2021年1月18日

持続可能な社会 2050年の未来予想図

「温室効果ガス排出ゼロ」社会とは?
去年10月、日本政府は 温室効果ガスの排出を「実質ゼロ」にする方針を表明しました。 では実際に「温室効果ガスの排出ゼロ」が実現したら、社会のあり方や私たちの生活はどのように変わるのでしょうか?
地球のミライ取材班では“2050年の未来予測”を行ったある報告書を元に、「脱炭素化」した社会の姿をビジュアル化しました。 協力してくれたのは、若者向けのメディア「NO YOUTH NO JAPAN」のみなさんです。2050年には社会の中心になっている世代です。


左から 吉井紗香さん(21)/川添由貴さん(20)/黒住奈生さん(23)/グラフィックデザイナー 平山みな美さん(33)

今回の“ネタ元”になったのは「ネット・ゼロという世界 2050年日本(試案)」という報告書です。持続可能な開発や環境対策について研究している「地球環境戦略研究機関(IGES)」が去年発表したものです。石油化学や建設業界など様々な企業や研究機関にヒアリングを行い、温室効果ガスの削減に向けて今後導入される技術や、それぞれが目指している未来の姿などを調査しました。
その上でエネルギー需要と温室効果ガスの排出量の変化を試算し、2050年の社会や暮らしについて “未来予測”を行いました。



まずは、温室効果ガス排出の「実質ゼロ(ネット・ゼロ)」とは?
(※画像はすべてダウンロード可能です。SNS投稿などで自由にお使い下さい)










「トランジッション・シナリオ」が描く未来
「ネット・ゼロという世界 2050年日本(試案)」にはネット・ゼロを達成するための「2つのシナリオ」が示されています。

1つは、社会の変化がほとんど起きず、エネルギーも石油などの化石燃料を使い続けながら、ネット・ゼロを達成するというものです。これは排出されたCO2を『地下に埋め込む』ことを想定していますが、いまの段階では不確実性が高い技術です。
もう1つは、社会制度や経済構造などに“変革”がおき、再生可能エネルギーがこれまで以上に使いやすくなることで、「化石燃料を使わない社会」が実現するというものです。
報告書では「トランジション・シナリオ」と呼んでいます。

この「トランジション・シナリオ」が実現した場合、わたしたちの暮らしはどう変わるのでしょうか。
















もちろん、こうした社会を実現するのは決して簡単ではありません。
私たち一人一人に何が求められるのでしょうか?











「ネット・ゼロという世界 2050年日本(試案)」を中心となって作ったのは、30代の研究員です。メンバーの一人、栗山昭久さんは以前、温室効果ガスの排出を80%減らすことすら難しく、ましてや「ネット・ゼロ社会は不可能」と感じていたといいます。
しかし今回の調査を通じて、排出削減が難しいとされる鉄鋼業界などもヨーロッパでは、ネット・ゼロへの道筋を描いていることを知り「達成は可能ではないか」と思うようになりました。

栗山昭久 研究員(地球環境戦略研究機関)
  「持続可能なネット・ゼロの世界を実現するためには、CO2を排出しない再生可能エネルギーへの転換、そして、それを効率的に使っていくデジタルトランスフォーメーション電化を進めることがカギだと感じています。
実現させるために欠かせないのが変革です。エネルギーを始め、人々の行動・価値観が変わっていく必要があります。 これからの10年が大きな分岐点だと思います」



もし「トランジション・シナリオ」によってネット・ゼロが実現したら、
2050年の街の姿はどうなるのでしょうか?
「NO YOUTH NO JAPAN」のメンバーが、報告書の内容に自分たちの希望を重ね、 “未来予想図”を作ってくれました。



平山みな美さん(グラフィックデザイナー)
「ただ『脱炭素化』した街を描くのではなく、自分たちが30年後に住みたい街を描きたいと考えました。幾何学的なグラフィックだと実際に住むイメージがつかないので手描きのイラストにしました。わたしが育った家の近くには林があり、よく虫を観察していたのでそうした原体験から意識的に緑を増やしました。」


今回の企画に参加してくれた大学生のメンバーからは「めざすべき社会の形が具体的にイメージできるようになった」と、前向きな言葉がよせられました。

吉井紗香さん(大学3年生)
「いままでは地球が大変なことになっていることを聞いていて、努力したとしても、 よい未来にはならず、現状維持がギリギリなのではないかと思っていました。 ですが、いまはより環境に配慮した生活に変えれば、良い未来になるのだと 希望が持てました」

川添由貴さん(大学2年生)
「2050年の未来は想像がつかないことが多いのかと思ったのですが、いまある技術を 使って新しい生活様式になっていくところがあり、とてもワクワクしました。
環境を守ることの先に、ワクワクする未来があるところがいいなと思いました」

黒住奈生さん(大学4年生)
「いままで、気候変動というと話すのにはハードルが高く、このNOYOUTH NOJAPAN以外の友人と話したことがありませんでした。しかし今回、身近な暮らしにおいての考え方や、将来像を思い描くことができたので、こうしたところからなら、環境問題の話をすることができると思いました。」





先日放送したNHKスペシャル「2030未来への分岐点 暴走する温暖化“脱炭素”への挑戦」のなかで、気候変動研究の世界的権威であるヨハン・ロックストローム博士は、次のように話していました。
これまでの環境活動は「時代に逆行している」と批判されてきました。
しかしいまやギアチェンジをして、先進的な未来への旅が始まっているのです。 もっともハイテクでクールな未来こそ、持続可能な未来なのです。」


2月7日のNHKスペシャル「2030未来への分岐点 大地は人類を養えるのか(仮)」では、温暖化とも大きくかかわる『食料と水』の問題を考えます。ぜひご覧ください。