性たちの雇用です。緊急事態宣言が出された直後、仕事を失った人は男性32万人に対し、女性は、倍以上の74万人にのぼりました。

自殺者の数も10月は去年と同じ月に比べ男性が21.7%増、女性が82.8%増と、女性が特に増えています(厚生労働省まとめ)

女性の4人に1人が雇用に大きな影響


私たちは、労働政策研究・研修機構の周燕飛 主任研究員とともに、全国の20歳から64歳までの雇用されている男女、約6万8000人を対象にアンケート調査を行いました。

雇用に大きな影響を受けた人(失業・離職・休業・労働時間急減)は男性が18%に対して、女性は26%と、4人に1人にのぼっていることが分かりました。



さらに、業種や雇用形態、収入で影響はどう変わるのか、5000人を詳細に分析しました。

業種別に見ると、雇用への打撃が最も大きかったのが、飲食・宿泊業で58%。次いで、生活関連・娯楽等サービス業が38%でした。いずれも、女性が働く割合が高い業種でした。

女性の雇用の悪化が家族にも影響




女性の雇用の悪化は、女性だけの問題にとどまりません。家族にも大きな影響を与えています。

近年急増している「共働き世帯」。いまでは「専業主婦世帯」の2倍以上となり、1200万世帯を超えています。共働き世帯で、女性の収入が占める割合は平均30%にのぼり、家計にとってなくてはなりません。



共働きの女性のうち、収入が3割以上減少した人は8%約12世帯に1世帯の計算となり、社会の中核を担う層への大きな打撃が見えてきました。

女性の労働力は増えても多くが非正規雇用


なぜ今回の新型コロナは特に女性の雇用に大きな打撃を与えているのか。働く世代の人口が減り続ける日本では、団塊の世代の大量退職や少子高齢化により、女性の労働力が求められるようになりました。



2013年、国は成長戦略のひとつに「女性活躍推進」を掲げました。2年後には法律も成立し、去年までの7年間で女性の雇用は340万人増加しました。しかし、その7割は不安定な非正規雇用でした。そこを新型コロナが直撃しました。

年金額に男女差 高齢女性のリスクが高い


女性の雇用への影響は、働き盛りだけでなく、幅広い世代に及んでいます。労働問題に取り組むNPOは、新型コロナの影響を調査する中で見過ごせないのが高齢の女性たちだと言います。(NPO法人POSSE「女性の働き方・生活へのコロナ影響調査」より)

9月に女性から寄せられた相談のうち、60歳以上が3割を占めました。この10年、働く高齢者の数は急増し、特に女性は男性よりも増加率が高く1.7倍に増えています。

背景のひとつが年金額の男女差です。男性が16万円に対し、女性は10万円あまり。仕事を失えば生活を維持できないリスクが女性の方が高いといいます。

解雇や雇い止めにあうと約3割が再就職できず


データからは、女性の雇用の回復が進んでいない実態も浮き彫りになりました。解雇・雇い止めにあった女性のうち、再就職できていない人は33%に上っています。

女性の心理面にも大きな負担が


雇用に影響があった女性たちに、心理面の変化についても尋ねました。「精神的に追い詰められた」と答えた人は、26%「うつの症状と診断された」「介護や育児の放棄」など、深刻な状況に陥っている人たちもいました。

子どもたちの世代にも影響が


女性たちの危機は、子どもたちの世代へも影を落とし始めています。雇用に影響があったシングルマザーの30%「食費を切り詰めている」と答えていました。「公共料金の未払いや滞納」「子どもに習い事や塾をやめさせる」と答えた人たちも、少なくありませんでした。

新型コロナが浮き彫りにしたのは、女性たちへのしわ寄せによって成り立っていたこの国の姿でした。女性の危機は、家族、そして社会の危機です。どうすれば乗り越えていけるのか、今後も取材を続けていきます。

再放送のお知らせ
12月10日(木)午前0時50分~(NHK総合)
NHKスペシャル「コロナ危機 女性にいま何が」
https://www.nhk.jp/p/special/ts/2NY2QQLPM3/episode/te/JPG53JR2N6/


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#新型コロナウイルス#女性
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2020年12月5日
コロナ禍 女性の雇用危機

ことし4月、緊急事態宣言が出された直後に職を失った女性の数は74万人。男性の2倍以上に上っていて、女性がより厳しい雇用危機に直面していることがわかります。

背景には、飲食・小売りなどの接客業や医療・福祉など、大きな影響を受けた業種で女性が比較的多く働いていることや、非正規雇用の割合が大きいことがあると見られています。

(社会部 記者 松田 伸子・ネットワーク報道部 記者 杉本 宙矢)


約6万8000人へのアンケート調査

※「解雇・雇い止め」「労働時間減少など」男性18.7%(回答3万6,403人)

※「収入5割以上減少」男性8.1%(回答1,634人)


今回、NHKは新型コロナによる雇用と暮らしへの影響を詳しく調べるため、専門家とともに約6万8,000人の雇用されている男女にアンケート調査を実施しました。その結果、女性の26.3%、約4人に1人が「解雇や雇い止め」「労働時間の減少」などに追い込まれていました。

さらに5,000人を詳しく調べたところ、15%あまりの女性は収入が5割以上減っていました

共働きやシングルマザーなど、女性の収入が家計を支えるケースが増えるなか、暮らしに深刻な影響が及んでいる実態が見えてきました。

新型コロナで収入激減 息子との生活が…


熊本市に住む50代の女性は、地元のクリニックで非常勤の看護師として働いていますが、コロナ前と比べ、給与は約3分の2になりました。

50代女性
「(先月の給与は) 8万3,000円ですね、かなり下がりました。『コロナがあるからしょうがない、ごめんね』と言われて…」

女性が勤めるクリニックでは、新型コロナの影響で受診する人が激減。勤務時問が大幅に減ったことで、給与が大きく落ち込んだのです。

女性は16年前に離婚し、重い障害のある18歳の息子をひとり親として育てています。食事やたんの吸引などの世話が必要で、急な欠動や早退にも理解のある職場でないと働けません。

息子を学校などに送り迎えするために購入した介護用の車のローンもあり、給与が減っても今の職場に頼るしかないといいます。

50代女性
「障害がある子どもがいると話したら、断られたのが4~5回あって、(今のクリニックは)ありがたい仕事場です。(給与減は)納得はいかないけれど、納得しなければいけないのかな…」

「休業手当」を受け取れない


今回の調査では、会社から休むように言われたり労働時間を減らされたりした女性たちが、「休業手当」などの補償を十分受けられていない実態も見えてきました。
休業手当が支払われていない女性は25%あまり、男性を大きく上回っていたのです。



休業の補償を受けられなかったという山口淑子さん(79)は、4年前から、業務委託でスーパーの試食販売の仕事を行い、月8万円ほどの収入を得てきました。

しかし、新型コロナ感染拡大後、仕事は激減。先月は一度も売り場に立てませんでした。

県営住宅で50代の息子と2人で暮らす山口さん。自営業の息子は体調を崩すこともあり、収入は不安定です。今は山口さんの10万円の年金が頼りです。

山口さんは会社に「休業手当」をもらえないか問い合わせましたが、契約が「業務委託」のため対象にならないことがわかりました。さらに、個人事業主も対象になる「持続化給付金」を申し込みましたが、減った収入以上に年金をもらっているという理由で受け取れなかったと言います。

山口淑子さん
「何にも援助されない状況だったのがすごく悔しい。本当にもう世の中からポンと捨てられたような感じですよね」

困難な再就職 求められる支援

※調査対象は自発的離職含む


今回の調査では、仕事を失った女性たちが再就職にも苦労していることが明らかになりました。ことし4月以降、職を失った女性の4割近くが、「再就職していない」と答えていて、男性を大きく上回っているのです。

こうしたなか、IT関連など今後ニーズが高まる業種に活路を見出そうという動きも出始めています。



長年、コールセンターや事務の派遣社員として働いてきた山本亜矢子さん(42)は、新型コロナで非正規雇用の待遇の悪さを改めて痛感し、7月、みずから退職を申し出ました。

山本亜矢子さん
「派遣と正社員の格差をすごく感じましたね。働き方をちゃんと考えていかないと」

今は「失業手当」で生活する山本さん。今後、新たな収入源にしたいと考えているのがインターネットの記事を書く仕事です。2か月かけて講習を受け、記事の書き方や写真の撮り方など、ノウハウを学びました。

初めて書いた飲食店の記事で得た報酬は3,000円あまり。今はできる仕事を増やしていくしかないと考えています。

山本亜矢子さん
「いずれはライターの仕事を増やしていけたらなと。1つでも多く自分にスキルを身に付けておけば、何かの備えになるのではないかと思っています」

共同で調査を行った専門家は、今後成長が見込まれる分野や人手不足が深刻な分野に転職できるように、国が支援すべきだと指摘しています。



労働政策研究・研修機構 周 燕飛 主任研究員
「コロナの中でも、伸びている業種もあります。例えばIT情報産業もその1つですけれども、そういった産業は、まだこれからどんどん求人が増えていくし、将来性もあって賃金も比較的高い。うまく好況業種に転換できるように、職業訓練を施してスキルを持てるようにする支援が必要になってくると思います」

新型コロナによる女性の雇用の危機は、これまでもあった問題が表面化したに過ぎません。女性活躍と言われながら、安定して働ける、また家事・育児と無理なく両立できる仕事が少ない現状をどう変えていくのか、社会全体で考えなければならないと感じました。

(2020年12月4日に「おはよう日本」で放送された特集をもとに作成)


関連番組
12月5日(土)午後9時~ (NHK総合)
(再)12月10日(木)午前0時50分~(NHK総合)
NHKスペシャル「コロナ危機 女性にいま何が」
https://www.nhk.jp/p/special/ts/2NY2QQLPM3/episode/te/JPG53JR2N6/
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#新型コロナウイルス#女性
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2020年12月1日
生活苦など 女性の悩みを相談できる窓口
「生活が苦しい」「性暴力を受けた」・・・など、悩みを抱える女性を支援してくれる相談窓口を、国やNPOなどが設置しています。助けになる情報をまとめたサイトや、主な相談窓口をご紹介します。

<国が設置する情報サイト>
※各相談窓口のリンクをクリックすると、NHKサイトから離れます。
厚生労働省「まもろうよ こころ」
https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/
厚生労働省が運営するホームページです。SNSでの相談サイト、電話での相談窓口がまとめてあります。

<NPOなどの支援団体>
※各相談窓口のリンクをクリックすると、NHKサイトから離れます。
よりそいホットライン
TEL:0120-279-338
https://www.since2011.net/yorisoi/
誰でも利用できる、悩み相談窓口です。どんなひとの悩みにもよりそって、一緒に解決する方法を探してくれます。

Lighthouse(ライトハウス)
https://lhj.jp/
https://line.me/R/ti/p/%40lh214
LINE ID: @LH214
メールアドレス:soudan@lhj.jp
性的な暴力から、子どもや若者を守る団体です。

風テラス
https://futeras.org/
風俗で働く人のための、無料生活・法律相談サービスを行っている団体です。

Grow As People(GAP・ギャップ)
http://growaspeople.org
キャバクラや風俗などの接客業、いわゆる“夜の街”で働く女性たちの転職をサポートしている団体です。

BONDプロジェクト
TEL:070-6648-8318
https://bondproject.jp/about.html
10代20代の生きづらさを抱える女性を、女性が支援します。

<NHKの支援まとめサイト>
NHKホームページ 「ハートネットTV」
https://www.nhk.or.jp/heart-net/topics/
NHKの番組「ハートネットTV」が運営するサイトです。ホーム画面の中盤に、テーマ別に情報がまとめてあります。ご自身の悩みに近いテーマのアイコンを、クリックしてください。

NHKホームページ「特設サイト 新型コロナウイルス」
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/management/?tab=1
NHKが運営するサイトです。新型コロナウイルスに関連した疑問や不安に応えるさまざまな情報を掲載しています。

関連番組
12月1日(火)放送
クローズアップ現代プラス「“パパ活”の闇 コロナ禍で追い詰められる女性たち」
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4489/index.html


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#新型コロナウイルス#女性
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2020年11月30日
コロナ禍 “夜の世界”に向かう学生たち
ごく普通のキャンパスライフを送っていた学生が、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、“夜の世界”に進むケースが相次いでいます。新宿・歌舞伎町に、キャバクラやクラブ、ガールズバーなどへの人材紹介を専門にした会社、通称“夜のハローワーク”があります。いま、ここを訪れる学生が後を絶ちません。
なぜ、彼女たちは“夜の世界”に足を踏み入れることを決めたのか。今年の夏から関東のキャバクラ店で働き始めた女子大学生を取材しました。
(報道局 社会番組部 ディレクター 野澤 咲子)

女性が駆け込む“夜のハローワーク”


新宿・歌舞伎町のとある雑居ビル。年季の入ったエレベーターを降りると、“夜のハローワーク”と呼ばれる人材紹介会社(厚生労働省 許可)があります。クラブ音楽が流れるオフィスには、常時10名ほどのスタッフが勤務していて、登録している女性たちのデータ管理や電話対応に追われています。取材に訪れた日も何人かの女性が相談に訪れていました。

ここで取り扱っているのはキャバクラやクラブ、ガールズバーといった接待を伴う飲食店。登録すると、その日、働き手の女性が足りない店の中から、自分の希望する条件の店を選んで働ける仕組みとなっています。給料を日払いでもらうことができ、昼の仕事と両立しやすいことから、当面のお金を必要とする女性たちがこれまでも数多く訪れてきました。

“夜の世界”未経験、女子学生の割合が増加


しかし、新型コロナの感染拡大以降、ここを訪れる女性たちの顔ぶれが変わってきていると 人材紹介会社の担当者は話しています。


人材紹介会社 顧問 浅井恒太さん
「もともと店で働いていた女性の中には、客が減り稼げなくなった店に見切りをつけて、 “パパ活”※1“ギャラ飲み”※2に流れている人もいます。一方で、学生さんや未経験の方の割合が増えている印象がありますね。昼のアルバイトのほうで出勤調整がかけられてしまったとか、シフトに入れなくなってしまったという事情があるようです」

※1男性と一緒に食事などをすることでお金を提供してもらうこと
※2お金をもらって飲み会に参加すること


夢は理系の開発職 国立大学の学生が…


学生たちはどのような事情を抱えて“夜の世界”に足を踏み入れたのか。10月、“夜のハローワーク”の紹介で、関東地方のとあるキャバクラ店を取材に訪れました。

薄暗い店内で待っていると、奥から華やかなドレスを着た若い女性が現れました。国立大学の理系の学部に通う20歳のみなみさん(仮名)。8月に入店したばかりだといいます。


みなみさん(仮名)(20歳)
「店の面接を受けに来るまでにはものすごく勇気が必要でした。正直、今でもこの世界には染まりたくないと思いながら働いています」


みなみさんはこちらの質問に対し、高校時代は県内でもトップクラスの進学校で勉強と部活に励む日々を送ってきたこと、苦労して入った大学では研究者を目指して勉強に多くの時間を割いてきたこと、今は一般企業の開発職に就くという夢があることなど、一つ一つ丁寧に答えてくれました。
アルバイト先が廃業や休業に 学費が払えない


みなみさんは、母子家庭で育ちました。事務職の仕事をする母親は、生活費を節約しながら、みなみさんが希望する進路に進めるよう高校の3年間、塾に通わせてくれたといいます。そんな母親に、これ以上負担はかけたくないとの思いから、大学入学後は貸与型の奨学金、月6万円と4つのアルバイトの掛け持ちで、年間50万円以上かかる学費や1人暮らしにかかる生活費のすべてを自力でまかなってきました。


みなみさん(仮名)(20歳)
「学費以外にも、教科書や実験に使う白衣とかゴーグル、理系はこまごまとしたものにけっこうお金がかかるんです。開発職に就くためには大学院にも進みたい。あと4年奨学金をもらうことを考えると返済が不安で、とにかくバイトを頑張っていました」


週7日、朝から晩まで飲食店など4つのアルバイト先をはしごして働く日々。過労で倒れたこともありましたが、夢のためには必要なことだと耐えてきたと言います。しかし新型コロナの感染拡大で、4月以降、次第に働くことができなくなっていきました。月に10万円以上あった収入も3分の1に減ったといいます。


みなみさん(仮名)(20歳)
「この状態が続けば、学費が払えなくなる。そうすれば開発職に就く夢も叶わないと思って、じわじわと追い詰められました」


今まで避けてきたキャバクラ店もやむを得ず


コンビニのアルバイト一本で、3か月間どうにか生活してきたみなみさんでしたが、いよいよ経済的に苦しくなり、8月、キャバクラ店に入店することを決めました。以前、アルバイトの掛け持ちで体調を崩した時、高時給で働けるキャバクラを考えたこともありましたが、これまではどうしても踏み出す気にはなれなかったといいます。


みなみさん(仮名)(20歳)
「いじめがあるんじゃないかとか、なんとなく怖いイメージがあったのと、金銭感覚を狂わせるのが怖かったからです。キャバクラで働く子は知り合いにもいて、お金があるので急に羽振りがよくなったりして、周りの子がついていけずに疎遠になる…というのを見てきました。それに、私の家はひとり親なのでお金の大切さも知っています。その感覚が崩れてしまうのが怖かったんです」


親からの反対 複雑な胸のうち


キャバクラ店で働いていることを、周りの人には伝えているのか聞きました。


みなみさん(仮名)(20歳)
「母親には店で働く前に相談したら強く反対されました。でも、大学院に進みたいことや、将来のことを考えてできるだけ奨学金はもらいたくないことなどを伝えて説得しました。でも正直、母は今でも納得はしていないと思います」


母親とは毎日電話をするほど仲がよく、誰よりも信頼しているというみなみさん。母親が反対する仕事をしていることに複雑な思いを抱いています。


みなみさん(仮名)(20歳)
「いい子どもでありたい、“産んでよかった”と思われたいという気持ちが昔から強くて、国立大学に入れたのもその気持ちがあったからだと思います。いま、自分では将来の目標のためと思って働いているんですけど、母の気持ちを思うと複雑ですね…」


いまだに慣れない仕事 心身ともに大きな負担


みなみさんは、キャバクラ店では20時ごろから働き始め、深夜まで働くことも少なくありません。お酒を飲むため、翌日の授業中に睡魔に襲われ、集中できないこともあるといいます。


みなみさん(仮名)(20歳)
「お客さんから身体を触られることもよくあります。ボーイさんの目の届かないところでは自分の身は自分で守らないといけない。自分を売る仕事なので、精神的にすり減っていく感覚があります。初めのうちはお客さんに指名してもらわなければと思い詰めて頑張りすぎ、帰りの車の中では辛くなってよく泣いていました」


今も精神的にギリギリの状態だと感じることもありますが、学業をまっとうしたいという気持ちで、なんとか日々を乗り越えているといいます。

お金は得たけれど失ったもの


後日、店の外でみなみさんと再び会うことになりました。大学のテストを終えて少し明るい表情をした彼女の姿は、どこにでもいる普通の大学生です。しかし、話を聞いてみると、前日はかなり落ち込んでいたといいます。


みなみさん(仮名)(20歳)
「店のホームページに自分の写真が出ているのを高校の友達に見られてしまって噂になっているみたいです。いろいろ言われて引かれてしまうのが悲しくて…。しょうがないとは思うんですけど…」


みなみさんは、キャバクラ店で働くことで学費の心配からは解放されたため、今後もしばらくは今の仕事を続けようと考えています。将来を考えたとき、今の仕事以外にもう選択肢はないと感じているからです。

しかし、家族に反対されながら働くことの後ろめたさや、店で働いていることを知った友達が離れていく悲しさなど、失ったものも多いとみなみさんは感じています。

ことし4月に全国大学生活協同組合連合会が大学生約3万5000人を対象に行った調査によると、新型コロナの感染拡大による影響で、「アルバイト収入が減少した」と答えた人は約4割、「経済的不安を感じている人」が約6割に上ることが明らかになりました。

収入の道を絶たれ、追い詰められた女性たちはどうしたら元の生活を取り戻せるのでしょうか。今後も取材を進めていきます。



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