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クロ現+
2021年3月31日

婚活オンラインサロン 体験取材してみた

オンラインサロンに入ったのは、取材のためだ。でも、期待することがあった。その理由は自分のなかにある「自己肯定感の低さ」。子供のころから引きずってきたこのネガティブな性格が、もしかしたら少しでも変わるのか……。
選んだサロンは、“溺愛女子サロン”。婚活のサロンで、結婚の相手をサロンで探すのではなく、女性が集まって恋愛・結婚のコミュニケーションを学ぶ。実は「溺愛思考」という、自分を愛するための思考法も学べるという。恋愛を進めていく上で相手に心を開くのが大の苦手な私は、どうすればもっと「上手」に関係性を築いていけるのか知れるのではないかと、期待を寄せていた。これは、その心の軌跡。
(クローズアップ現代プラス ディレクター・上田ひかり)

“溺愛女子サロン”は、婚活コーチの吉乃菜穂さんが運営している。
月5500円でFacebookの非公開グループに入って会員にしか見られない情報を見たり、アドバイスを受けたりすることができる。女性限定のサロンで3月31日現在463人が入会している。多くのオンラインサロンは、活動の内容を外に公表してはいけないというルールがある。
でも、ここのサロンでは参加者のプライバシーを守ることを条件に取材を受け入れてくれた。期待と不安が入り交じる中、入局2年目のディレクターの私は、第6期のサロンメンバーとして3月1日から入会した。



まず始めに行ったのは「自己紹介」欄の記入。

自信を持って打ち出せることが本当に少ないなと改めて実感する。

名前、居住地、現在の交際のステータス(婚活中、恋人の有無、婚約中、既婚者)、そういった「データ」は書けても、呼んで欲しいあだ名や好きなこと、趣味・特技を書く段階でどうしても躊躇してしまう。

「自分よりもこの分野について詳しいひとなんてたくさんいるんじゃない?」

「英語が特技って言い切ってしまってもいいんだろうか……」

「お笑い芸人のぺこぱさんが好きでYouTubeも見ているけど、『ホンモノ』のファンと比べたら私なんてライトな層だし」と、ぐるぐる頭の中で自己批判と反省が止まらない。

私は、子供の頃から自己肯定感の低さに悩んできた。
身近なひとから手放しで褒めてもらった記憶も少ない。
何かが仮に上手くいったとしても自分の努力ではない、ただ運がよかっただけなんだと思い込んでしまう。
なぜか、心のどこか深いところで、必ずいつか失敗して酷い目に遭うと思っている。
自分がやることなすこと一切合切が信じられず、「生きたい」と強くは思ったこともない。友人からは「自分を大切にできていないから、結局なにも大事なものを持てないんだろうね、心臓をなくしているんだろうね」と言われたこともある。

自分でもどうかと思うこの自己肯定感の低さが、もし月額いくらかで解消されるのであれば、安いんじゃないか?とも思った。

サロンに参加しているほかの女性たちの投稿を見ると、書き方も軽やかで可愛い絵文字がふんだんに使われ、きらきらして見える。

場違いなことをしないように気をつけようと思った。
どうやら首都圏以外からの参加者もたくさんいるようだ。
中にはプロフィールにUSAと書かれている人もいた。

記入し終えて1分も経たないうちに主宰者の菜穂さんから自分の投稿に反応があった。 ほかのメンバーからも次々に温かい反応が寄せられる。

果たして自分なんかがここにいていいんだろうかという不安が少しずつ解消されていくのを感じた。

“溺愛女子サロン”には婚活だけではない、さまざまなコンテンツが揃っている。 自己肯定感の高め方、資産運用や起業の方法、言語化のメソッドを学ぶもの、親子関係の改善に役立つ動画とテキストのワークショップなど。
菜穂さんのコラムや動画、Facebookのスレッド機能を利用した相談など、読むもの、見るものが盛りだくさんで時間がついつい過ぎていった。



サロンの主宰者以外のメンバーが自主的に会を開くこともある。

ある朝、ラジオ体操をサロンのメンバーで行うと聞いたので参加してみた。

7時に起きて運動をするなんて何年ぶりだろうか。



ラジオ体操をしたあとは参加者でゆるゆるとごはんを食べたり、メイクをしたりしながら時間を自由に過ごす。

あまり頑張りすぎずに参加することが長く続くこつらしい。

オンラインでの会に参加するとき、なにか発言をすると必ず褒めてもらえる、小さな挑戦1つ1つを丁寧に見逃さずに肯定してもらえる。
とにかく、褒めてもらえる。

サロンでは、他人と比べないことや否定語を使わないことが基本的なルールになっていた。



ほかの参加メンバーもかつては同じような不安や所在なさを感じていたからこそ、新規のメンバーには積極的に優しくなれるのだと話していた。

あるメンバーの女性は、毎週、必ずほかのメンバーを集めて雑談をする会をオンラインで開いていた。女性は、責任を持って活動を進めることが、大きなやりがいだと話した。

「(主宰者の)菜穂さんからは『これやって、あれやって』という指示がないから好き、やりやすい。自分で好きなように活動できている。自分の仕事だと失敗が怖くてチャレンジできないけれど、オンラインサロンの中だと失敗も怖くない。だから、挑戦を続ける中で仕事では得られなかった自信を身につけることができた」



参加メンバーは、働いている女性が多いということもあり、平日は夜7時から10時までの活動が多く、時には11時を回ることもあり、だんだん夜更かしになってしまっていた。

いろいろな人とおしゃべりしたり、動画やコラムで得た知識でメンバーのひとたちが話していることをより深く理解できるようになってうれしくなったり。ハマっていくと大変なのは、オンラインだからこそ、いつでもつながれる、どこでも参加できてしまうこと、実生活とのバランスに気をつけて活用していかないと、と思った。

サロンで、最も心地よいと感じたのは、自分のダメなところ、弱いところを見せていって、それで褒めてもらえる、肯定してもらえる、という点だ。

職場で自分の弱音を吐くことはできない。プライベートな悩みを誰か、自分より経験の豊富なおとなに相談する機会もほぼない。コロナ禍で、ここ1年は学生時代の友人と会って語り合うこともままならなかった。

自分は思っている以上に不安を抱え、それを受け止めてもらえる場を求めていたんだなと、気がつく。

少人数の集まりでは、自分の恋愛体験を思わず打ち明けていた。

「好きかどうかもうわからない人がいる。優しく連絡をくれて、好きになってしまったあとで向こうに彼女がいることを知った。いまは、相手の彼女にとって自分がどういう風に見えていたんだろうと考えると、申し訳ない気持ちでいっぱいになる」



すると、会の参加者は「あなたは悪くない。ピュアに相手のことが好きだっただけ。申し訳なく思う必要なんてないよ」と優しく告げてくれた。

ほんの少し気持ちがうるうると高ぶってしまった。



主宰者の菜穂さんはサロン内のライブで、本当に多種多様な疑問にはっきりと答えていた。

その語りのペースと、弾けるようなエネルギーに圧倒される。

菜穂さんのすごいところは、自分自身の失敗談やダメなところ、その日もし調子があまりよくなかった日だったなら、それさえもどんどん話してくれるところだ。

これほど赤裸々に語るひとをこれまでほとんど見かけることがなかったので、自分ももっと自由に生きてみてもよいのかな、と背中を押されているような気持ちになった。

サロンのメンバーには、実際に、「自由になった」「人生が変わった」と語る人もいた。

私は、「好意を寄せていた人に彼女がいることがわかったが、まだちょっかいをかけられている」という、先ほどの悩みを、菜穂さんにも投げてみた。

菜穂さんは、すぐに私の質問に目を止め、「あっ、ひかりんじゃん!」と言ってくれた。

どきっとした。

さぁ、どんな答えをくれるのかな……。

「私はね、その時点でないなって思う、冷めちゃうかも」

え~!そうなんだ。ばっさりと切ってもらえて、小気味よく、気分が上昇するのを感じた。

サロンの活動は楽しく、同じような悩みを抱えるひとたちに肯定してもらえ、自分の不安や肯定感の低さが和らいでいくように感じた。



上田の悩みに菜穂さんがブログでも回答してくれた画像

サロンに入会してから10日ほど経過した頃。

最初に感じていた安心感や高揚感とは打って変わって、言いようのない不安に包まれている自分にふと気づいた。

サロンのメンバーはとてもポジティブで、いつも前向き、自分の心に従って判断をすることを常に肯定してくれる。でも、それはそもそも、本当にいいことなのだろうか。

例えば「転職しようと思っている」というメンバーに即座に「いいじゃん!」と返すやり取り。そして、「好きなひとに彼女がいた」という私の相談に「別に彼と遊ぶのはいいんじゃない?」というコメント。

もしかしたら、この肯定には、根拠がないのではないか、と思い始めていた。

気分がぐらつくのを感じた。

サロンに参加したそもそもの動機、自己肯定感は、逆に下がっているようにも感じてきた。



どういう風に、サロンメンバーのアドバイスを受け止めていけばいいんだろうか?

自分の求める、心から信じられる深い肯定感、それはもしかして手に入れられないものだと言うのだろうか。

気分が落ち込んでいく中、なぜか思い出したのはいま同居している2人のルームメイトのことば。以前、彼女たちに同じ恋愛相談をしたときのやりとりだった。

「不毛な恋愛に時間を使うのは絶対にやめた方がいい」

あのときのことを、2人に尋ねてみた。

「あなたが泣いているところを見たらすごく哀しいから。なんか、止められたかもしれないのに止めなかったらもやもやするじゃん」

「ケンカもしたし、いろいろあったけどさ、それを乗り越えたから生まれた信頼、みたいなのもあるのかなって」

そんな風に思っていたとは。なんだか、こそばゆかった。

彼女たちとは、一緒に生活している中、育ってきた環境や考え方も全く違ったため、これまで何度も衝突することがあった。ケンカやすれ違いを繰り返していたようにも思う。
でも、それだからこそ自然に培われていた不思議な信頼感、一つの屋根の下で同じ時間を積み重ねてきた、その安心感に、なんだか懐かしさのようなものを感じた。



最後に主宰者の吉乃菜穂さんに直接インタビューする機会を得た。

まず、自分がサロンに参加して、最も強く抱いた疑問、真の肯定はオンラインサロンで得られるのかを尋ねてみた。

菜穂さんの答えとしては、「ノー」。サロンの中だけでは決して幸せになれないと。でもサロン内でコミュニケーションの形を学び、成功体験を得ることで実生活の中でノウハウを活用して、前向きにサロンメンバーに生きていって欲しいと思っている、と告げられた。

とても腑に落ちた。
私は、オンラインサロンに参加することで近道して自分の自己肯定感を上げようとしすぎていたのかもしれない。

サロンに参加するのだから、人生を変えたい、いまの自分から変わりたいという欲求、期待は当然だと思う。でも、その欲求が先行して、どうなりたいのか、なにになりたいのかということを考えていないと、自分を見失ってしまう。

自律して自分の頭で考えながら、人生を前向きに旅するためのエネルギーを得る場所。
オンラインサロンはそんなところなのかもしれない。


今回、オンラインサロンに入ってみて、世界が広くなっていくようにも狭くなっていくようにも思え、不思議な感覚を味わった。

会社と家の往復だけでは得られない、ほかの年代や業種の女性と語り合うことができた経験はとても貴重で、オンラインサロンにハマるひとの気持ちがよくわかった。

クローズドなSNSの強みも実感した。いまの時代はオープンな場ではなかなか本音を言いづらい。そのための安全地帯としてオンラインサロンが機能しているのかもしれない。

コロナ禍で迎える2度目の春。
私は、取材のために入った「オンラインサロン」という場を通して、結果として、自分自身と深く向き合うことになった。
いまは、子供の頃から感じていた呪縛のようなわだかまりからほんの少しだけ解放されたような気もする。新しい人生に向けて旅立つことができるかも、という予感のようなものも芽生えた。でも、それは、決してオンラインサロンのおかげだけではないと思うことにする。取材者として得た今回の体験を、大事にしていきたいと思う。