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トラブル相次ぐ“ビジネス勧誘”の実態 SNSやマッチングアプリで

SNSやマッチングアプリなどで知り合った人から、マルチ商法の“ビジネス”に誘われたり、高額の商品を買わされたりする人が後を絶ちません。国民生活センターによると、SNSに関する消費者トラブルの相談は5年前の4倍近くになっています。

その中で目立つのが『後出しマルチ』とも呼ばれる勧誘手法です。最初は“ビジネス”の話題は持ち出さず、親しくなった後で「マルチ商法」の誘いをかけるというものです。

実際にトラブルにあった当事者と、勧誘グループで活動していたという人から実情を聞くことができました。

(「おはよう日本」ディレクター 髙野浩司) ※4月21日放送「おはよう日本」を元に再構成

コロナ禍の孤独につけ込む “マッチングアプリ勧誘”

トラブルを経験した大学生のハルトさん(仮名)

去年、オンライン上で知り合った人から“ビジネスの勧誘”を受け、金銭トラブルに発展したという学生が取材に応じてくれました。

都内の大学に通う男子学生のハルトさん(仮名)。長引くコロナ禍で対面での講義が少なくなったり、サークル活動もできなくなったりしたことから、親しい友人や恋人をつくることができず、孤独を感じていたといいます。

そうした中、出会いを求めて登録したのが「マッチングアプリ」でした。そこで知り合いになった、ある女性と連絡を取り合うようになりました。

出会いを求めてはじめたマッチングアプリ

ジュン(仮名)と名乗る同年代のその女性とは、ハルトさんの趣味であるアニメの話題などで盛り上がりました。そして、プライベートのLINEを交換し、チャットや通話などを繰り返した後に、実際に会うことになりました。

学生ローンで40万円のタブレットを買うことに…

喫茶店でジュン(仮名)と会ったハルトさん そこで・・・(取材に基づく再現)

ハルトさんの証言をもとに当時の状況を再現します。

都心の駅前にある喫茶店で、ハルトさんはやってきたジュンと、家族のことや将来の夢などを互いに話しました。

話し始めて1時間ほどたったころ、ジュンは自分が所属しているサークルの写真を見せてきました。パーティーなどで盛り上がる若者達の姿が映っていて、ハルトさんにもサークルに入らないかと誘ってきました。居場所がほしかったというハルトさんは興味を持ちました。

そして後日、ジュンに紹介されてサークルの責任者と会うことになりました。

ジュンにサークルの責任者を紹介された

その責任者はハルトさんと同じ20代前半。挨拶もそこそこに「これからの時代は資産形成が大事」と語り出しました。そしてハルトさんに「投資でもうかる情報が入っている」というタブレット端末を、約40万円で購入するよう勧めてきました。

責任者は「自分を変えないか」と強調し、ビジネスの勧誘をしてきたという

さらに責任者は「知人を勧誘して端末を購入してもらえれば、紹介料が得られる」と説明したといいます。

サークルの実態はマルチ商法を手がける組織だと感じたハルトさんは、「お金が無い」と言って断ろうとしましたが、責任者は「学生ローンでお金を借りれば大丈夫」と主張。
その場で消費者金融に電話をするように促され、ハルトさんは契約をしてしまったといいます。

ハルトさん

「断り切れずに学生ローンを借りてしまいました。その時に、責任者が『1人暮らしで家賃が払えないと話せ』と書かれたメモを差し出してきたんです。本当は実家暮らしだったんですけど、怖くてうそをついてしまいました」

50万円ほどの借金を負うことになったハルトさん。購入したタブレット端末には、投資やビジネスを始める上での基本的な情報がありましたが、投資で勝てる具体的な戦略方法は別途有料のセミナーに参加しないと得られないと言われました。

タブレット端末の購入を解約したいとサークルの責任者に申し出ましたが、お金は戻ってきませんでした。

ハルトさんは一連のトラブルを不審に思い、利用していたマッチングアプリをもう一度見返してみました。するとサークルの事務所で見かけたほかの女性も複数登録していたことが分かりました。
ハルトさんは「はめられた」と感じました。

ハルトさんはショックで大学にしばらく行けない日が続いた
ハルトさん

「本気で出会いを求めていたのに、最初から勧誘目的だったんだと思ってショックでした。もう人が怖いです。今でも人怖いです。本当に。(他の人には)自分と同じような思いをしてほしくないっていう気持ちでいっぱいです」

元勧誘者が語る SNSの“キラキラ投稿”と“サークルアピール”

 学生時代にSNSを使った「勧誘グループ」で活動していたという女性

「後出しマルチ」は、マッチングアプリだけでなくSNSを使った勧誘も盛んに行われています。

私たちは、マルチ商法の勧誘グループでかつて活動していたという女性に話を聞くことができました。当時そのグループでは、TwitterやInstagramなどのSNS、それにマッチングアプリなどを使いながら、マルチ商法のビジネスへの勧誘を行っていたといいます。

SNSを検索して、アカウントのプロフィールなどから若い年齢層のターゲットを探し、手当たり次第メッセージを送信。その際、グループのリーダーからは”最初からビジネスの話を強調せず、まずは親密な関係性をつくることから始めるように”指導されていたといいます。 

勧誘グループで活動していた女性

「SNSなどで返信が返ってくれば、まずは実際に会ってみる。会っても、いきなりビジネスの話をするのでなくて、まず相手がどんな人なのかを知る。そして自分はどんな人なのかを知ってもらい、相手が抱えている悩みを聞いたりして、どんどん親密度を上げていく。そういうことは意識するように言われていました」

当時のマルチ商法のネットワーク図 同年代の学生を中心にSNSで勧誘を広げていたという

SNSで相手の信頼を得るため女性が意識していたのが、自分のアカウントで「キラキラ投稿」と呼ばれる自己アピールを、数多く投稿することでした。

サークルのパーティーや高級なレストランでの食事、海外旅行に行ったときの写真など、日常生活の充実ぶりをアピールする投稿を自分のタイムラインに並べておけば、勧誘した相手が自分に興味を持ちやすいというのです。

 SNSに投稿していた「キラキラ投稿」のイメージ
勧誘グループで活動していた女性

「見栄えがよく、いい生活をしている、楽しそうだなと思ってもらえるような投稿をするようしていました。SNSって見せ方で工夫できるので、すごく充実しているように見せるのは結構できちゃう。充実していますよというような内容の投稿をたくさんして、“我々の一員になれば、あなたも充実した生活が送れますよ”という形でプッシュしていたのはある」

居場所を求めて同世代の多くの若者たちが勧誘グループに入ってきた

この女性は、数年前にサークルを辞め、いまはSNSの勧誘には関わっていないと言います。しかしかつての経験から、「新型コロナなどの影響で居場所を求めている層は、ある意味SNS勧誘のターゲットになりやすい」と話します。

勧誘グループで活動していた女性

「コロナ禍は1つのキーワードになってくると思いますが、すごく楽しい集まりですとか、友人が増えますよってアピールしてくる手法は今後も続くと予想されます。サークルで集まっている様子はすごく魅力的に見えてしまうと思いますけど、そういった場所に自分も参加したいという気持ちでやってくる人もいましたので、勧誘者のSNSに充実感を強調する投稿が多い場合は、気をつけてほしいです」

プラットフォームも対策 トラブルを防ぐためには

国民生活センターによると、こうしたSNSに関する消費者トラブルの相談は、昨年度、全国で約5万2千件に上り、5年前から4倍近くにまで増えています。

SNSの不審な勧誘に対して、プラットフォームも対応に動いています。

Twitter Japanによると、ユーザーからの報告を受け、ポリシーに違反したメッセージや投稿にはアカウントロックなどの規制をかけているといいます。

またフォローしていない相手からのメッセージには、注意書きを記したラベルを表示するなどの対応も取っていると説明しています。

それでも不審なメッセージが気になる場合は、フォローしていない人からメッセージを届かない設定にしたり、特定の人以外自分のアカウントを閲覧できない設定にしたりすることも可能です。

【参考】「大学生と作るTwitterおとなの使い方マニュアル」(NHKサイトを離れます)

Twitter Japanが大学生と一緒に作成した利用マニュアル

一方、こうしたSNSのトラブルは救済も難しいケースも多いの現実です。

国民生活センターによると、マルチ商法に関しては、意図しない契約を結んだ場合でもお金を払ってしまうと返金されないケースが多いとして、ハルトさんのように泣き寝入りせざるをえないケースが少なくないというのです。

トラブルに巻き込まれないためにも、
▼SNSやアプリに身元が分かるような書き込みを安易にしないこと、
▼ネットで知り合った相手が本当に信用できるか慎重に判断することが重要だといいます。

不審な勧誘を受けたり、判断に迷った時は 全国一律のホットライン「188」にかけると最寄りの消費生活センターなどを案内してもらえます。

SNS勧誘のトラブルを防ぐには何が必要だと思いますか?
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