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地球温暖化なのに なぜ寒波?

SNSの投稿より

1月9日に放送したNHKスペシャル「2030 未来への分岐点」では、温暖化がもたらすさまざまな影響についてお伝えしました。するとSNS上では、冒頭のように番組の内容に懐疑的な投稿がいくつも見られました。
今年は寒波や大雪の被害を伝えるニュースも目立ち「地球は本当に温暖化しているの?」と思う方も多いかもしれません。 『大雪が降る』『寒波が来る』 ということは、『温暖化していない』ことを意味するのでしょうか?その疑問を解消するため専門家に取材しました。
(「地球のミライ」 取材班 ディレクター 山下健太郎/捧 詠一)

「温暖化してる」はウソですか?

まずお話をうかがったのは、異常気象・気候変動の研究を30年以上にわたって続けている、東京大学先端科学技術研究センター・中村尚教授です。「温暖化はウソだ!」という意見に対しては、明確に否定できるデータがそろってきているといいます。

東京大学先端科学技術研究センター 中村尚教授
中村尚教授

100年以上にわたる長期的な観測の積み重ねによって「着実に温暖化し続けている」ことがわかってきました。とくにここ30年ほどは顕著です。
海面水温も上がり続けている。例年より気温が下がったり、降雪量が増える年はありますが、それは「自然のゆらぎ」の範囲内。数十年、数百年単位でデータを解析することで、真実が見えてくるのです。

気象庁のサイトを見てみると「世界の年平均気温(陸上のみ)」というページに、1880年の統計開始以降の気温の変化がグラフとして記されています。それによると、変動を繰り返しながら100年あたり0.96度の割合で上昇を続けています。

一時的に"寒冷化“したように感じても、長期観測データは温暖化の傾向を明示しています。

気象庁のサイトより

今年はなぜ寒かったのか?

ではなぜ、今年の冬は強い寒波に見舞われ、各地で大雪となったのでしょうか。
北日本から西日本の日本海側を中心にしばしば大雪となり、19地点で72時間の降雪量が過去最高を記録しました。1月上旬の平均気温は北日本で36年ぶり、西日本で35年ぶりの低温を観測しています。

厳しい寒さをもたらした要因としては「2つのジェット気流の蛇行」が考えられます。
『寒帯前線ジェット気流』と『亜熱帯ジェット気流』がともに日本付近で南に蛇行し、寒気が流れ込みやすくなりました。また『寒帯前線ジェット気流』の蛇行とともに、北極域に存在していた『極渦(きょくうず)』が分裂して南下したことで、日本の上空に極渦および周辺の強い寒気が流入しました。
その結果、”驚くべき寒さ“がもたらされたと考えられています。
(※詳しくは、気象庁発表資料をご覧下さい)

気象庁報道発表資料より

サハラ砂漠でも、1月に異例の降雪が観測されましたが、これも”寒冷化“ではなく、今年特有の理由があったといいます。

中村尚教授

当時の天気図から察すると、ヨーロッパの東に強い寒気がやってきて、さらに偏西風が異常に南下してきました。その影響で寒気がイタリアの上空を通ってアフリカ北部に到達し、雪を降らせたようです。これも自然変動です。
いくつかの気象条件が重なれば、例年雪が降らない場所でも、雪が降る可能性ゼロではないわけです。

日本の雪はどうなるの?

温暖化が進んでいても、自然変動によって大雪になる年があることはわかりました。
一方でどんどん温かくなっていく以上、降雪量は次第に減っていくのでしょうか?

つづいて話を伺ったのは、温暖化が大雨や大雪に与える影響について、
コンピューターシミュレーションを活用して研究している気象庁気象研究所の川瀬宏明主任研究官です。

気象庁気象研究所 川瀬宏明主任研究官
川瀬宏明主任研究官

『温暖化すると雪は減るだろう』と思っている方もいるかもしれませんが、
そう単純には言えない複雑さがあります。

気象庁気象研究所の研究では、このまま温暖化が進むと今世紀末の⽇本では、全体の降雪量が減るとともに、雪が降る期間も短くなると考えられています。
ところが⼀部の地域では、むしろ局地的に集中して降る“ドカ雪”が増えるという予測もあるそうです。なぜでしょうか?

温暖化によって海⾯⽔温が上昇すると「日本海が出す⽔蒸気量」が増加します。
また気温が上昇すると「⼤気が取り込める⽔蒸気量」が増えることになります。

日本海から出た水蒸気は、大陸から吹く北西の風に乗って日本列島に運ばれてきます。
冬場の気温が低い北陸地方の山沿いや北海道の内陸部などでは、温暖化によって増えた⽔蒸気が雪として降るため、強い寒気が流れ込んだ際に降る極端な⼤雪がかえって増えるというのです。

川瀬さんは、こうした温暖化による影響が、すでにこの冬の降雪にも現れている可能性があるとして、スーパーコンピューターを使った検証を始める予定です。

川瀬宏明主任研究官

地球温暖化というと夏の暑さや豪雨・台風のことに目を向けがちですが、冬の気候にも大きな影響をもたらすのです。

目標達成はすでに危機的な状況

WMO(世界気象機関)は、2020年の世界の平均気温が観測史上2番目に高かったと発表しました。去年1年間の世界の平均気温は14.9度で、産業革命前の水準と比べておよそ1.2度上昇していることがわかっています。

国連は「地球温暖化の深刻な被害を防ぐために、平均気温の上昇を1.5 度以内に抑える必要がある」と呼びかけていますが、すでに目標達成は危機的状況にあるのです 。

中村尚教授

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の評価報告書が示しているのは、
温暖化の未来予測のシナリオです。一番の不確実性は「人類が気候変動にどう対処するか」。
それが読めないので、報告書はいくつものシナリオを用意しているわけです。
ここから先は、我々がどうするかにかかっています。

理想のミライを具体的にイメージし 実現のために動こう

どうすれば、危機を回避できるのか。すでに具体的な動きが各地で始まっています。
札幌市では昨年の11月と12月に「気候市民会議さっぽろ2020」と題して、
10代から70代までの市民20人による会議を4回にわたり開催しました。

このまま温暖化が進めば、北海道独自の文化やまちづくりにも大きな影響を及ぼします。
降雪量が減ると「雪まつり」開催の断念・スキー場の閉鎖などにもつながる可能性があり、市民にとっても大きな関心事となっています。

会議では各分野の専門家に最新の温暖化の状況や対策について話をしてもらい、多様な背景や意見を持つ市民同士が、計16時間にわたりじっくりと議論を重ねました。
その結果を札幌市における気候変動対策やまちづくりの議論に活用していきます。

オンラインで開かれた「気候市民会議さっぽろ2020」

こうした気候市民会議は、フランスやイギリスを始めとした欧州の国や自治体で、2019年頃から広く行われるようになっています。

国立環境研究所地球環境研究センターの江守正多副センター長は、政府が昨年10月に「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」方針を表明したことで、温暖化対策への考え方が劇的に変わったと感じています。

国立環境研究所 地球環境研究センター 江守正多 副センター長
江守正多 副センター長

菅首相が具体的な数値目標を打ち出しました。
その結果、産業界が大きな変革を始めています。
私たち一人一人も、「できること」(☞わたしたちができる5つのこと)をするだけでなく、『脱炭素化した未来はこうなってほしい』という具体的なイメージをしっかり抱いて、そのミライを実現するために議論や行動を重ねていく「やるべきことを実行する」フェーズに入ったと言えます。

脱炭素化した未来を想像するために☟
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