2021年2月25日

胃袋から276 個のプラスチック片が…世界遺産の島で何が


オーストラリアとニュージーランドの間にある、小さな島、ロード・ハウ島。澄んだ空気は鳥のさえずりで満たされ、緑豊かな自然、そして、透明度の高い海が広がっています。世界遺産にも選ばれ、人気の観光スポットですが住民は350人、許可されている訪問者は常時わずか400人と、往来する人を制限し、自然環境の保護にも力を入れている場所です。



実はこの島で子育てをすることで知られる『アカアシミズナギドリ』が、プラスチックの脅威にさらされていることがわかってきました。

ひな鳥の体内に大量のプラスチック

タスマニア大学のジェニファー・レイバース博士が調べたところ、胃袋に、プラスチック片がぎっしり詰まっているひなが続出。15年の調査で調べたひなから明らかになった数は、最大で1羽当たり276個。体重の15%を占める(体重60㎏の人で9㎏に相当)量に上っていました。

提供:Ian Hutton (Lord Howe Island Nature Tours)

提供:Ian Hutton (Lord Howe Island Nature Tours)

親鳥が、海に浮かぶプラスチック片をイカや魚などのエサと勘違いし、ひなに与え続けてしまったことによるものです。さらに、血液を分析したところ、カルシウム濃度が低下していました。カルシウムは卵の殻をつくる成分でもあり、将来、繁殖時にたまごが割れやすく、うまく育たない可能性があります。

こうしたプラスチックは、世界中で廃棄されたゴミが長い年月をかけて、徐々に砕けて小さな破片となったものが海を漂いつづけているものです。プラスチックは環境の影響を受けにくい極めて安定した性質を持つため、こうしたプラスチックが消えることはありません。 いま世界中の研究者たちが、生態系への影響を懸念しています。

ジェニファー・レイバース博士
「この5年で、海鳥の体内のプラスチック量は増加している。彼らは非常に重要なメッセージを伝えている。それに耳を傾けるかどうかは私たち次第です。」


私たちは 年間4kgのプラスチックゴミを海に捨てている


軽くて丈夫で、あらゆる形に加工できる上に、安い。
プラスチックは1950年代に使用されるようになって以来、瞬く間に私たちの生活に浸透しました。2015年の推計値では、4億トンのプラスチックが使用されたと考えられています。

そのほとんどが使い捨てで、リサイクルされるのは全体の9%。焼却処理されるのは12%です。実は廃棄されたプラスチックのおよそ8割は、埋め立てなど「ごみ」のまま地球上に積み上がっています。その一部が海へ流れ出続けています。

トロント大学のロシュマン博士の推計によると、その量は2020年で年間3000万トンに達しており、一人当たり年間約4kgのプラスチックごみを海に捨てていることになるのです。

SDGsでは「14 海の豊かさを守ろう」という目標の中で、海洋プラスチックの問題が取りあげられています。日本でも2020年7月に、プラスチック製の買い物袋が有料化されるなど、「ごみに繋がるプラスチック量を抑制」する動きが始まっています。

動き出したファッション界 切り札は『再生ナイロン』



その一方で産業界では、根本的な解決策を模索する取り組みが活発化しています。「すでにあるプラスチックを循環させていく」という挑戦です。

2019年8月、フランスで「ファッションパクト」というファッション協定が結ばれました。アディダスや、ナイキ、H&M、シャネル、アルマーニ、プラダ、フェラガモなど、32グループが参加を表明。今では66グループ200以上に増えています。『気候変動』『生物多様性』『海洋』の3分野で、実践的な目標を協力して達成するとしました。

そうした企業が続々と採用を決めている素材があります。漁網や使い古したカーペットなどの廃棄物から作る「再生ナイロン(ECONYL)」です。





イタリアのアクアフィル社が開発したもので、加工の過程で使う溶剤も無害とされるものを選び、使用後に何度でも素材に戻せることから、「素材循環」のモデルの一つになると、考えられています。

今回のファッションパクトを牽引する、ケリングのブランドでも、すでに商品化を進めています。こうした取り組みは、イメージ戦略としても今後重要になると考えています。

ケリング チーフ・サステナビリティ・オフィサー マリー=クレール・ダヴ―さん
「天然資源の枯渇の観点からもサステナビリティーの考えは必須で、企業の発展にも不可欠です。若い世代は特に環境問題に敏感ですから、その需要に応えることも必要です」


『リサイクル100%』へ 4つの視点


自社製品を「廃棄」するのではなく「もう一度再利用する」動きは、他の産業にも広がっています。家具やインテリア製品で知られるIKEAもそのひとつ。IKEAでは2030年までにプラスチックを含むすべての材料で、リサイクルまたは再生可能な素材へ100%切り替えることを目指しています。

現在は再生可能な素材がおよそ6割、リサイクル率1割と言うので、かなり野心的です。この目標を達成するために「サーキュラー(循環)チーム」と呼ばれるコアグループが既存の1万以上の製品について一つ一つサーキュラー度を検討し、改善を始めています。


サーキュラーチームの4つの視点です。
①材料をリサイクルまたは再生可能なものに置き換える
②耐久性の向上&製品の規格化
③中古家具のレンタル・売買など、製品を循環させ続ける
④他企業との連携し、社会システムとして達成する


例えば、家具は、痛みやすいところがある程度決まっています。回収して、使用できるものをもう一度使えば、新規の材料は大幅に減らせることになります。その他、クッションやカーテンなどは、材料をペットボトルを原料とした再生素材にしたり、子供用の食器は環境負荷の少ないトウモロコシやサトウキビなどを原料にしたり、製品そのものの規格をあらかじめ別の製品とそろえることで、再利用しやすくするなど、製品の設計から見直す作業が続けられています。

サステナビリティ・ディべロップ・マネージャー キャロライン・リードさん
「事業を完全な『循環型』に転向するのは、野心的かもしれません。しかし、それは、事業を発展させることにつながると考えています。」


これまで「安さ・便利さ・かっこよさ」を追求するあまり、製品の「使用後」に想像力が及んでいなかったと、企業の当事者たちが感じていることが取材から見えてきました。これはひょっとしたら、私たちにも共通する問題かもしれません。

2/28放送のNHKスペシャル 2030 未来への分岐点 (3)「プラスチック汚染の脅威 大量消費社会の限界」でこの問題を考えます☟



プラスチックの問題を『自分事として』考える☟
「海が好きな高校生が挑む プラスチックごみ問題」
「バナナの葉でプラスチックごみ削減!?」
「世界中の海からプラスチックをなくす」