クローズアップ現代トップ > みんなでプラス > #みんなのネット社会 > アメリカ大統領選挙を混乱させた“選挙フェイク” すでに日本でも…
2020年12月18日

アメリカ大統領選挙を混乱させた“選挙フェイク” すでに日本でも…

「フェイク・バスターズ」番組ダイジェストPART①
悪意のあるデマ根拠の不確かな情報が多数飛び交ったアメリカ大統領選挙。
フェイクが社会を混乱させている現実を、わたしたちは改めて目の当たりにしました。
何が真実で、何がフェイクか?信頼できる情報を見極めるにはどうすればいいのか?
わたしたち有権者は”選挙フェイク”とどう向き合えばいいのでしょうか。
12月18日放送「フェイク・バスターズ」の放送内容からご紹介します。

無数の“選挙フェイク”が混乱を招いたアメリカ大統領選挙
激戦の末、バイデン氏が勝利したアメリカ大統領選挙では、長きにわたる選挙戦を通じてさまざまな“フェイク”が作られ、拡散されてました。

例えばツイッターに投稿された、バイデン氏が「ジョージ」という名前を繰り返し口にしている動画は、トランプ氏のことをジョージ・ブッシュ元大統領と呼び間違えたかのように見せています。


以前からトランプ氏が「バイデン氏は認知症だ」という主張をしていたこともあり、この動画はそれを裏付ける「証拠」だとして、200万回以上も再生されました。

ところがこの動画は、バイデン氏の発言を意図的に編集された「フェイク動画」でした。実際にはバイデン氏が「ジョージ」と呼んでいたのは、インタビュアーをしていたジョージ・ロペス氏のことでした




一方「トランプ氏への票が不正に廃棄された」として、投票用紙が道路に捨てられているように見える写真を使っているこちらの投稿は、約2万回リツイートされました。



使われていた写真は2年前のまったく別のニュースのものであるなど、この投稿はフェイクだということが明らかになっています。

しかしトランプ氏自身が「選挙に不正があった」という投稿を拡散し続ける中、それに同調するように、同じようなフェイクが次々と広まっていきました。



ファクトチェックドットオルグ代表 ユージーン・カイリーさん
「事実を提示しても受け入れてもらえず、それどころか“事実を知りたいとさえ思わない人”もいるでしょう」

長年フェイクニュースと戦い続けてきたジャーナリストのユージーン・カイリー氏は、SNSで急速に拡散されている情報をチェックし、それが事実かどうかを検証するファクトチェックに取り組んでいます。しかしいくらファクトチェックを行っても、それを受け入れようとしない人たちが後を絶たないといいます。

ユージーン・カイリーさん
「我々の記事が、読んだ人に届くかどうかが問題です。私たちに必要なのは氾濫するフェイクニュースに対して、あらゆる方法で対策をとることです。どれだけ量が多くても諦めてはいけません」


“選挙をめぐるフェイク” アメリカでいま何が起きている?
“選挙フェイク”を見極めるための具体的方法を、日頃から”フェイク情報”と向き合っている専門家たちが議論しました。



評論家 宇野常寛さん (以下、宇野)
“フェイクニュース”という言葉は、2016年の大統領選挙のときに大きく問題になりましたが、あれから4年が経って、フェイクを巡る状況は改善したんですか?

ファクトチェック団体理事 古田大輔さん(以下、古田)
僕は、この4年で、アメリカのフェイクをめぐる状況は悪化したと思います。最大の理由は、政治家や影響力を持つ人たちが、SNSなどに流れるフェイク情報を“武器”として利用するようになったことです。政治家自身が、自分が利益を得るために、フェイク情報をリツイートしたりシェアしたりする状況が生まれました。

メディアプロデューサー 疋田万理さん(以下、疋田)
私のパートナー(アメリカ人)の友人と話していると、フェイクニュースを「議論の根拠」として使う人がすごく多いです。例えば、「投票用紙が燃やされてる」というフェイク情報を広めている人に対して、その情報源やエビデンス(根拠)は信用できるものなのかを尋ねると、「エビデンスなんて関係ない。この写真を見れば一目瞭然でしょ」という答えが返ってきます。お互いに言いたいことがずっと伝わらない、“共通言語”がないような状態で議論が進んでいるアメリカの状況を、間近に感じています。

メディア研究者 平和博さん(以下、平)
今回のアメリカ大統領選挙ではトランプ氏・バイデン氏双方の陣営や支持者が、お互いに、相手の主張を「フェイクだ」「デマだ」だと批判し合いました。“分断”が“フェイク”を生み、その“フェイク”がさらに“分断”を深める堂々めぐりの中で、社会がどんどん悪化していくということが続いていくわけです

古田
選挙のときにフェイク情報が広がりやすい場所は、決まっているんです。それは、「拮抗する二つの勢力が争っている場所」です。事実上の1対1で争っている中で、少しでも相手陣営を上回ろうとして、いろいろなデマが飛び出してきます。


デマが飛び交った大阪住民投票 “選挙フェイク”の脅威は既に日本でも・・・


2020年11月に行われた、いわゆる“大阪都構想”の賛否を問う住民投票。
大阪市を廃止して4つの特別区に再編するという案をめぐって、賛成派・反対派が激しい論戦を繰り広げ、僅差で否決されました。この住民投票では、SNSを中心にさまざまな“噂”が飛び交いました。



実際のツイッター投稿より
「都構想が実現すると、図書館をはじめ、いろんな施設が廃止される」
(根拠が不確かな情報)
「都構想で、この先ずーっと税金の無駄づかいが減る」
(誇張された表現)
「都構想になれば、中国に乗っ取られてしまいます」
(陰謀論)




JX通信社 細野雄紀さん
「デマと隣り合わせの状態で住民投票当日を迎えてしまった」

AIをつかってSNS上の投稿を24時間分析しているベンチャー企業によると、 この住民投票で拡散された情報には、ある傾向がありました。

JX通信社 細野雄紀さん
「デマの種類で目立つ傾向としては喜怒哀楽に直結するものが多いです。住民サービスが劣化する・良くなるなど、そういった議論はとても分かりやすいんですよね。想起しやすいところに人の関心はいきやすいので、どうしてもそういったデマの投稿が増えてしまう」


政党や住民団体が、大量に配布したチラシの中にも誤解を生む表現がありました。

都構想を推進する「大阪維新の会」が作成したチラシでは、 「都構想が実現すれば、消防車の到着時間が早くなる」と断言されていました。



しかし大阪市消防局に確認すると・・・



「特別区が設置されただけでは、 消防車の到着時間も変わりません」 という返答でした。

大阪維新の会の代表だった松井氏は、チラシの内容について10月の住民説明会で次のように説明しています。
「都構想によって、消防を一元化できれば、消防車が早く到着することにつながる可能性もある



一方、反対派の議員や住民団体などが作成したチラシにも不正確な内容がありました。
「都構想が実現すれば、大阪市の水道料金が引き上げられる」という主張が、複数のチラシに掲載されていたのです。


しかし、大阪市水道局に確認すると・・・

大阪市水道局 経営改革課 小川敏弘さん
「こう表現されるんだと思って、ちょっとびっくりしました。水道局の職員としては、そういう話は今まで特には議論されてきておりません。やることも変わらず、料金体系もそれに伴って変更することはないという単純にそういう話です」


チラシを作成した複数の住民団体や議員に尋ねると、
「水道料金の値上げは都構想とは関係がないが、将来の可能性として主張した」という回答でした。どの団体もほぼ同じ内容でした。


それぞれのチラシに書かれていた消防と水道料金に関する主張はSNSでも議論の的となり、賛成・反対双方の支持者たちが、お互いに相手を「デマ」呼ばわりする投稿も相次ぎました。

JX通信社 細野雄紀さん
「デマだ、あるいは事実だっていう、そういう話合いから抜け出せないまま (有権者は)半信半疑の状態で住民投票を迎えざるを得なくなった デマと隣り合わせの状態だった。それはすごく顕著だったと思います」




日本にも既に忍び寄る“選挙フェイク” どう見極めればいいのか?
専門家たち「バスターズ」と具体的な対策を考えます。