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人間関係新時代? 常時接続が当たり前のZ世代

大学に通っていた頃に出会った「友達と互いの居場所を確認できる」というアプリ。
仲間5人で使っていましたが、周りから「何が楽しいの?」「気持ち悪い」と言われ、いつしか使わなくなっていました。
あれから5年。そのアプリが今、Z世代の間で大流行していると聞き、取材を始めました。
「常時接続」したい理由とは?

クローズアップ現代+「"常時接続SNS” デジタル社会の近未来は?」から

大阪拠点放送局ディレクター
佐々木祐輔
大阪拠点放送局ディレクター
家坂徳二

Z世代の1/4が位置情報を共有!?

今回取材を担当したディレクターふたりは、27歳と28歳(大阪在住)。
まず自分たちよりも若い世代に「ネットで人とつながることについてどう考えているのか」、大阪の街で話を聞きました。

すると多くの若者から、自分(佐々木)が5年前に使わなくなった、あのアプリの話題が出てきたのです。

「このアプリを入れてないと、輪に入れてもらえない」【16歳・女性】
「クラスのほとんどが入れている。LINEより見ている」 【19歳・男性】
「きょうも新大阪駅で友達と合流するときに使いました」【中学3年生・女性】

アプリの名は「Zenly(ゼンリー)」。
スマホの位置情報を共有することで、『お互いがいまどこにいるのか』を、地図上でリアルタイムで確認することができます。

仲のいい友達同士や、サークルの仲間、中には交際相手と互いの居場所を共有し合っている若者もいました。

位置情報共有アプリ

私は大学生だった5年前に友人からアプリの存在を教えてもらい、登山サークルの仲間5人で試してみました。

しかし友達とはいえ、自分の居場所が常に他人に筒抜けになることに抵抗を感じ、次第に使わなくなりました。当時は私も仲間も、お互いの位置を知ることにそこまで魅力を感じなかったのです。
周りで使っていた人も、10人聞いて1人いるかどうか。
『これ以上使う人はいないし、まず流行らないだろう・・・』正直、そう思った記憶があります。

位置情報があれば ”言葉がいらない”

ところが今、このアプリが若者の間で大流行。運営会社によると『Z世代の4人に1人』が使っているとされています。

いったいなぜなのか? 街で話を聞いていると、このアプリにハマっているという3人組に出会いました。19歳でみな幼なじみだそうです。

彼らによると、このアプリの魅力の一つは『コスパの良さ』だといいます。
位置情報を常に共有しあっていれば、言葉でコミュニケーションしなくても、相手が今何をしているか見当がつくといいます。連絡するときも、待ち合わせするにも便利なのだとか。

『言葉にしなくてもお互いの考えが分かる』。いわば熟年夫婦のような関係性でしょうか。

幼なじみ3人組

「位置情報見て誰かがおったら、そこ行ったら会えるし。何も言わんでも」

ただし位置情報を共有する相手は、『地元や学校が同じ』で、なおかつ『頻繁に遊びに行く友達』など数十人に絞って使っているそうです。
インスタグラムは数百人からフォローされているのに比べ、本当に仲の良い人を厳選しているといいます。

「学校の先生もアプリのこと今知ってるんで、授業出てない仲間がいたら、『位置情報見て確認しろ』って言われます。どこかでサボっていて、『すいません、急いで向かってました』ってごまかしても、嘘ってばれる」

このアプリには、自分の位置情報を知られないようする『ゴーストモード』という機能もありますが、ほとんど使わないようにしているそうです。
これを使うと『隠し事がある』と自分から伝えているようなもの、だからです。

互いのプライベートをさらけ出し合うことで、仲間としての信頼がより深まっているのかもしれません。

後ろめたくなければ「隠す必要はない」

一方でこのアプリを夫婦で使うと、どうも色々あるようです。
3人組の1人・松田篤真さん(19)は、去年結婚したばかりの妻・里奈さんと、位置情報を共有しています。

松田篤真さん・里奈さん

妻「このアプリを『消していい?』『だめ』の話し合いばっかりしています」
夫「男側からしたら『いる?』って、友達含めてほとんどの人が言っていたので」
妻「居場所が分かることで、嘘ついたりとかもできなくなるので、信頼が出てくるかなって」
夫「勘違いはあんまりされなくなりますね」

ただ、夫婦で意見の食い違いはあるものの、松田さん自身、位置情報を共有することへの抵抗はないと、はっきり口にします。

松田 篤真さん

「悪いことしてなければ別に隠す必要はない。アプリを入れたくないと言っている人は何かしら後ろめたいことがある人だと思う」

SNSについて詳しい中央大学国際情報学部の岡嶋裕史さんに、このアプリがZ世代に受け入れられている現象について、聞いてみました。

中央大学国際情報学部教授 岡嶋裕史さん
岡嶋裕史さん

Z世代より上の人たち、個人情報を知られることが"すごく恐いことだ”と教えられてきた人は、拒否的に見るかもしれませんが、今の若者たちにとっては、『昔の旅館のおもてなし』のように感じているんだと思う。
何も言わなくても好きな料理が出てくるのは自分をすごく知ってもらっているからやってもらえるサービスですよね。

自分を知ってもらうことでより良いサービスが受けられるなら、対価として個人情報を差し出すのは「当然だよ」って思っている人たちが、若年層中心にすごく強くなっていると思います。

見知らぬ人と長時間『声』でつながるSNS

もう一つ、今回取材した"常時接続アプリ”が、『見知らぬ人と長時間声でつながれる』というSNSです。

2年前、それまで縁のなかった大阪に転勤となったディレクター(家坂)が、「話すだけなら、いいのがあるよ」と、「Yay!(イェイ)」というアプリを友人に紹介されました。

このSNSの最大の特徴はグループで音声通話ができること。『一緒に勉強したい人』『同じ趣味の話をしたい人』など無数のコミュニティーがあり、好きなところに参加することができます。ユーザー数は500万にのぼり、似たような仕組みのアプリも複数あります。

たわいもない会話「それがいい」

取材目的ということを明かした上で、いくつかのコミュニティーに参加してみました。
そこで行われている会話は、『今日の職場や学校でのできごと』や『家事中の様子を聞くだけ』といった、"たわいもない会話”がほとんどです。

しかしユーザーたちは「それがいいのだ」と話してくれました。

30代・女性

極端な話、しゃべらなくても、その場に参加して相づちを打ってくれるだけで安心感があるし、家事もはかどるんですよね。

20代・女性

自分は、ツイッターみたいにセンスのいい文章も書けないし、インスタグラムみたいなおしゃれな写真も上げられない。だけど、ここだったら日常のことを言える感じがしていい。

音声通話アプリ

必要なのは自分の『声』だけ。自分からはしゃべらず、相づちを打つだけでもいい。
その場限りのやりとりからは、"一体感”が生まれる感覚もあるといいます。

ほかのSNSのように全世界に公開されることもなく、ほとんどが10人程度のクローズドな空間のため、気楽で居心地がよいと感じている人が多くいました。

このSNSを開発した石濵嵩博(いしはま・たかひろ)さんに話を聞くと、「"自分の素を出せるコミュニティー”を目指した」と話しました。

石濵嵩博(いしはま・たかひろ)さん

既存のSNSサービスは、投稿のコンテンツのクオリティーがどんどん上がっていって、他人の目を気にして発言しないといけなかったり、生半可な写真を投稿してしまうと、“大したことないな”っていうふうに思われたりするので、「下手なこと言えない」みたいな"風習”がどんどん出てきています。
だとしたら、コンテンツのハードルをすごく下げて、かつ素が出せるコミュニティープラットフォームはチャンスあるよね、というところでサービスづくりを始めました。

「会話が続く」だからここが”私の居場所”

こうしたコミュニティーが自分の"居場所”になっているという人も少なくありません。

取材に応じてくれたのは、関東在住で高校進学を控えた女性。
学校などでは、好きな音楽のジャンルについて話せる相手がいませんでしたが、このSNSを始めて、同じ音楽が好きという人と出会えたといいます。

「直接会ったことはないけど、文書じゃなくて(話す)言葉で伝える方が、会話も長く続くし、楽しい。なんか続くんですよね、結構そういう会話の方が。だから居場所じゃないかと思うんですよね」

学校でも、休み時間に話したり遊んだりする友達はいますが、常に周囲に気を遣い、自然な自分ではなかったといいます。
一方で、お互い好みが同じで価値観が近い相手とは『顔が見えなくても会話が弾む』と話していました。

”声だけ”だから本音を言える

リアルでは言いづらい悩み事も、"声だけのSNSだから打ち明けられる”という人もいます。
アメリカ・ニューヨーク近郊に住むゆいなさんは、2年前からこのSNSを使い始めました。家族や友人には言えないことも、相談できたといいます。

ゆいなさん

日本の高校を受験しようか、迷っていたんです。でも塾のお金とかかかるし、(親に)お願いすることができなくて。そういうお願いをする空気じゃなくてできなかったんです。

そのときに通話で話していた友だちに『したいことをすればいいんじゃない?』って、すごい気軽な一言だったんですけど、私的にはすごいうれしくて。

利用にはリスクも 「悪用する人間もいる」

しかし、"声”で誰とでもつながることにはリスクも伴います。

警察庁によると、2021年にSNSをきっかけに児童買春や児童ポルノなどの犯罪に巻きこまれた18歳未満の子どもは1812人(※出会い系サイトを除く)。

そして加害者と知り合うきっかけになったSNSの内訳は、多いほうから
・Twitter        668人
・Instagram       350人
・Yay!(音声通話アプリ)113人
となっています。

犯罪に巻き込まれた子どもが加害者と知り合ったSNS(2021年、警察庁まとめ)

アプリの運営会社では、『アカウントを作る際の個人認証の強化』や『未成年の1対1での通話の制限』などを行うとともに、ユーザー同士が他のSNSのIDやQRコードを交換しないよう呼びかけています。

SNSのトラブルに詳しい成蹊大学の高橋暁子さんは、ユーザーが注意して利用する必要があると呼びかけています。

高橋暁子さん

SNSは価値観の近い人同士が出会えるので、すぐに親密になれて、早く距離が縮まります。音声を使ったSNSではその傾向が特に顕著だと感じます。
運営側も対策に取り組んでいますが、今以上に子どもたちを守る規制も必要ではないでしょうか。

ただ、いまの子どもたちにとってある種の“居場所”になっている面も事実なので、SNSを使うなということはできないと思います。少なくとも使う側が、中には悪用する人間もいると理解して、注意しながら使う必要があると思います」

街で出会った、ある若者が発した言葉が今も頭から離れません。
「リアルの人間関係は失敗できない」

今は学校や仲の良いグループ内でも気遣いが求められていて、関係にヒビが入るような言動を避けるのが、若い世代の大きな特徴だと言われています。
そしてそれが、SNSの使い方にも、色々な形で現れているのかもしれません。
今後も取材を続けていきたいと思います。

この記事の執筆者

大阪拠点放送局ディレクター
佐々木祐輔

平成31年入局(27歳)
現代の若者やSNSの最新事情について取材しています。

大阪拠点放送局ディレクター
家坂徳二

平成29年入局(28歳)
メタバース、最新のSNS、DX、デジタルツインなど、デジタル技術の進化でおこる社会の変化について取材しています。