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【“選挙とフェイク”】陰謀論が生んだ家族の分断 「フェイク・バスターズ」ダイジェスト③

2020年のアメリカ大統領選挙では「Qアノン」というグループが発信した、いわゆる“陰謀論”が拡散しました。偏った情報を信じ込んでしまった結果、家族に亀裂が生じたケースもありました。
母親が“陰謀論”を信じてしまったという男性が取材に応じました。
(2020年12月放送フェイク・バスターズ「“選挙とフェイク”」から)

“選挙フェイク”が生んだ家族関係の亀裂

アメリカ人の動画クリエイター・スティーブさんと、母のスージーさん。明るく社交的な性格だったスージーさんは、去年夫を亡くしてから独りで暮らすようになっていました。

その日のスージーさんは、いつもと様子が違っていました。

スージーさんが見ていたのは、いわゆる「陰謀論」が多数投稿されているSNSでした。

「Qアノン」と呼ばれるグループによるもので、大統領選挙を前に急速に拡散されていました。『アメリカは、一部のエリートやメディアからなる闇の政府に支配されている。トランプ大統領はそれらと戦う救世主だ』と主張していました。

スティーブ(仮名)さん

「父が借金を残したまま亡くなり、その直後に新型コロナウイルスが流行しました。母と同年代の友達もなくなりました。母は『ちょっと待って、どうして私は思い描いていた老後が送れないの?これはおかしいわ』と思うようになったんです。そんな母に“答え”を与えたのがQアノンだったのです」

さらに新型コロナウイルスが追い打ちをかけました。
スージーさんは一日中パソコンに向かい、ネットの「おすすめ」に表示されるQアノンの記事や動画に没頭していったのです。

スティーブ(仮名)さん

「あるとき母が、僕や妹、いとこたちにあるメッセージを送ってきたんです。『とても危ない』と思いました」

母から送られてきたのは、Qアノンの陰謀論をもとに作られた動画のリンクでした。

スティープさんは、親戚たちとともに母を説得しようと試みましたが・・・

大統領選挙の投票日が近づくと、スージーさんは誰彼かまわず、Qアノンの投稿を送りつけるようになっていました。親しかった人たちは、次第に距離を置くようになりました。

スティーブ(仮名)さん

「母は良かれと思って拡散を続けています。でもそれによって人間関係の輪が狭まり、最終的にはQアノンの人たちばかりに囲まれるのではないかと心配しています。私は父を失ったばかりで、その上、母とも疎遠になるのは嫌なんです。解決策が見つかることを願うばかりです」

もし身近な人が「陰謀論」にのめりこんでしまったら?

社会心理学者 安野智子さん(以下、安野)

社会的に孤立している状況では、“フェイクニュース”に限らず、説得や洗脳などを受けやすい状況にあります

ファクトチェック団体理事 古田大輔さん(以下、古田)

陰謀論の何が怖いかというと、全てを疑うことにつながっているんです。例えばQアノンの人たちは、「この世は影の政府に支配されている。エリートたちに支配されている。今は間違った社会で、実はワクチンも全て間違いだ」などと、全部を疑いだすんです。

評論家 宇野常寛さん (以下、宇野)

札幌にいる僕の母(67)が、もしQアノンにはまってしまったら、どうしたらいいですか?

メディア研究者 平和博さん(以下、平)

アメリカの掲示板サイトでは、Qアノンからの“脱会”を支援する動きが出てきています。


この「Qアノンの被害者たち」というサイトには、身近な人が陰謀論を信じてしまい困っている人たちなど約5万人登録しています。
中には、一度信じ込んだ人が、家族や友人の態度を見て我に返り『陰謀論から抜け出した』という書き込みも。
古田

これは「心のケア」の問題で、「否定しないで話を聞き続ける・対話を続ける」ということが、最初のとっかかりになってくるんじゃないかと思います。相手の意見を頭ごなしに否定しないというのが重要だと思います。「なぜこの人はQアノンを信じるようになってしまったんだろう?」という対話を続けていく。丁寧にコミュニティーを取り続けていくしかないと思います。

“選挙フェイク” マスメディアはどうあるべきか

宇野

ここでこの話をしておきたいんですが、フェイク情報がネット上に常に飛び交ってる世の中で、マスメディアはどうあるべきなんですか?この話をちゃんとしておかないと、テレビで有識者が集まってネットをたたいてるイタい番組になるんですよ。

安野

ネット上でフェイク情報が流れてしまう背景には『マスメディアが流している情報ではないところに真実があるかもしれない』というマスメディア不信、あるいは既得権益層・エリート不信などがある可能性があります。

マスメディアがどのような判断でそのニュースを出しているのか、その基準が分からないところが、一つ大きな点だと思います。例えば取材やニュース制作のプロセスをもっとオープンにしていく、透明化の度合いを上げていく、というのは一つのアプローチだろうと思います。

古田

それでいうといま世界中のニュースメディアが、ファクトチェックに一生懸命に取り組んでいるんですよ。しかし日本の全国紙やテレビ局のような大きなメディアが、ファクトチェックのようなコーナーを持ってるかというと、日本はまだ数が少ないんですよね。

疋田

ファクトチェックをしている企業に対して、私はSNS上で一生懸命「いいね」をおしていて、小さな寄付のような気持ちで『見てるよ、頑張れ』と応援しているんです。できれば、それを他の人にもやってほしいなと思います

2021年の総選挙 どのように情報を見極めればいい?

2021年、衆議院が任期満了を迎える10月までには、必ず総選挙が行われます。 私たちはどのように情報を見極め、投票日を迎えればいいのでしょうか?

怒ったり、驚いたり、感情が高ぶってきたらいったん冷静になる。条件反射的な情報拡散ではなくて、まずは自分の頭で考えてみる。ソーシャルメディア時代のリテラシーはまずそこが第一歩じゃないかなと思います。

古田

とても重要なのが「事実」の部分と「意見」の部分を切り分けること。たとえ自分と同じ意見だとしても、根拠が間違ってたら『ここは間違ってる』と認識するというのが大切だと思います。

疋田

どんどん「おすすめ」が表示されるときに「あれ?これって1種類しか出てきてないよね。大丈夫かな?」と考えるようにして、「Aさんはこう言ってる。Bさんはこう言ってる。違う意見だな。なるほど」と、共感できなくてもいいから理解しにいこうとする。“混沌”そのままで、一つの正しい真実みたいなのがないことを、むしろ愛することが大事だと思います。

宇野

僕は2つありまして、ひとつは「ファクトを最大限に尊重する」。
徹底してファクトチェックを行い、その情報を共有する。これがないと、どう考えても民主主義は成り立たないと思います。
もうひとつは「1つのファクトを過大評価しない」
。何か隠されてる事実があって、その事実を1個持ってきたら全体を全部否定できるというストーリーに持っていきがちじゃないですか。このファクトに対しての二つの態度を、僕は徹底すべきだと思いますね。

PART① “選挙フェイク” すでに日本でも…
PART② “選挙フェイク”を見極める! 具体的なノウハウとは?