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2020年12月14日

“選挙フェイク”を見極めるには? 「フェイク・バスターズ」で専門家が議論

「フェイクニュース」という言葉が注目される大きなきっかけとなった2016年のアメリカ大統領選挙から4年。この間、世界のメディアや大手プラットフォーム企業は、フェイクの拡散を防ぐための対策に力を入れてきました。しかしそれにも関わらず、11月に行われた大統領選挙では、有権者の投票行動を歪めかねないデマやフェイクが次々に拡散され、バイデン氏が勝利宣言したあとも広がり続けています。

日本も、来年10月には衆議院が任期を迎え、総選挙が行われます。
有権者がフェイクに惑わされないためには、どうしたらいいのか?
自分がフェイクの拡散者にならないためには、何に気をつければいいのか?

12月18日放送の「フェイク・バスターズ」では、アメリカ大統領選挙、大阪住民投票、沖縄県知事選挙などで実際にあった事例を元に、日頃からフェイクの問題と向き合っている専門家たちが議論。信頼できる情報を見極めるための具体的なアイデアを紹介します。

フェイク・バスターズ 第4弾の出演者


宇野 常寛さん(評論家) ネット社会への鋭い批評で知られる
▼選挙前のSNSは“関ヶ原の合戦”
▼選挙関連の投稿は“承認欲求”が満たされやすい
▼“語り口”が情報を見極めるポイント

ツイッターなどのSNSでは選挙前になると、意見の違うユーザー同士が互いを激しく批判し合い、“関ヶ原の合戦”のような状態になりがちです。そのことが極端な意見やフェイク情報を生む原因になっていると思います。

特に注目度の高い選挙では、何年かに1回行われる“お祭り”のような高揚感があります。そういう雰囲気の中で、自分がSNSに投稿した意見に「いいね」がついたり「リツイート」されると、「自分が世の中を動かしている」と感じてしまう場合もあります。
選挙のときはいつも以上に「承認欲求」が満たされやすく、安易な書き込みが増えやすい状況にあることに注意が必要です。

僕が情報を見極める上で、ひとつの判断基準にしているのは「語り口」です。
例えば「A候補は豪華別荘を持っている」といった書き込みがあったとします。それ自体の信憑性も問題ですが、そのひとつの情報だけを理由に「だからA候補は信用できない」と、すべてを否定しようとする語り口は“危ない”と思います。
陰謀論が典型的ですが「この秘められた事実を知れば、どっちの候補に投票すればいいか分かりますよ」という語り口も同じです。詐欺師が人をだますときの方法にも似ていますけど、なるべく距離を置いて接するようにしています。


古田大輔さん(ファクトチェック団体理事)フェイク情報の検証記事を多数手がける
▼政治家がフェイクを“武器”にする時代
▼ファクトチェックは拡散防止の“ワクチン”
▼フェイクが多くてもあきらめてはいけない

4年前の大統領選挙と比べ、フェイクをめぐるアメリカの状況は悪化したと思います。最大の理由は、政治家などがSNSに流れるフェイク情報を“武器”として利用するようになったことです。例えば「トランプ氏への投票が不正に廃棄された」というフェイク情報が無数に出回りましたが、それらの投稿をトランプ氏本人がリツイートしていました。

一方で、「ファクトチェック(※)」が広まったことは良い変化です。
例えば、不確かな情報にもとづいた記事をある人がリツイートしたとします。それを見た他のユーザーが、リプライ(返信)欄にファクトチェック記事のリンクを貼って、間違いを指摘するというケースがよく見られます。ファクトチェックはフェイク情報の拡散を予防する“ワクチン”のような役割があると思っています。

いまはファクトチェックをする人よりフェイク情報の方が圧倒的に数が多く、すべてをチェックするのは困難です。でもあきらめたらそこで終わりです。
不確かな情報をひとつひとつ丁寧にファクトチェックしていくことを、続けていくべきだと思っています。

※「ファクトチェック」・・・その情報がどんな根拠にもとづいているかなどを調べ、情報の信頼性を検証すること。海外では多くのメディアや団体が取り組み、記事を発信している。


安野 智子さん(社会心理学者/中央大学教授) 世論の研究が専門
▼ひとは“信じたい情報”に目がいきがち
▼忙しいときほど“見た目”で判断しやすい
▼フェイクの手口を知っておこう

なぜ“選挙フェイク”を信じてしまうのか?要因のひとつに「確証バイアス」があります。 わたしたちは、自分の考えに近いなど“信じたい情報“にばかりに目がいき、それ以外の情報は無視してしまいがちです。“信じたい情報”は、深く調べることなく正しいと思い込みやすいです。「確証バイアス」は誰にでもあることを、ぜひ知って下さい。

また、あまり関心がない話題を目にしたときや、忙しくて時間がない場合などは、表面的な情報だけで判断しやすくなります。話し手の肩書きや話し方、ウェブサイトのデザインなどの見た目が“もっともらしい”と、それだけで「正しい」と判断してしまう恐れがあります。

たとえば詐欺にひっかからないためには詐欺の手口を事前に知っておくことが重要だと言われています。フェイク対策もそれと同じで、選挙に関連した真偽が不確かな情報がたくさん流れていることをよく認識し、いつでもフェイクに出くわす可能性があると身構えておくことが大事だと思います。


疋田 万理さん(メディアプロデューサー) 若者向けのネット動画を多数制作
▼「おすすめ動画」 実は要注意
▼支持していない候補者もあえてフォロー
▼アルゴリズムにあらがう

ユーチューブで動画を見ていると、同じような内容の動画が次々に表示されますよね。過去の検索履歴などをもとに、ユーチューブ側が自動的に「おすすめ」を選んでいるからなのですが、そのことが「興味のある情報ばかりに囲まれる」状況を作り出しています。
こうした“アルゴリズムの支配“によって、多様な情報に触れる機会が減ることが、フェイクを信じやすくなることにつながると考えています。

それを防ぐには、受け取る情報がかたよらないよう意識して工夫する必要があります。 たとえば、支持していない政党や候補者のアカウントもあえてフォローすることで、自分と反対の意見も自然に目に入るようになります。
また検索するときに履歴が保存されないように設定すると(Googleの「シークレットタブ」やSafariの「プライベートブラウズモード」など)検索結果がかたよらなくなります。 検索アルゴリズムにあらがっていくことが重要だと思っています。


平 和博さん(メディア研究者/桜美林大学教授) 自称“フェイクニュースの収集家”
▼“分断”と“フェイク”が堂々めぐり
▼否定よりも対話が重要
▼冷静になって自分の頭で考える

アメリカ大統領選挙ではトランプ氏・バイデン氏双方の陣営や支持者が、お互いに相手の主張を「フェイクだ」と批判し合いました。“分断”が“フェイク”を生み、その“フェイク”がさらに“分断”を深めるという堂々めぐりのなかで、社会がどんどん悪化しています。

その象徴が、極端な陰謀論をとなえる「Qアノン」というグループです。「アメリカは一部のエリートやメディアからなる闇の政府に支配されている。トランプ氏はそれと戦う救世主だ」と主張しています。ネット上では、Qアノンから“脱会”させるサポートの動きも出てきていますが否定しないで対話を続けることが重要だと思います。

選挙にかぎらずネットやSNSを見ていると、怒りを感じたり、驚いたり、感情が高ぶることがあると思います。そのときこそまず深呼吸をして冷静になることが重要です。反射的に情報を拡散するのではなく、自分の頭で考える。SNS時代のリテラシーはそれが第一歩だと思います。


「フェイク・バスターズ」
12月18日(金)夜10:00~10:30(総合テレビ)
(同時配信・見逃し配信あり)