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2020年8月21日

8/20放送「フェイク・バスターズ」番外編 Vol.2 未公開トーク「表現の自由」と「表現の責任」


8月20日に放送された「フェイク・バスターズ」、番組で紹介できなかった内容を番外編として公開する。2回目は、“バスターズ”たちの未公開トークを紹介。
「ネットは匿名だからひぼう中傷が起きるのか?」そして放送後多くの反響が寄せられた「表現の自由と責任」についての議論をまとめた。

「匿名」か「実名」か… ひぼう中傷をなくすには

――リアリティ番組に出演したことがきっかけで、SNS上で激しいひぼう中傷にあい、ことし5月に亡くなったプロレスラーの木村花さん。投げかけられた攻撃的な言葉の多くは、匿名のユーザーによるものだった。ネット言論の特徴でもある「匿名性」がひぼう中傷を生む原因なのか?


「フェイク・バスターズ」スタジオ出演者
左から ITリテラシー専門家 小木曽健さん・YouTuber 葉山潤奈さん・評論家 宇野常寛さん・弁護士 神田知宏さん・心理学者 関屋裕希さん


弁護士 神田 知宏さん(以下、神田)
「実名だったら書かない、匿名だから書いた」という部分はあると思います。というのも、木村花さんが亡くなった後に「自分も訴えられるんじゃないか」「自分が書いたことは違法なんじゃないか」という相談が多く寄せられています。相談に来る人の多くが「非常に反省しています。もう2度としませんから、教えてください」と言っています。

評論家 宇野 常寛さん(以下、宇野)
「インターネットは匿名社会なので、何をやってもいい」という思い込みが、この世界を覆っていることが一番問題な気がします。
ひぼう中傷の被害を受けた人の立場で考えてみると、どこの誰だかわからない不特定多数の人に群がられるのは、ものすごく苦痛だと思います。「自分が生きている社会が本当にフェアにできているのか」「この社会は信頼するに値するのか」という問題にまで関わってくると思います。僕は「実名主体」のインターネット社会に再編していくことには、ある程度の意味はあると思います。



ITリテラシー専門家 小木曽 健さん(以下、小木曽)
私は、実はネットに「匿名」というのはないと思っています。法的手段を踏めば特定できますし、たまたま実名がばれていないだけの状態を、みんな匿名だと思ってるだけで、実際はばれるような行動やきっかけがあれば、必ず身元は判明すると思います。

心理学者 関屋 裕希さん(以下、関屋)
「ばれる・ばれない」「匿名か実名か」に関係なく、まずは自分の口から発することに自分で責任を持つ、そもそもそこからという気もします。その一方で私は、「匿名」にも良い面があると思っています。例えばマイノリティーの人や、発言力を持つのが難しい人でも同じように発言できる。社会的な立場とかハンディを気にせずに発言できるというのは、良いことですよね。「匿名性をどうするか」という話よりも、すぐシェアやリツイートができてしまうとか、すぐダイレクトメッセージが送れてしまうとか、SNSの仕様を見直していく手もあるのかなと思います。

YouTuber 葉山 潤奈さん(以下、葉山)
私は攻撃的な言葉で傷つく人をなくしたいと考えています。「実名」になれば、顔を合わせて話すのと変わらない感覚になり、関屋さんが言うように、自分の言葉に責任を持って発言するようになるのではと思います。「実名」での発信になれば、「匿名」のときよりは、明らかにひぼう中傷の被害は減るのではないでしょうか。





「表現の自由」と「表現の責任」

――スタジオトークでは、ひぼう中傷をなくすためには「発信に制限が必要ではないか」という意見も出た。「表現の自由」を守りながら、ひぼう中傷はなくすことはできるのか?
率直な意見を交わした。


葉山
最近「表現の自由」だったり、「これは“意見”です」というのを盾にして攻撃する人が多いと感じています。例えば、TikTokで子どもがくすぐられて笑っているだけの動画があったんですね。それを見て「窒息死させようとしているのか」というコメントが何百件と寄せられて、投稿した人が叩かれていたんです。子どもは苦しんでいるわけでもないのに。
大勢が一斉に書いてしまうと、「攻撃してもいい」とスイッチが入ってしまいます。 発言の自由というのもわかるんですが、意見を言える関係性や立場のある人が言えばいいと私は思っています。例えば芸能人の不倫に関しても、第三者がつべこべ言わず、周りの友達がアドバイスをすればいいはずなのに、「誰でも自由に言えばいい」というのは私はちょっと間違っているなと思います。

小木曽
「表現・言論の自由」というのは「言論の責任」をとることでもあります。「自由になんでも言うけど、必ず責任をとりますよ」と。本来意見を言うことを我慢してはいけないはずですが、ひぼう中傷をめぐる状況が良い方向に向かわないと、「言論統制」が起きてしまうのではと心配しています。例えば、みんなが萎縮して意見を言わない、あるいは「何か言うと律で罰せられます」というような空気になるかもしれません。「ひぼう中傷は法律で全部取り締まりましょう」「“誹謗中傷警察”です」というのは、僕は“言論の自由の自殺”だと思うんです。

宇野
小木曽さんの言うことはよくわかるんですが、逆の事も言えると思うんです。何かを失敗した人が、大勢から“炎上”という形で攻撃を受けるという状況は、それ自体が「言論の多様性」を損なっていると思うんです。例えば、僕がワイドショー出ていた時によくこう言われていたんです。「MCのタレントさんが上手くまとめようとしているのに、余計なことを言うな」と。僕は、「お前の意見は間違っている」ということは、いくら言われても構わないと思うんです。それは当たり前の事だし、それがないと議論が世の中に生まれなくなります。でも、「お前は意見を言うな」は絶対アウトだと思うんですよね。
今インターネットは、「今こいつは叩いていい」という空気になった瞬間に、異論を許さない空気が増幅される構造になっていると思うんです。だから僕は、発信に一定の“枠”がないと、逆に言論の自由って成り立たないと思っています。

小木曽
ここ何年か、ネット社会は少しずつ良くなっていると僕は思います。10年前には、Twitterに書いた内容で訴えられるとか、リツイートで損害賠償責任を負うとか、みんな夢にも思っていなかったし、僕も認識していませんでした。でも今、「情報発信は責任を負うケースがあるんだ」とみんなが知り始めています。飲酒運転って減ったじゃないですか。みんなが痛ましい事故のことを知り、法改正もあり、道徳と仕組みの両方で改善していったんですよね。
インターネットも、今まで我慢してきた人たちが声を上げて、法律の仕組みを活用して、ひぼう中傷はダメだとみんなに伝える経験を、どんどん重ねていってるわけです。だから、去年よりは今年、今年よりは来年、絶対にひぼう中傷でつらい思いする人が減っていくと思っているし、そうじゃないとネットが生まれた意味がないと思います。

宇野
「今の状況は問題だから、変えていこう」と声を上げることが大事になると思います。誰もが発信する道具を手に入れ、その一部が制御不能に陥ったことで色々な問題が起きていますが、我々が声を上げることで状況を多方面から変えていく。それが唯一の道なのかなと思います。

スタジオトークの収録は2時間を超えるほど白熱した

8/20放送 「フェイク・バスターズ」番組ダイジェスト版
Vol.1 もしも身近な人がひぼう中傷を受けたら…
Vol.2 ひぼう中傷の被害者を救う 第三者がカギに!
Vol.3 ひぼう中傷をなくすために…プラットフォームの役割は?



「フェイク・バスターズ」

8月20日(木)夜10:00放送(総合テレビ)