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2020年8月21日

ネット上のなりすまし 被害に遭ったらどうする? ――8/20放送「フェイク・バスターズ」番外編vol.1

8月20日に放送された「フェイク・バスターズ」。
番組で紹介できなかった取材内容を「番外編」として紹介していく。1回目は、子どもたちの間で広がる“なりすまし”の被害について、その実態と解決策をお伝えする。

子どものネットトラブル “なりすまし”による被害
子どものネットトラブルの中でも多いのが“なりすまし”の被害。
なりすましとは、自分の名前や写真を、他人が勝手に使って偽のアカウントを作り、SNSなどに書き込まれてしまうことだ。



高校2年生のダイスケ(仮名)も“なりすまし”の被害にあった1人だ。
ダイスケはユーチューブに動画を投稿するのが趣味。フォロワーは直接知っている友達など数十人で、特に目立つ行動はしていなかった。



しかし、ある日突然、投稿した動画のコメント欄に、自分の名前を使ったアカウントが現れた。

プロフィールに使われていたのは、中学時代に友達がふざけて撮影したダイスケの顔写真。
偽アカウントは、ダイスケや友達に対し、攻撃的で卑猥な書き込みを繰り返した。

友達には直接説明して理解してもらえたが、偽アカウントの攻撃は続いた。
それでも、ダイスケは「大ごとにしたくない、自分で解決したい」と親には相談しなかった。

ダイスケ
「友達にも味方してもらえたので自分たちで片付けられるんじゃないかなって思って。自分たちの問題だから自分たちで解決しなきゃいけないかなって思った」


今回の取材をきっかけに、ダイスケは初めて両親に被害にあっていることを打ち明けた。

ダイスケの父親
「”なりすまし”というトラブルを抱えていることを知らなかったことが正直ショックでした。息子からは言われておりませんでした。特に不仲ではないので、もうちょっと早く相談してくれてもよかったかなと」


“なりすまし”被害から身を守るには? “バスターズ”が議論

評論家 宇野 常寛さん(以下、宇野)
僕も昔、“なりすまし”をやられた事があります。運営しているウェブメディアの偽物を作られたり、ツイッターで僕の偽アカウントが作られたりしました。特にツイッターでは、その偽アカウントが当時の総理大臣に「死ね」などのリプライ(返信メッセージ)を送っていました。悪質だなと思い、ツイッター社にも伝えて、そのアカウントを停止してもらいました。


宇野 常寛さん
評論家 インターネット社会への鋭い批評で知られる


ITリテラシー専門家 小木曽 健さん(以下、小木曽)
子どもたちの世界では、“なりすまし”の被害がすごく多いです※。
「自分の名前を使ったアカウントを勝手に作られて、炎上するような投稿をされた」とか、女の子だったら「画像をねつ造・合成されて、わいせつな投稿をされた」ということもありました。もう完全にいじめです。 身近な人が加害者であることがほとんどなんです。問題のある行動だし、法にも触れる可能性があるケースも中にはありますが、なかなか被害が表に出てきていないのが現状です。

※取材班追記:小木曽によると、子どもは自分が被害に遭っているという風に周りから思われたくないので、自分から親や先生に積極的に相談することはほぼないという。普段から親が、ネット上のトラブルについて子どもに話し、心の準備や対策を知らせておくことが大切だと小木曽は指摘する。


小木曽 健さん
ITリテラシーの専門家
全国の学校や企業から招かれ、ネットトラブルへの対策について講演を行っている


宇野
ダイスケくんの例はYouTube上で行われた“なりすまし”でしたが、テキストを使うほかのSNSでも被害が大きいんでしょうか?

小木曽
例えば、LINEの場合は電話番号の紐づけなどで複数のアカウントが作りづらい仕組みを作っています。ところが、ツイッターだと複数のアカウントを好きなだけ作れることが、いろいろな問題が起きる要因の1つとなっています。
問題行動をする時に、「捨てアカウント(削除されることを念頭に置き、素性を明かさないアカウント)」を使う方法がありますし、未成年に対してわいせつな行為を行う際に、自分の身分がばれないように複数のアカウントを使い分ける犯罪者もいます。ここは仕組みを考える必要があるんじゃないかと私は思っています。

宇野
“なりすまし”は法的には問題はないのですか?

弁護士 神田 知宏さん(以下、神田)
“なりすまし”のアカウントの削除請求や発信者情報開示請求をしたいという相談は結構ありますが、“なりすまし”の法的な解釈については議論があります。ポイントは「なりすました上で何をしてるか」です。そのアカウントが他人を罵倒していれば、“なりすまし”による名誉棄損と言えますし、あたかも本人であるかのような合成写真を載せていれば、プライバシー侵害というような考え方をします。
先ほどの宇野さんの“なりすました”ですが、「見たこともないアニメを評論をしている」というだけでは、名誉毀損やプライバシー侵害をしているとまでは言えず、違法だと言うのはなかなか難しいのかなという印象でした。


神田 知宏さん
弁護士
ネット関連の案件を2000件近く扱ってきたスペシャリスト。元IT企業社長。


宇野
マジですか。僕はアニメの批評などを書いて仕事としているわけだから、自分の責任が持てない文章を僕の文章・意見だと発表されたら、ものすごく不利益だと思うんですが、それは通用しないんですか?

神田
例えば、その“なりすまし”をする時に写真を使っているはずなので、本人の写真を使っていることによる肖像権侵害であるとか、著作権侵害であるとか、そちらの方で問うしかないかなという感じはします。

宇野
ハードルが高いですね。あくまで名誉棄損とかではなくて、自分の本来の所有物を盗まれた、という文脈では違反になってくるということですね。
小木曽さんが、今まで見てきたなりすましの実例ってどんなものがありましたか?

小木曽
子どもの世界では、自分のフルネーム、学校、顔写真など、本人が自分のアカウントで載せていないものも偽アカウントでどんどん載せられて、本人の名誉が損なわれるような投稿がされた例があります。そうした偽アカウントが他人にケンカは売る、問題のある写真は載せる、「どうしたらいい?」と相談を受けるケースです。

実際に“なりすまし”の相談を受けた時、私が伝えているのは「宣言」すること。「私のなりすましがいます。今こういうアカウントが自分になりすましています。偽者で今法的な対処を検討中です」と自分のアカウントで宣言すると、偽のアカウントがパッと消えることがあります。わざわざ法的な手段をとらなくても、子どもが困った時にこういうふうにやるといいんだよ、という対処法はある程度、子どもの世界でも通用しています。




8/20放送 「フェイク・バスターズ」番組ダイジェスト版
Vol.1 もしも身近な人がひぼう中傷を受けたら…
Vol.2 ひぼう中傷の被害者を救う 第三者がカギに!
Vol.3 ひぼう中傷をなくすために…プラットフォームの役割は?



「フェイク・バスターズ」

8月20日(木)夜10:00放送(総合テレビ)