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2021年1月18日

2回目の緊急事態宣言で 映画・演劇・音楽業界が“緊急の要望”

今月8日から再発令されている緊急事態宣言。映画館や劇場に対しても営業時間を午後8時までにするよう「働きかけ」が行なわれました。働きかけに応じても、新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく措置ではないため、協力金などは支払われません。多くの劇場では夜の公演を延期・中止しており、経営は厳しさを増しているといいます。宣言後の苦しい現実を取材しました。

(取材:クローズアップ現代プラス ディレクター 板橋俊輔)

緊急事態宣言で休演、上映作品の見合わせも・・・

経済産業省での要望書提出の様子 文化庁・財務省や国会議員に対しても要望を伝えた
(写真提供:#WeNeedCulture)

2回目の緊急事態宣言が出されたことを受けて、先週、文化庁・財務省・経済産業省の3つの省庁や、党派を超えた国会議員に対して、緊急の要望書が提出されました。要望書を出したのは、音楽や映画、舞台芸術の関係者がつくったプロジェクト「#WeNeedCulture」です。
「演劇緊急支援プロジェクト」(演劇)、「#SaveOurSpace」(音楽)、「SAVE the CINEMA」(映画)の3団体が、文化芸術復興基金の創設を求めて「#WeNeedCulture」としてまとまりました。

要望書の提出後に開かれた記者会見には、ミニシアターやライブハウスの経営者、DJ・劇団主宰者、映画監督などのプロジェクトメンバーが出席。緊急事態宣言後の各業界の現状について報告しました。

2回目の緊急事態宣言によって、文化芸術は今、どのような事態に直面しているのか。
今回の緊急事態宣言で、映画館や劇場などの施設は営業時間を短縮する「要請」の対象にはなっていません。しかし要請の措置とは別に、営業時間を午後8時までに短縮する「働きかけ」を呼びかける対象となりました。
住民には午後8時以降の不要不急の外出の自粛が要請されていることもあり、多くの劇場では夜の公演を延期や中止にする判断をしています。また映画館ではレイトショーが上演できなくなったり、夜間に営業することの多いライブハウスやナイトクラブは、実質的には休業状態という危機的な事態に直面していると言います。

ミニシアターの支配人・「#WeNeedCulture」メンバー  北條誠人さん
「今回の緊急事態宣言を受けて、午後8時までに上映が終わるようにプログラムを組んでいます。夜8時以降に上映する予定だった作品は、2週間後に公演初日を迎える予定だったのですが、公開を見合わせることになりました。自分の経営するミニシアターの場合、夜8時以降の上映ができなくなり、1日の4分の1(25%)の売り上げが下がると、何らかの支援などがないと事業継続は難しくなると予想しています」


文化芸術の3業界が出した“緊急の要望” 

#WeNeedCultureが提出した緊急要望書

こうした事態を受けて、#WeNeedCultureが今回国に対して提出した“緊急の要望”は大きく4つあります。

1.固定費の一定割合に相当する額の給付など、使途を問わない形での補償
2.中止した公演の費用や時短営業による売上減など、売上の減少に対する補償
3.第三次補正予算に加え、公費を支出する形での「文化芸術復興基金」の創設
4.持続化給付金に代えて、より煩雑な手続きを伴わない給付金を支給
(「第二次緊急事態宣言に対する緊急要望」 #WeNeedCultureより)

4つの項目で強く要望したのは、「補償」です。劇場や映画館、ライブハウスを運営する人だけでなく、フリーランスで活動する俳優や技術スタッフなど・・・いま苦境に立つ文化芸術の関係者が自由に使える、資金面での支援を求めたのです。
去年、文化庁は「文化芸術活動の継続支援事業」により、文化芸術に携わる団体・個人に対して500億円の予算をつけた支援を行いました。しかし、支援は「給付」という形ではなく、新たな活動を始めることに対しての助成や補助であったことなどから、多くの関係者からは決して満足のいくものではなかったという声が聞かれました。
(文化庁の支援事業については、こちらの記事で詳しく説明をしています)

1度目に続き、2度目の緊急事態宣言を受けて、新しい事業などに取り組む資金力をもつのが厳しい中、3つの業界としては目の前の苦境を乗り切るための、柔軟に使える補償や給付が必要だと訴えました。

ライブハウスを運営・「#WeNeedCulture」メンバー  加藤梅造さん
「去年4月は緊急の融資を受けたり、クラウドファンディングをしたりして乗り切ったところもあれば、やむなく閉店した劇場やライブハウスもありました。去年の秋ごろからようやく客足が戻ってきたところで、今回の2回目の宣言が出ました。前回の宣言以上に大きな打撃になるのではないかと危惧しています。
医療体制を維持するためにも「緊急事態宣言」に従う必要はあると思っています。ただ、営業を止めるのと補償はセットで考えてくれないと存続が難しいため、そこを強く要望しました」


年末年始に実施されたアンケート 関係者にのしかかる「精神的な負担」

アンケートは2020年12月31日から2021年1月7日まで実施 5378人が回答した

今回、要望書とあわせて提出されたのが、文化芸術に携わる人を対象にしたアンケートです。この調査は、30以上の団体が参加する「演劇緊急支援プロジェクト」がこの年末年始にかけて集計したもので、5378人が回答しました。 新型コロナの影響による活動の自粛が始まって10か月が経ち、いまの経済状況や公的な支援への申し込み状況など、文化芸術に携わる人たちの実態がアンケートから見えてきました。

例えば、「コロナ自粛から、現在の収入は変わりましたか?」(概算払いは除く)という質問に対しては5322件の回答が集まり、「50%以下」が39.1%、「無収入」が5.4%と答え、4割以上の人が収入が半減、あるいは無収入になったと回答しました。(「コロナ前と変わらない」は12.4%)

また、「1月以降の収入は、どのぐらいになりそうですか?」という問いに対しては、「50%以下」が31.3%、「75%以下」が25.6% 、「無収入」が10.4%と、7割近くの人が収入が半分以下に下がる見込みと答えました。(「コロナ前と変わらない」は9.6%、「わからない」は23.0%)

また、アンケートの中には「いまの状況で思うこと」など心の状況を問う設問もありました。例えば「ストレスをどれくらい感じていますか?」という質問には、9割以上の人が「かなり」「少し」感じているという結果が出たほか、「コロナ禍で死にたいと思うことはありますか」という設問には、3割以上の人が「ある」と回答
活動を制限される中で、多くの人が精神的な負担や悩みを抱えていることがわかりました。
(アンケートの結果については、こちらのページでもお伝えしています)


「歯をくいしばりながら」にも限界 存続のための補償を

#WeNeedCultureのメンバー(写真提供:#WeNeedCulture)

こうした声や要望を省庁や政治家に届けたところ、苦境を理解しながらも「文化芸術に携わる人たちにも歯を食いしばってほしい」と語る省庁の担当者もいたと言います。
「すでに誰もが歯を食いしばっていることを理解してもらいたい」――会見に参加した関係者は切実に呼びかけていました。#WeNeedCultureでは提出した要望書の回答を待ちながら、今週から始まる通常国会でも文化芸術の窮状や支援について取り上げてもらうことを望んでいると言います。

弁護士・「#WeNeedCulture」メンバー  馬奈木厳太郎さん
「文化芸術に携わる人は『儲けさせてほしい』と言っているわけではありません。それぞれの活動を存続させるために、補償が必要だということを省庁や政治家の方々にわかってほしいと思っています。そのためには、国やメディアの協力が必要です。引き続き、働きかけをしていきたいと思います」





あなたの身近で起こっている文化・芸術にまつわる課題について、教えてください。
現場で生まれた声を取材し、少しでも多くの人に届けます。


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