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アニマルウェルフェアを加速させる「ESG投資」とは?最前線をアメリカの投資家が解説

家畜のストレスや苦痛を減らし、快適性に配慮する「アニマルウェルフェア」。広く浸透する背景にあるのが、「ESG投資」と呼ばれる新たな投資の潮流です。
ESG投資はどのような影響を与えているのか?投資家や企業の思惑とは?
ESG投資の最前線について、保里小百合キャスターが聞きました。

(クローズアップ現代+ 取材班)

話を聞いたのは・・・

アンドリュー・ニーブラーさん

ESG投資の専門会社 Karner Blue Capital 共同創始者(2018~)
証券取引法の弁護士としても活動

新たな投資の潮流「ESG投資」とは?

世界に広まるアニマルウェルフェア。その背景には「ESG投資」と呼ばれる、新たな投資の潮流があります。

Environment(環境)
Social(社会)
Governance(企業統治)

ESG投資とは、投資先を選ぶ際、企業の業績だけで判断せず、CO2排出などの環境問題や、社会問題、企業統治などの課題について、企業がどう取り組んでいるか評価しようという考え方。「環境」「社会」「企業統治」のそれぞれの頭文字から由来しています。世界持続的投資連合(GSIA)の調査によると、2020年におけるESG投資の全運用資産は35.3兆ドル。一般的な投資も含めた世界中の総運用資産の3分の1を占めるとされています。

BBFAW「The Business Benchmark on Farm Animal Welfare Report2020」

実はアニマルウェルフェアも、ESG投資における重要な評価対象の1つになっています。
こちらは、世界の食品関連企業150社について、アニマルウェルフェアの取り組み度合いを6段階に格付けしたリポート。こうした情報が投資先を選ぶ指標とされています。

なぜ投資家たちはアニマルウェルフェアに注目?

アンドリュー・ニーブラーさんにリモートインタビュー(11月)

アニマルウェルフェアとESG投資の関係について、投資家はどう考えているのか。
ESG投資に特化した金融商品を扱う、アメリカの投資会社の副社長、アンドリュー・ニーブラーさんに話を聞きました。

保里キャスター:
投資家たちはアニマルウェルフェアへの取り組みについて、どんな点に注目していますか?

ニーブラーさん:
大事な点は、企業がアニマルウェルフェアについての方針を築き上げているのか。それがどれくらいしっかりしていて、どう細かく決められているかです。一部の企業はとても先進的な考えを持っていますが、単に口だけの企業も存在します。ただ方針を持っているだけでは十分ではなく、最終的にその方針を効果的に実行するかどうかが問題です。

保里:
なぜいま、アニマルウェルフェアに取り組む企業に投資が集まるのですか?

ニーブラーさん:
投資家たちは、より幅広い視点からリターンについて考え始めています。金銭的な儲(もう)けは引き続き重要です。しかし投資家たちは、「企業がどのように生物多様性の損失や気候変動の問題に対処しているのか」「地球に対してこの企業は何をもたらしているのだろうか」とも考えています。

株主還元を重視してきた長い歴史がありますが、そのモデルは昨日のモデルであって、明日のモデルではありません。私たちは、企業が製品をどのように調達するのか考える必要があるんです。

ESG投資に影響 大手企業の“ケージフリー宣言”

いまアメリカでは、ファストフードチェーンやスーパーなどの大手企業を中心に、使用する卵をケージフリーの卵に切り替えると表明する事例が相次いでいます。その数は300社以上。いずれもアニマルウェルフェアを経営課題の大きな柱と位置付けています。こうした企業の動きの背景には、ESG投資による影響があるとニーブラーさんは分析しています。

ニーブラーさん:
現在食品・農業分野で評判の高い企業のほとんどが、2025年までにケージフリーの卵を100%調達することを約束しています。業界の標準となっていますが、これはESG投資によるものです。(※ケージフリー:平飼い・放し飼いによる飼育方法。欧米を中心に急速に切り替えが進んでいる)

「ケージフリー」

マクドナルドは、ケージフリー運動の分岐点となるような活動を始めた企業のひとつです。2025年までにすべての卵をケージフリー卵に切り替えることを約束しましたが、これをきっかけに他の企業もその流れに乗るようになりました。

マクドナルドが公表した資料

保里:
大手企業がケージフリーの卵に切り替えると表明したのは、どんな思惑があったからですか?

ニーブラーさん:
競争の激しい市場だからこそ、マクドナルドのようにコミットメントをする企業があるのだと思います。すべての消費者や顧客が評価しているわけではありません。しかしそうすることで、より先見性があり、リスクをうまく管理しているように見せることができます。また、マーケティングを行うことができ、アニマルウェルフェアに取り組んでいないほかの企業よりも優位に立つことができます。

いまの飼育方法 「アニマルウェルフェア」的にどうなの?

インタビュアーは保里小百合キャスター

保里:
アニマルウェルフェアなどESG投資の流れが加速していますが、企業はどうすべきでしょうか?

ニーブラーさん:
とてもシンプルなことです。企業は、自然資本が自社のビジネスにどのように利用されているかを理解し、評価し、将来的にその資本を利用できるようにしなければなりません。もし取り組まなければ、その企業は顧客を失い、評判を落とし、市場全体を失うことになるかもしれません。
結局のところ、これはリスクマネジメントの問題なんです。

ニーブラーさん:
世界経済フォーラムは、世界のGDPの約半分、合計約44兆ドルが自然に大きく依存していることを報告しています。自然資本が自社製品の生産や事業の継続にどう関わっているかを理解している企業が、最終的にはリスク管理が上手にできるようになります。そして最終的には、優れた経営陣を持ち、投資家に対してより良い長期的なリターンを生み出すことができると思います。
いま明らかなのは、日本でもほかの国でも、これまでの利益だけを追求するやり方を続けることはできないということです。

関連番組
2021年11月30日放送 クローズアップ現代+
卵の値段が上がるかも!? “アニマルウェルフェア”って何?

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