#Beyond Gender
2021年7月21日

Vol.26 夫の家事育児と妻のホンネ

いまや男性が家事や育児をするのは“当たり前”。NHKの調査※でも「台所の手伝いや子どものおもりをするのは当然」と答えた男性は88.2%(2018年)でした。さらに『ウワサの保護者会』(Eテレ)で男性の家事育児についてアンケートを行ったところ、男性たちから「掃除と洗濯は自分の仕事」「休日は料理をしている」などの声が多く寄せられました。
(※「第10回 日本人の意識」調査」2018年
しかしいざ妻たちに取材すると「やるのはいいけど“ガサツ”」「恩着せがましいのが嫌」など不満の声が続出。一体どうしてなのでしょうか?
7月3日に放送した『ウワサの保護者会 夫の家事育児と妻のホンネ』では、“ホゴシャーズ”(小中学生の保護者)の男性2名、そして“尾木ママ”こと教育評論家の尾木直樹さんら専門家とともに、不満を口にする妻のホンネについて考えました。

(「ウワサの保護者会」ディレクター 大島悠也)

「妻を助けたい」と家事を始めたけど・・・
“ホゴシャーズ”のひとり、都内の飲料メーカーに勤めるジャッカルさん(仮名)は、フルタイムで働く妻と小学5年の長男の3人家族です。これまでほぼすべての家事を妻に任せていましたが、コロナ禍のリモートワークで時間ができたことを機に、忙しく働く妻の助けになりたいと家事をするようになりました。

この日も夕食後に家族全員の皿を洗い、その出来栄えに自信満々。

ジャッカルさん「100点ですね。120点!」

(皿洗いをするジャッカルさん)

でも妻のあゆみさんの評価は「80点」。お皿に汚れが残っていたり、シンク周りの拭き上げが足りていなかったりするところが気になるようでした。


(左:洗い残しがある お皿 右:シンクの様子)

あゆみさんは夫の思いやりをうれしく思う反面、家事については不満を感じていました。


(妻あゆみさん)

妻あゆみさん
ひと言で言うと“がさつ”なんです。信じられないと思うほど。

でも夫には細かいところもあるんです。家族旅行で遊びに行く時は何時にどこに行くか、車の中でどんな音楽をかけるか、など細かく決め、詳細なスケジュールを作ります。

(家事では)何回言っても変わらないから諦めるようになりました。いくらやってくれても汚かったら、私がまた洗わなければいけないじゃないですか。だから任せられないんです、すべてを。」

ジャッカルさん
「妻が(仕事から)忙しく帰ってきて、家でも(家事で)忙しいじゃないですか。だから(助けたいと思い)『ゴミとか出しておくよ』と言うと『やらなくていい』と言われる。やると怒られる。言葉は変ですけど、せっかく『やる』って言ってんだから『やらしてくれよ!』みたいな。で、結局やらなかったらやらなかったでまた『なんにもやんねぇ』って怒るじゃん、みたいな。」

「家事」の発想を変える
妻を助けたいと家事をしているのに「やらなくていい」と言われてしまうジャッカルさん。どうしたらいいのか、家族関係や親子関係の問題に詳しい恵泉女学園大学学長の大日向雅美さんや尾木ママとスタジオで話し合いました。


(スタジオ 左から大日向雅美さん、尾木ママ、ジャッカルさん)

尾木ママも、かつて家庭でお皿洗いをしていたとき、ジャッカルさんと同じように妻や娘に注意されていたそうです。2人からの指摘を“細かい”と感じていたといいます。

尾木直樹さん
「(皿洗いが)うまくいかなかったときに娘がね、『お父さんこうやるんだよ』と言って、向こうもしびれを切らしたみたいな感じでやりかたを教えてくれて。そうすると、ものすごく能率よくきれいにあっという間に終わるわけ。そういうことを教わって、『なーんだ早く教えてくれよ』と思いました。やっぱり家事をやっていても、心のどこかに片隅にね、『やってあげてる』っていう気持ちがあるの。だから(夫は)そこではごまかそうしたりなんだかんだね、理屈をこねるわけですよ。

大日向雅美さん
「ジャッカルさんは、“がさつ”だと言われてモヤモヤしていらっしゃるけど、”がさつ”でいらっしゃるんですか?お仕事とか他のことではどんな感じの方なんですか。」

ジャッカルさん
「結構、計画的に物事を進めるのが好きなんです。仕事とか数字を扱ったりする業務ではあるんで。あと自分の興味のあることはすごく緻密にやっていますね。家族旅行などでも、誰かが喜んでくれるのが分かるとやりたくなっちゃうんですよ。」

会社の仕事や家族旅行の際には緻密なのに、家事では“がさつ”と思われてしまうのはなぜか。大日向さんは2つの理由を指摘しました。


(恵泉女学園大学学長 大日向雅美さん)

大日向雅美さん
「ギャップを感じる理由の一つは、ジャッカルさんが<『仕事と家事は別と捉えている』ことです。もし職場の仕事であれば、上司や仲間から注意されたら”ダメ出し”としてでなく、改善やスキルアップのアドバイスとして捉えるはずです。もう一つは『家事を”喜ばれること”と捉えていない』こと。家事は本来シンクをきれいにしたり、美味しい食事を作ったりして、家族と喜びを分かち合うことです。」

解決のためには発想の転換が必要といいます。

大日向雅美さん
『家事は仕事の一つ。注意は“ダメ出し”でなくてアドバイス』
『家事は、家族と喜びを分かち合うこと』


そのように発想を変えると、ジャッカルさんの持っている素養や素質が発揮できるはずです。」

夫は家事育児フル回転 でも妻には気になるところが
都内の日用品メーカーに勤めるカッパさん(仮名)は、フルタイムで働く妻と大学2年生の長女の3人家族です。リモートワークを機にほぼすべての家事を引き受けるようになったといいます。


(料理から掃除まで、あらゆる家事をこなすカッパさん)

平日は毎朝6時過ぎに誰よりも早く起き、家族の朝食をつくり、妻が職場で食べる軽食も用意します。妻を車で駅まで送ったあとは部屋の掃除と洗濯。その後、会社の就業時間の8時半から17時まで仕事をきっちりこなします。お昼休みには長女のごはんを作り、終業後は家族全員分の夕ごはんの支度を整えます。

しかしそんなカッパさんに対し、妻のカイツブリさん(仮名)は、感謝しつつも気になっていることがあるそうです。それは家事をしているときに時折、不機嫌な様子を見せること。


(夫の不機嫌な様子が気になるという妻カイツブリさんと夫カッパさん)

妻カイツブリさん
「私が(仕事で)すごく疲れていて、食卓に伏せて寝てしまうこともあるんです。そうすると男気があって『(夕飯の後片づけも)俺がやるよ』と言ってくれるのだけど、やっぱりそれ(お皿を洗うことが)がしんどくて、ぶつぶつ言っちゃう。」

一方カッパさんは「不機嫌な様子が態度に出るのは悪い」としつつ、「そういう不満を出すくらいがちょうどいいのでは」と反論します。

カッパさん
「朝から夜にかけて家事やら仕事やらをやっていくと、時計が10時を指したころには眠気が襲って疲れがたまってきて、おでこに“たこじわ”が寄ってしまう。『なんで俺がやってるんだ』という不満が言葉と態度に出てしまいますが、それがなかったら、爆発してしまいます。」

こうした夫の不機嫌な様子を見る妻の心境を、大日向さんは「自分が責められているような気持ちになるのでは」と分析します。

大日向雅美さん
「妻のカイツブリさんもつらいと思います。カッパさんに感謝していればいるほど余計に申し訳ないという気持ちがはたらくのではないでしょうか。『本当は自分がもっと仕事を減らして夫に楽をしてもらわなきゃいけないんじゃないか』とか、カッパさんの不機嫌が自分の胸に刺さるように思っちゃうのかなって。」

“夫に言えなかった…” 妻のキャリアへの思い

(発展途上国の開発支援をする会社で働くカイツブリさん)

カッパさんの妻カイツブリさんは、発展途上国の開発援助をする会社で働いています。多くのプロジェクトを抱え帰宅が深夜になることもある中、「夫が家のことを、ほぼやってくれているので、仕事に没頭できている」と感謝を示す一方、これまで夫には打ち明けることのできなかった複雑な思いがあるといいます。


(タンザニアに出張したときのカイツブリさん 37歳当時)

カイツブリさんは大学卒業後、両親の勧めもあり地元で高校の教員になりました。しかし以前から興味のあった国際協力の仕事に転職しようと、27歳で東京に移り今の業界に入りました。その後、勉強を重ねて現地に赴いて活動する専門職に就き、アジアやアフリカなどの国々を飛び回り、現地に2週間から2か月滞在して活動するなど、充実した日々を送っていたといいます。

そんな中でカッパさんと出会い、40歳で母親となりました。子育てを優先するために、海外には行かず国内で出来る仕事に切り替えました。


(長女が生まれたころのカッパさんとカイツブリさん)

カイツブリさん
「その時はしかたないと思っていました。家族のためなら、子どものためなら一歩引いてしまうところはどうしてもありましたね。子育てに自分が一番責任を負っていると思っていました。」

娘が小学校に入ったころから、夫の協力を得て海外での仕事を再開したものの、以前のように長期の出張をすることはままならなかったといいます。もっと他にやり様があったのではないかという思いが、今になって何度も頭をよぎるそうです。


(カッパさんの妻カイツブリさん)

カイツブリさん
「かつて、私に指名で『入ってほしい。すぐにどこどこの国に行ってほしい』という案件がありましたが、悩んだ末に、『子どもが小さいから行けません』と断りました。あんなチャンスもこんなチャンスもあった、あれを全部やっていたら今、違うポジションにいたよなと思うことがあります。

夫も子育てに協力してくれました。でも仕事も大事、子どもも大事。すごいジレンマでした。そういう苦労を夫は知らないと感じるんですよ。あのとき一緒に考えてもらえたら、もうちょっと方法ないか考えてみようと言ってもらえたら、めっちゃうれしかったかもしれません。」

“妻の気持ちに気づけなかった…” 背景に男女の役割意識


妻がひとり抱えてきた思いについて語る映像を見ていたカッパさん。思いに気づけなかったこと、そして妻と話し合いをしてこなかった自分を責めているようでした。

カッパさん
「妻が、具体的にそこまでやりたかった仕事を犠牲にしてまで、家事育児をやってくれていたというのは改めて知りました。子どもが小さいころって、妻と向き合える時間が取れなかったというところもあるし。私も逃げていたところがあるんですよ。」

大日向さんは、夫婦で話し合わなかった原因は、時間がないことだけではないのでは、と指摘します。



大日向雅美さん
子どものことは『母の役割だ』という思い込みが、どこかにお互いあったのではないでしょうか。

カッパさんも妻のカイツブリさんが海外出張に行っている間は、長女の世話や家事のため、仕事を早めに切り上げるなど、職場のつきあいなどを諦めてきた部分もあったと思います。(でも)カイツブリさんはいろんなものを失い、捨ててきたのでしょう。

世間では『女性活躍』なんていうが、そんな上っ面なものじゃないんですよ。実際に結婚し、子どもを持って家庭を持ったら、仕事も大事、家庭も大事と揺れていく。そういう中で一枚一枚翼をもがれていくような思いで生きている女性たちがたくさんいるのが実態です。

大日向さんは、カッパさん夫婦に「今からでも遅くありません。もう一度、会話や対話をすることで『実りの多い第二の人生』になるはずです」とアドバイスしました。

カッパさん
「今になって、彼女の思いを少しでも還元してあげたいというか。今の自分のできることで恩返ししたいなと思います。」

お互い納得できる夫婦関係を築くコツは?
最後に、大日向さん、尾木ママに、よい夫婦関係を築くためのコツを聞きました。


(左:恵泉女学園大学学長 大日向雅美さん 右:教育評論家 尾木直樹さん)

大日向雅美さん
「相手が一番聞いてほしいことは何なのか。その糸をたぐり寄せることができるたら、夫婦はうまくいくと思います。

また100点満点を求めすぎず、『夫婦2人で100点くらいでいいじゃないか』と思うことが重要です。パートナーであるということは、人生を分かち合うということ。そして『家事育児』はまさに人生。家事育児の夫婦分担を『4:6』『7:3』などの割合で考えるのではなく、夫婦で家事育児を分かち合うことが大切です。その原点は共感なんです。

尾木直樹さん
「夫婦だといろいろ面倒になったり、嫌になったり、ぶつかり合うこともあると思うんです。大事なのは相手の立場に立ってみること。それでお互いが納得した関係性でいられたらすばらしいですね。」

取材を通して感じたこと
私自身も「家事をやっているほうだ」と自負していました。でも今回、取材を進める中で、いつも家事をしながら妻に「こんな夫いないでしょ?」と“ドヤ顔”していた自分に気づき、赤面しました。今振り返ると、心のどこかに「本来は自分の仕事ではない」という意識があるが故の振る舞いだったのだと思います。仮に夫のほうが家事育児を多くこなしていても、「男は仕事、女は家庭」という役割意識がなくならない限り、対等な夫婦関係を築くことができないのではないかと思います。

ジャッカルさんが取材の最後におっしゃっていた次の言葉にとても共感しました。 「子どもには、『お父さんとお母さん2人足して100点だよ』っていうのを実践して見せていきたいと思います。彼らが大人になったときには、『女の人だから男の人だから』とかいう意識がなくなり、ボーダレスになればいい。」

次世代が”らしさ”の縛りのない社会で生きられるように、自分たちの日々の言動も見直していく必要があると強く感じています。

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