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#Beyond Gender
2020年12月18日

Vol.4 更年期対策にピル代負担まで⁉︎ 変わる企業の“健康経営”

働く女性の健康を守る制度 必要なのは生理休暇だけじゃないんです


生理・不妊・更年期など女性特有の体の悩み。
これまで周りに言えずに、一人抱え込んでいたという女性も少なくないと思います。

「会議中に急に体がほてって、汗が止まらなくなった」
「生理前には気分が落ち込み、ちょっとした仕事のミスでも自分を責めてしまう」
「不妊治療中、『明日病院に来て下さい』と言われても、急に仕事は休めない」


働く女性が増えるいま、企業にとっても「女性の健康」は健康経営を進める上で大きな課題となっています。更年期症状への対策や、低用量ピルの費用負担まで!? “健康経営”の最前線を取材しました。

(首都圏局ディレクター 柳田理央子)

“生理休暇”という名前を廃止
IT企業のサイバーエージェントは、“生理休暇”という名前を無くしました。女性社員が取得する全ての休暇を「エフ休」(エフ=FemaleのF)という名前に統一。さらに、生理だけでなく、つわり、婦人科疾患、更年期症状など女性特有の体調不良の際に使えるように、有休の特別休暇を月に1日追加しました。もちろん、これも「エフ休」という名前なので、どんな理由で休むのかは、上司や同僚にはわかりません。休む理由の言いづらさをなくすことで、取得しやすいように配慮しています。


(エフ休の取得画面 他の人には取得理由はわかりません)

会社負担で婦人科受診 さらにピルの処方まで
生理日を管理するアプリなどを運営しているエムティーアイでは、今年2月から、女性社員の婦人科受診を支援する福利厚生制度を始めました。提携する婦人科を受診する費用、そして低用量ピルの費用も、会社が負担するというものです。


(社員の吉崎美帆さん)

「生理痛はあるけど、我慢できないほどではないし・・・」と病院に行くのをためらう女性も少なくないと思います。この制度を利用している社員の吉崎美帆さんもその一人。生理痛やPMS(月経前症候群)の症状を感じていたものの、市販の薬を飲んでやり過ごしていたそうです。しかし、制度についての社内説明会で、婦人科医から、女性の体の仕組みや生理前後に起こる変化などについて聞いたことで、気持ちが変わったと言います。

吉崎さん
「これまで生理前後の症状で困ってはいたものの、我慢できないほどではなく、改善するための行動が取れていませんでしたが、まずは支援制度を通じて婦人科を受診してみようと前向きに考えるきっかけとなりました」

医師の診察を受け、処方されたのは低容量ピル。低容量ピルとは、エストロゲンとプロゲステロンという2種類の女性ホルモンが配合された錠剤で、排卵を抑えるため、生理が軽くなったり、ほとんどなくなったりします。


(低容量ピル)

吉崎さんは、オンラインで継続的に診療を受け、薬を処方してもらっています。わざわざ会社を休んだり、早退したりしなくても、勤務時間内にオンライン診療を受けることができるため、とても手軽。前日の夜に予約して、次の日の仕事の合間に受けることもあるそう。ピルは郵送で自宅に届きます。


(オンライン診療の画面)

この制度を利用して、ピルの服薬を開始した女性社員にアンケートをとったところ、飲む前は「横になって休息したくなるほど仕事への支障をきたす」と答えていた人が53.8%いましたが、飲むようになって15.4%まで減ったそうです。

会社としては全ての女性社員にピルの服用を推奨している訳ではないと言います。あくまでも一番の目的は、「かかりつけの婦人科をもってほしい」ということ。生理痛やPMSなどの症状を気軽に相談できる環境をつくり、低用量ピルについても正しく理解してもらった上で、必要であれば服用することで、つらい症状の改善を目指しているということです。女性自身、毎月のことで我慢するのが当たり前になっていた生理について、会社が「ちょっと考えてみてはどうですか?」と、機会を与えてくれているんですね。

吉崎さん
「福利厚生制度になったことをきっかけに、将来を見据えて自身の健康と体の状態に向き合うことができました。今後も低用量ピルの服薬を継続し、定期的に婦人科受診することで、自身の体調に目を配っていきたいと思います。」


女性が元気に働けないことは企業にとってもマイナス
婦人科疾患を抱える女性が仕事を休んだり、仕事の効率が下がったりすることによって失われる生産性損失は、年間5兆円近くになるという調査があります。(働く女性の健康増進調査 2016年)

企業に対して、健康経営の取り組みで関心が高いものを聞いた調査では、「40~50代男性のメタボ、健康意識対策」を抜いて、「女性特有の健康問題対策」が最も上位に。(健康経営に関する実務者連絡会 参加者アンケート)

経済産業省などが選定する「健康経営銘柄」の要件にも「女性の健康保持・増進に向けた取り込み」が追加されるなど、企業にとって、女性の健康への取り組みは待ったなしとなっています。

逆に言うと、女性の体に理解のない企業は、生き残れない社会になってきているのかも・・・?

“健康経営”で育休・産休からの復職率100%
「健康経営」という言葉が一般的になるずっと以前から、社員が健康に働ける環境づくりに力を入れてきた企業があります。ロート製薬では、2002年から全社員を対象にした体力測定を開始、2004年には社員の健康増進を専任に行う部署を作るなど、取り組みを進めてきました。


(全社員が参加する毎年恒例の体力測定)

2014年には「チーフヘルスオフィサー・最高健康責任者」を設置。今年6月からチーフヘルスオフィサーを務める力石正子さんに、なぜそこまで健康経営に力を入れているのか伺うと、思わぬお答えが。


(チーフヘルスオフィサーの力石正子さん)

力石正子さん
「健康経営に力を入れ始めたという意識はなくて、入社したときから毎朝、ラジオ体操が当たり前で、職場対抗のスポーツ大会でめちゃくちゃ熱くなって応援し合うというのを、すごく楽しんでやってきていました。最近、健康経営という言葉が流行っていますが、私たちの会社では、特に健康経営に力を入れようとやっていたというよりは、本当に会社の風土です。」

現在、この会社の社員は6割が女性。育休からの復職率はなんと100%だそう!女性社員の健康を意識した制度づくりを続けてきました。例えば、健康診断。多くの企業で行っているのは、メタボ健診など男性の生活習慣病予防のための検査で、婦人科疾患を予防するための検査は、ほとんどないのが現状です。この会社では、乳がん検診・子宮がん検診を無料にしています。


(乳がん検診も無料で)

さらに、通常の血液検査ではわからない“隠れ貧血”を調べるための検査を取り入れました。内臓に貯蔵されている鉄の量を量る、フェリチン検査というもの。疲れやすさなどにもつながる“隠れ貧血”は女性に多く、この数値が低く、明らかな鉄欠乏の状態にある女性は20~40代の4割以上にのぼるとされています。


(「隠れ貧血」を調べるフェリチン検査)

“働き盛り” 40代以降の女性をサポートするために
今、女性社員の平均年齢はちょうど40歳。責任のある仕事を任されたり、管理職になったりする世代です。でも、この時期に重なるのが更年期。女性ホルモン(エストロゲン)が一気に減少し、様々な更年期症状が出てきます。一方、男性のホルモン分泌は現役世代の内はほぼ一定で、減少も女性に比べるとなだらかです。


(女性ホルモンは40代後半から激減)

会社では、社内のイントラサイトで、更年期症状に備えるための検査を提供しています。エストロゲンと似た働きをするエクオールという物質を作れる体質かどうか、尿検査で調べるキットです。エクオールを作れる人は日本人の2人に1人とされています。


(エクオールが作れる体質か検査するキット)


(社員の八巻佳奈さん)

この検査を受けたという八巻佳奈さん。現在40歳で、今年、営業企画推進部の管理職となりました。更年期にどんな症状が出るのか、どう備えたらいいのかわからず、不安を抱いていました。


(八巻さんのエクオール検査の結果)

検査の結果、八巻さんはエクオールを作れる体質だとわかりました。会社では、エクオールを作れない体質の人に向けて、サプリメントを紹介。さらに、専門の医師を招いて、更年期についてのセミナーも開いています。八巻さんも、このセミナーを受講。人によって症状が異なること、そのメカニズム、症状に応じてホルモン補充療法など様々な治療があると知ることができたと言います。


(八巻佳奈さん)

八巻さん
「正しく知って、備えるっていうことがとても大事だなと感じました。私もそうですが、女性は、仕事のことも考えなくてはいけないし、家族のことも考えないといけないし、ついつい自分の健康を後回しにしてしまう。会社が、検査やセミナーなどの機会を作ってくれたということもあるので、会社も元気にいきいき働くことを応援してくれていると感じることができたのが、すごく心強かったです。」


「女性活躍」に本当に必要なものとは?
「女性活躍推進」という言葉が声高に叫ばれるようになって久しいですが、私は1人の女性としてこの言葉にどうしてもモヤモヤしてしまいます。自分の体を犠牲にして、「男性並」に働くことが、本当に女性の活躍なのでしょうか?そんなモヤモヤを抱える私に、力石さんがこんな言葉をかけてくれました。

力石さん
「女性の力って素晴らしいものがあって、別に男性に劣っているところなんて全くありません。ただ、体のメンテナンスは、男性とは違うところがあるので、それさえしっかりメンテナンスできれば、もっともっと輝く女性が増えると思います。女性ばかりを特別に保護するつもりはないけれど、違う性があることを認め合って、それぞれに合ったケアが必要だということを、オープンにしていくことは大切だと思います。」



どうにもできない体の不調があるときには、無理せず休んだり仕事をセーブできたり、それが当たり前の社会になればいいですよね。でも、ただ「休みたい」だけではないのです。少なくとも私は、どうしてもやり遂げたいプロジェクトがあったり、がむしゃらに頑張りたい時期があったりします。女性の健康を守るための制度があったり、男性社員も含めて学ぶ機会があったり、会社が体のことを一緒に考えて、背中を押してくれていると思えたら、自分の力を最大限発揮して、いきいきと働くことができると思います。そんな企業が少しでも増えればいいなと、1人の働く女性として、強く思った取材でした。

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