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ワクチン”誤情報”や”デマ” 私はこうして抜け出した

新型コロナワクチンに関する根拠の不確かな情報が飛び交う中、誤った情報を信じ込み家族や友人に広めてしまったものの、後でその情報が間違っていたと知って「後悔している」という人たちもいます。
何がきっかけで誤情報だと気付き、そこから抜け出すことができたのでしょうか。

(「おはよう日本」ディレクター 髙野浩司)

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かかりつけ医が「ワクチンで不妊」とSNSで発信

オンラインで取材に応じてくれたまひろさん(仮名)

取材に応じてくれたのは50代の主婦・まひろさん(仮名)
「ワクチンを打つと不妊になる」という誤情報を身近な人に広めてしまった経験があります。

きっかけは近所のかかりつけの医師のSNSでした。その医師はマスクやワクチンの効果を疑問視していて、「ワクチンで女性は永久に妊娠できなくなる恐れ」などの情報をフェイスブックでシェアしていたといいます。

実際にまひろさんが見たフェイスブックの投稿

ワクチンで不妊になるという情報は、国や学会が「科学的根拠がない」として明確に否定しています。妊娠中であっても時期を問わずワクチンを接種することが推奨されています。
厚生労働省「新型コロナワクチンQ&A」※NHKのサイトを離れます)

しかし、まひろさんは主治医の主張を”真実”だと思い込みました。

まひろさん(仮名)

「私は本当に主治医のことを信頼していました。ですのでその医師が発信していることは正確な情報なのだろうと思いました」

まひろさんはこの情報を20代の娘にLINEで伝え、さらに友人にもフェイスブックのメッセンジャーで送りました。

(左)まひろさんが娘に送ったLINEのメッセージ
(右)友人に送ったFacebookのメッセージ
まひろさん(仮名)

「この知らせを一刻も早く教えてあげないといけないと思いました。
家族を守りたいという、そういう気持ちが大きかったです」

「ワクチンは敵」だと思い込んでいたが…

新型コロナウイルスやワクチンの情報を発信している医師たちのグループ「こびナビ」の動画

その頃まひろさんは、本気でワクチンを「敵」だと思い込んでいたといいます。そして「敵」と戦うためには、ワクチンを勧めている人たちのことを知る必要があると考えました。

SNSで「ワクチンで不妊という情報は誤り」と発信している医療者たちをフォローするようになったのですが、それがきっかけでまひろさん自身の考えが次第に変化していきます。

まひろさん(仮名)

「医者のボランティア団体を知ることになり、そこから色々な先生のツイッターやインスタグラムなどで、むさぼるように情報収集を始めました。そのうちに、『もしかしたら私は、間違えていたのかもしれない』と気持ちが変わっていきました。ワクチンの成分や仕組み、副反応についても知ることができたので、これはむしろ打たなければいけないものだという気持ちになりました」

医師たちは科学的根拠にもとづいた情報を紹介し「公的機関が発表している情報を信用して」と呼びかけていました。自分でも色々な専門家が発信している情報を調べたところ、多くの専門家が「ワクチンで不妊になる」という情報を否定しているのを知りました。

まひろさんは自分が信じていたのが「誤情報だった」と考えを改め、ワクチン接種への理解も次第に深まってきたといいます。

8月、まひろさんはワクチンを接種し、情報は誤りだったという訂正のメッセージも娘や友人に送りました。

(左)まひろさん (右)まひろさんの娘
まひろさん(仮名)

「いくら信頼する人が発信している情報でも、うのみにするのは良くないことだなと。必ず一度は疑ってかかってみる。立ち止まってみる。人に伝えるのはそれからだなということを感じました」

サークルに浸透していた“ワクチン陰謀論”

オンラインで取材に応じてくれたあかりさん(仮名)

これまでとは違うSNSを使い始めたことで「誤情報に気がついた」という人もいます。

主婦のあかりさん(仮名)は、薬や手術を使わずに体の不調を治そうとする「代替医療」の情報を共有するサークルに参加していました。医療従事者や経営者、教師など60人ほどがメンバーだったといいます。

新型コロナウイルスの感染が広がった後、メンバーの何人かがワクチンに関する根拠の不確かな情報をサークルのSNSに書き込むようになりました。いわゆる“陰謀論”のような荒唐無稽な話も多かったと言います.

あかりさん(仮名)

「サークルでは『ワクチンは人類コントロールのためのもの』『ばく大な金儲けのために作られ、ワクチンを打たせたい組織による世界的施策である』といった考えが主流となり、皆がそれを信じていました」

サークルのメンバーは、「ワクチンは遺伝子を操作する」といった動画などを、外部からは見えないLINEやフェイスブックなどのSNSで共有し、閉ざされたコミュニティーの中で“誤情報”が蓄積されていきました。

それらを見るうちにあかりさんも「ワクチンは国や製薬会社による陰謀だ」と信じていました。そして、自身もサークルへの勧誘と並行して“ワクチンと陰謀論”の考えを広めていったといいます。

あかりさん(仮名)

「人助けをしているような高揚感がありました。人が知らない真実を知っているという、一種の優越感にすがっていた部分は大きかっただろうと今振り返ると思います」

ツイッターで違う意見に初めて触れて…

あかりさんが考えを転換するきっかけとなったのは、自分の気持ちの整理のために始めたというツイッターでした。タイムラインに流れてきた書き込みに”ワクチンの陰謀論”を否定する意見が複数あったのです。

それまで使っていたLINEやフェイスブックでは、同じ意見を持つ人たちと閉じたコミュニティーの中で情報を共有していましたが、これまでとは違う情報に触れたことで、”真実”だと信じていたことに疑問を感じるようになったのです。

あかりさん(仮名)

「タイムリーに生の情報が専門家から届くこと、リアルな現状が把握できること、私と同じような経験をされている方の新鮮な声が聞こえること、これらが私の頭の中をひっくり返していきました」

その後、あかりさんはサークルを退会し8月にはワクチンも打ちました。しかしそれには相当な勇気が必要だったと話します。

あかりさん(仮名)

私のいたグループは仲間意識が強く、違う考えの人は”排除”しようとします。そこから抜け出すには相当の勇気と覚悟が要ります。私がこれまでの自分の考え方や態度が間違っていたことに気付き、思想や思考を180度転換したことで、それまでの人間関係が破綻しました。

(いま悩んでいる方へ)
考え方を変えることを恐れないでほしいと思います。特に今回のような、自分自身はもとより周りの人の命に関わることは良く考えてほしいと思います。誤情報のコミュニティーを脱出しても、新しい社会生活はできます。

ワクチン誤情報 拡散しないためにどうすれば

一度信じてしまうと、なかなか抜け出せなくなる”誤情報“。私たちはどのように対応すればいいのでしょうか。ネット上の情報拡散について研究する専門家に聞きました。

国際大学山口真一准教授ネット上の情報拡散について研究している
国際大学・山口真一准教授

「1つ目は家族や友人などといった身近な人からの情報であったとしても、それをうのみにしないということです。

2つ目は拡散しようとする前に一呼吸置く。特に“怒り”と“不安”を感じた時ほどそのまま拡散してしまうのではなくて、『これ本当かな?』と立ち止まる。その上で他の情報源に当たってみたり、一次資料を確認したりするなどして、自分でしっかり考えて判断するのが大切です。

3つ目は分からないことは人に伝えないことです。調べても分からなかったら拡散しない。これだけです。拡散しないで自分でストップさせておく。そうすれば少なくとも自分がその誤情報を拡散する立場になることはないわけですよね。そのことを一人ひとりが守ることが非常に重要であるといえます。

ワクチン接種は任意ですが、正しい情報に基づいて判断することが大切です。迷ったらまず、公的機関などが発表している「科学的に検証された情報」にあたることをお勧めします。

※厚生労働省では新型コロナワクチンに関する「誤情報の一覧」をまとめています(NHKのサイトを離れます)

みんなのコメント(3件)

提言
@m
2024年2月2日
著名な大学教授らがワクチンの被害を訴え始めた今、まだ分かりきっていなく危険性もあったm RNAワクチンについて少しでも意義を唱えると陰謀論のように捉えられるのはおかしいのでは?ないか。
効果と被害両方をしっかりと報道するべき。
感想
すぅ
40代 男性
2023年11月16日
ワクチンによる陰謀論はさすがに
疑問はありましたがワクチンの副作用と
思われる死亡案件や、火のないところに煙は立たないという事からワクチンに対する
否定的な考えは払拭出来ていません。
事実、私も妻と子供もワクチンは1度も
接種していませんがコロナにかかる事無く、
また、ワクチンを接種した友人は体調を
崩すなど負の部分しかありません。
更にワクチンを接種したからと言って
コロナ感染が防げる訳でもありませんし、
中には重篤化した友人もいます。
ワクチンを接種した方が良いという方の
説得力のある意見を1度聞いてみたい。
提言
なな
50代 女性
2022年8月28日
アンチワクチン論にも売名などの「欲望」が絡んでいるケースも少なくはないと思いますし、人はより不安な情報をリスクヘッジ本能から信じてしまう部分もあると思います。
そんな中で、視点を変える事ができたなんて、それはそれでとても貴重な体験だったでしょうね。
自分の愛する人達のためにも、どのような選択を取るかは、個人の自由だと思いますが、自分なりに後悔しない選択をするしかないですね。